レイの心模様

第1話     思考


ラミエルとの決戦後の病院のベッドの中、レイは今日のことを振り返っていた

自分への命令はシンジを守る事

その為、ラミエルへの攻撃が外れた後の反撃に対して初号機の前に躊躇せず出た

ラミエルの加粒子砲の威力は凄まじく、持っていた盾は融解してしまい仕方なく零号機本体で防御した

自分に襲いかかる熱さに意識が朦朧とし、気絶してしまった

誰かに呼びかけられ、意識が戻る

そのシチュエーションに最初はゲンドウかと思った

だが違った、その息子で、同僚のサードチルドレン碇シンジが目の前にいた

その顔は涙を流していた

何が悲しいのだろうかと思い訊ねる

返って来たのは思いもしない言葉

そんな彼に返す表情を知らない自分

謝罪の言葉に返って来たのは、あの時のゲンドウと同じ様な笑顔と返す表情への答え

レイはその笑顔と答えに導かれ、笑顔を浮かべる

少しの心の変化を伴わせながら

それまでレイは、ゲンドウとの間にだけ絆を感じていた

無に帰る事を望みながらもゲンドウの計画の為にだけ存在している自分

そんな自分の存在意義だけが、レイにゲンドウとの絆を感じさせるものだった

死んでも替わりの居る自分の存在を希薄に感じていたレイ

そんな自分の為に涙を流してくれる少年

そんな自分が生きていた事を喜んでくれた少年

だからなのだろうか、今までゲンドウにも感じた事の無かった、何とも形容しがたい思いを少年から感じた

レイは、少年と新たな絆が結ばれるかもしれないと思った

それは、新たな希望

ヒトとの繋がりを欲しながらも、無に帰る事を願う少女が初めて持った生きる為の希望

レイはその希望に近づこうと思った





翌日からのレイには表面上の変化は無かった

だがそれは、余りにも普段と変わりないように見えるだけの事で、実際は小さな変化の兆しを見せていた

レイは授業中、よく窓の外を見ている

だが、最近は窓を見てはいるが、外は見ていないのだ

何故、窓を見るのか

それは、窓の一部にシンジが写っているからだ

何時も通りに窓の外を見ていた時にふと、その事に気づいたのだ

すると、シンジから目が離せなくなってしまった

偶にシンジが自分の方を見る事があるのに気づくレイ

その発見に鼓動が早くなる

そんな自分の変化に戸惑うレイ

偶に、シンジと窓を介して目が合ってしまったときなど、廻りに気づかれない程度に混乱する

更に早まる鼓動、頬が少し熱くなるのも感じる

今まで感じた事も無い何かがまた湧き上がってくる

だが、レイはそれがどんな感情なのか未だ知らない

だからこそ、その答えを求め様とシンジの事を気にしてしまう

あの時のシンジの笑顔が、一言が、レイの凍った湖面のような心に少しの皹をいれた

それはほんの些細な皹

だが、蟻の巣が出来ただけで堤防が決壊する様に

この些細な皹が凍った湖面を溶かすための一石を投じた事は確かだった


後書き

一応、本編分岐物です

この小説は、レイの心理変化を描いていくつもりなので、少し変わった感じに仕上がると思います

三人称なのですが、レイの視点からのストーリーみたいな感じです

第2話は、JAの暴走を止めるために早退したシンジに対して何処か寂しさを感じるレイを書いてみたいと思います

それでは第2話で

タッチでした



ぜひあなたの感想をタッチさんまでお送りください >[touch_an007@ksj.biglobe.ne.jp]


【進む】

【「レイの心模様」目次】 【投稿作品の目次】 【HOME】