超初心者のためのFF講座
「とりあえず外見だけでもそれらしくしてみよう」
暫定版

 このページはあくまでも「外見だけもそれらしくする」という趣旨で書いています。従って、人物をどう描いたらいいかとか、伏線はどう張ったらいいかとか、そういう高度な小説の技術論には言及しませんのでご了承ください。というか、そういう高度な技術論はこっちが教えて欲しいって話です。つまりこれは小説講座ではなくて文章講座です。
 どういう文章がそれらしい文章なのか、というのは実はかなり難しい問題ですが、ここでは深く考えることなく、一般的な小説(本屋で売っている小説です。必ずしも二次創作小説やケータイ小説のことではありません)がどういう作法で書かれているかを基本に、横書きであることとブラウザで見ることを考慮して書いてみました。

  1. 段落を意識してみよう
  2. 「……」や「――」
  3. セリフ
  4. 「!」と「?」
  5. 顔文字・(笑)・orz
  6. 読点の打ち方
  7. フォントで驚かすのはやめよう
  8. 漢字が多すぎませんか?
  9. 数字をどうするか
  10. 何度も読み直そう
  11. 最後に
以下執筆中


 
段落を意識してみよう

 段落というのは「文章を内容からいくつかのまとまりにわけたときの一区切り」のことです。非常にわかりにくいですが、他に説明のしようがありません。センテンス(文)以上で章以下の区切りであると考えてください。
 原則として、段落は一文字下げで始まり改行で終わります。上の文章なら「段落というのは」から「考えてください」までがひとつの段落です。
 
廃墟と化した街が暗闇で哭いていた。
彼は闇を呼吸していた。
ひとりの老人が、彼の背後にいた。
老人は男の背中を、その濁った瞳で射抜くように見つめていた。
 
 こういう例文を考えるのは結構大変なんですが、この例では行頭の字下げがなく、ひとつの文で改行されています。つまりこの文章には段落はありません。あるいは、この調子でずっと続くならば全てがひとつの段落ともいえるでしょう。それはそれで悪くないのかもしれませんが、メリハリはありません。もうひとつ、行頭で字下げをしない場合の欠点は、ひとつの文章が二行以上になった場合です。
 
凍るような沈黙の中、不意に老人が呼吸を止めた刹那、崩れた建物の影から一人の男が滑るようにその巨体を現した。
老人は笑った。
単に表情を歪めただけのようにも思える笑いだった。
闇を呼吸している男は、何にも気づかないように立っているだけだった。
 
 急に読みにくくなったような気がしませんか? 文ごとに空行を入れる(つまり一行空けにする)という手もありますが、間があき過ぎて読みにくくなると思います。単に行頭に字下げを入れるだけでもいいですが、文ごとにいちいち改行するのを止めるという手もあります。
 
 廃墟と化した街が暗闇で哭いていた。
 彼は闇を呼吸していた。
 ひとりの老人が、彼の背後にいた。老人は男の背中を、その濁った瞳で射抜くように見つめていた。
 凍るような沈黙の中、不意に老人が呼吸を止めた刹那、崩れた建物の影から一人の男が滑るようにその巨体を現した。
 老人は笑った。単に表情を歪めただけのようにも思える笑いだった。
 闇を呼吸している男は、何にも気づかないように立っているだけだった。
 
 こうなります。ただ、この手の文章でこれが正解なのかというのは疑問で、私なら文ごとの改行はそのままで行頭字下げを入れるだけにするでしょう。こうするとこの段落はもはや「内容からいくつかのまとまりにわけた」とは言えず、詳しくは形式段落と呼ぶらしいですが、とりあえず段落で文章を区切ることを考えてください。段落の行頭で字下げをする、必要ない時は改行しない、です。

 
「……」や「――」

 「…」は“三点リーダ”、「―」は“ダッシュ”と呼ぶのが一般的です。簡単に書けば、両者とも読点(、)以上の間を表すと考えておけばいいでしょう。
 ダッシュはマイナス(−)やハイフン(‐)と間違えないようにしましょう。見分けはつきにくいですが、以下で説明するように二個ペアで使うと(ブラウザのレンダリングエンジンとフォントによっては)繋がって見えるので美しいです。
 いずれも多用しすぎると間の抜けた感じになるので注意が必要です。

 三点リーダは、文末などに置いて余韻や沈黙を表現するのに使います。と書くと堅苦しい感じですが、綾波レイのセリフで多用されることが多いのでおなじみかと思います。通常は下のように二個ペアで使います。
 
「碇くん……」
 
 中黒(・)やピリオドで代用するのは基本的には間違いです。例えば、
 
「・・・惣流・アスカ・ラングレーだな?」
 
 などと書くとやや見苦しいかと思います。そういうことです。

 ダッシュも三点リーダと同様に二個ペアで使います。上に書いたように、用途も似たようなもんです。ではどう使い分けるのかという問題が出てきますが、私の場合は三点リーダを言葉に詰まった場合に、ダッシュを思考が詰まった場合に使うことが多いです。この辺は感覚的なもので問題ないと思います。
 ダッシュの利用法は多岐に渡り、例えば()のかわり
 
 綾波レイは――それは隣にいるシンジにしても同じかもしれないが――その灯りを美しいと感じた。
 
 冒頭において登場人物の心の中のセリフとして
 
 シンジが振り向いた時、その使徒はもうそこにはいなかった。
 ――しまった!
 次の瞬間、彼は頭部に強い衝撃を感じた。
 
 相手のセリフを遮る時
 
「碇くん、わたしは――」
「いいんだ」
 シンジは涙声のレイに言った。
 
 のようにも使います。この使い方は、
 
「碇くん、わたしは「いいんだ」」
 
 などとやるよりも、特にシリアスな小説ではバカっぽくならなくていいでしょう。

 イレギュラーですが、長音(ー)を連続させたい時に使うという手があります。
 
あーーーーーーっ!
 
 と書くとなんだか間抜けですが、  
あ――――――っ!
 
 だとそこそこマシなような気がしませんか?

 単に間を表す使い方としては
 
綾波レイ――彼女の心には空虚だけがあった。
 
 みたいな感じかと思います。

 
セリフ

 セリフの最後に句点はつけるべきかという問題があります。句点というのはマル(。)のことです。
 句点をつければ、
 
「綾波。君が好きだ。」
 
 になり、付けなければ
 
「綾波。君が好きだ」
 
 になります。現在はつけないのが主流のようです。特にポリシーがなければ句点なしを推奨しますが、どっちでもいいです。プロ作家の本を見ても出版時期によって(あるいは編集者によってか)色々だったりします。ただ、ひとつの作品の中で混在させるのはやめましょう。

 セリフの行を字下げすべきかという問題があります。
 例えば、字下げをしなければ
 
 シンジはレイの瞳をじっと見つめて言った。
「綾波……。君が好きだ」
 笑えばいいのかもしれない、とレイは思う。だが笑えなかった。かわりに涙がこぼれた。涙を流す意味などどこにも見当たらないはずだった。だがどうしても止まらなかった。
「おいしいものを食べに行って、遊園地に行って、海水浴に行って……。夕陽を見ながら、海辺を二人で歩きたいんだ」
 レイが怯えた仔猫のような声で言った。
「手を、つないでくれる?」
「つなぐよ」
「幸せにしてくれる?」
「する。誓うよ。絶対幸せにする」
「……キスは?」
「する。今すぐにでも」
 抱き締められ、口唇をふさがれた。わたしはここにいてもいいんだ、と彼女は信じた。そう信じられるだけの理由が、間違いなくここにあった。ここが自分の居場所だった。だから彼女は、シンジのキスから逃れた。自分の言葉を伝えるために。
「碇くん……。わたしも、あなたが好きです」
 その言葉にシンジが再びキスで答える。それは、最初のキスよりも長く深かった。
 
 字下げをすれば
 
 シンジはレイの瞳をじっと見つめて言った。
 「綾波……。君が好きだ」
 笑えばいいのかもしれない、とレイは思う。だが笑えなかった。かわりに涙がこぼれた。涙を流す意味などどこにも見当たらないはずだった。だがどうしても止まらなかった。
 「おいしいものを食べに行って、遊園地に行って、海水浴に行って……。夕陽を見ながら、海辺を二人で歩きたいんだ」
 レイが怯えた仔猫のような声で言った。
 「手を、つないでくれる?」
 「つなぐよ」
 「幸せにしてくれる?」
 「する。誓うよ。絶対幸せにする」
 「……キスは?」
 「する。今すぐにでも」
 抱き締められ、口唇をふさがれた。わたしはここにいてもいいんだ、と彼女は信じた。そう信じられるだけの理由が、間違いなくここにあった。ここが自分の居場所だった。だから彼女は、シンジのキスから逃れた。自分の言葉を伝えるために。
 「碇くん……。わたしも、あなたが好きです」
 その言葉にシンジが再びキスで答える。それは、最初のキスよりも長く深かった。
 
 例文がなんともあれですが、とりあえずこうなります。純然たる見た目の問題です。私としては字下げなしを推奨しますが、これも作品内で統一されていればどちらでもいいでしょう。特にポリシーがなければ字下げなしで書いて下さい。出版物では字下げなしの方が一般的かと思います。

 それから、セリフの前に名前を入れて
 
シンジ「綾波! 君が好きだ!」
レイ「わたしも、碇くんが好き」
 
 などとやるのはやめましょう。これはシナリオです。

 
「!」と「?」

 「!」や「?」の後ろは一文字あけることになってます。句点や読点は使いません。
 
「綾波!君が好きだ!。」
 
 これは間違い。下が正解です。  
「綾波! 君が好きだ!」
 
 例文ネタに窮してきた感も漂いますが、その辺は気にせずに。
 両方同時に使うときは、普通は「!?」です。「?!」ではありません。
 普通は全角でいいと思いますが、お好みで半角でもいいでしょう。作品内でどちらかに統一すべきではあります。
 二つ同時に使う場合(「!?」や「!!」)は半角にするべきという説もあります。その場合は「!!」や「!?」となります。これは縦書き時の配慮ですが、横書きの場合はお好みでどちらでもいいと思います。

 「?!」に関する追記:これは「?!」という活字がなかったという理由によるそうで、現在ではお好みでどちらでも構わないようです。びっくりして疑問に思うなら「!?」、疑問に思ってびっくりするなら「?!」でしょうか。それでも私としては「!?」を推奨します。

 
顔文字・(笑)・orz

 使わない方が無難です。やめましょう。登場人物がメールのやり取りをする場面とかなら問題ないと思いますが。

 
読点の打ち方

 読点(、)の打ち方について詳しく書くと、私が書けるかどうかはともかくとして本が一冊書ける(実際にそういう本があります)ので、詳しくは書きません(書けません)。
 一般論として、最初のうちはどうしても読点が多くなる傾向があるようです。必要のないところに打つ必要はないので、試しに減らしてみましょう。まずは全部取っ払ってしまいます。そこからどうしても必要だと思う部分に打てばよろしいかと思います。どこに必要かというのはいずれその手の書籍で学んでいただくとして、とりあえずセンスでいいでしょう。書き続けていくことによってセンスが磨かれれば、あえて書籍で学ぶ必要はないかもしれませんが。

 ここでは一点だけ、読点の位置によって文章の意味が変わるというケースについてのみ書いておきます。
 例1
 
シンジは、泣きながら立ちつくすレイを抱き締めた。
 
 例2
 
シンジは泣きながら、立ちつくすレイを抱き締めた。
 
 泣いているのは誰でしょう、という話です。
 例1ではレイが、例2ではシンジが泣いています。読めばわかりますよね? 詳しく書くと、「文節は直後の文節にかかりやすいが、読点でそれを分けることができる」あたりになるのでしょうか。乱暴に書きますが、例1では「シンジは」が「抱き締めた」にかかっていますが、例2では「泣きながら」にかかり、「シンジは泣きながら」になった上で「抱き締めた」にかかっています。では例1の「泣きながら」は何にかかってるのかといえば、「文節は直後の文節にかかりやすい」ですから、「立ちつくす」でしょう。文章の意味的には「レイ」でいいと思いますが、文法論になりそうなので深く追求するのはやめます。
 やや蛇足ぎみですが、読点によるかかり受けの変化は語順を変えることではっきりします。
 例1は
 
泣きながら立ちつくすレイをシンジは抱き締めた。
 
 例2は  
立ちつくすレイをシンジは泣きながら抱き締めた。
 
 とも書けます。文章としてどちらが優れているかを判断するのは作者です。

 
フォントで驚かすのはやめよう

 我々が思いつくようなことはもう誰かがやっています。例えば一ページ全部使って急に

などとやるのは――出典が確認できなかったので断言はできませんが――恐らくは小松左京が1970年代、もしかすると60年代にすでにやっています(色はついてなかったと思いますが)。文字を絵として使うタイポグラフィック的な作品もはるか昔からあります。一部フォントをゴシックにするとかは珍しくもありません。もちろんそれが効果的であれば何の問題もないですが、ストーリーあってこそです。これを読んで「なるほど」などと思ってる人はそういう段階にはいないはずなので、この手のこけおどしには頼らず文章のみで勝負しましょう。
 もっとも、こういうギミックが比較的手軽に使えるのはウェブの強みでもあるので、どうしても使いたければ使ってください。小声で話すときにフォントサイズを小さくするとかは、ぶっちゃけ私もやったことがありますが、ギャグっぽい作品であれば悪くないかなとは思います。

 
漢字が多すぎませんか?

 ほとんどの方はパソコンで小説を書いているでしょう。漢字には変換してくれるし、ネットに繋がってればオンラインで辞書は引けるし、便利になったものです。ということで、便利さにおぼれて漢字を多用しがちです。作者が読めない漢字は恐らく読者にも読めませんし、登場人物にも理解できないでしょう。鑿壁偸光とか、知ってますか? 「さくへきとうこう」と読むんだそうです。私はアスカが難解な漢字を勉強するという設定の小説を書いたときに調べて知りましたが、普通は知らないでしょう。沈魚落雁という言葉はほんの数分前に知りました。シンジに「綾波、君は沈魚落雁だ」とか言わせてもレイは無反応でしょう。彼女の場合は普通に「美人だ」と言っても無反応かもしれませんが、ここで言いたいのはそういう話ではありません。
 
 僕は身を捩り乍ら沈んで行く。兎に角この深い深い海の底へ。安寧と静謐に充ちた破滅を齎すこの底無しの虚無の只中へ、如何にもならず堕ちて行く。
 
 これはとあるプロ作家の文章を改変(改悪)したものですが、さすがにこれはどうかなと思いませんか? というか、読めますか? これは極端な例ですが、似たような例はいくらでも転がっています。
 もちろん、漢字の多用は独特な雰囲気を作るという要素は見逃せません。必要があれば使ってください。ただ、語彙を増やすこと、基本的な文章力を上げることにも注力してください。プロ作家の作品を読むと、驚くくらい簡単な言葉でひらがなを使っているケースも多くあります。

 
数字をどうするか

 漢数字を使うのかアラビア数字を使うのかという問題です。横書きであるという前提条件があるので、これはなかなか難しい問題です。アラビア数字を使うなら半角にするか全角にするかという問題も出てきます。
 ひとつ確実にいえるのは、ひとつの文章中での混用は避けるべきだということです。
 
三時の待ち合わせだったのに、ついたら4時だった。
 
 これはダメです。どちらかにしましょう。
 具体的にどちらかを使うのかは、私にも迷いがあります。原則としては漢数字を使うことにしていて、上記の例なら間違いなく「四時」を使いますが、「二〇一五年」あたりだとちょっと迷います。これを「2015年」とするなら「2015年3月31日」とすべきで、「二〇一五年3月31日」はダメです。見た目が変でしょう。全角にして「二〇一五年3月31日」でもダメです。
 なるべく統一する方向で、お好みで選んでください。ある場所は「三月」別の場所では「3月」というのは避けるべきです。

 
何度も読み直そう

 書きあがったら、とりあえずは心地よい疲労と達成感、俺はあたしは天才だという自己満足に浸りつつ寝てください。翌日、できれば数日後、ほぼ素になったところで冷静に読み直してみてください。意味の通らない文章やギャグかと思うような誤変換が見つかるはずです。ミスがなければチェックミスです。何度も何度も読んでください。私の場合は、どうかすると書きあがってからの修正の方が時間がかかります。力を出し尽くしたなと思ったら投稿してください。お待ちしてます。お疲れさまでした。

 
最後に

 このサイトにおいてある小説で、この講座に書いてあることに従っていない作品も多くあります。これは様々な判断だったり、作者の深い思慮の元にあえて従ったりしていないケースです。もちろん私の無知もあります。
 代表的な例としてタッチ氏のことに触れておきましょう。氏の作品は、漢字は多いし文末に句点はないし一行空けだし字下げはないし、まるで逆に書いてるように思えます。結論から書けば、氏の書こうとしているのは小説ではないのです。詳しくは私的タッチ論を参照していただきたいのですが、文章を用い、小説でも詩でもないスタイルで何かを表現しようとする場合、それなりの覚悟が必要です。安易にまねをするべきではありません。とりあえず基本的な書き方をマスターした上で、挑戦するなら挑戦してみてください。



以下執筆中