思春期だね碇君!!

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 午後の授業の開始を報せる音楽「We Will Rock You」(by QUEEN)が流れてもシンジは保健室にいた。一瞬たりともレイから目を逸らすことなく見つめ続けている。ちょっと恐い。・・・・・・・いやかなり恐い。それこそ、天国にでもいるかのような至福の表情を浮べている。
 激情版よりもヤヴァイかもしんない(笑)

 一方のレイだが、まるで死んでいるかのように全く動きを見せず、呼吸すらもとても静かで注意しないと気付かないほどだった。人よりも美しい人形、そんな言葉がシンジの頭に浮かぶがシンジが求めているのは人形ではなく人間だ。だからこそもっとレイのことを知りたいという欲求が沸いてくる。そして、自分の事を知ってもらいたいという願望も。
 だがそのどちらも恐く、またレイのことを見ているだけで幸せになってしまう。臆病な小市民、シンジの姿がそこにあった。勿論、レイへの恋心が日増しに増大するに比例して恐怖が薄れているのだが。
 そんな心の中の葛藤も今のシンジからでは誰も気付けないだろう(爆)

 つうか、気付いたら神(笑)

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 どれほどの時間、シンジはレイを見ていたのだろうか? まだ午後の授業は終わっていない。窓からはバスケットをしている生徒が見える。夏休みが明けても暑さはそれに応じて勢いを緩めてはくれない。むしろ激しさを増しているかのようだ。透き通るような少女の色白さはまるで作られたもののように見える。真夏に降る雪のようだ。

 「・・・ここは?」
 「保健室だよ」

 僅かに首を動かしシンジの方を見る。恐らくレイの問いかけは、誰に向けられたものでもなく自分自身へと向けられたものが偶然声に出てしまっただけなのだろう。シンジが答えなければその存在に気付かないまま、黙ってこの部屋を後にしていたのではないかと思わせるほどレイの表情には変化がなかった。しかし、ベッドの中ではシンジの声が聞こえた瞬間キュっと左手を握りしめられていた。シンジはあふれ出しそうになる言葉を押し止め、できる限りの冷静さを装ってレイに答えた。それでも上ずった声は誰が見ても緊張している事がわかる。

 「・・・・・・」

 レイは視線を宙に戻すとゆっくりと目を瞑り、静かに息を吸い込む。たったそれだけの行為が息をのむほどに美しく、視線が釘付けになってしまう。シンジは用意しておいた言葉も忘れ口をあけたまま、目だけで動作を追い続けるのだった。
 ゆっくりと体を起こす。ほんの少しの髪の寝癖と寝乱れた制服。シンジ激しくレイを抱きしめたい衝動に駆られたが、紅い瞳から放たれた視線に身体ごと心を貫かれ思考が停止する。まるで、触れてはいけないもののように思えた。

 「・・・あなたが?」
 「・・・・・・・・えっ?」
 「あなたが運んでくれたの?」
 「え?あ、う、うん。綾波気絶しちゃったからそれでっ。別に変なところとか触ってないから安心してっ」

 レイの言葉は疑問なのか、ただの確認なのか、どちらともつかない口調だった。突然自分に向けられた言葉に、シンジは焦り口早に説明するが喉の奥に言葉が引っかかる。頭の方はもうパニックになっていて、まともな文章を考える能力はなくただ発作的に断片的な事実を口走るだけだったが、それでも通じたように思えた。

 「・・・・・・ありがとう」
 「え?」

 レイの笑顔が目の前にあった。その瞬間頭の片隅で、いや頭ではなく心、それも欲望が支配する領域で理解する。この笑顔も、言葉も、全てが自分に、自分だけに向けられているという事実に。それは狂喜すべきことだ。それこそがシンジの望みなのだから。

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