< ペルエヴァ6話 >

お願いだからさ




 「ところで碇、さっきからお前の頭についてるのは何や?」

 その一言で、さっきまでの重苦しい雰囲気は一気に吹き飛んでしまった。トウジはいつも暗くなった雰囲気とかを一遍に吹き飛ばしてくれる。本人に自覚がないみたいだけど、トウジがいてくれるととても助かる


 「何言ってるんだよトウジ、碇の頭には何もついてないぞ」
 「何か、羽根の生えたものがシンジの頭についてる・・・相田、見えないの?」

 え?え?何が僕の頭にっ???

 ついでに暗く沈んだ僕の思考も消されてしまったみたいだ。それはあっという間だった。パニックに陥った僕はただオロオロするばかりでまともなことなんか考えられなかった

 「あら?ピクシーじゃない。妖精よ。悪戯したりもするけど、基本的には善良で、好奇心旺盛で人間にも友好的よ」
 「成る程、妖精ね、って、ええええっーーーー!!何でそんなものが僕の頭にっ???」
 「さあ?シンジ君が気に入ったんじゃないの?私に聞くより直接聞いてみれば?」

 直接聞いてみれば? ってそんな軽く?・・・・。っていうか妖精??何それって感じなんですけど?何でそんなに平然としてられるんですか?マヤ先生・・・おかしいとは思わないんですかっ?思ってくださいっ!!今すぐっ!!!陽性?養成?妖精ってあの外国の童話とかに出てくる?あれって架空の物語でしょ?何で現実に存在するんですか?答えてマヤ先生!!!

 「直接?伊吹先生、言葉が通じるんですか?」
 「『ペルソナ使い』ならね。逆に言えば『ペルソナ使い』じゃないと見えないし、話せないわ」

 そうか、だから相田には見えないのか・・・。ペルソナって闘う力だけじゃないんだ便利だな〜、って、いや、だから、言葉が通じるとかじゃなく、それ以前の問題でしょっ??何で妖精がいるのさ?渚君も何でそんなに冷静でいられるのっ?

 「何故俺だけ『ペルソナ』が使えないんだ・・・・・」

 あ、ケンスケが拗ねてる・・・

 「相田だからでしょ。ってそんなことより、シンジ!その妖精だか何だかを何とかしなさいよ!!そんなモン学校に持ち込むつもりなのっ?!」

 そこから惣流と僕の頭にくっついている「そんなモン」呼ばわりされた妖精(?)の口論・・・というより口喧嘩が始まった。惣流は妖精に対して、「頭から降りろ」の一点張り、妖精は妖精で「嫌だ」の一点張り。交渉も何もあったもんじゃない、お互い平行線でどこまで行っても交わることはないだろう。そして、それは惣流が二人いるのかと思わせる凄まじいもので、放って置けば両方一歩も譲らずいつまでも果てしなく続きそうだった。しかもその勢いの激しさに誰も会話に加われなかった。訂正、加わりたくなかった。

 「あらあら、シンジ君気に入られたわね〜」
 「碇君が気に入られたと言うより、碇君の頭が気に入られたみたいですけど・・・」

 マヤ先生がそんな暢気なことを言っているその間も惣流と妖精ピクシーのバトルトークは続いていた。しかも両方ともマシンガントーク・・・間に立ったら一瞬で蜂の巣になると思う。っていうか気に入られても嬉しくないし・・・
 できれば、頭から降りて欲しいけど・・・話しかけられる雰囲気じゃ、ないよな〜。どうせ僕が何か言っても聞いてもらえないだろうし・・・とか思ってたら渚君が話しかけてくれた。でも、その無謀な勇気ある行動の結果は・・・・・・・・・

 『あんた、何か気持ち悪いから嫌っ!』
 「なっ!!」
 「ぷっ、アハハハ!妖精にもあんたがナルシスホモだって事が分かってるのね。傑作だわっ!ピクシーも、あんた中々いい根性してる、気に入ったわ」

 ご愁傷様、渚君(合掌)
 取り敢えず、アスカと妖精の口喧嘩は止まったものの根本的解決にはならなかった。まだ頭に乗ってるし。しかも、渚君も相田と一緒になって拗ねてるし・・・・そんなことしてる場合じゃない筈なんだけど・・・・・惣流は惣流でさっきのことなどどこ吹く風で、一転してピクシーと打ち解けて仲良く話してるし・・・・誰でもいいから何とかしてくれないかな?

 『ナルシスホモ?何それ〜キャハハハ!』
 「ええっと、あの、ピクシーさん?できれば頭から降りて欲しいんだけど・・・」

 周りを見渡しても(わかってはいたけど)助けてくれそうな人は誰もいなかったので(よりややこしい展開にしてくれそうな人は2名ほどいたけど)、諦めて自分で話しかけてみた。

 『う〜ん、どうしようかな〜?』
 「その、お願いだからさ」
 『ま、いっか〜。ハイ!降りたわよ、で、私に何の用?』

 意外と素直に言うことを聞いてくれて、目の前に降りて来たピクシーと言う妖精は、15cmくらいの大きさで本当に羽根が生えていて、まるで人形みたいだった。

 「何の用って、君が僕の頭に勝手にくっついてたんだろ?」
 『だって〜気持ち良さそうだったんだもん〜。いいじゃない、減るもんじゃないんだし!』
 「いや、確かに減りはしないけどさ・・・・・」
 『ピクシーって言うのは種族名なのよ、私の名前はフィネアっていうの、よろしくね♪』

 頭から降りてきたピクシーは頼んでもないのに勝手に自己紹介してくれた。
 この、悪魔の名前を聞くと言うことが、どんなに凄いことなのかは、この時は全く分からず、また後で一騒動起こすはめになってしまったんだ。
 それをきっかけに僕は色々と話を聞くことにした。こういうときにオカルト少女の山岸がいたらきっと大喜びなんだろうな。でもこの妖精、本当に惣流みたいな性格だ・・・・・・・きっと言わないほうがいいな。

 「まず、何でここにいるの?ここってフィネアが住んでる所じゃないんだろう?」
 『何かねさっき次元の裂け目が出来てね、私達の世界と人間界が繋がったの』
 「「「「「ええええーーーーー!!!」」」」」
 「おい、何言ってるんだよ、俺はわからないんだから説明してくれよ!」
 呆然としていた委員長や拗ねていた渚君が一緒になって叫ぶと、これまた拗ねていた相田も突然復活して話に加わろうとしたけど、残念ながら会話の内容が相田にだけわからないんだよね。1人だけ言葉のわからない外国人がいるような感じで。可哀想に・・・・・相田

 「相田・・・僕たちの世界と・・・妖精の世界がつながったって・・・」
 「えっ?それって・・・」
 そう、それが意味することは唯一つ、これからはフィネアのような妖精がそこら辺に溢れるかも知れないということだ。しかもそれに気付くのは僕らのような極一部の人間だけ・・・・怪奇現象や超常現象の溢れる世界になるかもしれないんだ。いや、このフィネアを見る限り間違いないだろうと思う。

 『あのねえ、"私達"っていうのは、私たちピクシー一族だけじゃなくて人間が悪魔と呼ぶもの総てよ』
 「何だってっ!?」
 「「何ですってぇぇぇぇ???!!」」
 悪魔?全部?・・・・・ハハハハハハ・・・・・もう何がどうなってるのか・・・・・・
 「だから!どうなってるんだよ?!」
 「相田・・・出入りできるのは妖精だけじゃなくて悪魔全部だって・・・」
 「何ぃぃぃぃ〜〜〜〜〜?!!!!それっててて、かなりやばいんじゃないかっっ??」
 『今はまだ次元の裂け目が小さいから私達みたいに力の弱い悪魔しか来れないけど、裂け目が大きくなるにつれて力の強い悪魔も人間界に来れるようになるわ』
 「えっと、これからどんどん強い悪魔が人間界に来れるようになるって・・・・・・・・・」
 「・・・・・アハハハ」
 それは人類全体に対する死刑宣告みたいなものかもしれない・・・強い悪魔って言われても僕には全然わからないんだけど、何かヤバイって感じだけは伝わってくる。

 「じゃあ、さっきの死体みたいのがこれからも出てくるの・・・?」
 『死体って?』
 僕はフィネアにさっき病院であった出来事を説明した
 『それはきっと低級霊が入り込んだのね』
 「へ〜成る程、良く知ってるんだねフィネアは」

 全国、いや全世界にある病院の霊安室から死体が溢れ出る姿を想像すると・・・・・

 『へへへ〜凄い?凄い?もっと誉めてっ!!』

 誉めてあげる余裕なんかないな・・・。きっと世界中が大パニックになるよ。まあ死体だけなら警察や軍隊が出動すれば何とかなるかもしれないけど、フィネアのような妖精が悪戯やらし始めたら?・・・・
 しかし、さっきから自分でも冷静だと思うけど・・・冷静と言うよりもショックが大き過ぎて感覚が麻痺してしまった感じかな?僕って意外と状況適応能力が高いのかもしれない・・・それとも、やっぱり、みんなが言うように鈍いんだろうか?そんなことはない、と思いたいんだけどなぁ〜




 僕らはそのまま歩きながらフィネアに話を聞いた。それはきっと奇妙な光景だっただろう。何も空間に話しかけて会話してるのだから。でも幸か不幸か周囲には僕らを見ている人は誰もいなかった。本来いるべきはずの人がいない、それはとても恐かった。

 まず、フィネア達が住む世界 −魔界と呼ばれているらしいが、これは人間だけが使う呼び名らしい− にはフィネアの種族だけでなく、様々な種族の悪魔 −悪魔っていうのは魔界の住人のこと全般を指すらしい− がそれぞれテリトリーを定め住んでいるらしい。姿も、性質も多種多様で言語も生活形態もそれぞれ違うらしく人間界 −僕らが住んでいる世界− と住んでいる住人が違うだけでそう変わらないらしい。尤も文明の発展度や基本的な思考形態などは流石に大きく違うみたいけども。魔界には魔貨という貨幣もあるらしく、聞けば聞くほど僕たちの社会との共通点が見つかる。
 で、その魔界と人間界は昔から一部つながっていたらしいんだけど、その扉の大半は小さなモノで、且つ不安定なものが多かったので、妖精のように好奇心旺盛な種族や、人間を餌にしようとする −これには文字通りの意味以外にも様々な意味がある− 種族を除けば、特に人間界に行こうとする者はいなかったらしい。逆に、人間に召喚されて人間界にやってくる悪魔の方が多いくらいだという話だ。例えば有名なゲーテの作品に出てくる悪魔とか。童話に出てくるような妖精は大抵は好奇心から自分で人間界に来てるのが多いけど、中には戻れなくなってそのまま人間界に居つくのもいるという話だ。
 で、今回比較的大きな穴が突然空いて、それが徐々に広がっているらしいんだ。それで大体は様子見してるらしいけどフィネアのように好奇心旺盛な種族は我慢できなくなってさっさと人間界に来たらしい。そういえば関係ないけど、フィネアは羽根は生えているけど、別に飛ぶのに羽根は使っていないらしい。魔力で飛んでる、って言われても魔力って何?そう聞いたらピクシーという種族だけが持つ固有の能力だと思ってくれればいいと言われた。どうもあの投げ遣りな口調から察するに厳密にいうと違うんだろう。そんな詳しく説明されてもわからないけど・・・・

 しかし、どんどん漫画みたいな話になっていく・・・これって夢じゃないよね?夢だったらどんなにいいことか・・・。毎日が平和で、くだらないことで笑えた昨日までに戻りたいと心から思う・・・・・・・・・



 「ねえフィネア、いつまでついて来るの?」
 色々な話が聞けるのは便利だけど、流石に連れ歩けるものでもないので聞いてみたら、ほんのちょっと考え込むと、『あっちの方が面白そうだわ〜』ってあっさりどこかに行ってしまった。さっきまで頑固に僕の頭の上に居座っていたのが、何なんだろうと思うくらいあっけなかった。ほんと、気紛れで移り気なところも惣流そっくりだ。
最後に何かよくわからないモノをくれたけど何に使うんだろう?








 そして僕たちは霧島と山岸に出会うことが出来た。
 けれど、そこには彼女たち以外に、もう1人増えていたんだ・・・・・・・・






エンディングソング 「おでかけしましょ」 by B'z
(Album 「The 7th Blues」収録)










楽屋

シンジ :お疲れ様でした〜ペルエヴァ6話でした〜
アスカ :成る程ね〜今回と前回で少しだけど『ペルソナ』と世界観については少しわかったわ
シンジ :そう?良かった
アスカ :で・も!本当に少しだけよっ!!わかったことより新しい謎の方が多いじゃないっ!!
ケンスケ:そうだ!何で俺が『ペルソナ』が使えないんだっ!!断固抗議するっ!!!
ヒカリ :相田君のことは兎も角アスカの言うことにも一理あるわよね〜
カヲル :説明しても更に伏線が出てきてるからね〜ゲームをやったことがある人にはわかるんだろうけどね
アスカ :このサイトに来てくれてる人の殆どが『ペルソナ』知らない人ばかりじゃないっ!!
ヒカリ :そうね、知りません、わかりませんの声ばかりよね、今のところ
シンジ :そだね、東京都在住のTさんから貰った感想に書いてあったけど、やっぱりこの手の話はガンガン進めていかなとわかりづらいって
ヒカリ :そうね、事実だわ
アスカ :ヤッパリ!作者に文句言ってガンガン書かさないと!ちょっと行って来るわ!
トウジ :何やアスカはどこ行ったんや?
シンジ :気にしなくていいよ
トウジ :そか
ヒカリ :と・こ・ろ・で、トウジ?
トウジ :何や?
ヒカリ :何をしてたのかしら?
トウジ :ギクギクっ!
ケンスケ:あれ、伊吹さんもいないな
ヒカリ :トウジィ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜?
トウジ :・・・・シンジ後は任せたっ!!
ヒカリ :トウジーーーーーーーー!!!!!!!
シンジ :・・・・・・・・
ケンスケ :トウジの奴、浮気してたな・・・・
カヲル :さてじゃあ今回は僕が、サービスしよう。本来ならシンジ君にしかサービスしないんだけど、特別だよ。
マヤ  :それじゃあ、次回もサービスですぅっ!!

カヲル :・・・・・・・・・・・(シクシク)




後書き

 お待たせしました、ペルエヴァ6話です。今回も読んでいただき、ありがとうございます。えっと今のままですと10話くらいまではスムーズに月2回でいけると思います。多分、メールやら掲示板やらがあると更に早くなるか、外伝が出る、1話分の分量が多くなるなどの+αがあると思われます。
 それじゃあまた、ペルエヴァ7話か他のSSでお会いしましょう。




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