レイの心模様

第22話     新たなる道

〜後編〜


二人っきりの時間がどれだけ流れただろう・・・・・

〜♪〜〜♪〜♪

葛城家に電話の着メロが流れ

シンジはゆっくりとアスカを離すと電話に出る

「・・・うん・・・うん・・・うん・・・・・判ったよ・・・」

シンジの声に緊張感が混ざる

電話の相手はゲンドウ

話があるということでゲンドウから直々に呼び出しを受けたのだ

「アスカ、父さんから話があるって・・・二人で来いって言ってたけど・・・如何する?」

シンジの言葉に

「司令から呼び出されたんでしょ?行かなきゃいけないじゃない」

と返すアスカ

「いや、アスカには選択してほしいらしいよ。凄く重要だけど、知らないで居られるならその方が良い話だから・・・・・」

シンジはアスカの答えに真剣な顔でそう言う

「・・・・・どういうこと?」

シンジの顔をじっと見つめるアスカ

「・・・・・それは言えない・・・でも・・・聞いたら後戻り出来なくなるのは判るよ」

そんなシンジの言葉に暫く悩むアスカ

だが、考えが纏まったのか顔を上げると

「行くわ」

と答えた

「良いの?辛い思いをするよ?」

そんなシンジの言葉にも

「行くって決めたんだから行くの!」

と返すアスカ

シンジはそんなアスカをジッとみつめると軽く溜息を吐き

「それじゃ、行こうか」

と手を差し出した





レイは総司令室に向かっていた

ユイの言葉を・・・心をゲンドウに伝える為に

ゲンドウの、そしてゼーレの人類補完計画を中止させる為に・・・・・

司令室の前に着くと、インターフォンを押す

「誰だ?」

重々しい声で誰何してくるゲンドウ

「綾波レイです」

そう答えると、シュッという軽い圧搾音と共にドアが開いた

レイがゲンドウの前に立つと

「何の用だ?」

いつものポーズで来訪の理由を聞いてくる

ゲンドウの横には冬月が

「碇司令の妻であり、碇君の母である碇ユイさんからの伝言です」

レイはじっとゲンドウをみつめながらそう切り出す

殆ど誰も気付かない程度にピクリと眉を動かすゲンドウ

冬月は驚いた顔でレイを見ている

「私はシンジに明るい未来を残したかった・・・・・なのに貴方はあろうことかシンジを手放し、私と逢う為だけにゼーレの計画に加担した・・・・・」

その言葉にコメカミに汗を垂らすゲンドウと冬月

「使徒の来襲は避けられない事・・・・・でも、全てが終われば私は還るつもりで居たのに、貴方が余りにもシンジに無茶をさせるから私はシンジを護る為にエヴァと同化しないといけなくなりました」

レイの言葉に

「・・・だ、だから如何したというのだ・・・・・?」

蒼白になりつつもそう訊ねるゲンドウ

「エヴァと同化する為には私の魂を削る必要がありました。それと共に私という人間を構成する物を削る必要も・・・・・」

その言葉に

ガタッ!!

椅子を蹴倒し立ち上がるゲンドウ

「その為私は還れなくなり、貴方の計画は既に意味の無いものとなってしまいました・・・・・出来ることならゼーレの計画を潰し、シンジ達に明るい未来を与えてあげて欲しい・・・・・それが私の最後のお願いであり、希望です」

その言葉を聞き、膝から崩れ落ちる

「ただ、貴方の気持ちは凄く嬉しかった。私を必要とし、心から愛してくれているその事が。だから、最後にこれだけは伝えます。貴方を愛しています。そして・・・・・御免なさい・・・・・冬月先生・・・主人を・・・シンジを・・・宜しくお願いします」

そう言うと俯くレイ

レイの最後の言葉に俯く冬月

ゲンドウはただただ涙を流すだけ

だが、それでもゲンドウは何とか発することが出来た

「・・・済まなかった」

その一言だけを・・・・・

そんなゲンドウをレイは優しい笑顔でみつめた





シンジとアスカの二人がネルフに着くと、ゲートの前にゲンドウが立っていた

深い悲しみに囚われながらも、何処か憑き物が落ちたような印象をもって・・・・・

「よく来たな、シンジ。それにアスカ君も」

今までの冷徹さが影を潜め、優しさを漂わす雰囲気に

「う・・・うん」

と返すことしか出来ないシンジ

アスカも唖然としてしまっている

「お前達に見せたいものがある」

そう言って先頭に立って歩き出すゲンドウとゲンドウを追って歩き出す二人

戸惑いを隠せない二人を気遣いつつも、全ては話が終わってからとゲンドウは思う

「少し寄り道するぞ」

そう言うと、リツコの研究室まで移動し

「大事な話がある。少し待っていてくれ」

と言って研究室の中に入っていく

シンジとアスカは数瞬互いに顔を見合わせると、視線をドアに戻しゲンドウが出てくるのを待つ

やがて出てくるゲンドウとリツコ

そのゲンドウの頬には紅い痣が・・・・・

リツコは瞼を腫らし、目が赤くなっているものの何処かすっきりとしているように見える

「では行くぞ」

ゲンドウの言葉に再び歩き出す

エレベーターに乗り込む四人

沈黙が辺りを包み込む

着いたのは大深度施設

吹き抜けの廊下を渡っていると眼下に見えるは沢山のエヴァの残骸

その不気味さにアスカはシンジの腕に抱きつき寄り添う

やがて、一つの部屋に辿り着く

そこにあるのは簡易ベッドだけ

レイの原風景であり、13歳まで育ってきた場所

その寒さに更にシンジに擦り寄るアスカ

が、まだ移動するゲンドウ

漸く目的の場所に辿り着いたのか立ち止まり、スリットにカードを通す

開いたドアの向こうには真っ暗な、それでも判るほど広大な空間が・・・・・

シンジの心臓が

ドクンッ!

大きく脈打った・・・・・





「ここがレイの生まれた場所だ」

ゲンドウはそう言うとスイッチを押した

灯る照明

広大な空間を取り囲むように設置された水槽が姿を現し・・・・・

「イヤ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」

水槽の中には沢山のレイ

その異様な風景の中、アスカの悲鳴が響く

悲鳴に反応したかのようにアスカの方に顔を向けるレイ、レイ、レイ・・・・・

アスカは耳を塞ぎ、目を固く瞑って頭を振りながら蹲る

全ての情報を自分の中から閉め出すように

アスカの横に屈み込み、抱き締めるシンジ

アスカはシンジに抱きつき、嗚咽を漏らす

そんなアスカを見つつ

「レイは人間では無い・・・・・」

と話し出すゲンドウ

「幼い頃シンジが拾った使徒のコアと、サルベージが失敗した時に現れた私の妻、碇ユイの肉片と思われるものを融合させ培養した存在だ」

そう言って苦渋の表情を見せるゲンドウ

ゲンドウの言葉に

「そ・・・そんな・・・それじゃ・・・レ・・・レイは・・・」

震えつつそう呟くアスカ

「レイは人間ではないわ・・・・・かと言って、使徒とも言えない中途半端な存在」

アスカの呟きに答えたのはリツコ

リツコはゲンドウを気遣うように傍に立っている

「私が、ゼーレという我々の上位機関が進めようとした人類補完計画の馬尻に乗って、ユイと再び逢う為だけの計画をたて、それを実現させる為の生贄として誕生させたのだ・・・・・」

ゲンドウとリツコの言葉に青褪めるアスカ

慌ててシンジの様子を伺うと、シンジは青褪めながらもジッとゲンドウ達の話を聞いているようだった

いや、レイの秘密をしっかりと受け止めようという意思の篭った眼差しをしている

そんなシンジを見て、アスカも心を決める

レイはレイなのだと

ならば、アタシもシンジと同じようにレイを受け入れようと・・・・・

「だが、それでもレイはヒトなのだ・・・・・だから、レイを受け入れてやって欲しい」

ゲンドウの言葉に頷くシンジとアスカ

そんな二人を見てゲンドウは微かに、しかし柔らかく微笑むと

「済まない。そしてシンジ、今まで済まなかった」

と言って頭を下げた

レイへの思いやりを見せたゲンドウの姿に、シンジは父という人物の見方を変える事を決めた

許されざる道を、己の望みだけで進もうとする男としてではなく・・・・・

たった一人の、自分の父親であると言う見方に





ゲンドウの話を聞き終わってマンションに帰ってきたシンジとアスカ

部屋のある階に着くと、家の前に蒼銀の髪を持つ少女の姿が

シンジは駆け寄る、その少女の元に

自分の過去など及びもしない悲しい過去を持つ愛しい少女の元に

シンジはレイを後ろから抱き締める

いきなりな事に抵抗しようとしたレイであったが、自分を包み込む暖かさと匂いに安心したのか、振り返りもせず体を預ける

そんなレイに

「僕は君を護り続ける。例え君が僕達と違う存在であったとしても、そんなのは僕には関係ない。僕達は同じヒトなんだから。一緒に生きていけると思うし、生きていきたいと思う。だから、もう二度と僕の前から消える事になるような、そんな事はしないで」

と囁く

そんなシンジの言葉にレイは驚き、やがて・・・・・

あの時と同じ笑顔をもう一度、シンジに贈った



【前話】

後書き


リニューアルプロジェクト、終了です!

今回は殆ど付け加えだけで対して変えては居ないのですが・・・・・

如何でしたでしょうか?

それでは

タッチでした




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