「・・・。」
シンジは目の前にある桜の木を見上げその美しさに意識を奪われた。
初めて見るのだ。
桜という木を。
日本の気象がセカンドインパクト後、著しく変ってから日本に残っていた桜の木は花を咲かせることはなくなっていた。
しかし、サードインパクトが過ぎた今、日本に季節が戻り、桜の木も今まで忘れていたかのように美しい花を咲かせている。
「・・・綺麗だな。」
シンジは頭上高くそびえ立つ桜を見上げそう呟いた。
「お花見(LHS)」
writer:atu
「お花見ですか?」
シンジはその日の朝、朝食の準備をしている時、ミサトがお花見に行くと言い出して驚いた。
「そうお花見。まぁ簡単に言えば桜の下でお酒を飲むんだけどね。」
ミサトはそう言ってシンジに説明する。
「もう・・・お酒ばかりですよね。」
シンジはため息をつきながらミサトを見る。
「いいじゃない。」
ミサトはそう言って朝からビールを飲む。
「たまにはお酒控えてください。」
シンジはそう言うと二本目を出そうとしているミサトを注意する。
「う、シンジ君のいけず・・・。」
ミサトは恨めしそうにシンジを見つめた。
「それで誰が来るんですか?」
シンジはふとそんなことを聞く。
「えっと・・・私とシンジ君。・・・あとリツコね。それと加持とマヤちゃんと日向君と青葉君と・・・アスカとレイね。
あ、そうそうシンジ君の友達も呼んでいいわよ。」
ミサトは指で折りながら人数を数える。
「あ、そうですか。じゃあトウジとケンスケも呼ぼうっと。あ、それと・・・洞木さんも呼ばないと。」
シンジはそんなことを言いながら朝ご飯の準備を再開する。
「あ、じゃあお花見の時のつまみとかどうするんですか?」
シンジは料理を作りながら気づいた。
「あ、それ。リツコが手配してくれるわ。」
ミサトはビールを飲みながら答える。
「え?リツコさんがですか?」
シンジは予想外の人であったため驚く。
「や〜ね。リツコが作るんじゃないわよ。もちろん料理はお店に注文するのよ。」
ミサトはシンジにそう答える。
「あ、そうなんですか。」
「そうよ。あのリツコが料理なんてするわけないでしょ。あの三十路女に。」
「はははは・・・・。」
シンジはそう言って笑っていたのだが・・・。
「ねぇミサトさん。もしかして憶えていないんですか?」
シンジは顔を引きつらせながらミサトに聞く。
「え?何を?」
ミサトは頭に?をつけながらシンジに聞く。
「昨日・・・誰と一緒にお酒飲んでて・・・誰にここに運ばれて・・・そして二人ともここで潰れちゃって・・・憶えていませんか?」
シンジはそろりそろりと逃げ出す準備をしている。
「や〜ね。憶えているわよ。大体昨日お花見しようと決めたのが私とリツコなんだし・・・あれ・・・。」
ミサトはそこまで言って気づく。
(そういえば・・・リツコも私もどうやってここに・・・いや・・・リツコもここで潰れたの?)
ミサトはそう言って、ギリギリと音がするかのように首を後ろに向ける。
「おはよう。ミサト。」
そこには頭の髪が爆発したリツコが居た。
「は〜い。リツコ・・・。」
「は〜い、じゃないわよ!!」
「こ、怖い・・・。」
シンジはリツコの鬼の形相に恐れが入った。
「で・・・どうして私が料理を注文しないといけないわけ?」
リツコはシンジに水をもらいながら聞く。
そんな隣ではほっぺたが真っ赤に腫れ上がっているミサトがいた。
「だって、昨日賭けたじゃない。明日の料理を注文するのを。」
ミサトはそう言いながら氷でほっぺたを冷やす。
「そうだったかしら・・・。」
リツコは額に指をついて考え込む。
リツコも昨夜はかなり飲んでいたため、記憶が曖昧なのだ。
「・・・そうよ。」
ミサトはまだ先ほどのリツコのほっぺたをつねられたことを根に持っているのか、不機嫌そうだ。
「まぁいいわ。それくらいだったら。」
リツコは考え込むのをやめ、水を飲む。
もう考えるだけで頭が痛いのだ。
「じゃあ僕、後でトウジ達に電話しておきます。」
シンジはそう言う。
「オッケー。あ、お金は心配しなくていいわよ。今日はリツコのおごりだから。」
ミサトはそう言うと、
「本当に私が賭けに負けたんでしょうね?」
と、リツコはミサトを睨みながら言う。
「憶えていないんでしょ?」
ミサトは勝ち誇ったかのように言う。
「ぐ・・・。」
そんなミサトの言葉にリツコはつまった。
(ふふふ、なんとか誤魔化し成功ね。あとは私がお酒だけ頼めばいいわ♪)
ミサトはそう内心喜んだ。
「花見?」
アスカはミサトから言われてそう呟く。
「そ、花見よ。もちろん行くわよね?」
ミサトはそう言って出席表に丸をつける。
「ちょっと!何勝手に決めてるのよ!」
アスカはそう言って文句を言うが、
「・・・夜ご飯・・・シンジ君いないからないわよ。」
と、ミサトは冷たくあしらう。
「ぐ・・・。」
アスカはそのまま沈黙する。
「や〜ね。ご馳走がでるのよ。行かなきゃ損よ、アスカ。」
「そ、そうよね。夜ご飯が出ないなら仕方ないわね。」
アスカはそう言って出席を認める。
(ぷ、扱いやすい性格。)
ミサトは内心にやついた。
「レイ、あなたも行くのよ。」
所変わってここはネルフ。
ミサトは読書している綾波にそう告げる。
「・・・命令ですか?葛城三佐。」
「ええ、命令よ。」
「わかりました。」
綾波は簡単に承諾する。
(アスカより扱いやすい性格♪)
ミサトはそう思いながら出席表に丸をつける。
「日向君、青葉君、それにマヤちゃん。お花見行くけどもちろん行くわよね。」
ミサトは三人にそう告げると、
「あ、行きます〜♪」
と、マヤが。
「あ、俺も行きます。」
と、青葉が。
「僕も行きます!」
最後に日向が元気よく答える。
「もちろん日向君は初めから出席に丸つけてるわよ。」
ミサトはそう言うと、日向に微笑む。
(え、これって・・・僕だけ特別・・・)
日向はミサトの発言に心が舞い上がる気がした。
「じゃあ場所取りお願いね。日向君。」
そう言ってミサトは部屋を出て行く。
そんなミサトの後ろで日向が真っ白に燃えつきていた・・・。
「マコト・・・人生谷あり山ありさ。」
「・・・何も言うなシゲル。」
ちょっとした友情劇が繰り広げられていた。
「加持?私だけど。そうそうリツコからもう聞いたんだ。花見行くわよ。え、何?私と花見は行かないだって?
何言ってるのよ!来なかったら八年前のあのセリフの録音テープをネルフの放送室で全館放送するわよ!
・・・そう、素直な加持君好きよ。じゃあ夜7時ね。」
ミサトはそう言うと電話を切る。
「これで、私達は全員出席と。あとはシンジ君の友達だけね。」
ミサトはそう呟くとまた電話をかける。
「は〜い。私だけど。え、誰だって?私よ!葛城よ!ナイスバディーのミサトちゃんよ!」
『ツゥーツゥーツゥー。』
「・・・。」
額に怒りマークがでるミサト。
「ツゥルルーツゥルルー。」
『はい、庄屋酒店ですが。』
「なに電話切ってるのよ!お客様は神様でしょ!!」
『葛城さん。仰ることはもっともですが・・・お酒の注文ですよね。』
酒屋の主人は下手にでる。
「そうよ!今日の夜7時に第三公園に酒樽持ってきなさい!」
ミサトは電話口でわめく。
「・・・葛城さん。今、あなたのツケいくらかご存知ですか?」
酒屋の主人の声は震えている。
少し怒っているようだ。
「さぁ?忘れたわ!」
葛城は堂々と話す。
『ツゥーツゥーツゥー。』
電話が切られた。
「・・・。」
ミサトは電話を持ったまま固まる。
顔を高潮させ、手が震えている。
「ピ、ポ、パ、ピ、ピ・・・。」
ミサトは電話のボタンを軽やかに押す。
「あ、保安部?私だけど。あのね、庄屋酒屋あるでしょ?一回そこにガサ入れしてくれない?そうそう、捜査レベルはスリーAでお願い。
そう、背後にゼーレがいるわ。じゃお願いね。」
ミサトはそう言って通話を切る。
「・・・。」
「さ〜て、次の酒屋に電話しよ♪」
ミサトはそう言って電話をかけた。
「うん、そうなんだ。花見だけどトウジ来る?うん?あ、ミサトさんも来るよ。うん、ケンスケはさっき電話かけてオッケーもらったし、うんうん。
わかった。じゃあ7時に第三公園で。うんじゃあまた。」
シンジはそう言って電話を切る。
「よし、これで後、洞木さんだけか。」
シンジはそう言うと、そわそわしだす。
「アスカ〜おやつあるけど食べる?」
シンジはそう言ってアスカの部屋まで聞こえるように叫ぶ。
しかし、物音がしない。
「アスカ〜いないの?」
シンジはそう言いながらアスカの部屋の扉を少し開ける。
「・・・いないね。」
シンジはそう確認すると、
「・・・。」
無言のままバスルームに行く。
「・・・よし、いないね。」
シンジはアスカがそこにもいないことを確認する。
そわそわしだすシンジ。
「え、えっと・・・誰もいないね?」
シンジはきょろきょろしながら部屋中見つめる。
誰もいない。
ミサトは先ほどネルフに出かけたし、アスカはミサトに花見に行くと言われて、
「花見ならやっぱり浴衣よね!」
と、少し間違った日本文化のためショッピングに向かっていた。
「よし、誰もいないと・・・。」
シンジはそう呟き、こっそりとポケットからメモ帳をだす。
「えっと・・・洞木さんの電話番号は・・・。」
シンジは番号を見ながら電話のボタンを押す。
ボタンを押すシンジの顔は嬉しそうだ。
なぜ、シンジがこのように紛らわしいことをするのか。
携帯で電話すればこと済むはずだ。
トウジにもケンスケにも電話は自宅の電話を使っている。
携帯に彼らの短縮がはいっているに関わらずだ。
それなのにめんどくさいプッシュ式の自宅電話を使っている。
しかもそれは計画的だ。
そしてヒカリにも自宅の電話を使って連絡を取ろうとする。
実は・・・
シンジとヒカリは付き合っていた。
「ごほん。うん・・・。」
シンジは咳払いすると電話口を耳に当てる。
時折指でリズムを取っている。
『・・はい、洞木ですが。』
ヒカリだ。
「あ、洞木さん?シンジだけど。うん、久しぶりだね電話するの。」
シンジはそう言って嬉しそうに足でリズムを取る。
「うん、まだアスカ達にはばれてないよ。うん、もう付き合って1年だね。え?自宅電話かって?うん自宅の電話だよ。
携帯だとミサトさん達にばれるしね。」
シンジはそう言って笑う。
「あ、それでね。今日お花見に行くことになったんだ。うん、ミサトさん達と一緒だけど。うんアスカも行くんだ。
それで・・・洞木さんも・・・そのお花見に来ない?」
シンジは恥ずかしそうに言う。
『・・来ていいの?』
ヒカリはそう言ってくる。
「うん、もちろんじゃない!ぜひ来てよ!うん、あ、料理の心配はしなくていいから。え?いや、僕は作らないよ。みんな注文するんだって。
うん、だからさ・・・行こう。」
シンジは足の指で床をトントンと叩く。
「うん!ありがとう!じゃあ今日6時半にくらいに迎えに行くから。うん、じゃあまた夜に。うん・・・うん・・・・・・・・・・僕も好きだよ。」
シンジはそう言って電話を切る。
「よっし!」
変なガッツポーズをするシンジ。
そんな中、冷蔵庫から一部始終を見ていたものがいた。
ペンペン・・・。
首輪になぜかコンパクトビデオのレンズが光っていた・・・。
「クエクエ!!(あねさんやりましたぜ!)」
彼がそう言ったのかどうかは不明だが・・・。
・夜
「さ〜てみんなコップは持ったわね!」
ミサトが乾杯の音頭を取る。
「「「「「持ちました!」」」」」
皆さん声がはもる。
中には何やら人生に悲観しているものもいるが・・・
「葛城さん・・・僕って・・・僕って・・・」
日向がすでに酔っ払っている。
しかも泣きが入っている。
「ははは・・・・。」
引きつった笑顔を向けるのは加持。
「何、引きつってるのよ!今日は楽しむのよ!」
ミサトはめざとく加持の表情を注意する。
「あ、ああ、そうだな。」
心中穏やかでない加持。
(頼むからテープ返してくれ葛城・・・。)
加持は神に祈った。
「えー浴衣じゃないの!?」
アスカはそんな声をあげる。
「そうだよ。花見は浴衣と決まってないよ。」
シンジはアスカに答える。
「でもさ、月見酒は浴衣でしょ?」
「・・・じゃあさ、まだ三月だけど・・・肌寒くない?」
シンジはそう言ってアスカの胸元を見る。
確かに、今彼女が着ている浴衣は夏物。
少し、露出が多く、生地の厚さも薄い。
シンジは数分間じっとその部分を見つめていた。
「痛ぅ!」
シンジはそんな声をあげて隣を見る。
「何?シンジ?」
アスカは急に声を上げたシンジを見つめる。
「い、いやなんでもないよ。」
シンジはそう言って誤魔化す。
シンジの隣にはヒカリがいた。
「ごめん・・・。」
シンジはヒカリに聞こえるか聞こえないかの声で言う。
「・・・。」
ヒカリは不機嫌な顔でシンジを見る。
「ごめんってば・・・。」
シンジはひたすら謝る。
そんなシンジの顔を見て、ヒカリは、
「もう・・・。」
と、言って許す。
「さ〜乾杯するわよ!」
ミサトはそう言ってコップを頭上高く上げる。
「よっしゃ!待ってました!」
トウジがそれに続く。
「ミサトさん!そこでポーズ!」
ケンスケはビデオカメラを回している。
「ほら、レイ!コップは持った?」
ミサトは綾波を見て言う。
「・・・はい。」
綾波はそう言うと近くにあるビンの中身を確かめもせずコップに注ぐ。
「よし!じゃあみんな準備いいわね!」
「「「「「は〜い!」」」」」
「うじゃ!乾杯!!」
「「「「「乾杯!!」」」」」
宴は始まる。
「あら、リツコ今日は日本酒なのね。」
ミサトはそう言ってリツコを見る。
「まぁね。今日はお寿司。日本酒に合うわ。」
そう言ってぐびっと一口飲む。
「あ、でもよくお金持ってたわね。このお寿司高いわよ。」
ミサトはそう言いながらお寿司を摘む。
「・・・ふ、MAGIを使えば株価はね・・・。」
リツコは何やら違法な言葉を発している。
釣り上げとか・・・
空売りとか・・・
一般人には理解できない。
「まぁとりあえず金持ちなんだ。」
ミサトは始めっから聞く気なしだった。
「・・・もういいわ。あなたに話した私がバカだったわ。」
リツコはそう言って酒を飲む。
「えーお酒しかないの!?」
アスカはそう言って驚く。
「ほんとだ・・・お酒しかないや。」
シンジも驚きビンのラベルを見る。
「碇君。これは?」
ヒカリはそう言ってビンを渡す。
「えっと・・・5%Al・・・・あ、これ5%アルコールだよ。」
シンジはそう言ってビンを返す。
「ミサト!あんたなんで酒しか買ってないのよ!」
アスカはそう言って怒る。
「や〜ね。アスカ。5%アルコールなんてお酒じゃないわよ。あんた達それ飲みなさい。」
ミサトはそう言ってアスカに取り合わない。
「あんたね・・・買い忘れたなら買い忘れたと言いなさい!」
アスカは額をピクピクさせながら叫ぶ。
「でもほら・・・5%だし。たぶん少しなら大丈夫だよ。」
シンジはそう言ってサワー系のアルコールを手に取る。
「でも碇君。アルコールは20歳からよ。」
そんなシンジにヒカリは注意する。
「ひか・・・いや、洞木さんもそんなこと言わないで、飲んでみない?」
シンジはそう言って子悪魔のように笑う。
「もう・・・どうなってもしらないわよ。」
ヒカリはそう言ってはいるが、彼女もお酒に興味があるのか銘柄を見ながら選んでる。
「あ、これなんかおいしそうだよ。」
シンジはそう言ってヒカリに渡す。
「あ、ありがとう。じゃあ碇君についであげるね。コップ持って。」
ヒカリはそう言ってお酒を注ごうとする。
「・・・うん。」
少し頬を赤らませシンジはコップを持つ。
「あんた達・・・・仲いいわね。」
そんな中、一部始終見ていたアスカが目を細めて呟く。
「「え!そんなことないよ(わよ)」」
二人の声がはもる。
「あやしい・・・・。」
アスカはますます目を細めて疑う。
「ほ、ほら、アスカも飲みなよ。これ美味しそうだよ。」
シンジはそう言ってアスカのコップに何かわからないが注ぐ。
「まぁあんたはお酌してなさい。」
アスカは高飛車な言葉を発する。
「・・・。」
そんなシンジとアスカの態度にヒカリは不機嫌さを増す。
(もう・・・シンジ君。はっきりしなさいよ!)
ヒカリは内心ヤキモキしていた。
「うあははっははは。」
何やら獣のような笑い声がする。
どうやらミサトらしい。
何について話しているのかわからないが、あのリツコでさえ笑っている。
そんな時だった。
ミサトは胸からテープを取り出す。
「それがさっきの話のテープ?」
リツコは笑いながら言う。
「そうそう!もうこれ聞いたら爆笑よ。」
ミサトはそう言ってひらひらとテープをかざす。
「葛城!」
加持はそう叫びテープを奪い取ろうとする。
しかし・・・
「ふふふ、甘いわね。」
ミサトはそう言って這いつくばっている加持を見つめる。
「な!?」
加持はいきなり誰かに押さえ込まれて動けないことに気づく。
「だれだ!」
加持は振り向くと・・・
「ミサトさん。早くそれ聞かせてください。」
と、言うマヤがいた。
「もうマヤちゃん興味津々ね。いいわよ。」
ミサトはそう言って加持を見つめる。
「残念だったわね。マヤちゃん酔っ払ったら人に抱きつく癖あるのよ。良かったわね。リョウジ。」
ミサトはそう言って笑う。
「ぐ!離してくれマヤちゃん!後生だ!」
加持はなんとか抜け出そうとするが抜け出せない。
「ふふふ、マヤのあのスキルには私も降参したわ。」
リツコは何やらぶつぶつ言っている。
「じゃあ加持君、8年前のあのセリフを大公開♪」
ミサトはそう言うと、バックから小型テープレコーダーを出す。
「ふふふ。」
リツコが妖しい笑みを浮かべる。
「「「「「ごくり・・・。」」」」」
いつの間にか皆、固まって見つめていた。
ザーザー・・・
テープから雑音が聞こえる。
『葛城・・・。』
テープから聞こえる加持の声がうわずっている。
「「「「「おおお〜〜〜。」」」」」
皆、一様に驚いている。
「やめろ!やめてくれ!!」
「かつら・・・いや・・・ミサト・・・八年前に言えなかった言葉を今言うよ。俺は・・・。」
ダン!ダン!
銃声がする。
ミサトは手に持ったテープレコーダーが銃弾で壊されていることにびっくりする。
「ふ・・・。」
加持は銃口から漏れ出る硝煙を吹きながら、銃をしまう。
「加持・・・あんたね・・・。」
ミサトはこめかみをピクピクさせる。
「加持君大人気ないわよ。」
リツコも冷たい目を向ける。
「・・・。」
加持は黙って知らんぷりする。
「あ、そう。わかったわ。」
ミサトはそんなことを言うと、
「マヤちゃん。加持君から銃を奪っちゃって。」
と、命令する。
「はい♪」
マヤは加持の胸元を探る。
「マヤちゃん!ちょっと待て!お、おい!」
加持はあっけなく銃を奪われる。
「ふふふ。」
ミサトは薄笑いを浮かべる。
「じゃ〜〜〜ん!コピーは腐るほどあるわよ!」
ミサトはそう言ってテープをまた胸元から出す。
「「「「「おおお〜〜〜」」」」」
みな、一様にびっくり。
「・・・。」
真っ白になっている加持がそこにいた。
「はははは、加持君それはないわよ!」
リツコはそう言って笑っている。
加持は公開処刑された気分だった。
「でもあそこで・・・・ぷぷ!笑いが止まらないわ。」
リツコは苦しそうに咳をする。
「でしょ?でしょ?もう信じられないわよね。」
ミサトもそう言って笑う。
「加持さん・・・案外プレイボーイじゃなかったのかもね。」
シンジはそう言って笑う。
「・・・。」
アスカは憧れていた男性の醜態に眩暈がしている。
「でもちょっと大胆だったわね。」
ヒカリは顔を赤らめて言う。
いつのまにかヒカリとシンジは手を繋いでいる。
しかも、みんなに見えないように背中越しに。
「ねぇ、ヒカリ。桜が綺麗だよ。」
シンジはそう言ってヒカリに上を見るように言う。
酔いのためか、もうすでにシンジは洞木さんと言わずヒカリと言っている。
それをヒカリもすでに受け止めている。
「・・うん、綺麗。」
ヒカリはそう呟き、ぎゅっとシンジの手を強く握る。
「あ、ほら。花びら。」
ヒカリはそう言うと、落ちてきた花びらを手のひらに置く。
「綺麗だね・・。桜って・・・。」
シンジはそんなヒカリの手のひらを見つめながら呟く。
だんだんと・・・
二人の距離が近づく・・・
「ね、ねぇ!碇君。」
あまりに近寄りすぎたためか、ヒカリは慌てながらシンジに呼びかける。
「な、なに!?」
シンジも同様慌てる。
「そ、そういえば、綾波さんは?」
ヒカリはなんとか話題を探しながら話す。
「あ、綾波?あれ?そういえば・・・。」
シンジはそう言われて周りを見回す。
「グビビ・・・・。」
静かにコップを空にしている綾波がいた。
「あ、あや・・・なみ?」
シンジは目をこすりながら見つめる。
なぜかすでに酒瓶が3、4本転がっている。
しかも今飲んでいるのが・・・
「鬼殺し。」
「あ、綾波さん〜。」
シンジはとりあえず遠目から呼びかける。
「・・・なに?碇君。」
綾波は目を細め、声は低めで答える。
「えっと・・・だ、大丈夫?」
シンジは恐る恐る言う。
「ふふふ。」
ビク!!
突然綾波が笑う。
シンジはその顔を見て背筋を振るわせる。
「あ、綾波・・・わ、笑ってるの?」
シンジは恐る恐る尋ねる。
「・・ええ。碇君に教えてもらったから。(ニヤリ)」
ビクビク!!
「は、はは・・・。」
シンジは乾いた笑いをあげながら綾波に背を向ける。
「だ、大丈夫みたいだよ。」
シンジはヒカリに言う
「え?そうなの?」
ヒカリはそう言われて彼女も振り向こうとする。
「ダ、ダメ!」
シンジはそう言ってヒカリの顔を押さえる。
どうしても振り向かせたくないようだ。
「な、なに。急に・・・。」
ヒカリはシンジの急な行動に驚く。
そんなヒカリに触発されるようにシンジは顔を赤らめる。
(うわ・・・こんな近くに洞木さんが・・・。)
シンジの心臓はバクバク鳴っていた。
「い、碇君・・・。」
ヒカリはシンジの指の温かさに目を細める。
いつしか、その目蓋はだんだんと細まり、閉じた。
「ヒカリ・・・。」
シンジはそう言って自分の顔をヒカリに近づける。
「さ〜て!じゃあ次に”ある二人の電話”のビデオを公開するわよ!」
遠くでミサトの声がする。
「クエクエ!!」
ペンペンの声がする。
シンジはどうでもいいかのように、彼女の唇を指でなぞる。
「さ〜て、じゃあ日向君お願い。」
ミサトはそう言ってビデオの電源をつけさせる
(ヒカリ・・・。)
シンジは自分も目をつぶり、ゆっくりと顔を近づける。
『うん、まだアスカ達にはばれてないよ。うん、もう付き合って1年だね。え?自宅電話かって?うん自宅の電話だよ。
携帯だとミサトさん達にばれるしね。』
(うん?なんか僕の声がする・・・。)
(碇君の声?)
『あ、それでね。今日お花見に行くことになったんだ。うん、ミサトさん達と一緒だけど。うんアスカも行くんだ。
それで・・・洞木さんも・・・そのお花見に来ない?』
(え、これって・・・・)
(これは・・・今日の?)
『うん、もちろんじゃない!ぜひ来てよ!うん、あ、料理の心配はしなくていいから。え?いや、僕は作らないよ。みんな注文するんだって。
うん、だからさ・・・行こう。』
(これって今日の電話じゃないか!)
(ええ!なんで!)
二人はビクっと固まり、後ろを振り向く。
「シンちゃん。この後なんて言ったのかな〜♪」
ミサトがテレビを見ながらにやついている。
ミサトはもうすでに知っているのだろう。
「「ミ、ミサトさん!!!」」
二人の声が重なる。
「マヤちゃんお願い。」
ミサトは軽く命令する。
「わ!やめて!マヤさん!」
「離して下さい!伊吹さん!」
二人はマヤに抱きしめられる。
「ふふ、逃がさないわよ♪」
マヤも乗ってきている。
そしてとうとう最後のセリフまで流れる。
『うん!ありがとう!じゃあ今日6時半にくらいに迎えに行くから。うん、じゃあまた夜に。うん・・・うん・・・・・・・・・・僕も好きだよ。』
「「「「「おおお〜〜〜〜。」」」」」
みな、感嘆のため息をついた。
「もう、ミサトさん嫌いです。」
ヒカリはそう言っていじける。
「まぁいいじゃない。こうやってもうこそこそ恋愛しなくていいんだし。」
ミサトはそう言ってからかう。
「もう知りません!」
ヒカリはそっぽを向くが、なぜか少し嬉しそうでもあった。
「シンジ。」
「碇君。」
二人の少女の前に土下座させられるシンジ。
「なんでしょうか?」
今のシンジは弱々しい。
「説明してくれる。」
「・・・。」
二人とも違うオーラを出している。
例えるなら、赤ザルは熱い炎を。
青ザルは冷たい炎を。
目の前には焼かれる家畜。
「えっと・・・。」
「なに!?」
「説明して碇君。」
「その・・・。」
「そう・・あんたヒカリのものになったのね。」
「・・・碇君。これは死に値するわ。」
「え?」
「レイ。わかってるわね。」
「ええ、アスカ。あなたが考えていることは全てわかっているわ。」
二人はなぜか握手をする。
「仲悪かったんじゃあ・・・。」
「「うるさい(わ)」」
「・・・。」
「アスカ、その新聞紙で作って。」
「わかったわ。じゃあレイ。あなたはあれを用意して。」
アスカは何やら新聞紙でメガホンみたいなものを作っている。
綾波はなぜか一升瓶を持ってくる。
「あ、あの・・・なにをしてるの?」
シンジはビクビクしながら話し掛ける。
「うるさいわね。じっとしてなさい。」
アスカはそう言うとシンジの両肩に跨り、シンジに肩車させる。
「あ、アスカ!」
シンジは突然のアスカの行動に驚く。
「レイ。やっていいわよ。」
アスカはそう言うと、メガホン状の新聞紙の口が小さいほうをシンジの口に突っ込む。
「が、うぐ、あ、ず、が!!」
シンジはもがき苦しむ。
「はん、まだこれからよ。」
アスカはそう言うとレイに目配せする。
「碇君。飲んで・・。」
綾波はそう言うと一升瓶の蓋を開け、逆さにする。
ガボガボガボ!!!!
「あ、あやガボガボグボゲボ!!!!」
「で、ヒカリちゃん。シンジ君にどうやって告白されたの。」
「いやーんミサトさん♪」
「ねぇねぇ教えてよお姉さんに♪」
「うふふ。シンジ君優しく・・・」
(洞木さんたすけ・・・・・・・)
チュンチュン・・・。
朝日が部屋に零れ落ちる。
「・・・頭痛いわね・・・。」
ミサトは頭を手で押さえながら立ち上がる。
「・・・・。」
しばらくぼーっとする。
「えっと・・・・。」
ミサトは冷静になろうと、とりあえず深呼吸する。
「シンちゃん。」
ミサトはとりあえず呼びかける。
「裸で寝ると風邪ひくわよ。」
ミサトはそう言って毛布をかけてやる。
隣で眠っているヒカリと共に。
後日談1:
「ここは・・・どこだ・・・。」
加持はとりあえず辺りを見回す。
「なぜ、マヤちゃんとベッドの中にいるんだ・・。」
そう言って加持の顔に縦線が入る。
「・・・加持さん。」
マヤは寝言を呟く。
「ち、違うんだ!葛城違うんだ!!」
加持の叫びが部屋中に響き渡った。
後日談2:
「なぁ・・・マコト・・・生きてるか?」
青葉はそう言ってマコトの体を揺する。
返事がない、ただの屍のようだ・・・。
後日談3:
「アスカ・・・。」
綾波はアスカと共にベッドに寝ている。
どうやってここまで来たかわからないが、アスカの体温だけがこの光景が現実だと実感させる。
「暖かい・・・。」
綾波はそう呟きながらアスカの服のボタンを外していく。
「私には何もないもの。・・・アスカ、一緒に楽しみましょう。」
綾波はニヤリと微笑みながら行動を始める。
どうやらまだ酒が抜けていないようだ。
「きゃああ!!!!!!」
後日談4:
「・・・私は何をしたの?」
リツコは目の前の光景に驚いている。
なぜか注射器とアンプルが床に転がっている。
リツコの目の前には貼り付けにされて意識を失っているトウジとケンスケの姿があった。
なにやら二人の腕の注射の跡が青々しい・・・。
「お酒は怖いわね・・・。」
リツコはそう呟き、とりあえずその場から逃げた。
最後の最後の後日談:
「碇君。」
ヒカリは幸せそうに抱きしめる。
誰とは書かない。
ただ夢の中では愛しい人に抱かれる自分を見ていた。
暖かい胸の中で・・・・
fin
後書き:
一通り書いて・・・
見直して・・・一言・・・
つくづく自分が嫌になった・・・・(T_T)
俺・・・何書いてるんだ・・・
作:atu
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moon」 はこちら!
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