あなたのココロ、わたしのカラダ

後編「指の記憶」

written by タン塩


 チュク ピチュ ミチュ
「ん…はぁ……」
 僕は、402号室のベッドで、綾波の股間に顔を埋めていた。彼女の秘裂を開いて舌を差し入れる。際限なく湧き出す熱い蜜を啜り、陰核、膣口、肛門まで丁寧に舐め上げる。シーツを掴んだ綾波の手に力が篭る。

 赤い浜辺で、割れた彼女の顔が彼方に横たわるのを見た。でも僕は知っている。
 あれは過去の彼女。彼女の捨てた身体。今の彼女は僕の全てを赦し、僕の唇と舌をその躯に受け入れている。
「…おんなじだ」
「……な…にが?」
 僕の呟きを聞き咎める彼女。
「な、なんでもないよ」
「…言って」
 慌ててごまかそうとしたけど、綾波は許してくれない。
「…約束したわ。お互いに、全てを受け入れようって」
「…あのさ、おんなじってのは……味が、だよ」
「……味?」
「その………ここの味がさ」
 そう言って、僕は綾波の中に舌を差し入れた。そこがキュッと締まり、僕の舌を締め付ける。熱くて酸っぱい液体が溢れ、僕はそれを啜り、飲み干す。
「……バカ」
 慌てて顔を上げると、彼女は両手で顔を隠している。耳が赤く染まっていた。
 綾波が初めて見せた羞恥心。彼女は変わった。ヒトになったんだ。
「だめ…だめ…そんなに、したら……」
「我慢しないで、綾波」
 逃げられないように、彼女の腰を両手で抱え込んで舌を使う。剥いた陰核を優しく舐め上げると、彼女の身体がビクリと震え、背中が反り返った。
「あ…あ…あああっ!」
 綾波の澄んだ声が、一際甲高く響いた。やがて彼女の身体がガックリと弛緩し、荒い息だけが残った。僕は彼女の唇を軽く啄む。そして熱く濡れた綾波のそこに自分のものをあてがった。
「…いくよ」
 顔を覆ったまま、彼女は頷いた。
「ダメだよ綾波。顔を見せて」
 彼女は怖ず怖ずと手を外す。まだ赤みの残る頬。
「…やっぱり可愛いや、綾波は」
「何を言うのよ……」
 頬を染めた彼女の唇をまた啄んで、一気に腰を入れた。
「くっ…」
 小さな声が漏れ、綾波の美しい眉が歪む。根元まで納めて、僕はまた彼女の唇をひとつ啄む。
「綾波の初めてをもらったのは、これで三度目かな……」
「………私は、四度目だと思ってる」
「四度目って……赤い海のことも?」
「…私はそう思っているの」
 そう言って綾波は僕の唇を啄み返した。その頬を手でさすりながら、僕は思い出していた。そんなに時間は経っていないはずなのに、遥か昔に思える記憶を。


 一度目は、彼女が二人目の時だった。あの頃僕は、学校やNERVの帰りに、彼女を必ず送って帰るようになっていた。彼女もいつも「上がって行けば?」と言ってくれて、彼女に紅茶を入れてもらったり、僕が夕飯を作ってあげたりしていた。そんなある日シンクロテストが長引き、彼女を部屋に送った時は、ずいぶん遅い時間になっていた。
「もう遅いから、ここで失礼するよ」
 彼女の部屋のドアの前でそう言うと、綾波は少し戸惑った表情で言った。
「上がって行けば?」
「でも、もう遅いし」
「…上がって行って」
 彼女の赤い瞳が、何かを訴えているように思えた。僕は、その切実さに負けた。
「…じゃ、少しだけ」

「…おいしい」
「そう、よかった」
 彼女は紅茶をいれるのがずいぶん上手くなっていた。
「もう一杯、飲む?」
「もういいよ。ごちそうさま」
 実際、それは三杯目の紅茶だった。だけど、僕がお代わりを断ると、彼女の瞳にまた戸惑いの色が走った。まるで、どうしたら僕を引き留められるか、紅茶以外には思い付かない、とでもいうように。
「どうしたの、綾波?」
 何か言いたげな彼女。だけど、言葉にならない。ただ僕の手を握るだけ。
「……シャワー、借りていいかな? 汗掻いたから」
 思い切って言った僕の言葉に、彼女は顔を上げた。瞳が輝いた。
「…ええ」
 その夜、僕は彼女を初めて抱いた。好きな子を初めて抱く興奮を必死に抑えて、出来るだけ優しくするつもりだった。でも、初めて触れる女性の滑らかな肌が僕を狂わせた。我を忘れて腰を使い、彼女の中にたっぷり放出して、僕はやっと我に帰った。
「あ、あの、ゴメン! 痛かった…?」
「なぜ謝るの? 私、うれしい…」
 そう言って、痛みに目尻を潤ませながらも微笑む綾波。こんな可愛い子が自分のものになったんだ。僕はその幸福に酔った。
 そして、その数日後、綾波は自爆した。


「覚えてないの?」
「…いいえ、知らないの。私、たぶん三人目だから」
 冷たい表情。冷たい言葉。数日前に僕が触れた、熱い肌の少女はいなかった。
「…送って行くよ」
 僕らは交わす言葉もなく歩いた。部屋のドアの前で彼女は立ち止まり、振り返って僕を見つめた。長い沈黙。僕は「上がって行けば?」と言ってくれるのを待った。だけど、いつもそう言ってくれた少女は、もういなかった。
「…さよなら」
 そう言ってドアを開ける三人目の綾波。僕は駆け出していた。僕は、逃げた。

 数日後、僕はリツコさんに水槽の綾波たちを見せられた。作られたモノ。代わりのあるモノ。それが崩れ去るのを、僕はどこか他人事のように眺めていた。これは綾波じゃない。僕の下で愛撫に喘ぎ、破瓜の苦痛に眉を歪め、涙目で微笑んでくれた少女は、ここにはいない。これはただの、空っぽの容れ物だ。
 そしてドグマからの帰り、僕の足は綾波の部屋に向いていた。
 なぜそうしたのか、今でもわからない。一度は逃げ出したその場所に、なぜ僕は向かったのか。たぶんそれは、二人目の彼女を、一夜だけでも抱いたからだと思う。僕の頭は、複雑過ぎる現実を消化し切れずに悲鳴を上げていた。でも僕の指は、一度触れた彼女の柔らかな肌の記憶を忘れようとしなかった。もう一度あの肌に触れたいと、僕の心が叫んでいた。

 ドアは開いていた。僕はノックもせず、彼女の部屋に上がり込んだ。綾波はこちらに背を向けて、ベッドの脇のチェストに向かって立っていた。
「……綾波」
 彼女はハッとして振り返った。その顔に涙の跡があった。
「……いかり、くん」
「…僕の名前、覚えててくれたんだ」
 彼女は目を伏せた。しばしの沈黙の後、彼女は唐突に切り出す。
「……なぜ?」
「なぜって?」
「…なぜ私は、あなたのことが頭から離れないの?」
 彼女は俯いたまま、独り言のように呟く。
「前の私の記憶が、頭から離れないの。それも、あなたの記憶ばかりが。笑うあなた。泣くあなた」
「…僕のこと、覚えてたんだ」
「中でも、前の私の最後の記憶が繰り返し現れるの。あなたに抱かれた記憶が」
 僕はハッとして顔を上げた。
「…私の唇に触れる、あなたの唇の記憶。私の肌に触れる、あなたの指の記憶。私の中に入って来る、あなたの体の記憶。その記憶が蘇るたびに、私の感情が乱れるの。………なぜ?」
 彼女の言葉を聞いて、僕の感情も乱れていた。だけど僕の指は、やっぱり彼女の肌の記憶を失っていなかった。
「…もう一度経験してみれば、わかるんじゃないかな」
 彼女が顔を上げて、僕を見つめた。
「前の君の記憶じゃなくて、三人目の君自身が経験してみれば、その記憶の意味がわかるんじゃないかな」
 彼女は僕をじっと見つめている。瞬きもせずに。僕は彼女に歩み寄り、その華奢な身体を抱きしめた。
「…どう? わかった?」
 彼女は僕の胸で首を振る。
「…わからない」
 僕は彼女の頬に手を添え、軽く唇を重ねた。
「…どう?」
「…わからない。でも…」
「でも?」
「…あなたの唇、暖かい」
 僕の中で何かがはじけた。僕は彼女を荒々しくベッドに組み敷いた。三人目の綾波は、抵抗するでもなく、僕をじっと見つめていた。
「あっ…ご、ごめん」
「なぜ謝るの?」
「ら、乱暴にしちゃって…」
「それがあなたの気持ちなら、そうすればいい」
 僕は確信した。この子は綾波だ。僕の愛した女の子だ。僕は激情に流されるまま、彼女を激しく奪った。彼女の唇を乱暴に吸い、彼女の胸を荒々しくまさぐり、彼女の股間に目標の場所を探り当てて、一気に入った。そして激情の塊を彼女の中に放出して、やっと我に帰った。僕はまたやってしまった。
「あ、あの、綾波、ごめん……」
「……前の時も、終わってから謝ったわ」
 そう言って、目尻を潤ませて笑う彼女。
「いいの。あなたの本当の気持ちを見せてもらったから。あなたが、剥き出しの感情を三人目の私にもぶつけてくれたから。だから、いいの」
 そう言って僕の首に手を回し、唇を重ねてくる彼女は間違いなく綾波レイだった。


 エヴァに乗っていたはずの僕は、気が付くと赤い海を漂っていた。そして僕の上に、綾波が跨がっていた。僕と彼女は、ひとつになっていた。
「……綾波?」
「ここが、あなたの望んだ世界」
「…ここが?」
「何を望むの?」
 もう僕らに肉体はないはずなのに、彼女の濡れた膣肉が僕を柔らかく、温かく包み込む感覚が走る。僕は彼女の腰を両手で掴んで、前後に動かしていた。
「ん……あ…」
 彼女の唇から悦びの声が漏れる。やがて彼女は自分から腰を使い始めた。強く、弱く、優しく、激しく、浅く、浅く、浅く、深く。
 味わったことのない快感。魂が溶けて、彼女の胎内に取り込まれる感覚。
「いか……りく……ん」
 僕の上で彼女は喜びに満ち溢れ、軽やかに弾み、踊る。美しいと思った。愛しいと思った。いつまでもこうしていたいと思った。

 いつまでそうしていたんだろう。赤い海での交わりには始まりも終わりもない。
 終わらない絶頂がいつまでも続き、僕は彼女の中に止まらない射精を続けていた。僕の吐き出し続ける精液を、彼女の子宮は飲み込み続けた。万物の母ってこういうことだったのかなと、ふと思った。
 百年か、千年か。時間のない赤い海で、僕は彼女と交わり続けた。僕の上で、艶やかに舞う彼女を見つめ続けた。


 やがて僕は彼女を引き寄せ、唇を重ねて、長い、長い口づけを交わした。赤い海では呼吸も不要だ。何百年かの口づけを終えて唇を離すと、彼女は言った。
「もういいの?」
「ねぇ綾波。ここでは新しいものは生まれない。僕は君と一緒に、新しいものを造りたい。永遠の交わりより、リリンとして生き、新しい命を生み出して、リリンとして死んで行きたいんだ。君と一緒に」
「それがあなたの願いなの?」
「……うん」
「なら、私の願いも聞いてくれる?」
「……うん」
「……私たちのリリンの時が尽きたら、またこうしてひとつになってくれる?」
「……うん。僕の命も心も魂も、全部綾波のものだから」


 気が付くと、僕は赤い海のほとりに座っていた。ひとつの蒼い光が、蛍のように僕の周りを飛んだ。そして光は赤い海に落ちた。
 蒼い光の落ちた辺りの水面が波立った。そして、その真ん中に白いものが浮かび上がった。僕は一目見て、それが何かわかった。僕は泳げない自分を忘れて海に飛び込み、白いものを抱き寄せていた。
「……綾波!」
 僕の腕の中で、彼女はそっと目を開いた。赤い瞳が僕を見つめ、双子山の時みたいに微笑んだ。
「…いかり、くん」
「綾波! 還って来てくれたんだね」
「…約束だもの」

 僕は裸のままの綾波を背負って歩いた。背中で彼女が道を教えてくれた。何時間歩いただろう。息が切れ、目が霞み、膝が震える。ついに耐え兼ねて、道端で彼女を降ろして、地べたに座り込んで休んだ。
「…大丈夫? 碇くん」
 綾波が心配そうな表情で聞いた。
「私、自分で歩けるわ。無理しないで」
「だ、大丈夫だよ」
「…嘘」
 彼女が僕をじっと見つめた。私に嘘は通用しない、とでも言いたげに。
「……背負いたいんだよ、綾波を」
「…私を?」
「こんなことで音を上げていたら、この先綾波を守れない気がするんだ」
「そう。私を守ってくれるの?」
「…守りたいんだ」
「……ありがとう」
 そう言って、綾波はまた綺麗な笑顔を見せた。

 また何時間か歩いた僕らの前に、荒れ果てたマンション群が現れた。おんぼろなくせに、零号機の自爆にもサードインパクトにも耐えて生き残っていた。僕らはその一棟の402号室に向かった。

 彼女の部屋は相変わらずだった。よく考えれば、この部屋で三人目を抱いたのはほんの一週間前ぐらいなんだ。だけど、今の彼女はまた新しい身体を得た。僕の今するべきことは、その身体を僕のものにすることだった。


「…動いていいわ」
 根元まで挿入して一息つくと、綾波が言った。僕はゆっくり腰を引く。彼女の眉が苦痛に歪む。
「……もっと強くして、いい」
「え。でも、痛いでしょ」
「痛いのは、同じだもの。碇くんに、私で気持ち良くなってほしい」
「…ありがとう」
「それに、痛いほうがいいの」
「な、なんでさ」
「……これが私の、最後の初めてだもの。この痛みを忘れたくない」
「…そうか。じゃ、いくよ」
 僕はちょっと強めに動いてみた。処女の締め付けが蕩けそうに気持ちいい。だけど綾波の顔に苦痛の色が浮かぶ。思わず腰が止まる。
「…なぜやめるの?」
「な、なぜって、痛そうだし」
「……ごめんなさい。顔に出してしまって」
「い、いや、そんなんじゃなくてさ」
「……お願い。続けて」
 綾波の真っ直ぐな視線が僕を貫く。
「…わかった。僕も心に刻み付けておくよ、綾波の初めてを」
「うれしい」
 綾波が柔らかく微笑んだ。僕はなるべく優しく腰を動かした。
 また彼女の眉が歪む。唇を噛んで声を堪える。愛しい。そんな彼女が愛しい。
「うっ」
「あ……」
 急激に高まった僕は、やがて綾波の中に全てを吐き出した。

 荒い息が静まると、綾波の口を吸った。彼女の唾液が甘い。
「抜いていい、綾波?」
「……もう少し」
「このままじゃ、また大きくなっちゃうよ」
「なら、またすればいいわ」
そう言って、彼女はまた微笑んだ。

<【前編】
タン塩氏はメールアドレス非公開のため、感想は
この作品はbbspinkエロパロ板が初出のため、該当スレに感想を書くという手もあるかもしれませんが、スレ住人にスレチと罵られても作者もtambも責任は取れませんのでご了承ください。ちなみに該当スレは作品公開時点では現行スレです。

【隔離部屋の目次に戻る】   【HOME】