Re: サイト開設十周年カウントダ ( No.29 ) |
- 日時: 2010/08/21 11:42
- 名前: naibao
- キス、してください
少女が頬を染めて言う。 少年は少女の肩を引き寄せ、片方の手でゆっくりと頬をなでる。 ついに、2人の距離は――
■■■君に、降る、雨■■■
実験からの帰り道 休憩室のモニターに映っていた情景を思い出していた。
セカンドインパクト前のドラマのワンシーン。10代の若い男女が雪の降るなか佇んで いる。
キス、してください。
少女の言葉をうけて少年が近づき2つの影が1つになる。少年も少女も満ち足りた表情 を浮かべていた。
――なぜ、 わたしはこんなにもあのシーンを気にするのだろう。これまで何度もそういったドラマ を同じ場所で目にしていたはずなのに、こうして後になってから思い出すということは なかった。
思考を巡らせるうちに、鞄を提げていない右の手のひらが熱を持っていることに気づく 。――いつの間にか、雨が私を包んでいた。
夕立とは少し趣が違う、穏やかな雨。 傘も持っていないしすでに十分に濡れてしまっている。雨宿りをするのも、走って帰る のも今更だと感じた。――それに、こうして雨の中に居ることが心地よかった。
雨の中は静かだった。小さな雨粒とともに私が少しずつ周囲に溶け込んでいくような、 そんな不思議な感覚。 ただ、私の右の手のひらの感覚だけが例外で、熱く、強く感じられる。 あのときの――使徒の火粒子砲を全身で受け止めた後の、泣き出しそうな彼の笑顔とと もに、彼の手のひらの感覚が蘇ってくる。 あの作戦以降、ふとした時にこの感覚が右手からじんわりと浮かんでくるのだ。
突然、意識を外側から刺激される。 彼が傘を差しのべていた。
傘の中はたくさんの音で溢れていた。
雨粒が傘を控え目に叩く音 一歩進めるごとに跳ねる水の音 私の右側を歩く少し不規則な息遣い
雨の中にいるときには感じられなかった、音。
歩調を早めたくなるような、でも、ゆっくり味わっていたいような。そんな不思議な感覚。
少しずつ少しずつ、雨脚は弱まっていく。しかし、私の耳に響く雨音は少しずつ少しずつ 、大きくなっていく。
雨が止み、雲の切れ間から光が射した。
傘から出ても、なお、雨音が聞こえる。
キス、してください。
またあのシーンが浮かぶ。
■■■了■■■
なんか『狙いすぎ』の感が否めないので、最後の一文を削除します。 削除文は以下。
『彼の体温が消えた私の右側が、じんわりと熱を持った。』
あと、細かいところの修正も行いました。
8月23日午前0時40分追記 naibao
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