イレギュラー


4話 I Don't know

ネルフからの帰り道。もうすっかり夕暮れ時である。
蝉の声もゆったりと小さくなってゆく。
ユウキとレイもゆったりと歩いてゆく。

「はぁ〜、今日はなんか色々あったな〜」

ユウキが感慨深げに口を開いた。

「・・そう」

レイがいつものように答える。

「目が醒めたときもビックリしたけど、やっぱホンブが一番
 インパクトあったよ。そういえばなんであそこホンブなの?」
「特務機関ネルフの本部だから」
「あー、そゆことか。要はネルフとかいう所の中心ってことね。
 それで本部かぁ。あーなんかスカッとした」
「・・・知らなかったの?」
「知るわけなかろう」
「・・・」
「それはそれとして、夕飯どうしますかね?」
「コンビニで栄養食品を買って行くわ。ユウキ君の分も」
「嬉しい限りだけど・・・レイちゃんって料理とかしないの?」
「した事無いわ」
「そっか。んじゃオレが作ってあげようか?」

何かを企むようなニヤつきだ。

「何を?」
「ゆーメシ」
「出来るの?」
「お任せあれ!そんじゃそこのスーパーにレッツらゴーと行きますか!」

そう言ってレイの手を強引に引っ張って店内に乗り込んでゆくのであった。



店に入ると同時に買い物篭をユウキは手に取る。

「さーて今日はなんにしよっかなー♪」

やけに楽しそうだ。

「ウチに卵あるっけ?」

もう自分の家と化しているらしい。

「ないわ」
「・・愚問でした。卵食べれる?」
「・・ええ」
「オッケー。お次はグリンピース!食べれる?」
「食べた事・・無い」
「そっか、じゃ食べてからのお楽しみという事で。つぎは、塩!ある?」
「解らない」
「んじゃ買っちゃえ!やっぱ塩は伯方の塩じゃなくっちゃね〜♪
 湿気るの早いけど味はたしかっスよ。次は海苔!ありますか?」
「無い筈・・」
「ポイッとな」

言葉と共に海苔が籠へと放り込まれる。

その後も着々とユウキの持つ籠の中には食料が投入されていった。
結局籠に放り込まれた物は、上記4品、その他もろもろ。
そして、今、最後の、究極の選択を迫られていた。
その商品名は・・・

<米!!>



「くっ!どうする・・・価格は安いが味はイマイチしかもパサパサ
 おまけに細く色も悪いタイ米にするか!?
 それとも値段は張るがふっくらとしてお口の中に
 お米の風味が広がる新コシヒカリの新米にするか!?
 っつーか新米高すぎ!!しかし料理の命、
 食材に妥協は許されない・・・!!どないしょー!!!」

店の中で絶叫。店内の客、店員がみなこちらを向いてフリーズしている。
しかしユウキの頭の中ではタイ米VS新コシヒカリの激しい
戦闘が繰り広げられており周りの光景は目に入らない。

「別に構わないわ」

そこに脳内格闘からイキナリ現実へと引き戻される一言が
レイから発せられる。

「・・へ・・?」
「少しくらい高くても」
「す、少しって、1500円も違うんだよ!?」
「構わないわ」
「・・・・・・そんじゃ、買っちゃうか」

しばらく難しい顔をしてから直ぐにニカっと笑って
10キロの米を左脇に抱えた。

「ういしょっと。重いな〜意外と」
「手伝うわ」
「そう?ありがとう。じゃ、カゴお願い」

そう言って籠をレイに手渡した。

「重くない?」
「ええ」
「そう。それじゃあレジりますか・・・って、あれ?
 何で皆動かないの?」
「・・・しらない・・」
「ま、いいやそれじゃお先失礼しま〜す・・・って、あれ?レジさん?」
「・・・」
「レジさーん!!」
「えっ、あっ、はい!」
「コレお願いします」
「ハイッ只今!」

思考停止に陥っていたレジさんはそう言うと同時に素早くバーコードに商品を通し始めた。
断続的にピッ、ピッという音が店内に響き渡る。
最もその音しかしないのだが。


そして全ての商品が通し終える。すると・・・。

「・・・合計8765円になります」
「うぇ!?たかっ!」

おまえは米しか見とらんのか?

「これで・・・」

ユウキが悶絶していると隣からレイが自分のセキュリティーカードを差し出す。
レジさんがカードリーダーにピッと通すと。直ぐ返される。
袋は大きめのが2枚、籠に入れられた。

「どうも有り難うございましたー」

その言葉と聞くと共に籠と米を持ち、
そそくさと袋に食品を入れるための台へと移動する。

「ふー、あせったぁー。さてと、卵は上のほうに入れなきゃね」

そう言って卵を一旦籠から出した。


「ラ〜ン、ラ〜ン、ラ〜ン・ラ〜ラ〜ラ〜ラ〜ラ〜ラ〜〜ン♪と」

ヴェートーヴェンのピアノソナタ第8番『悲壮』第2楽章
をハミングしながら食料を袋に愉快に、軽快に収めてゆく。

「よっし。それじゃあレイちゃん、これ頼んだ。はい」

そう言ってユウキは無意識に軽い方の袋を手渡す。
レイがそれを受け取ると、もう片方の袋を持ち米を肩に担いだ。

「よいしょっとぉ」
「・・・それも持つわ」
「へ・・・?・・この袋?」

そう聞くとレイが頷く。

「いいよ。こんくらい持てるよ」
「持つ・・・!」

どことなく儚げではあるが、力強い口調だ。

「う〜ん・・・でも、やっぱいいよ。
 女の子に荷物もたせまくるのもなんだしね」

 ちょっと迷ってから笑いながらそう答えた。

「そうなの?」
「そうなの!ほら、行こ行こ!」
「え・・ええ」

あまり納得いかなそうな面持ちで店を出る。
因みに店全体が再起動したのはその1分後であった。
再起動の起点はもちろん、あのレジさんだ。




―― 綾波宅 ――

店から出て数分経っていた。意外と近かったな、
というのがユウキの素直な感想だった。しかし米と袋を持っていれば
どんなに近かろうと重労働になる事は否めない。

「ただいま〜」

この言葉には充実感と疲労感に対する『いなめ』が込められていた。
しかしユウキは靴をキチンと揃えることを忘れずにこなし、
心の引っ掛かりを完全に消し去ると家の中にドタドタと入っていく。


その後を追ってレイも家へ入ろうとする。

「・・・・・」
「おいおいおいおい。レイちゃん、家に入るときは
 なんて言うんでしたっけ?」
「・・・・・・・・・・」

沈黙するレイ。

「・・・・・・・・・・」

ユウキもじっくりと返答を待つ。















「・・・・・・・・・・」

まだ待つユウキ。


















「・・・・・・失礼します」
「っぷはぁ〜〜〜!!これだけ間があってそれかい!!」

息を止めていたようだ。止める必要は無く思えたが。

「?」

レイは正解を確信していたらしく、疑問深そうにユウキの
顔を覗き込んでいる。


「ただいま」
「・・?」
「正解はただいまでした」
「・・・・ただいまは、今すぐ、とか、急ぐときに使うコトバよ」
「・・う〜ん、まぁそうとも使うけどねー。

そうだなー英語で言う、HAVEとかと同じだよ」

「・・HAVE・・・?」
「うん。HAVEって同じ読みで、同じスペルなのに所有とか、
 持っているとか、色々な意味があるじゃん」
「所有と持っているは同じ意味よ」
「・・・・・・。
 ただいまもそれと同じようなものなんだと思う。
 帰って来た時に使うただいまは、挨拶。
 なにか命令されたときに使うただいまは、返事。そういう
 違いだと思うよ。少し発音も違うしね」
「・・発音?」
「オレの名前も発音違うっていうのは、朝教えたでしょ?」

頷くレイ。

「それと同じで挨拶のただいまは『いま』のところの発音が上がるでしょ?
 でも返事のただいまは『いま』のところの発音が下がるんだよ。
 その微妙な違いがややこしい所かもね。ましてや文字だったらどうする?」
「どういう意味?」
「文字でただ、『ただいま』って書かれてたら、どう意味を取る?」
「・・・・・解らない」
「そう、それが正解」
「・・?」
「解らない事が正解なんだよ。だってそれだけで意味が取れる方がおかしいじゃん。
 でもさ、それじゃあ文字というものがあまりにも不便すぎる。だから『漢字』があるんだよ。
 同じ文字を漢字という違う枠にはめて意味の違いを読み取る。そうすれば理解できるでしょ?」
「そう・・。そうかもしれない」
「うん。オレはそう思う。いや、確信する。
 って、まぁ、オレ的理論は、ともかくとして・・・
 結局、レイちゃんに、なにが言いたいかって言うと・・・」
「・・・・・・・・」

黙り込むレイ。
























「おかえりって、言いたいんだよ」

ふっと優しい笑顔になってユウキはそう言った。

「・・・おかえり・・?」

不思議そうに繰り返すレイ。

「そうこの場合の『ただいま』の、返事」
「じゃあ、返事の『ただいま』と同じようなもの?」
「本質的には全然違うよ。時と場合によるけどね」
「・・じゃあどういう意味?」
「帰ってきてくれて『ありがとう。』かな?オレにとっては」
「・・・・・あなたは私が帰ってくることが嬉しいの?」
「そう、嬉しいの。それを知らせてくれるただいまの声があると
 もっと嬉しいんだよ。っていうかただいまが『どういたしまして』
 なのかな?」
「・・先に『どういたしまして』を言うのはおかしいわ」
「そのヒトにとっての捉え方の差だよ。ま、いいや。それじゃあレイちゃん
 初、ただいまということで・・・。
 いい?レ・イ・ちゃ・ん・が、ただいまっていうんだよ?
 ・・・それでは、どうぞ・・・!」

          ∧
          ・

          ・

          ・

          ・

          ・

          ・

          た
          だ
          い
          ま
          ∨

ぎこちなくゆったりとした口調でそう言った。

「おかえりっ」

いつもどうりの笑顔で答える。

「ちゃんと鍵閉めるんだよ?」
「・・ええ」

レイが扉を閉め、鍵をかける。
そしてスリッパを履くと二人とも廊下を歩いていく。
レイの持っている袋をユウキが持とうとしたが
拒まれ、そのままキッチンへ着く。




「おし、それじゃあメシの前にまず風呂沸かそう。
 レイちゃん頼んだ」
「・・どうやって?」

ユウキが米とまとめておいた袋の側に
自分の持っていた袋を置き、訊ねる。

「・・・あーそっか。いつも風呂入ってなかったのか。
 ただお湯張り押すだけでいいんじゃない?とら!」

掛け声と共にキッチンに備わった給湯器のお湯張りボタンを押す。
すると風呂の方から注水されていると思しき音がしてくる。

「おー出てるっぽい出てるっぽい」


そして風呂場の方へ行ってみる。一応レイも付いて来る。


しかしお湯の姿はほとんど見えなかった。

つまり、水垢と埃にまみれた汚水しか見えなかったのだ。



「・・・・・・・・・・・・・・・・きょ、今日はシャワー、だね。
 明日掃除しとくか。じゃ、先にシャワー浴びちゃって」
「解ったわ」

そう言うとその場で直ぐに服を脱ぎ始める。

「わたた。それじゃごゆっくり・・・」

そう言ってそそくさとユウキは洗面所兼、脱衣所から出て行く。

そしてキッチンに戻ってきた。
「おっしゃ、作るか〜・・・米研ぐぞー。
 ザルに・・・3合くらいでいいか。1・・、2・・、3・・、と」




―― 同時刻 ――

ネルフ通路。

マヤとリツコが並んで歩いていた。

打ち合わせを終えたばかりなのか二人ともスッキリしたような、
ぐったりしたような面持ちで歩いている。

「ふー。長引きましたね」

マヤが口を開いた。二人とも胸の前にぎっしりと資料を携えている。

「夜が明けなくて何よりだわ」

リツコがその言葉に答える。

「ふふ、それもそうですね。あれ?戻らないんですか?」

見るとリツコは居住区へ通じる通路の逆へと歩いていく。

「ちょっと仕事が残ってるのよ」
「そうですか・・・。あんまり無理しないで下さい」

心配そうに、顔色をうかがいながら言う。

「ありがとう。明日からもっと忙しくなるわ。しっかり休むのよ」
「はい。先輩もちゃんと休んでくださいね」
「ええ、それじゃあね」
「はい、さようなら」

その言葉を交わしマヤとリツコは別れた。




―― 綾波宅 ――



「ってウオイ!!!」



ユウキはイキナリ大声を上げていた。


「・・・?」
「そんな格好で出て来ちゃいかんでしょう!」

そんな格好はどんな格好かというと、
タオルで頭を拭いていて、スリッパを履いていて、何も着ないで、何も穿かないで、
簡潔にいうと生まれたまんまのその格好である。


この格好でありながらも、どうしたんだろう?みたいな表情でユウキを見つめる。


「・・??」
「せめて下着は着てこようよ!」

(ちょっとラッキーな気もするけど・・・)

「いかんいかん、取りあえずちゃんと体にタオル巻いて!」

言われるままに頭を拭いていたタオルを体に巻きつける。

「下着と、なんかパジャマとかないの?」

首を横に振るレイ。そのままチェストの前まで来るとタオルを脱ぎ捨て
中から下着を出し、着替え始めた。

「いやいやいやいや!そっちで着替えなよ!」

洗面所を指差す。

「・・・何故・・?」

少し切れ気味な口調に聞こえる。顔には出ていないが。

「男に裸を見せるのはいかんだろう」
「何故?」
「ナゼって・・・なんでだろう?そういうもんなんじゃない?」
「そう・・?」
「うん。そうでしょ!そういうことで今度からは気をつけてね?」
「・・ええ・・?」




―― ネルフ発令所 ――

モニターの光のみに照らされた、殆ど暗闇の不気味な空間。
そのなかでキーボードを途切れなく叩き続けるリツコの姿があった。

「結気 ユウキ・・・・あった!
 パスワード入力・・・・?4桁の・・・?
 カードのIDナンバーか何かかしら?」

そう思い立ったリツコは取りあえず全てのIDナンバーを入力する。
そして一気にマギに検索させ、パスワードを解こうとした。が、モニターには

<Error>

と表示されただけだった。

「どういう事?一種のプロテクトか何かかしら・・・。
 マギの内側からかけられているわ・・・。」

軽くタタン!とキーを叩く。

「・・・・このパターンだと一部のデータを欠落させて不完全にするタイプね・・・・」


そう推測したリツコはプロテクトの解除に取り掛かったが、
相当難解なもので解除するには様々データを引き出し、
それらを照らし合わせ当てはめる作業が必要であり、
かなりの根気を要する作業であった。
引き出したデータを欠落した部分にはめ、合わなければ破棄する。
コピーしたデータであるから完全に削除しても何ら問題は無い。



「・・・・・・・・・・・・・・厄介なことしてくれたわね・・・」

そう嘆きながらもデータ照合を続けていく。



難解ではあるが、あくまで人間のかけたプロテクトだ。自分に解けない筈は無い。
そう信じてインスピレーションと想像力だけでプロテクトを解いていくリツコ。
着々と解除は進んでいたが疲れで思考能力が低下し、解くスピードが段々と落ちていく。
しかし疲れがピークに達した時、リツコはある事に気付いた。
データはある一定の範囲をループし、少しずつずらしてあるだけだったのだ。
一定の範囲とはいえかなりの広範囲だ。
解読のペースが落ち、より注意深くデータを見ることがなければ
リツコでさえも気付かなかったであろうことだった。
その事が判明した途端急速に解読する速度が上がる。


そして全ての欠落を埋め終え、Enterキーを叩く。

「・・・・・あった!これだわ。これであの子について、何か解るかも知れない」




―― 再び、綾波宅 ――

「それじゃあ制服着ててね。オレ、シャワー浴びてくるから」
「・・ええ」
「それまでにご飯炊けてると思うから」
「・・わかったわ」

その言葉を聞くとユウキは洗面所の方へ入り。扉を閉める。


レイは、しばらくその場に立ち止まり閉じられた扉を見つめていたが
直ぐにベッドの方へと向かい、パフッとベッドにうつ伏せになるよう倒れこんだ。



(ユウキ君・・・初めて会ったのに、何故か、暖かい。
ユウキ君と居ると色々見えなかったモノが見える気がする。


・・・・・・違う?


見えなかった訳じゃない、見ようとしなかった・・・?
意味が無いから・・・。
だけど、意味が在るのかも知れない・・・。
そんな感じがする・・・。
でも、私がココに居てもいい理由は、あのヒトのためだけ・・・。
それ以上でも、それ以下でもない。


・・・・・やっぱり意味は無いの?


・・・もっと早く出会っていれば、それがわかったかもしれない。
みえたかもしれない。・・・ほかの・・・)



「・・・ほかの・・・わたしがここにいてもいいりゆう」





―― 風呂場 ――


「ちきしょー!パンツの換えが無い!」

ユウキは又、叫んでいた。
(1週間ハキッパンツをまた履くのか!?
そんなの絶対にいやじゃー!でも換えが無い・・・。
そもそも服も無い。パジャマも無い。制服もムッチャ
汚れてる・・・。こうなったら最終手段、レイちゃんに制服を借りるか・・・)

「・・・・・・・・・・・・・・・」

自分の女子制服姿想像中


自分のスカートが爽やかな風にめくられる。

「いやーん。これだから春風のイタズラはイヤだわっ」
必死にスカートを抑えるオレ。

「まったく、あそこのエロそうなオヤジパンツ見られちゃったじゃない」
しかもトランクス。オヤジの眼鏡が悲しげに光る。

「朝からツイてないわ。こんなに天気が良いのに」
眩しそうに手をかざし空を見上げるオレ。











想像終了


「・・・・・・・・・・・・・・・・」


(き、キモチワリーーーーー!!!!
ぜってーに女子の制服なんて着るもんかーーーーー!!!!
でもどうする?そうしなければオレは全裸でレイちゃん
の前に出なくてはいけなくなってしまう!?
というかパンツまで借りるのか!!?
さりげなくモッコリ・・・・・!?)









「うわあああああああああ!!!!!!!」


―― ベッドルーム ――



「!?・・・なに?」




―― 再び、指令所 ――




「こ、これは、一体・・・?」

リツコが見たデータは想像を絶するものだった。ユウキについての記録が
私見と共に淡々と記されていた。日記に近いものだが、中身は濃く、
リツコを驚愕させるには十分すぎた。

そして最終ページ。モニターに映し出された文面にはこう書かれていた。

【セントラルドグマのターミナルドグマへと続く通過地点にある、
巨大竪穴。パスナンバー備え付けで抑えきれない力が隠蔽された。
パスナンバーを8桁以上にする案もあったが、カードパスを備え、
4桁のパスナンバーを入力し、開口される構造になる事で、可決。
作業は思ったより順調に進み今日終わった。
甲盤は本部の建設時に特殊装甲として提案されたが、予算が足りず、
破棄された合金を仕様。強度、密閉度、共に問題は無いと思われる。
パスカードはもちろんこのIDカードだ。
この子にしかこの力を制御することは出来ないのだから。
パスナンバーも同じく、このIDの下2桁、上2桁である。
この子が中学二年生になった時点でエヴァと共に運用される予定。
ゼーレにはまだ報告書未提出。
ハッキリ言ってしまうと不安を隠せない。本当にこんなモノが使えるのか?
その疑問が頭にこびり付き、離れない。
出来ればこのままずっと封印しておきたい。
果たしてこんなおぞましいモノを本当に解き放っていいのか?
 


 コード『SERPENT〔蛇〕』           赤木 ナオコ】


「セントラルドグマの・・・巨大竪穴。まさか・・・あの!?」

そう言った瞬間モニターの電源を切りユウキのIDを持ち、走り出す。
夜番の連中に適当に挨拶をしてメインシャフトのリフトを目指す。
起動実験の予定や、打ち合わせで決定された事項などの書かれた用紙も持たずに。








つづく



蛇のもたらすものは果たして・・・

破壊?

絶望?

破滅?

それとも・・・・


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