そして僕たちは霧島と山岸に出会うことが出来た。

 けれど、そこには彼女たち以外に、もう1人増えていたんだ・・・・・・・・









< ペルエヴァ7話 >
今日は驚くことばかりね




 ピクシーのフィネアと別れた僕らは、一路学校へと向かっていた。相変らず辺りは静かで、誰もいない無人の街だ。
 家に帰るという選択肢もあったのかも知れないけども、あんなことが起こった後にバラバラになる気はしなかった。みんなも不安な筈なのに、誰もそれを口には出さなかった。もっとも、流石にこの時間に家にいるのは鈴原と委員長の妹だけで、あとはみんな働いているから家に帰っても誰もいないと思う。僕も父さんとペンペンのことが気にかかるけど、父さんは大人なんだし大丈夫だと、楽観的な気分になっていたし、ペンペンは・・・放浪癖があるからそもそも家にいるかどうかわからないし・・・・・とそう思ってた。
 いや、正確にはそう思い込もうとしていたんだ。現実を見るのが恐かったから・・・。今日起こったことが全て夢なら・・と、否定したかったんだと思う。勿論そんなことはありえないということは、僕が持っている不思議なカードが証明している・・・・・・。
 でも、それはみんな上っ面のことで、本音を言えば、僕は、父さんやペンペン、みんなの家族のことを思い出した途端、何だかみんなが危険な目に遭っているのに自分だけ安全な場所にいて守られているような、そんな後ろめたさを感じたんだ。そんなことを思っていても、僕が実際に出来たことは、きっと僕がいても何も出来はしないだろうと自分を誤魔化すように、言い訳の自問自答を心の中で繰り返すことだけだった。

 いつか、この暗い場所から抜け出して明るい場所へ行くことが出来るんだろうか・・・誰かに必要とされる日が来るんだろうか・・・



 「ユキナの奴、ダイジョブやろか?」
 「私もノゾミが心配だわ。お姉ちゃんやお父さんは兎も角・・・」
 「二人ともまだ小学生だからな。電話してみれば?」

 同じように家族のことを心配していたらしい鈴原が、たまりかねたように珍しく小さな蚊の鳴きそうな声で呟くと、委員長もそれにつられるように不安を吐き出す。それでも後半の言葉はみんなに気を遣っているのだろう。こんな時までみんなの心配をして気を遣って、そんな委員長を見ていると逆に胸が締め付けられる。ユキナちゃんもノゾミちゃんもまだ小学4年生で、二人は同じクラスの仲良しさんだ。しっかりしてはいるけどもまだまだ子供だから鈴原も委員長も心配している。そういう僕らも子供なんだけど。

 「あかん、つながらんわ」
 「私も・・・回線が混雑してるって・・・」
 「災害時は混雑するらしいからね」

 相田の一言で二人とも思い出したように携帯を取り出したけど、鈴原の携帯も委員長のも通話不能だった。回線が混雑しているらしいけど、これは地震があったときやクリスマス、大晦日などのイベントの時などはよくあることだから、そのこと自体は気にはならなかったけど、やっぱりさっきの出来事と関連付けて考えてしまう。そういえば、昔は公衆電話からや病院からの電話は優先的につないでもらえたらしいけど、この街には存在しないし、1人に1台携帯電話が当たり前になった今、全国的に見ても公衆電話の数は少なかった。
 鈴原や委員長はやはりとても暗い表情だった。無理もないと思う。特に鈴原のこんな表情は初めて見たかもしれない。でも、そんな二人を見ているとまた自分の薄情さが責められているような錯覚に陥る。被害妄想もいいところだけど、平素から自分に自信が持てないうえに、この状況が後ろめたさを後押しする。こんな考えは辞めようと思っても頭から消えることはなく、寧ろより一層自分が醜い心を持った卑しい人間であるという妄想が膨らんでゆく。払っても払っても、あとからあとから絶え間なく湧き上がってくるんだ、僕自身の心の中から・・・・・
 そんな僕なんかと違って、普段から鈴原は家族を、特に妹のユキナちゃんをとても大事にしている。鈴原は照れくさいのか、それを僕らの前では直接見せるようなことは決してしないけど、言動の端々に妹を大事に想っていることが現れていて、たまに相田にシスコンネタでからかわれている。兄バカって奴でいつもは硬派で厳しいことも言う鈴原がユキナちゃんにだけはべたべたととても甘いのだから、無理もない。委員長も3人姉妹らしいけど、とても仲が好く、たまにユキナちゃんを含めて一緒に遊ぶこともある。二人以外はみんな一人っ子で、僕は時々兄弟がいることが羨ましくて憧れることがある。
 もっともアスカに言わせると、
 「アタシにとってはアンタが手のかかる弟みたいなもんよ!」
 ということらしい。
 でも僕は知っている。極稀にだけど、アスカがちょっと寂しそうな深いブルーの瞳で、委員長とノゾミちゃんを羨ましそうに見ているのも、本当は人一倍寂しがりやな事も。


 結局、何を考えても僕らに出来ることは学校に向かうことだけに思えた。

 「なあ、ちょっと遠回りになるけどサンモールを通って学校行かないか?」
 「そうだね、人に会えるかもしれないしね。僕は賛成するよ」
 「わしもや」

 マヤ先生に聞くと、学校は避難場所に指定されているのもあって、逆に生徒に帰宅せずに様子を見るように注意しているらしいから、少しくらい遅れても問題はないらしいとの事なので、商店街を廻って学校に行くことにした。きっとみんな人に会って話をしたいんだと思う。このまま人に会わないままだと、本当にこの街が無人のゴーストタウンになってしまいそうな、そんな恐ろしい想像におかされてしまいそうで・・・・




 回り道をして行く僕らは、大通りに向かう道へと続く交差点で学校に真っ直ぐ向かうマヤ先生と別れ、サンモールにやってきた。サンモールとは言っても名前だけで、実際はアーケード付きの小さな商店街だ。ここから結構離れた所にあるアルカディアという駅ビルのショッピングモール(ちょっと名前が恥ずかしいけど、サンモールよりも新しくおしゃれな感じで若者向けな感じだ)の方が商店街としては大きいんだけど、歩いてゆくには少し遠いので、僕を始めとした周辺の住民は大体いつもこっちで買い物をしている。アルカディアはこの街に(正確にはアルカディアに)遊びに来る人用で、サンモールが住民用って位置づけかな。元々サンモールは駅から離れているので地元住民しか来ないというのもあるんだけど。
 霧島に言わせると
 「アルカディアはよそゆきで、サンモールは普段着かな?」
 とのことらしいが、
 鈴原に言わせると、また別の-鈴原らしい-意見で
 「そりゃ、アルカディアの方が新しいし、オシャレかもしれへんけどもな。アルカディアに行ったって、どの店も高いばっかで腹一杯にならへんやんか。そなら、サンモールで美味しいモン沢山食った方がええわ」
 と言って、女子から冷たい目で見られている。
 で、サンモールは学校の近くということもあって、朝や放課後はうちの学校の生徒が多い。たまに委員長や真面目な先生に見つかって怒られる不幸な生徒もいるけど、大抵の先生は大目に見てくれるし、商店街の人たちも理解があるし(重要な収入源でもあるし)、昔から使っていて馴染みがあるのでやっぱりサンモールに来てしまう。何気に学割もあるし・・・女の子だけだけど。

 僕らの心配は杞憂だったみたいでサンモールは無人じゃなかった。店はちゃんと営業していたし、普段のこの時間帯よりも少なかったけど通りを歩いている人もいた。何事もない、いつもと同じ平和な日常的光景に思えて僕は安心していくらか心が軽くなった。みんなもそうらしく、表情が幾分緩んで見える。この分ならきっと大丈夫だろうと思えた。でも所詮それは表層的なことで、不安は心の奥にしっかりと根付いていた。何故なら、今見えている風景がどんなに平和なものであってもさっきの出来事は決してなくなったりしないから・・・・・・・。

 「よお! 学生諸君何処へ行くんだい?」

 そんな僕らに後ろから声をかけてきた人がいた。聞き覚えのあるこの声は、

 「「加持さん!!」」


 加持さん。
 いつもお世話になっているこのサンモールの商店の中でも、特にお世話になっている小さな喫茶店「カノン」の店長だ。ミサト先生の恋人で、リツコ先生を加え高校大学を通じての同級生でもある。いつも無精ひげでだらしなくネクタイを締めているけども、加持さんの淹れる紅茶や手作りのケーキはとっても美味しくて、サンモールでも人気の喫茶店だ。喫茶店とは別に、これまたこじんまりとしたケーキ屋「アルテアラ」もやっているが、こちらは弟さんに任せている。

 惣流は昔から加持さんに憧れていて、加持さんに会うといつも嬉しそうに、普段は見せない特別の笑顔を見せる。何故だかその笑顔を見ると僕は置いてけぼりになった子供のような感じがする。もっとも惣流だけじゃなくて、大抵の女の子は加持さんに憧れているらしいし、女の子だけじゃなく男にも憧れている奴は多いらしい。僕もその1人だけど、加持さんはやることなすことスマートでとっても格好いい。それに人の心を読むのが上手く気配りも出来て大人の魅力を感じる。みんなが憧れるのも無理はないし、プライドと理想の高い惣流が憧れるのも納得できる。僕もいつか加持さんのようになるのが密かな目標だ。でも、それは所詮都合のいい上辺の姿だけを見て、隠された真実を視る事の出来ない子供に過ぎないという証明でもあった・・・・・。

 「地震、大丈夫だったかい?」
 「大丈夫よ。加持さんはどうしたの?お店は?」
 「それが、さっきの地震で店がめちゃくちゃになってね。今日は臨時休業さ」
 「ええ〜ケーキセット楽しみにしてたのに〜」

 惣流は賭けに負けたから奢る側だろ? とは言わずにおいた。もし余計な事を言おうものなら後で鉄拳制裁が待っていることは間違いない。僕だけじゃなく、みんな惣流と加持さんの会話を邪魔しないように口を挟まなかった。加持さんが絡んだときの惣流は特別で、普段は惣流に強い委員長もこの時ばかりは惣流が恐いらしく何も言わない。

 「それなら丁度良かった。俺もアスカたちが来るのを期待してたんだよ」
 「そうなの?」

 ・・・・何か嫌な予感がする。

 「店を片付けるのを手伝ってもらおうと思ってね、シンジ君」

 と言いながら僕の方を見てウィンクする。
 やっぱり・・・・加持さんの喫茶店「カノン」は店長の加持さんアルバイトのカスミさん(20歳、美大生)の二人しかいないので、僕は中学に入ってから時々「カノン」でアルバイトをしていた。「カノン」は小さい店の割りにいつもお客さんで満員だった。そんな訳で店はいつも忙しく二人で切り盛りするのは厳しい状態だ。僕としてはもう1人正式なアルバイトを雇った方がいいと思うのだけど、何故か加持さんはそれをしないで、僕に頼んでいた。
 アルバイトと言ってもほんのお手伝い程度のことで買出しに行ったり、お皿を洗ったりといった極単純なもので、バイト料もケーキだった。でも、1日働いて得た報酬のケーキが僕の口に入ることは少なかった。僕がアルバイトをしているとかなりの高確率で綾波や惣流が嗅ぎつけてきて、帰り道に何故か"偶然"出会うからだ。家に帰ってからも父さんとペンペンが狙ってくる。子供が見たら泣いちゃうようないかめしい顔のくせに父さんはお酒が飲めない大の甘党で加持さんのケーキがお気に入りだし、ペンペンもペンギンのくせしてケーキを食べる。ペンペンにいたってはたまに加持さんの所にケーキを食べに訪れるらしい。加持さんもカスミさんも大喜びらしいけど、ペンペンって不思議だよな〜もしかしたら僕より頭良かったりして・・・・
 まあ、そんな訳で今回も声がかかるかなと思ったら、ズバリ予想通りだった。こんなところで予想が当たっても全然嬉しくない、けど僕はこういう悪い予想というか予感だけは的中率が高かった。・・・言ってて空しいけど、唯一自信を持って言えるのはこれくらいかもしれない。他には家事一般は出来るけど、これは別に特別自慢するような事でもないし、誰にでも出来ることだと思っていた。今回の事件が起こるまでは・・・・
 加持さんには申し訳ないけども、今は学校に行かなくてはならないので僕は断ることにした。でも、今日は惣流がいるからな、上手く断れればいいけど・・・・

 「今日はシンジ君だけじゃ手が足りないから、みんなでアルバイトしないかい? バイト料はケーキだけどね」
 「加持さんのケーキでっか?!」
 「ああ、崩れたケーキで申し訳ないけど、好きなだけ食べてくれていいから」

 ・・・・・・・・鈴原。
 多分惣流も加持さんの手伝いするって言い張るんだろうな・・・はぁ・・・
 あ、委員長も疲れた顔してる。相田と渚君は我関せずのようだ。仕方ない僕が言うしかないのか・・・加持さんが絡んだ惣流と食べ物が絡んだ鈴原か・・・嫌だなぁ・・・

 「あの加持さん、僕たちこれから学校に行かないといけないんですよ、だから」
 「「シンジ(碇)!!」」

 ああ、予想通り・・・・・・・この二人完全に今の状況を忘れてる・・・・
 二人は見事なユニゾンをみせてステレオのように左右から、いや5.1chサラウンドスピーカーのように、いかに加持さんの店の片づけをすることが重要かを捲くし立て始める。いつもはお世辞にも仲がいいとは言えない二人なのに、どうしてこんなときだけ息がぴったりなんだろう? 僕がどうやって二人を説得しようか悩み始めると加持さんが小声になって話しかけてきた。

 「シンジ君頼むよ。『ペルソナ』の話も聞きたいしね」

 「「「「「「!!」」」」」」

 『ペルソナ』、今確かにそう聞こえた。どうやら僕の幻聴じゃないようで、みんなにも聞こえたらしく、さっきまでの和らいだ表情は緊張したものへと一変していた・・・・・




 結局僕らは「カノン」にやってきた。
 『ペルソナ』、この言葉を聞いて黙って学校に行くことは出来なかった。
 学校ではきっとミサト先生が心配してるんだろうな。多分思いっきり怒られると思う。大体ミサト先生が怒るのは本当に大事な事だけで、普段は笑って注意するだけだ。その大事なことには生徒の安全も当然含まれていて、最上位に位置している。そういうところが生徒からの信頼を集めるんだろう。
 それはさておき、店内は思ったよりも荒れてはいなかった。これならすぐに片付くだろう。きっとカスミさんがある程度片付けたんだろうな、ってそれよりも『ペルソナ』だ。何故加持さんが『ペルソナ』を? もしかして加持さんも?

 「その通りだよシンジ君」

 「え?」
 「俺も『ペルソナ使い』さ。しっかり顔に出てたぞ」

 これは加持さんが特別凄いわけでもなく、僕が顔に出やすいだけらしい。僕はそうは思わないんだけど、僕の周りにいる人は全員が全員口を揃える。
 それは綾波も例外じゃない。綾波・・・・・・どこにいるんだろう? 僕はほんの少しの間でも綾波のことを忘れていたことを思い、後ろめたいやら、情けないやらで自分を責め始めた。ころころ気持ちが移り変わり、精神的に疲れ果て自分でも何がなんだかわからなくなって逃げ出したい気持ちで一杯だった。きっと綾波がここにいれば僕は綾波に逃げ込んでいたと思う。

 相田が『ペルソナ様』をしてから今までのことを手短に話すと、加持さんはいつもと違う真剣な表情でほんの少し何もない空間を見つめると、何かを決意したらしく改まって話し始めた。




 加持さんが『ペルソナ』に目覚めたのも『ペルソナ様』がきっかけらしい。高校時代にミサト先生に誘われて、リツコ先生と、もう1人の友人と4人でしたらしい。
 と、ここまで語ると加持さんはしばらく暗い顔で俯いたまま惣流が話しかけるまで黙っていた。その顔はとても深刻で痛々しく、悲しげなもので先ほどの表情とともにまた見たことのない加持さんの顔だった。
 気を取り直したらしくまた話を再開したけれど、思っていたよりもあまり多くは語らなかった。僕らが『ペルソナ使い』だということはマヤ先生と同じく、『ペルソナ使い』だけが放つ波動でわかったらしい。そして次元の穴が出来て人間界と魔界が繋がった事に関して重要なことも-「原因は俺も分からないけどな」と前置きしてから-教えてくれた。実は前にも一度あったらしく、加持さんは自分の経験から悪魔に対する対処法を詳しく教えてくれた。悪魔とは会話・交渉が出来るらしいということから始まり、『ペルソナ』の上手な使い方まで。
 また、街に人が少ないのは無意識に次元の穴-つまり悪魔の存在を感じているからだろうと教えてくれた。悪魔は人間界に現れてもまだ実体化しておらず、普通の人の目に視えることはないし、直接触れたりも出来ないらしい(『ペルソナ使い』や一部の霊感の鋭い人は別らしいけど)。そうは言っても人間に影響を与えることは可能らしい。具体的には悪魔によって違うので何とも言えないけれど、危険は否定出来ないということだった。
 加持さんはそこで話を切り、ミサト先生が心配しているだろうから早く学校へ行くように促した。
 僕はまだ色々と聞きたいことがあったけど、仕方なく学校に行くことにした。加持さんはまた僕の心を読み当てたらしく、背後から僕にだけこっそりと耳打ちしてくれた。

 「きっと、いつか全てを話す時が来ると思う・・・」

 振り返って加持さんの顔を見ても、もういつもの加持さんだった・・・・・・


 最後に加持さんは霧島と山岸を見かけたと教えてくれた。あの二人も真っ直ぐ帰らずにサンモールに寄り道したようで、本格的にミサト先生の雷が恐くなってきた。


 「さあ、急がないとね。ミサト先生が心配しているわ」
 「それにしても、加持さんまで『ペルソナ使い』だったなんて・・・」
 「本当、今日は驚くことばかりね」

 サンモールを出てから口を開くのは惣流と委員長だけだ。あとはみんな悪魔を警戒しているのか黙っている。

 「驚きっぱなしで疲れたわ」
 「クス、そうね。私なんかもう頭がついていかないわ」

 僕もそうだし、みんなそうだと思うよ、委員長。

 「全く、これというのも全部相田が余計な事言うからよ!!」
 「えっ!何がだよ?」
 「あんたが『ペルソナ様』をやろうなんて言うからこんなことになったのよ!!」
 「『ペルソナ様』に関しては言い出したのは俺だけど、それ以降のことは関係ないだろ!?」
 「いーや、『ペルソナ様』をしなければその後のことも起こらなかったに違いないわ!」
 「そんなこと言われても・・・」

 むちゃくちゃなことを言ってるよ。そりゃ僕だって、もし『ペルソナ様』をしなかったらって思う気持ちはあるけど、でもそう思う一方で今回の事件は何もしなくても起きたような感じがするのも事実だ。それは不思議と確信に近いものがある。多分、惣流も同じように確信していると思うんだけど・・・

 「惣流!ケンスケにあたるんはやめんかい!!」
 「何よ!じゃああたしのせいでこんな状況になったって言うわけ!?」
 「まあまあ、二人とも。惣流君、もし僕らが『ペルソナ使い』にならなくても地震が起きて、一連の怪現象が起きていたとしたらどうする?」
 「そ、それは」
 「あの時、病院で『ペルソナ』がなければどうなっていたかな?」
 「わかったわよ!それ以上言わなくてもいいわ! ・・・・・・わかってるわよあたしだって・・・」
 「まあ、前向きに考えた方がいいと思うよ。君らしく、ね」

 惣流も不安なんだろうけど・・・意地っ張りだからそれを他人に見せたくないからああいう態度をとってしまう。でも、鈴原はそういうのを嫌うからぶつかってしまう。僕は手をこまねいて見ていることしか出来ない・・・。僕は本当にここにいてもいいんだろうか? ここにいる意味はあるんだろうか? それは自分で決めるしかないことはわかっているつもりだけど・・・どうしてもそこから先に進めない・・・・・

 「ん? あれって霧島さんと山岸さん?」

 ギスギスした場面を救ってくれたのは委員長だった。確かに前方に見えるのは霧島と山岸だろう。制服と霧島の特徴的な髪の色でわかる。霧島の髪の色はクォーターの惣流ほどではないけど茶髪で、制服を着ていると結構目立つ。でもなんかもう1人いるように見えるんだけど・・・
 近づいてゆくと錯覚ではないことがわかった。霧島と山岸以外にももう1人女の人がいて、足から血を流していた。それにしてもどこかで見た事があるような気がするんだけど・・・

 「あっ、シンジ!」
 「皆さん」
 「霧島さん、山岸さん・・・その人は?って大変怪我してるじゃない!!」
 「そうなんですよ。でも私たちの力じゃ動かせないし、辺りに人はいないしで困ってたんですよ」
 「取り敢えず、学校へ連れていきましょう。と言う訳で鈴原頼むわね」

 応急処置として傷口を縛って血がこれ以上でないようにしてから鈴原がおんぶして学校まで運ぶことにして、僕らは急いだけどいくら鈴原が体力があるとはいえ、所詮中学生の体力では大人の女性を1人でおんぶしてして行くのには限界があった。意識を失った人間というのはとても重く運びづらいらしい。それでも何もなければ良かったのかもしれないけど、今は悪魔がいた・・・・



 現れた悪魔はフィネアのように友好的な悪魔ではなく、病院のゾンビのように一方的に襲い掛かってきた。話しかけてみたけど何を言っているのか全然理解できずに、問答無用という感じだった。勿論僕らは『ペルソナ』を使って闘ったけれど、今度はさっきの病院のようにそう簡単にはいかなかった。鈴原と委員長は怪我をした女性を守る為に戦いに参加出来なかったし、相田も『ペルソナ』を使えない。しかも、敵の数は多いし、ゾンビよりも強かった。僕たちも悪魔の攻撃で怪我をして、霧島と山岸が『ペルソナ』に目覚めていなかったら危なかったと思う。何しろ、『ペルソナ』を始め、何もかもが初めての出来事だったからだ。喧嘩すら殆どしたことないのに、ましてや悪魔との戦闘なんて・・・・初めてどころか夢にも思わなかった。
 『ペルソナ』を使った戦闘というのはどこか現実感がなかった。直接自分で悪魔に触れたりすることがないからかもしれないけど、そういうのとはまた違う、上手く説明できない違和感がした。モニターを通して自分が闘っているのを視ているような感じとてもいえばいいんだろうか? まるで自分がゲームのキャラになったような気がした。
 他にも驚くことは沢山あった。普段よりも身体が早く良く動くし、悪魔の攻撃を受けても、当然その部分に傷を負うけど重傷を負うということもなかった。「本当にゲームの世界に迷い込んだような非現実感がするね」と渚君が言っていたけど、僕もそう思う。それに周囲の時の流れが遅くなっているような、それでいて僕らの時間は加速しているような感覚がして眩暈がするようだった。実際、長く感じても悪魔との戦闘では殆ど時間は経過していなかった。これもまた不思議だった。マヤ先生やリツコ先生に聞けばわかりやすく教えてくれるかもしれないのけど。
 そんなこんなで何度目かの戦闘を終えて、丁度学校とサンモールの中間に差し掛かったくらいでとうとう鈴原がへたばってしまった。こればかりは『ペルソナ』の能力を使っても回復しなかった(惣流や霧島の『ペルソナ』が傷を癒す回復魔法を使えるようになった)為、どこかで休むことにした。焦る気持ちはあったけど、みんなもそれなりに疲労しているし、いつ悪魔が襲ってくるかわからないような状況では無理は出来なかった。

 「そこに神社があるからそこで休もう。加持さんの話が本当なら悪魔が寄って来ない筈だから安心して休めるぜ」

 ケンスケの提案に従ってすぐ近くにある神社-音屡風(ネルフ)神社で休むことにした。
 僕らは音屡風神社で、意識を取り戻した女性から話を聞くことが出来たんだけど・・・それはとても信じられないような内容だった・・・
 そして僕はこのとき、心の底から今までの日常が崩れていくのを実感した・・・・・そして、もう後ろに戻ることが出来ないことも自覚させられた・・・・




エンディングソング 「The Spiral」 by B'z(Album「GREEN」収録)












楽屋
シンジ :お疲れ様でした〜ペルエヴァ7話でした〜
ケンスケ:しかし、また随分間隔があいたな
ヒカリ :そうね
シンジ :ん? アスカは? いつもなら必ず文句言うのに
ヒカリ :加持さんがいるから
トウジ :向こうではしゃいどるで
シンジ :あっ、そう(ホっ)
マナ  :ふっかーつ!!
マユミ :長かったですね〜
ヒカリ :お久し振り〜やっと復帰ね〜
マナ  :ううう、全国の鋼鉄ファンのみんなただいま〜!!
レイ  :私の出番がないのはどうして?
一同 :うわぁ!!!!
シンジ :綾波どうしてここに!?
レイ  :碇君、どうしてそういうこと言うの?
シンジ :どうしてって・・・
ヒカリ :楽屋って、参加できるのその回の登場人物だけじゃないの?
レイ  :問題ないわ
トウジ :何でやねん!
レイ  :だって出番がないんですもの・・・
マナ  :え〜私だって出番ないよ〜!?
マユミ :私もですよ!?
ケンスケ:綾波は他の作品に出てるからいいだろ?
ヒカリ :そういえば、ここに都合よく作者からの手紙があるわ。
     『いつとは言えないが、もうしばらく我慢してくれ』ですって・・・
レイ  :・・・・・そう、もう、駄目なのね・・・
シンジ :いや、だからもう少しの辛抱だってば
レイ  :碇君が優しく抱きしめてくれれば大丈夫かもしれないわ
シンジ :ええ!?
マヤ  :ハイ、差し入れですよ〜
トウジ :をを! 待っとりましたで〜今日はおでんですかい!
ケンスケ:いいね〜最近寒いし
ヒカリ :じゃあ楽屋はここら辺で
マナ・マユミ :次回からは私たちも活躍しま〜す!!
マナ・マユミ・マヤ :それじゃあ、せ〜の、次回もサービスサービス!!




後書き
 すいません、遅れてしまいまして。しかも2回更新と言っておいて1回だけで・・・。
 目的地をパリに設定して直行便を予約したら何故かドバイで乗換えが・・・しかもドバイの免税店で遊んでいるうちに飛行機は行ってしまい(以下略)
 要するに描いている途中で新しく商店街の話を思いついて追加したら、更に加持も追加してしまって収集がつかなくなってしまったんですな。前回のラストで予告めいたことを書かなければ問題なかったですがね(汗)こんな小説でも待っていてくれた人に申し訳ないです。
 最後まで読んでいただきありがとうございます。これからも頑張りますので忘れないでいただければ幸いです。

031126



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