大丈夫・・・僕がいる・・・
『・・・・』
僕が、守るから・・・
『・・・・』
だから、いいんだよ・・・


〜フタツのココロ〜

1.眠れる子供


避難勧告を流すスピーカー。戦闘機から発射されるミサイル。
ミサイルの先には巨大な異形の生物が戦闘機を一機、また一機と撃ち落としていく。
そんな中、たった一人の少年がいた。
目の前に迫る惨劇が目に入らないのか、少年は動かない。
そこに一台の青いルノーが突っ込んできた。
それはドリフトで、少年の目の前に急停車する。
運転席のドアが開き、一人の女性が彼に声をかける。
「遅くなってゴメン!」
「・・・葛城、ミサトさん・・・ですか」
「話はあと、乗って!」

「ごめんなさいね、怖かったでしょ?」
「いいえ」
ミサトの言葉にシンジは笑いながら答える。
「あらためて、私は葛城ミサト・・・よろしく、碇シンジ君」
「よろしく・・・ですが、僕はシンジ君じゃありませんよ」
「へっ?」
ミサトの間の抜けた呟きは突如聞こえた爆音によって掻き消された。

「いいんですか?これ」
「大丈夫、非常事態なんだし」
見るも無残なほどにボロボロになった車。
その後部座席には他の車からとりだしたバッテリーが山のように置かれていた。
「ところで」
「何ですか?」
「さっきの、シンジ君じゃないってどーゆうこと?」
「どうって、そのままの意味ですけど?」
それが何か?と言う様に首をかしげる。先ほどの笑みもそのままだ。
「そんなはず・・・」
ミサトはそう言いながらも不安になっていた。
もし自分が確保したこの少年が碇シンジじゃなかったらえらいことになる。
いや、それだけでは済まされないだろう。この仕事を志願したのはまぎれもなく自分だ。
それが遅刻した挙句に他人を確保したとしたら・・・壮絶な笑みを浮かべた親友に改造される!!
自分の想像に身震いする。
「本当に、シンジ君じゃないの?」
涙目になりながら、懇願するように聞く。
「ええ、確かに肉体はシンジ君ですが、僕はタカユキといいます」
「・・・は?」
予想外の言葉にミサトは頭がついてきてないようだ。
「シンジ君は、二重人格者で僕はそのもう一つの人格なんです」
「に、二重人格〜!?」
ミサトは思わず仰け反る。
「で、でもそんなこと報告書には書いてなかったわよ」
「何ならDNA鑑定をしますか?」
そう言い彼は前髪を引き抜いてさしだす。
ミサトはとりあえず受け取るも、まだ頭がこんがらかっている。
「整理させてもらうけど、その体はシンジ君。でもあなたは・・・」
「タカユキ、苗字はありません。タカユキだけです」
「そのタカユキ君なのね?」
「ええ」
ため息をつく・・・
最初はどうしたものかと思ったが(ぎりぎり)自分にも理解は可能なことだった。
報告書に何もないのはどうせ諜報部あたりが手を抜いたに違いない・・・
「じゃあ、シンジ君はどうしたの?」
何気ない質問のはずだった。しかし、この言葉と共にシンジ・・・もといタカユキから出会ってからずっと張り付いていた笑みが消えた。
「・・・シンジ君は、今眠っています。話は僕以外できませんよ・・・」
「・・・そう」
タカユキの様子を見てミサトは話を切り上げた。
自分にも心が傷つき、自分の殻に閉じこもった時期があったことからの共感だったのかもしれない・・・

「葛城さん」
「なーに?」
シンジの前を歩いているミサトが地図を読んだまま答える。
彼女は振りかえらなかったので気付かなかったが、タカユキは笑顔に戻っていた。
呆れたような笑いではあるが・・・
「さっきから随分歩いていますが、迷ったんですか?」
「えっ!?」
タカユキの言葉にビクッと身体を硬直させる。
「う・・・うるさいわね。貴方は黙って付いて来れば良いのっ!」
ミサトは歩き出す・・・が
「迷ったんですか?」
タカユキは追及をやめない。
「ちが・・・」
「迷ったんですか」
「だから・・・」
「迷ったんですね」
「うー・・・・」
返す言葉が出てこない・・・
「大丈夫なんですか?」
「だ、大丈夫よ〜・・・システムは利用するためにあるのよ」
「何が大丈夫なの?ミサト」
突然の後ろからの呼びかけにあわてて振り向く。
「げっ・・・リツコ」
そこには一人の女性が立っていた。
「まったく・・・遅いと思って迎えに来てみれば、いったい何をしていたの?」
「ごめ〜ん、ここの構造まだなれなくて・・・」
「あきれた、また迷ったのね」
リツコは軽くため息をつくと、その視線をタカユキに向ける。
「その子がシンジ君ね、わたしは赤木リツコ・・・よろしく」
「よろしくお願いします。でも僕の名前はタカユキです」
「・・・は?」
赤木博士技術部長はくしくも親友、葛城一尉作戦部長と同じ反応をした・・・
「ちょっとミサト?まさかあなた・・・」
リツコの目が怪しく光る。
「ま、間違ってなんかないわよ!?彼は碇シンジ君に間違いないんだから」
親友から発せられる異様なオーラを敏感に感じ取ったミサトが慌てて弁解する。
「じゃあ、いったいどうゆうことかしら?」
「僕から説明しますよ・・・」
リツコの追求をさえぎりタカユキは説明を始めた。

「なるほど、その体はシンジ君なのね」
「ええ」
タカユキからの説明を聞いたリツコは落ち着きを取り戻していた。
その横で彼女の親友が胸に手を当て、本当に安堵した様子で息を吐き出していたがあまり触れないで置こう・・・
「なら、あなたはシンジ君に代わってきたのかしら?」
「そうなりますね」
「ちょっとリツコ・・・」
リツコの言い方にミサトは止めようとする。
「いいんですよ、そのとおりなんですから」
「タカユキ君・・・」
タカユキの笑みは消えていない。だが、声は、笑ってはいなかった
「なんのつもりなんでしょうね・・・シンジ君に何をしたのか忘れたわけではないでしょうに・・・」
「「・・・・」」
タカユキの言葉にミサト達は言葉を失った。



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あとがき
はじめまして、キトウキノです。処女作で長編という無謀なことをしでかしました。
主人公のタカユキ君ですが、彼の名前は適当です(爆)
ちゃんとシンジ君も出す予定(かなり先の話ですが)ですので、これからよろしくお願いします。


作:キトウキノ

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