「なんのつもりなんでしょうね・・・シンジ君に何をしたのか忘れたわけではないでしょうに・・・」
「「・・・・」」
タカユキの言葉にミサト達は言葉を失った。


〜フタツのココロ〜

2.守る・・・護る


「ここよ、タカユキ君」
リツコの言葉と共に照明が一斉につく。
目の前には巨大な仮面が、こちらを睨み付けている。
「人の造り出した究極の汎用人型決戦兵器。人造人間エヴァンゲリオン、その初号機。建造は極秘理に行われた。我々の人類の切り札よ」
リツコは少し興奮気味に語る。
しかし、タカユキには意味のない解説だった。
「僕は別にこんなものを見るためにここに来たわけではありませんよ。そうでしょう?」
そう言いながらタカユキは上方の管制室に視線を向ける。
そこには1人の男がいた。
「久しぶりだな、シンジ」
高圧的に言うシンジの父親、ゲンドウ・・・
「それが・・・10年前に息子から逃げ出した親が言う言葉ですか?」
それに対し、タカユキは小バカにしたように言う。
「まあ、謝ってきたとしても許す気なんてありませんけどね・・・ゲンドウさん?」
「・・・出撃」
タカユキの声が聞こえないかのように言い放つゲンドウ。
「出撃?・・・まさか初号機を使う気ですか!?」
「ミサト、他に手はないの」
ミサトの言葉にリツコが答える。
「だってパイロットがいないわよ!」
「今、届いたわ」
ミサトの言葉に、リツコは平然と言葉を返す。
「今って、まさか」
「そう、タカユキ君あなたが乗るのよ」
タカユキにそう言うリツコ。
だがタカユキは聞こえていないかのようにゲンドウを見つめている。
「レイでさえエヴァとシンクロするのに7ヶ月もかかった!・・・今来たばかりのこの子には無理よ!」
「座っていればいい。それ以上望みはせん」
タカユキを無視したように食い下がるミサトにゲンドウが割って入り、突き放すように言う。
「しかし、司令」
「ミサト」
なおも言うミサトに、リツコが待ったをかける。
「いまは使徒の撃退が最優先事項。そのためには、エヴァとシンクロ可能と思われる人間を乗せるしか方法はないわ。・・・わかっているはずよ」
「・・・わかったわ」
ミサトが折れる。
ゲンドウはタカユキに視線を戻した。
しかしタカユキは、今の口論がなかったかのように、さきほどと何一つ変わらず、笑みを浮かべ、ゲンドウを見つめている。
「乗るなら早くしろ、でなければ帰れ!!」
そんな彼に向かって、ゲンドウは高圧的に言い放つ。
「・・・僕は乗る気はありません。それでは・・・」
数秒後、タカユキは一言だけ言い残し、出入り口に向かって歩き出した。
「ちょ、ちょっとタカユキ君、本当にそれでいいの?」
ミサトは焦って追いかける。それもそうだ・・・先ほどの口論は、最初からタカユキ・・・いや、シンジがエヴァに乗るように最初から仕組まれた口論だった。だから、その本人が乗らなければ意味がないのである。
「ええ、いきなりあんなことを言われて、乗ると思いますか?」
ミサトの問いにタカユキは歩くスピードを落とさず歩きながら答える。
「でも、エヴァに乗れるのは今、あなたしかいないのよ?」
「何故僕が乗れるとわかるんです?僕は『タカユキ』ですよ?」
「それは・・・」
タカユキの言葉にミサトは言い止る。
「たとえ乗れたとしても、シンジ君の体を傷つけるわけには行きませんよ」
「でも・・・」
「タカユキ君」
ミサトの言葉を制し、リツコが言う。
「使徒を倒さなければ、全人類が滅びることになるわ、『シンジ君』も例外じゃないわよ」
タカユキの足が止まる。
リツコにとってこの言葉はさきほどからのタカユキの様子から、碇シンジのことを第一としていると思えたから言った、賭けのようなものだった。
「どうかしら、タカユキ君?」
リツコの言葉にタカユキはゆっくりと振り向く。
笑みは・・・ない。
「・・・後で、時間をもらいますよ?」
「・・・いいだろう」
タカユキの言葉にゲンドウは頷く。
「赤木さん、説明をお願いします」
「分かったわ、こっちよ」
リツコはタカユキを案内しながら、深く息をついた。


「これで、大まかな説明は終わったけど、何か質問はあるかしら」
エントリープラグの前でリツコとタカユキは話している。
「武器はあるんですか?」
「ええ、ウェポンカバーの中にプログレッシブナイフという武器があるわ」
「ナイフ?」
リツコの言葉にタカユキは首をかしげる。
「ナイフがあのN2爆弾・・・でしたか、あれより強いとは思えないのですが」
「たしかに、ATフィールドがあるかぎり傷すらつけることはできないわ」
タカユキの言葉をリツコは肯定する。
「ATフィールド?」
「使徒を覆っている壁のようなものよ」
「じゃあ、僕にどうやってあれに勝てというんです?」
タカユキは鋭い視線をリツコに向ける。
「勝てる見込みがないとでも言うのなら、今すぐ乗るのを止めますよ?・・・」
「ATフィールドはエヴァも展開できるわ、そしてフィールドはフィールドで中和することができるの・・・もっとも、どうやってATフィールドを展開するのかはまだ解明されてないの」
「・・・なるほど」
説明を聞いてタカユキはため息をつく。
「ようするに、何とかしろということですか」
「・・・そういうことになるわね」
「まあ、確かにこれでなくては・・・あの敵は倒せそうにありませんね」
「じゃあ、いいわね」
「ええ」
タカユキはそういいエントリープラグの中に入っていく。
それを見届けリツコは司令室へ戻って言った。


「シンクロ率、32%・・・起動指数ぎりぎりです」
オペレーターのマヤが報告に、リツコは眉をひそめる。
(予定より低い)
その言葉が頭に浮かび、リツコは首を振る。
モニターに映る少年は、碇ユイの息子、碇シンジではない・・・第3者といってもよい少年なのだ。シンクロできただけでも、奇跡といえるだろう。
「なんとかいけるわ」
「了解、エヴァンゲリオン初号機、発進!」
ミサトの号令でリフトが地上に向かう。
「エヴァ初号機、リフトオフ!」
軽い衝撃と共に初号機はリフトから離れる。
目の前には待ち構えたように使徒がこちらを向いている。
「タカユキ君、まずは歩くことを考えて」
『歩く?・・・いやです』
「何ですって!?」
タカユキがアドバイスをあっさり拒否したことにミサトはあわてる。
『歩いても敵は倒せません・・・行きます』
タカユキがそう呟いた直後、初号機が飛んだ。
突然の動きに使徒は動きを止める。初号機は空中でプログレッシブナイフをとりだし、使徒を頭上から切りつけるとふたたび距離をとり対峙した。
「なっ・・・」
あまりのスピードにミサトは言葉を失う。
「マヤ?」
「シ、シンクロ率、32%から変わっていません。」
「ATフィールドは?」
「確認できません。さきほどの攻撃は、使徒がスピードについていけず、フィールドを張ることができなかったのだと思います」
本部の会話をよそに、初号機はナイフを構えると、再び使徒に突っ込む。
しかし、使徒の目の前でオレンジ色の壁に阻まれる。
『・・・これが、ATフィールド』
タカユキは、一瞬眉をひそめ、目を閉じる。
「初号機、ATフィールドを展開!」
「何ですって?」
初号機のナイフが少しずつ使徒に近づいていく。
「簡単に説明しただけなのに、ATフィールドを使いこなすなんて」
「これが、タカユキ君とエヴァの力・・・」
ミサトの呟きと同時にナイフが使徒のコアを貫いた。


「おつかれさま、タカユキ君」
「いえ」
ミサトのねぎらいの言葉にタカユキは笑みを浮かべ答える。
「それより、あの男と話がしたいのですが?」
「悪いけど、明日になるわ」
タカユキの問いにリツコが答える。
「そうですか・・・では、どこかで休みたいのですが」
「ここを真っ直ぐ行ったところにあなた用の仮眠室があるわ、行けば判ると思うけど」
「・・・では」
タカユキはリツコ達に背を向け歩いて行った。
「・・・これからが大変ね」
タカユキが見えなくなった所でミサトが呟く。
「ええ、たった30%前後のシンクロ率であんなに動けるなんて理論上ありえない・・・今までの、『シンクロ率は高いほどいい』という常識が覆されるなんて、研究のやり直しね」
「私はタカユキ君・・・いえ、シンジ君のことを調べてみるわ・・・いったい何時からタカユキ君がいたのか・・・」
2人は互いの言葉に頷き合い、それぞれの仕事場に戻っていった。


タカユキは指定された部屋の中にいた。
何をするでもなくただベッドの上に座っている。
「・・・?」
何かを感じ、目を開く・・・左手が震えていた。
何かを怖がり、何かを怯えるように・・・
「・・・シンジ君」
タカユキは自分の左手を右手で抱きかかえる。
「大丈夫・・・僕が守るから・・・だから、ゆっくり休んで・・・」
タカユキは赤子をあやすように、優しく左手をさする。
それに合わせるように左手の震えは少しずつ収まっていく。
「そう・・・絶対に」



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あとがき
キトウキノです。戦闘シーンがうまく書けません。
今回はなんとかなりましたが次回からどうなることか・・・


作:キトウキノ

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