今日は日曜日。
そう、碇君とデートの日。
待ちに待ったデートの日。

虹と共に

第一章〜思ひ出の日々〜

from Kaz.Ueda

「ファ〜〜〜」

綾波は、起き上がると同時に大きく伸びをして目覚めを確認した。

「今日は碇君とデート」

そう考えただけで彼女の頭の中はシンジ一色になってしまい他が手につかなくなる。

「……っは!またボ〜っとしてた。早くしたくしなきゃ。」

女の子の仕度は時間がかかるというが切羽詰った状態になると話は別だ。
電光石火の如く仕度は終わっていく。

(これはこの前着たし、これは何だかダサいし、これは露出度高すぎて碇君鼻血出しちゃうと思うし、これはもう小さいし、あっ!これが良いわ。
次は食事をしないと、あ〜もう栄養剤で良いかなぁ、ダメダメこの前碇君が『こんな物ばかりだったらガリガリになるよ』って言ってたからちゃんと食べないとだめだわ、お肉もちゃんと食べないと胸が大きくならないってミサトさんが言ってたからちゃんと食べないと。モグモグ、シャリシャリ、バキベキ(??))
この間約15分。速すぎる。

「着替えも終わったし、ご飯も食べたし、碇君がいつ来ても大丈夫よ。」


ピンポ〜〜ン。

「ハイ」

「あら、こんなに朝早いのにミサトが出るなんて驚きね。シンジ君が出ると思ったのに。」

「な〜に〜よ〜、私がでちゃ悪いって〜の〜?」

ミサトは拗ねたようにプイッと横を向き少しふくれながら言った。

「ミサトさん、お客さんですか?」

「あら、シンジ君おはよう。」

「あ、リツコさん、おはようございます。どうかしたんですか?」

「ちょっとミサトに用があったのよ」

「そうですか、じゃあ僕はもう一眠りさせてもらいます。」

「あれ?今日はシンちゃん、レイとデ〜〜トじゃなかったっけ?私の覚え間違いかしらぁ〜〜。」

ミサトはシンジの方を見ながらいつものようにシンジをおちょくった。

「大丈夫ですよ。待ち合わせの時間まではまだ……あ゛っ!あと三十分じゃないか!!急がなきゃ!」

シンジがどたばたと自室に戻るのを確認しリツコは小さな声でミサトに話し掛けた。

「相談があるのよ。あなたに。」

「技術部がなんの用かしらね。楽しみだわ。」

「シンジ君のことなんだけど、また使徒みたいなのが襲ってくる場合も考えられるでしょ、そのときはやっぱりシンジ君の力が必要なのよ。
だからその事をそれとなくシンジ君に伝えといてほしいの。」

「別に構わないけど、裏死海文書に新たな敵襲の大予言でもされてたのかしら?」

裏死海文書の話題を笑って喋れるのは流石と言ったところか。

「あなた!なぜ裏死海文書の存在を?まさか情報源は加持君?」

「他に誰かいるかしら?」

「まあいいわ、それより頼んだわよ、シンジ君とアスカのこと。」

「ハイハイわかったわよ。」

「もう帰るわ、用も済んだし。さよなら」

プシュー、空圧式のドアが開き、そして閉まった。

「私もそろそろクビかね〜〜。あ、シンジ君いってらっしゃい。」

「……」

プシュー

「もしかして聞かれた??」


そのころ綾波は...

ピンポーン

「ハイ」
(碇君かな??)

扉を開けると目の前にはなんとゲンドウが立っていた。しかもいつもの服で。
もしあの服は一着しかなく洗わずに着ているのならばゲンドウの健康が心配である。
綾波もだが...

「碇司令、何かあったんですか??」

「今日はシンジとデートだそうだな。」

「ハイ。ですがなぜそれを?」

「その程度の情報をネルフの諜報部が知らぬわけなかろう。」

「で、何か御用ですか?」

「いや特に無いが、強いて言えば激励に来たといった所か。頑張れよ。」

ゲンドウはそう言うと自分の車の方に去って行った。
暇なのか忙しいのかよくわからないオヤジだ。

「何だったのよ!!」
ガン!!
彼女は余りの訳わからなさに腹を立てて扉を思いっきり蹴飛ばしたのだった。


ゲンドウが来てから30分が経過。
「碇君、こんなに来るのが遅いのなら急ぐ必要は無かったわね。」

ピンポ〜〜ン

(今度こそ碇君ね。)
「ハイ」

扉を開けるとシンジが立っていた。紺のジーンズに、濃い目の灰色で【NEVER】とプリントされたダークグリーンのTシャツの上に大きめで無地のYシャツを着て前を開けている。その姿はとても爽やかでかっこよく綾波を見惚れさせるには十分だった。

「綾波?」

「え?あ、ハイ」

「どうしたの?ボーっとしてるけど、気分でも悪いの?」

「いいえ、大丈夫よ。」
(まさか碇君に見惚れてたなんて言えないわ。)

「そう?それよりさ、ほんとにその格好で行くの?」

「え?どうして?」

「だって、」

「なに??」

「髪の毛ボサボサだよ。」

「え゛?ウソ!」
(何であの変なオヤジは教えてくれないのよ)

流石に変なオヤジはかわいそうだ。

≪ガタン、カタカタ、シュ〜〜、シャッシャッ、カタカタ、ギ〜〜≫この間約30秒。速すぎる。しかも完璧に髪はセットされている。

「ごめんなさい、急いでたから髪の毛セットするの忘れていたわ。」

「別にいいけど、異常に速かったね。それより、速く行こう」

「ええ」

その後、バスに乗り、電車に乗り換えてデパートについた。

「服でも見に行こうか。」

「ええ」

二人はエレベーターに乗り、5階にある婦人服売り場に行く事になった
カタ、カタ、カタ、階数を表示する装置の音しかしていない。
二人は特に喋らず、寄り添っている。

「……」

「……」

「……」

「……」

『チーーン、五階です。』

「綾波、着いたよ。」

「わかってるわ」

「綾波はどんな服が好きなの?」

「派手じゃなければなんでもいいわ」

「そうなんだ、じゃあね〜」

シンジは服を一通り眺め、真っ白のTシャツをとりだした。

「これなんかどうかな?」

「良いわね」

「でも地味すぎないかな?」

「そんなことない。気に入ったわ。」

「そう?それはよかった」


その後、ジーンズやポロシャツなどを買い、日も暮れてきた。

「ね…ねぇ綾波」

「どうしたの?」

「もうこのショッピングでデートは最後にしよう。」

「どういうこと?」

「もう別れよう、僕たちはもう終わりなんだ」

「どうして?私のことが嫌いなの?」

「嫌いなわけじゃないんだ、むしろ愛してる。」

「ならどうして?」

「今日の朝、リツコさんが来てミサトさんと話してたのを聞いたんだ、また僕たちはエヴァに乗らないといけないんだ。
もういやなんだよ、エヴァに乗って戦うのが。だから僕はどこか遠くの田舎で暮らすんだ。」

「なら私もついていくわ。私も連れて行って。」
余談ではあるがこのとき綾波は産まれて初めて涙を流した。

「それは出来ない。僕のわがままに君を付き合わすわけにはいかない。君だって迷惑だろ?」

「迷惑なんかじゃないわ!私はあなたについて行きた・ギャ!」

ドス!バタ。
シンジは綾波のみぞおちにパンチを入れ気絶させた。そして近くの公園のベンチに綾波を座らせ姿を消した。

「綾波、ごめんよ、君を連れて行くわけにはどうしても行かないんだ。
許してくれなんて言わない、けど、理解してくれたら嬉しい。さよなら、綾波。」


少しして綾波が目を覚まし辺りを見回している、状況がよくわからないようだ。

「なぜ私はこんな所で座っているの?
確か私は今日碇君とデートしててそしたら突然碇君が……追いかけなきゃ!」

綾波は通りに出てタクシーを止め、第三新東京駅駅へと急いだ。


時はシンジに戻り、場所は葛城家...

「ミサトさんやアスカが帰ってくるまでにしたくして行かなきゃ。もっていく物も服とMDぐらいでいいか。」

仕度も終わり出発の準備も出来た。後はシンジだけ。

「さて、行くか。」


『碇君、どうして私を避けるの?私が人じゃないから?どうして私を捨てるの?やっぱりセカンドの方がいいの?どうして?どうして?どうして?

「……ゃくん。お客さん。着きましたよ。」

「へ?あっ!はい、いくらですか?」

「1,500円です。」

「どうぞ。」

「丁度ですね。ありがとうございました。」

綾波は軽く頭を下げ改札へと向って行った。

『碇君、まだ居て、お願い。』綾波は何度も心の中で呟き、ホームへと走っていった。

「…碇君…居ない。もう行っちゃたの?でも、もっと後の電車かもしれない。もう少し待ってよう。」

綾波は終電まで待ったが、シンジは現れなかった。

「もう、帰ろう。」
(きっと碇君は思いとどまったんだわ。)
綾波はそう思うことにした。それはただ自分を慰める以外に意味は無い事に気づいていながら...



(ごめんよ、綾波。僕は決して君が嫌いなんじゃないんだ。僕は君を愛してる。だけどもう僕のことは忘れて。そしてこう言うんだ。
『私が14歳のとき華奢で背も私ぐらいの男の子と付き合っていたの、自分を前にださないかわいい子でね、あれはあれで楽しかったな』って、
そしてまた次の恋の話をするんだ。35歳の君が、夫にね。それが僕の一番の望んでいることなんだ。さよなら。綾波。)

これが私の部屋のポストに入っていた碇君からの最後の手紙。

私はこれを読んでようやく理解した”碇君はもういない”と。



後書き

ど〜も、はじめましてKaz.Uedaです。
この小説は私のデビュー作+はじめて書いた小説です。
ちょっと(だいぶ?)粗い部分もありますけど。大目に見てください。
さて、次はこの小説を足がかりして更にいい作品を作るために精進しますので今後ともどうぞ応援してください。

第二章>

ぜひあなたの感想をKaz.Uedaさんまでお送りください >[kaz_ueda_vv@yahoo.co.jp]


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