いろんな初めて


現在西暦2015年、4月1日。場所は第三新東京市、マンモス団地。ほかに人の住む気配は無い。

近日中には取り壊されてしまうであろう悲しいマンションの一室。

そこに歴史にまつわる本を読む少女がいた。

その本には、「15年前にまだ春という季節が有った頃、『桜』と言う花が日本中に咲き乱れていた。
その花は桃色で五つの花びらがありとても可憐で美しい花であった」と記されていた。

本を読んでいた少女『綾波レイ』は、その花に深く興味を持った。そして一つの事が思い立った。

本屋に植物図鑑を買いに行こうかしら? と。

思い立ったら即行動、と言う事で早速家を出た。

彼女は普段、休日に家を出る事は無い。
訓練も学校も無いのに出かけるというのは無駄だと思っているからだ。いつも無機質な部屋にあるシンプル
なベッドで寝転がりながら本を読む。これが彼女の休日の過ごし方であった。
と、いうよりこんなに意味の無い事で出掛けている自分に少し驚いていた。

まぁ人間らしくなって来た、と言う良い傾向なんだが彼女には知る由も無い。



小走りでいつも医学書などを買っている本屋に向かっていると2人の顔見知りの少年と少女に出会った。

「ったく!いっつもトロいんだから!このバカシンジ!」

「うっさいなー。しょーがないじゃんか!」

と、こんな感じでいつものようにケンカし合っていたが、レイにはとても2人が仲良くしているように見えて・・・。

少し心にズキン、とした痛みのようなものが感じられた。

少年の名は碇シンジ。バカシンジと呼ばれ抵抗していた方である。

少女の名は弐号機パイロット・・・ではなく惣流・アスカ・ラングレー。

なんとなく、なんとなく、気付かれたくなくて、さりげなく通り過ぎようとしたが・・・土台無理な話だった。

レイの髪の毛は蒼いのだ。とても、とても深い海の底を連想させるような・・・。
しかも透き通るような白い肌。繊細で触れると折れてしまいそうなガラス細工のような腕。
極めつけにはルビーのような色をした宝石の如き瞳。
正に神秘を連想させたら右に出るものはいないと言った感じだ。

このレイを見逃す奴、と言ったら果てしないオオボケ太郎くらい、だろう。
例を挙げれば綾波レイだ。
まぁ彼女は『見過ごす』と言うより『興味が無い』と言った感じなのだが・・・。

ともあれ案の定――「あれ?綾波じゃないか」「あら?ファーストじゃないの」ユニゾン。

追い討ちをかけられた感じだ。
「コ、コンニチハ・・・」

「「なにしてるの(よ)?」」

「ほ、本屋に向かっているの」

「「なんで(よ)?」」

「しょ、植物図鑑を買いに・・・・・・」

「「何で植物図鑑なんか・・・?」」

「さ・・・桜の・・花が・・・見たかったから・・・・・・・・・」どんどん沈んでいく。

「桜?何よそれ?」

「春に咲いていた桃色で花びらが5枚の可憐な花」

シンジが閃いたように手のひらにコブシをポムっとやった。

「あー、聞いた事有るよ。とてもきれいな花だったらしいよ。いまは春が無いからずーっと葉っぱ
のままなんだって。」

「へーぇ。あんた意外と物知りねー」

「昔ね、先生が話してくれたんだ」

「ふーん」

「そ、そんな事よりさ、僕らも本屋に行くんじゃないかっ。綾波、良かったら一緒に行かない?」

この世のものとはおもえない優しすぎる犯罪的な笑顔(レイ談)で誘ってくれた。

一瞬ぽ〜〜っとしたが次にはわれを取り戻し反応する事ができた。

「い、いいの・・・?」

「そりゃいいさ、ねっアスカ?」

「ぐッ、ま、まぁいいわ。今日ノトコロハ」
何か言いたげだが無視しよう。





本屋にて


「じゃぁ僕らは雑誌のとこにいるから。綾波は図鑑見てきなよ」

「ええ、分かったわ」

と言って3人は分かれたが直ぐにレイは呼び戻された。

「ちょ、ちょっとファースト、これじゃないの?桜って?」

写真でしかも2ページ分贅沢に桜の樹が掲載されていた。

「えっ?あっ?きっきっとこれだわ」

「「綺麗」」アスカとレイのユニゾン2人とも見入っていた・・・。

(め、珍しい光景だな・・・)と思いつつも微笑みながらシンジは見ていた。

しばしの沈黙・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ね、ねぇなんで桜なんかがファッション誌に載ってるのさ?」

再起動おぶアスカレイ

「あっ?ああ春物の新作が今年は桜をモチーフに作られた見たいねぇ。こっこの桜の花びらの
散りばめられたワンピかなりかわい〜♪」

「私も欲しい・・・・!」

「「えっ?」」

「私も欲しい!」

めちゃめちゃはちゃめちゃ驚いた。(2人とも)効果音はぐもっっっっ!!!!って感じだ。
初めて自己主張し、しかも何かを欲しいと言ったのだ。あの『綾波レイ』が!!!
驚かないはずが無い。と友に碇シンジはとてもうれしかった。言葉ではとても、とても、とても、とても
言い表せないほど。涙が零れそうになった。

「あんた、なに泣きそうになってんのよ!?」

「え、い、いっいやなんでも無いよ!」
何がなんでもないのだろう?と言うのは置いといてレイの頭の上にはハテナマークが3つぐらいうかんでいた。

「???」




1段落した所でその本を2冊(アスカとレイの分)買って店を出た。

「まだ11時よ?どっかいかない?ファーストも連れて」

「うーん、どっかってどこ?」

「どっかはどっかよ!いちいちうっさいわねぇー!!」

「ご、ごめん」

「だーー又そうやって直ぐに・・」
「あそこにいきましょう」

「「え?」」

レイが指差したのは第三新東京市一のデパートメントストアー。『309』であった。

「何しにいくのよ?」

「服を買いに」

「思い立ったら即行動だね〜?」

ほほ笑みもながらシンジが言った。

「え、ええ」

少したじろいだ、がこらえた。




309にて




「結構人多いねー。」

「そうねー」

「人ごみは嫌い」

「・・・じゃ何で来たのよ?」

「服買いに・・・。」

「まぁあんたが言い出したんだしねぇ」

「そ、それじゃあ行きましょう・・・・ゴクンっ」

決心したようだ。

「なんかさぁファースト前より人形度が減ったわねぇ・・・」

アスカがボソッと言った。

「表情豊かになって来たよね」
満面の笑みだ。

「そっ、そうね」
ちょっとキテたが立て直した。

少しふらぷらしていると・・・

「おーい、シンジや無いか〜それに惣流も、ン?綾波もやないか」

「お、おんな二人も連れてデートか〜ぁ羨ましい奴め」

「ちっちが・・」

「「いや〜んなカンジ」」

「「そっそんなんじゃないよ(わよ)!!」

王道終わり

「と、ところでトウジとケンスケは何しに来たの?」

「そんナン当たり前やないか〜。春物の新作『ジャージ』買いに来たんや!!」

シカート。

「俺はアーマード・ギア インターミッションを買いに来たんだ。期待の新作だからな!」

「へぇ〜僕もやってみたかったんだ〜。今度やらせてよ」

「イイゼ今度な。ぢゃ売り切れちゃうから、またな」

「ほな3人で楽しんで〜な〜。が!『桜ジャージ』がうりきれてまう!!そんじゃ!」

「「・・・・まじっスか?」」
と、シンジとアスカ。

気を取り直して・・・

「あれ?綾波は・・・?ん?あんなところに・・・おーい。あっ見つけたみたいだよアスカ」

「マジー!?どこどこ?」

「あそこ」
と指差した方向にはレイがたたずんでいた。

「何してんのよ」

「・・・サイズ」

「は?」

「サイズが分からないの」

「えっ?ふっふふふ、あ、あは、あははははははははは、あーっはははは」
爆笑していたアスカにレイは少し怒ったように聞いた。
「なにが、おかしいの?」

「ふふふふっ。あ〜おっかし〜。そ、そんなの店員に聞けばいいじゃない」

「あ、そう。スイマセン」

「はい、なんでしょう?」

「何でアスカは笑ってるんですか?」
真顔

「はい?」

「だから、何でアスカはわらっているの?」
ちょっちキレた

「い、いやそんな事おっしゃわれても」
戸惑っている。そりゃそうだけど。

「ぷっっっあはははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!!」
止まりかけていた笑いはちゃらとなった。

その頃この光景を見ていたシンジはというと・・・

(綾波って・・・綾波って・・・かわいい!!!)
こっちに言わせると今更気付いたかである。(作者hiro

ともあれ無事買い物は終了。

お昼も食べて(ラーメン。ちなみにここにはニンニクラーメンが無かったので、綾波はちゃんぽんを食べた)

そして雑談、地下の食品売り場へ

「そーいやエビチュ切れてたな・・・ん〜まいっか。」
哀れミサト。と言う事で終了。





帰り道


「あら、アスカじゃない碇君も?あ、あら綾波さんも・・こんにちは」

「こんにちは」

「ヒカリ〜何してんの?」

「夕飯の買出し。あ、そうそうコダマおねーちゃんの彼氏が今日誕生日なんだ。パーティーやるから
アスカもこない?」

「イクイクゥ〜♪シンジは?」

「えっ、あっ、僕、そういうの苦手だから・・・」

「あっそ。ファーストは?って来る訳無いか」

「わたしは行かない」

「そう?綾波さんもくればいいのに・・・」

「わたしはいい」
シンジクンはどうなの?ま、いーか。

「ぢゃ、今日夕食いらないから〜もしかしたら泊まるかもしんないから〜」

「あ、うん判ったよ」

「それじゃ、碇君、綾波さんまたね」

「うん、それじゃ」

「さようなら」

「アスカーあんまり迷惑かけちゃダメだよ」

「分かってるわよ!!バカシンジ!!」

「ったく・・・なんだよ、少し注意しただけなのに・・・」

「なんか言った?」

「イイエ、なにも。じゃあね」

「じゃあね、バカシンジ」

アスカとヒカリは喋りながら逆方向へと歩いていった。




沈黙の中・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


シンジが口を開いた

「あの、綾波、送っていくよ」

「えっ?」

「だ、だめかな・・・?」

「い、いいえ」

「そう?じゃっいこっか」

「え、ええ・・・」

(な、なんかきんちょうするなぁ・・・)シンジ

(胸が、こんなにドキドキする・・・何故?でも・・・嫌じゃ、ない)綾波

すると突然、


「えっ!!!」
レイが腕にしがみついてきた。

「どっ、どうしたの・・・?」

「こうすると・・・安心できるの・・・・・・ダメ?」
すこしウルつきながら上目ずかいでシンジを見た。

ぶんっ!ぶんっ!!首を左右にふった。むしろそれしか出来なかった・・・・・。
又、沈黙。でもなんかそれでも良かった。二人とも余り人との触れ合いが無かったから・・・・・・・・・
それにこの温もりが本当に二人には新鮮で、とてもトテモ心地よかった。




綾波宅



「それじゃあ・・・・・・また」

シンジが別れの言葉を告げると・・・

「まって・・・」

「えっ・・・?」

「少し、上がっていかない?」

「えっ、で、でも、もうこんなに暗いし・・・」


「お願い・・・」
本当に泣きそうだった・・・こんな気持ちになったのは始めてだった・・・。

「わかったよ、だからもうそんな顔しないで・・・」
微笑みながらそう言葉を繋いだ。

「うんっっ・・・っひっくひっくふえ〜ん」
この世に生まれて・・・初めて泣いた。いや、この表現は間違っている。『涙を流した』綾波レイが・・・
そんなレイをシンジは限りなく優しく、それでいて絶対に離さないように抱きしめた。

「ヒっく・・・ひっく、ズズ」

「もう、いいのかい?」

「うん・・・あ、ありがとう」
感謝の言葉・・・初めての言葉・・・でも、この言葉を口に出して後悔はなかった・・・。

「どういたしまして。さ、中に入ろう」
ニコっと微笑んだ。

「うん」
ツラレテ微笑んだ。

「そういえばさー日本って《花見》っていう文化があるんだって知ってた?」

「ええ、本で読んだから」

「花を見ながら宴会するんだよね?」

「ええ、そうよ」

「じゃあさ、二人でやろうよ」

「?  どうやって?」

「こうやって、さ」
自慢げに言うとヤミクモに今日買ってきた雑誌を開いた。

「それをどうするの?」
なぜか買ってあった『額縁』を取り出すとそれにいれた。

「よし。ピッタリだ。明かり消して」

どうして?と思ったけど何も言わずに従った。
「はい」

「それじゃ行くよ」

(なんか・・・又、ドキドキしてきた)

するとパっとその『額縁』だけに光が灯った。額の縁が文字どうりキラキラと光りそのピンク色の閃光が
舞い落ちる花びらを連想させた。

「とっても綺麗・・・」
しばらく時が止まった・・・・・・・・





パチッ。

「あっ。」

「楽しみはまた後で・・・ねっ♪」
そういって無邪気にウィンクした。

「いじわる〜」
恨めしそうに言ったその顔もとても可愛かった。

「あ、綾波」

「何?」

「今日買った、アレ着れば?」

「どうして?」

「日本人はまず形からってネ。あっ、『洗面所』で着替えてきなよ!その間軽いもの作っておくから。」

「どうして?」

「どうしても!」

「分かったわ・・・」
首をかしげながら洗面所へ向かった。

「・・・・どうやってきるのかしら・・・?」
広げながら迷いながら見とれていた。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

・・・・・・・・・・「綾波ー。まだー?」・・・・


「はっ・・・!も、もう少しっ」

「どうしたんだろ?慌てて・・・」

数分後なんとか着終えて姿をあらわした・・・・。絶句した。そして、シンジは思わず口にした。

「す、すごく綺麗だ・・・・・・・・・」




そして綾波は顔をピンク色に染めてこう言い放った。

「・・・・・・な、なにをいうのよ・・・」








その後、また部屋が闇に落ちた・・・。スポットライトを付けまたあの『桜』が鮮やかに彩られた。

2人は《お花見》を心から楽しんでいた。月光の元、食事しながら、寄り添い合いあって、2人『だけ』の
《お花見》を楽しんでいた。

食事が終わり落ち着いた所でオモムロに口を開いた・・・。

「綾波・・・?」



「なあに・・・?」



「僕ね、今、気付いたんだんだ・・・」



「・・・・何を・・・?」



「うんっと・・・その・・・」



「なあに・・・?」
(また・・・ドキドキ・・・する。でも、今までで、1番ドキドキする・・・どうして?)





「僕は、綾波を・・・・・・《愛してる》」





「・・・・・・人を愛するってどんな感じなの?」





「んっと、一緒にいて安心したり・・・こう、ドキドキしたりするんだその人だと・・・」





「そう・・・・・・・・。それじゃあ、ワタシも《愛している》のね・・・碇君のコト・・・」





「えっ・・・?」









「碇君・・・・・・」









「綾波・・・・・・」







そして二人見つめ合い・・・惹かれあうように、kissを・・・した。


どっちにとっても『初めて』の・・・first kissを・・・・・





























P.S.  「何で二人とも帰ってこないのよ〜〜〜〜〜!!!!」byミサト



あとがき


hiroです初めてのエヴァの小説です。自信は皆無です。ぶっとーしで書きましたAM3時からAM9時疲れたです
いやはや小説書くのって大変ですね〜〜。評価ではなくアドバイスをくれたら嬉しいです。
これかなり修正されてます。投稿したら直した方がいい所をメールしてくれました。すごいあったです(^^;
tambさん。本当に感謝しています。m(_ _)m はは〜




ぜひあなたの感想をhiroさんまでお送りください >[lilith00rei@yahoo.co.jp]



【競作「お花見」の目次へ】

【HOMEに戻る】