Re: サイト開設十周年カウントダ ( No.34 ) |
- 日時: 2010/08/26 06:47
- 名前: 何処
- 【突撃!シンジの晩御飯!】
「…赤木博士。」 「何?」 「…これは…何ですか?」
ベッドの上、パジャマに包まれた上半身を起こした蒼髪の少女がその掌に乗った茶色の小瓶を赤い瞳に映す。
「正露丸。由緒正しい下痢止めの薬。その殺菌作用は虫歯のう喰孔へ詰める事で歯肉内の膿疱炎症を鎮められる事からも証明済み。」
金髪美女の解説に少女は瓶の蓋を開け、中の錠剤を数錠左掌に載せた
「…不思議な匂い…」 「ヨード臭は我慢なさい。さ、お水よ。」
少女は小瓶をシーツの上に置き、受け止ったコップの水で茶色の錠剤を咽下。空のコップと小瓶を片付けた美女は興味深げに少女へ質問した。
「大体何だって傷んだヨーグルトなんか食べたの?」 「傷んでいたとは知りませんでした。朝購入した物ですし、賞味期限内でしたので。なのに…普段はこんな…」 「…昨日の第三新東京大規模停電忘れた?」 「…あ。」 「本部の自家発電でジオフロントは何とか助かったけど…」 「はい。実験後、帰宅する為駅に行ったら列車まで止まってて…駅で二時間…」 「当然、冷蔵庫も冷房も止まってた訳よ。あの猛暑で六時間、買い物袋に入れっぱなしなら傷んで不思議じゃないわね。」 「…はい。」
「ま、薬を飲んだら今日は大人しく休んでなさい、水分はまめに摂取する事。後、冷蔵庫の中の食品も危ないわ、早めに処分するの。いいわね?」 「…はい。」
以前と違い防音のしっかりした新居。だが空調の音に紛れ微かに外の音が聞こえてくる。
(音?いえ…声…これは声…蝉の鳴き声…波の様に寄せて帰る…遠く…近く…止まずに続く…大きく…小さく…一瞬の制止…そして又…)
少女は呟く。
「そう…時雨…蝉時雨…」
…空調音に混じり静かな寝息が聞こえて来るまで、さほど時間はかからなかった…
数刻後。
来客を告げるチャイムの音が少女を眠りの園から呼び起こす。 現世へ意識を浮上させた少女が時刻を見れば既に17時を過ぎている。ベッドからゆっくり起き出し、パジャマ姿のまま少女は玄関を開けた。
「ハーイファースト!お見舞いに来てあげたわよ!」 「セカンド?」 「ん〜?未だ大分顔色悪いわね!あんたちゃんとご飯食べてる?」 「え、ええ。どうぞ上がって。」 「おっじゃましまーす♪」
彼女はスーパーのレジ袋を掲げ高らかに宣言する。
「食中り後でもプディングくらいなら食べられるでしょ?一緒に食べましょ!多めに買って来たから冷蔵庫仕舞うわね。」 「あ…有り…難う…」 「シンジは?見舞い来なかった?」 「未だ松代…明日までかかると赤木博…リツコさんが言ってた…」 「あの馬鹿…」 「でも…実験だから…」 「そんな事よりファーストの体の方が大切じゃない!バカシンジめ、帰って来たらシメる!」
そして彼女が冷蔵庫を開けた時、事件は起きた。
「な、何よこれ〜!?ちょっとあんた!冷蔵庫の中納豆とヨーグルトとキムチしか入って無いじゃなぁい!?!!」 「発酵食品は身体に良い…」 「あんたその発酵食品でお腹壊したんでしょ!?うわキムチの匂い凄!!」 「セカンドも食べてみる?キムチも納豆も美味しいわ。」 「じょ、冗談止めてよ、これどう考えても異臭よ異臭!」 「納豆は今一寸発酵が進んでアンモニア臭が出てるけど問題は無い…キムチも酸味が強くなってるけど乳酸発酵だから安全だし…」
「発酵にも程が有るわ√!!!」
さて次の日
「…て訳よ、あの娘あのままじゃ駄目だわ!」 「ふうん…」 「…シンジ、話聞いてた?」 「あ、うん。大変だったねアスカ…」 「…つっっまんない反応返すな馬鹿シンジ!」 「え?」 「大体あんたねぇ、愛しの彼女が体調崩したってのに見舞いにも行かないなんて何考えてるのよ!」 「え?だ、だって只の食中り…は?待った。一寸待った。ええと、か、彼女って誰の…え?あ、綾波が?」 「他に誰がいるのよ!」 「何で綾波が僕の彼女なのさ!?」 「何よあんたファーストが嫌いな訳!?」 「そんな事言って無いだろ!?」 「大体あんたは…!!」 「酷っ!?それ言うならアスカこそ…!!」 「…!!!?」 「…!!!!」
「ま〜た始まったよ。高校生になっても相変わらず仲のよろしい事。」 「何や又夫婦喧嘩かいな…イインチョ、止めへんのか?」 「無理よ…碇君、大変ね…」
「…と言う訳で、我々は今綾波宅の前に来ております。」
しゃもじをマイク代わりに持ったアスカが明後日の方向に何やら話し掛けている。 旗を持たされ傍らに立つ少年はため息をつきながら何事か呟いている…
「…何で僕まで…」 「あんたの彼女の事なんだから当然でしょ?」 「だから彼女じゃ無いのに…」
「碇君?セカンド?何してるの?」 「綾波!?あ、あのいやこれは…」 「ハーイファースト!見舞いに来なかった薄情な彼氏引き摺って来たげたわよ!」
「アアアスカぁ!?」 「…何を言うのよ…」
「で、あんた何処行ってたの?」 「買い出し…夕食の…お弁当にしたの…上がって。外は暑いわ。」
そして…
「え?」 「…これは…」 「牛丼弁当。牛野屋の。」 「(ね、ねえシンジ、ファーストってお肉嫌いじゃなかった?)」 「(の筈だけど…好き嫌い克服したのかな?)」
「あ、綾波、その…お弁当の中、見ても良いかな?」 「?良いけれど?」 「どれど…な、何よこれ〜!?!!」
「に…肉が無い…」 「肉抜き汁ダクダクだから…」
「「…うわ…」」
「…なんだかねぇ…」 「綾波…栄養のバランス考えた方が…」 「考えてる…」 「そ、そうなの?」 「そうは見えないけど…」 「足りないのはタンパク質とカルシウム、ビタミン群…で、これにネギと鰹節を混ぜた納豆を…」
「「ひっ!!」」
「…頂きます。」
少女食事中…
「…ご馳走様。」 「は…はあ…」 「…?碇君、セカンドは?」 「廊下…アスカは納豆苦手なんだよ…アスカぁ、終わったよぉ」 「…ほ、本当?本当に終わった?」 「…美味しいのに…納豆…」
さてその夜、コンフォート17の一室…
「…で?」 「だーかーらーこの娘を明日から預かるの!!あんな生活してたらこの娘マトモな女に育たないわ!」
「?碇君…私、そんなおかしい生活なの?」 「こ、個性的な生活なんじゃないかな?」
「えー?ま、アスカが自分の部屋へ泊める位なら別に構わないけど…でも牛丼に納豆美味しいじゃない?キムチと生卵も入れると完璧っ!?痛った〜〜…な、何も殴らなくてもいいじゃないアスカぁ…あ痛ぁ…」 「味覚崩壊したあんたの意見は聞いてない!そこ!何感心してメモなんか取ってる!!」
「綾波…さ、流石に納豆とキムチは…」 「…美味しいのに…」
「…これが私達四人の共同生活の始まり…」 「成る程ねぇ…」 「それにしても綾波さん、その…牛丼に…納豆?」 「ええ。」 「なんか戦自の野戦食思い出すわぁ…レトルトのパックにスプーン突っ込んで…半煮えなのに当たると泣けたわ〜…」 「霧島さん…唐揚げ食べる?」 「え?いいの?」 「駄目…山岸さん、食べないと駄目。見た所貴女の摂取カロリーは未だ所要量に足りない。」 「…カロリーバーと野菜ジュースの綾波さんが言っても…」 「大丈夫…カロリー的な問題は無い…それに…」 「「それに?」」 「今週の食事当番は碇君…だから楽しみは取っておくの…」 「ははぁ、納得。」 「愛しの彼氏の手料理かぁ、いいなぁ綾波さん。」 「ち、違うわ、な、何を言うのよ!い、い、碇君と私は未だ…」 「「ふぅん…未だ…ね…」」
「あ。」
「…でもその『碇君』の手料理…一度ご相伴に預りたい物ですねぇ山岸さん?」 「え?あ、あたしに振らないでマナーっ、そ、それは確かに興味は…」 「…食べてみる?」
「ミサトさん…明日の夕食、お客様を呼びたいのですが…」 「あらぁめっづらしー!?レイがお客様呼びたいだなんて!!オールオッケーよぉん、どぉんどん呼びなすゎぁいい!」 「え?良いのですか?」 「勿論無論当然よ!ね、ね、ね、誰呼んだの誰?高校の友達?女の子?それとも男の子?そぉれぇとぉむをぉ…彼氏?」
ガチャン!
「おーお、動揺しとる動揺しとる。ほーんとシンちゃんたらわっかり易いんだからぁ♪」 「?ミサトさん…私の高校、女子高ですけど…」
ガシャガシャン!
「碇君…今日はどうしたのかしら…」 「プクククッ!あ〜シンジ君〜?明日の夕食はご馳走にしてねぇ♪レイのお・と・も・だ・ちが来るからぁ♪手出しちゃ駄目よぉ♪」
ガシャン!
「クックックックッ…」 「?」 「あ〜いいお風呂だった!レイも入っちゃ…何笑ってるのよミサト?」 「クックッ…え〜?べぇっつぅにぃ〜…プッ…ククッ、クッククックククククッ…」 「?ね、レイ何あれ?」 「さあ…?」
「…と言う訳で、我々は今葛城作戦部長宅前に来ております。」 「なんやごっつうええ匂いがここまで漂っとりますなぁ。」
しゃもじをマイク代わりに持ったヒカリと旗を持ったトウジがデジカメを構えたケンスケに何やら話し掛けている。 その様子を見ながら顔に縦線を引いたネルフ作戦部長が、そっぽを向いてる碧眼の少女に小声で尋ねる。
「ね、ねえアスカ…これは何事?」 「…ファーストが女子高の友達連れて来るって聞いて…」
ちらりと傍らの銀髪に視線を送る。
「女子高生はいいねぇ…男子学生の心を潤す希望の存在…そう思わないかい?」
「…このややこしいのが更に話をややこしくしたのよ…」
「ゔ…」
改めて辺りを見遣り、ネルフ作戦部長は然り気無く居並ぶオペレーター三人組に絶句した。
「ちょ、一寸あんた逹まで!?」 「ええ、レイちゃんのお誘いですもの、断る訳無いですよ。」 「そうそう」 「右に同じ」 「た、確かにレイには“どぉんどん呼びなすゎぁいい!”とは言ったけど…あ!?ちょ、一寸リツコ、あんたはともかく他は聞いてないわよ〜!?」 「当然ね。話してないもの。」 「リツコー!?さては謀ったわねー!」
クスクス笑う金髪の傍らに立つ無精髭はため息をつきながら何事か呟いている…
「…何で俺まで…」 「あら、リョウちゃんの彼女の家の事なんだから当然でしょ?」 「だからってなぁ…」
同時刻、ジオフロント内ネルフ本部執務室。
「…なあ碇、お前は行かんのか?」 「…ああ…」 「全く…仕方無い奴だ…」 「…司令が本部を空ける訳にはいきませんよ冬月先生。先生こそ行かないのですか?」 「…眩しくてな…」 「…そうですか…」 「…料理か…ユイ君の悪戯思い出すな。」 「ロシアン筍…」 「一皿だけ灰汁抜きせず炊いた筍…」 「…酷かった…」 「残さず全部食ったのは誰だ?」 「…」
…さて、その後葛城宅で何が起こり、何が変わり、終わり、始まったかは規約と紙面の都合により全てを記す事は出来ない。 故に後日談として幾つかの会話を記すに止め、後は皆の想像にお任せする。
「ミサト…」「リツコ…」
「だからレイは猫耳だって!」 「バニーよバニー!アスカが猫耳でレイがバニーよ!」 「リッちゃん、葛城、迷う事は無い。」 「リョウちゃん!?」「加持君!?」 「二人に両方着せればいいじゃないか。なあシンジ君。」 「ぼ、僕に振らないで下さいよ!?ミサトさんもリツコさんも何か言って下さい!」
「「グッジョブ!!」」
「へ?」「…頭痛い…」「こ、この酔っ払い共…」
「歌はいいねえ…」 「え?」 「歌は心を癒してくれる…リリンの生み出した文化の極みだよ。そう思わないかい?山岸マユミさん。」 「あ、あの…」 「誰彼構わず口説くの止めいこの変態バイのナルシスト!」
「綾波…」「碇君…」 「…止めてよトウジ、ケンスケ…」 「止めなさいよ二人共!は…恥ずかしい…」 「本っ当、あんたらぶわっっかじゃない!?」
「はぁ…『碇君』か…いかり…しんじ…シンジ君…キャーキャー―ッ!!」
「なあシゲル、マヤちゃん最近綺麗になったな。」 「そそそうか?べべべ別に変わった様には…」 (…判りやすい奴…)
「…司令、副司令、これ…お弁当です。良かったらどうぞ…」
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