妖怪奇譚※仮名 ( No.71 ) |
- 日時: 2021/09/03 08:49
- 名前: 月影桜花姫
- 第一話
真夜中
太古の大昔…。極東の島国『太平神国』での出来事である。数百年と長引いた戦乱時代は終焉…。太平神国は弱肉強食の戦乱時代から共生共存の安穏時代へと突入したのである。村人達の生活は毎日が平穏であったが…。各地に神出鬼没の百鬼夜行が出現し始める。五十年後の天地暦一万二十年五月上旬…。南国に聳え立つ荒神山にて一人の僧侶が真夜中の荒神山を視察する。 「荒神山か…」 荒神山は南国の最高峰であり観光地として有名である。近頃は無数の魑魅魍魎が荒神山に出現…。荒神山を占拠したのである。今現在荒神山は魑魅魍魎の魔窟同然であり人間は誰一人として荒神山へは近寄れない。 「何やら無数の妖気が感じられる…」 (如何やら今回の相手も大群だな…) 僧侶の名前は【三蔵郎】であり国内屈指の法力を所持する随一の僧侶である。 「こんな重苦しい妖気だ…普通の人間は近寄れないな…」 周囲の自然林からは非常に物静かな風音と川音が響き渡るのだが…。空気は非常に重苦しい。数分後…。荒神山の頂上へと到達する。 「荒神山の頂上だな…」 天辺からは南国の村里が眺望出来る。 「絶妙の景色だ…」 (即刻荒神山の妖怪達を撃退して…元通りの観光地に戻さなくては…) 直後である。 「ん!?」 (気配だ…) 突如として無数の気配を察知…。三蔵郎は警戒したのである。 (此奴は妖気か?) 「如何やら大群みたいだな…」 姿形こそ不明瞭であるが…。無数の妖気が接近するのは認識出来る。数秒後…。暗闇の自然林より一体の人影を確認する。 (人影みたいだな…) 体格は非常に小柄でありふら付いた身動きで接近する。 「人間では無さそうだな…」 周辺は暗闇であり人影の正体は認識出来ないが…。極度の悪臭により人間とは無縁の存在であるのは認識出来る。人影はふら付いた様子で一歩ずつ頂上の中心地へと近寄る。直後である。 (此奴は…) 人影は全身が血塗れで皮膚が腐敗…。眼球と体内の臓物が噴出した人外の化身である。 「此奴は妖怪…【食人餓鬼】だな…」 人影の正体とは妖怪の食人餓鬼である。食人餓鬼とは戦乱時代に飢饉やら疫病によって死去した人間達の無念が妖怪化した存在…。特定の地域では疫病神とも呼称される。性格は非常に強欲であり人間と遭遇すれば相手が誰であろうと捕食する。 「食人餓鬼が出現するとは…」 (相手が食人餓鬼程度なら…) 三蔵郎は即座に法力を駆使…。直後である。自身を食い殺そうと近寄る食人餓鬼の肉体を自然発火…。食人餓鬼は三蔵郎の発動した法力によって焼失したのである。 「妖怪よ…成仏せよ…」 焼死した食人餓鬼に合掌する。 「安心は出来ないな…」 今度は周囲の自然林より無数の食人餓鬼が出現…。 「大群だな…」 無数の食人餓鬼はふら付いた身動きで三蔵郎に近寄る。 「荒神山の妖気の正体は彼等だったか…」 総勢数十体から数百体もの食人餓鬼に包囲されるも…。圧倒的に劣勢であったが三蔵郎は畏怖せず冷静だったのである。 「飢饉と疫病によって辛苦する亡者達よ…貴様達を成仏させる…」 再度法力を駆使…。殺到する無数の食人餓鬼の全身を発火させたのである。発火により三蔵郎の周囲には食人餓鬼の焼死体が無数に埋没する。 「今度の相手は…」 (食人餓鬼よりも強大なる妖気だな…) 恐る恐る背後を警戒…。背後には無数の食人餓鬼が融合化した肉塊の怪物が出現する。肉塊の怪物は巨体の人型であるが…。全身の体表には無数の食人餓鬼の頭部が確認出来る。 「此奴は食人餓鬼の親玉…【百鬼食人餓鬼】か…」 百鬼食人餓鬼は通常の食人餓鬼の集合体であり食人餓鬼の親玉である。 (厄介なのが出現したな…) 体表の無数の頭部が三蔵郎を睥睨…。口先より熱風を放出する。 「熱風!?」 三蔵郎は即座に法力の結界を発動…。百鬼食人餓鬼の熱風を無力化したのである。 (絶大なる妖力だな…) 熱風の無力化には成功するが…。先程の結界により大半の法力を消耗する。 (予想以上に強力だな…) 「一か八か…」 直後…。黒雲が天空を覆い包む。 「死滅せよ!」 黒雲から落雷を発動…。百鬼食人餓鬼の頭上より高熱の落雷が直撃したのである。地面が陥没…。南国全域に雷光と爆発音が響き渡る。 「はぁ…はぁ…」 先程の攻撃で法力は消耗…。極度の疲労により法力が使用出来なくなる。 「百鬼食人餓鬼は仕留めたか…」 (戻ろうか…) 一安心した直後…。複数の強大なる妖気が接近するのを感じる。 「なっ!?」 (複数の妖気か!?) すると周囲の自然林から三体の百鬼食人餓鬼が出現する。 「百鬼食人餓鬼か…」 (三体も出現するなんて…) 最早複数の百鬼食人餓鬼を相手に反撃する余力は皆無であり三蔵郎は撤退を余儀無くされる。 (不本意だが…撤退しなければ…) 撤退する直前…。 「えっ…」 今度は百鬼食人餓鬼をも上回る不吉の妖気を感じる。 「今度は別の妖気だ…」 (百鬼食人餓鬼よりも数段階強力だな…ひょっとして大妖怪か!?) 不吉の妖気は大妖怪に匹敵する妖気であり刻一刻と荒神山の頂上に接近する。 (遭遇すれば…私は確実に殺される…) 「即刻退散しなければ…」 退散する寸前…。 「えっ…」 三蔵郎の背後には小柄の女性が佇立する。 (彼女は…人間の女性?) 背後の女性は外見のみなら人一倍容姿端麗であり両目の瞳孔は半透明の血紅色…。頭髪は黒毛の長髪であり赤色の口紅が非常に魅了される。巨乳のおっぱいも非常に魅力的であり正真正銘絶世の童顔美少女である。彼女の最大の特徴である赤色の着物は桜吹雪模様の花柄であり耳朶の耳装飾は金剛石で形作られた勾玉…。頭髪には八重桜の髪装飾が確認出来る。背丈は小柄であるものの非常に颯爽とした雰囲気である。 (彼女から邪気は感じられないが…妖気は感じる…) 女性が列記とした妖怪なのは確実であるが…。敵意も邪気も感じられない。すると彼女は無表情で…。 「氷結の妖術…発動!」 女性が氷結の妖術を発動すると三体の百鬼食人餓鬼は一瞬で全身が氷結したのである。数秒後…。氷結した肉体が崩れ落ちる。 「所詮は雑魚ね…」 すると女性は三蔵郎を凝視し始める。 「なっ!?」 三蔵郎は警戒した様子で恐る恐る後退りしたのである。強張った表情で恐る恐る女性に問い掛ける。 「貴女様は一体何者ですか?失礼ですが…人間では無さそうですね…」 女性は笑顔で名前を名乗る。 「私の名前は【月影桜花姫】♪妖怪の一員よ♪」 桜花姫は自身を妖怪の一員と名乗ったのである。 「貴女様は妖怪でしたか…」 桜花姫は正真正銘妖怪であるが…。彼女からは敵意も殺意も感じられない。 (姿形のみなら人間の小町娘ですが…) 三蔵郎は再度警戒した様子で恐る恐る後退りする。彼女からは敵意は感じられないが正直桜花姫を信用出来ず只管警戒し続ける。 (彼女の肉体から無数の妖怪達の妖気を感じるぞ…) 可愛らしい外見とは裏腹に桜花姫の体内からは数百体から数千体もの無数の妖気が感じられる。 「あんたは人間の僧侶ね♪警戒しないで…別に私は人間には手出ししないから…」 「えっ…」 (人間を…殺さないって!?) 本来人間と妖怪は敵対関係である。俗界に存在する大半の妖怪達は人間と遭遇すれば即座に敵意…。襲撃するのが通例だったのである。桜花姫は列記とした妖怪であるものの…。彼女の様子に意外であると感じる。 (摩訶不思議だな…妖怪でも人間に手出ししない妖怪が存在するなんて…ん?) 桜花姫を直視し続けると彼女の肉体から人間の気配を感じる。 (一体何が?人間の気配だ…如何して妖怪である彼女の肉体から…人間の気配が感じられるのか?) すると桜花姫は三蔵郎を凝視するなり…。 「あんた…不思議そうな表情ね♪」 「えっ!?」 桜花姫は説明する。 「妖怪は妖怪でも…私は特殊なのよ…」 「特殊ですと?」 「私の肉体の一部…【月影桃子姫】って名前だったかしら?桃子姫って人間の巫女と無数の妖怪達が集合して誕生したのが私なのよ♪」 「月影桃子姫様とは…伝説の巫女の?」 月影桃子姫とは人間の巫女であり強大なる霊力で多種多様の妖怪を征伐…。伝説の巫女として有名である。とある大妖怪との戦闘により失踪…。今現在では彼女の行方は不明である。 「勿論♪」 桜花姫は月影桃子姫と名乗る人間の巫女と無数の妖怪達が一体化した存在…。彼女は所謂無数の魑魅魍魎から誕生した異例の集合体である。 「失礼ですが…桜花姫様は魑魅魍魎の集合体なのですね?」 (彼女が非常に人間っぽい雰囲気だったのも…肉体の一部である人間の巫女の影響だったのか…) 三蔵郎は再度桜花姫に質問する。 「先程は如何して人間である私を攻撃せず…同種の妖怪である百鬼食人餓鬼を攻撃されたのですか?」 桜花姫は笑顔で即答したのである。 「私は気紛れなの♪今回は単純に百鬼食人餓鬼が目障りだっただけだけどね♪」 (気紛れだったか…) 理解するのは非常に困難であるが…。桜花姫の様子から三蔵郎は内心一安心する。 「勿論…僧侶のあんたが私に手出しするのであれば…私は手加減しないわよ♪」 桜花姫の発言に三蔵郎は一瞬畏怖したのである。 「私は貴女様を征伐しませんよ…生憎私自身実力不足ですし…大妖怪に匹敵する貴女様を単独で征伐するなんて百年修行し続けても不可能でしょう…」 「私が大妖怪なんてあんたは大袈裟ね♪」 (私が大妖怪ですって♪) 桜花姫は内心大喜びする。 「兎にも角にも私は退散します…先程の桜花姫様の妖術で荒神山の妖怪達は無事征伐されました…」 すると桜花姫は恐る恐る…。 「あんたの名前は?」 「えっ…私の名前ですと…私は僧侶の三蔵郎です…」 自身の名前を名乗ると三蔵郎は即座に荒神山から退散したのである。数秒後…。 「私も西国に戻ろうかしら…」 桜花姫も自身の祖国である西国に戻ったのである。戻ってより二時間後…。無事に西国の村里へと戻った桜花姫は自宅の近辺に聳え立つ『天霊山』に移動する。 「露天風呂で入浴しましょう♪」 田舎村の西国であるが…。太平神国の温泉郷と呼称され時たま観光客が西国の温泉に入浴する。天霊山の頂上に到達すると天辺の中心部には石造りの露天風呂が確認出来る。 「露天風呂だ♪」 天霊山の露天風呂は妖怪が入浴すると消耗した妖力を蓄積…。回復させられる。 (折角だし変化の妖術を使用しちゃおうかしら♪) 桜花姫はあらゆる妖怪の集合体である。当然として変化の妖術も使用出来…。変化の妖術を駆使すると多種多様の動植物やら器物にも変化出来る。 「変化の妖術…発動!」 変化の妖術を発動すると彼女の全身から白煙が発生…。すると下半身が銀鱗の大魚に変化したのである。両目の血紅色の瞳孔は半透明の瑠璃色に発光…。黒毛の長髪だった頭髪は銀髪に変色する。 「入浴するわよ♪」 巨体の人魚に変化した桜花姫は即座に露天風呂へと入浴する。 「極楽♪極楽♪」 彼女にとって天霊山での入浴は一日の日課である。桜花姫は満足したのか天空の夜空を眺望する。 (妖怪の征伐も意外と面白いわね♪今度も妖怪を征伐しちゃおうかな?) 直後…。突如として背後の竹林より気配を感じる。 「えっ?」 (気配だわ…) 何者かによる正体不明の気配は露天風呂に接近する。 (妖気かしら?) 「如何やら妖怪みたいね…」 気配の正体は妖気であり露天風呂に接近するのは妖怪であると認識したのである。桜花姫は背後を直視する。 「誰かと思いきや…」 露天風呂の近辺には白装束の着物姿の少女が佇立…。青紫色の口紅と黒髪の長髪が特徴的である。体格は桜花姫よりも小柄であり半透明の血紅色の瞳孔で入浴中の桜花姫を凝視する。 「あんたは粉雪妖怪の【雪女郎】♪」 「桜花姫…入浴中だったのね…」 彼女は粉雪妖怪の雪女郎である。姿形は人間の小町娘だが…。列記とした妖怪であり桜花姫にとって唯一の悪友である。桜花姫は笑顔で…。 「折角だしあんたも私と一緒に入浴しない♪雪女郎♪」 「誰が熱湯の温泉なんかに入浴しますか!こんな暑苦しい場所で…」 粉雪妖怪の雪女郎は高温の温泉が苦手である。 「私が入浴すると肉体が崩れ落ちちゃうわよ…」 「冗談よ♪冗談♪御免あそばせ♪」 桜花姫は笑顔で謝罪する。 「入浴しないなら…如何してこんな場所に?ひょっとして覗き見とか♪あんたは相当の物好きね♪」 揶揄する桜花姫に雪女郎は苛立ったのである。 「あんた…私に殺されたいみたいね…」 「私に用事かしら?」 桜花姫が問い掛けると雪女郎は真剣そうな表情で…。 「大変なの…桜花姫…」 「何が大変なのよ?」 雪女郎に恐る恐る問い掛ける。 「先程…あんたが南国の荒神山で百鬼食人餓鬼を殺したわよね?」 「問題だったかしら?」 「大問題よ!」 桜花姫が荒神山に出没した百鬼食人餓鬼を仕留めたのを契機に…。一部の妖怪達が桜花姫の行為を批判したのである。 「あんたが人間の僧侶に加勢しちゃったから…」 噂話は全国各地に出回る。一部の妖怪達が桜花姫を敵対視したのである。 「何体かの大妖怪もあんたを敵対視したみたいなのよ…如何するのよ!?」 雪女郎は非常に不安がる。極度に不安視する雪女郎に…。 「雪女郎…あんたは極度の心配性ね♪気にしない♪気にしない♪」 桜花姫は特段気にならなかったのか非常に平気そうな様子である。 (桜花姫…) 「あんたは本当に気楽ね…」 桜花姫の様子に呆れ果てる。 「気楽も何も…私は無数の妖怪達の集合体なのよ♪人間の匪賊達を食べ過ぎちゃったからね♪妖力だけなら大妖怪に匹敵するかも知れないわね…」 以前は大勢の山賊やら匪賊達を殺害…。食い殺したのである。彼等を食い殺し続けた結果…。彼女は妖力のみなら大妖怪に匹敵する領域へと到達したのである。 「相手が大妖怪であっても…私に手出しするなら手加減しないわよ♪猛反撃しちゃうからね♪」 「桜花姫…」 断言する桜花姫に雪女郎は苦笑いする。 「私は加勢しないわよ…一人で頑張りなさいね…」 雪女郎は自宅へと戻ったのである。 「面白くなったわね♪」 内心大喜びする。
第二話
大海戦
南国の荒神山での戦闘から六日後の真昼…。桜花姫は娯楽を主目的に東国の中心街へと出掛ける。 「東国だわ…」 東国とは太平神国でも比較的老熟した全国一の城下町である。総人口も太平神国では最大級の大規模都市であり唯一の文明地帯である。桜花姫は和菓子屋にて大好きな桜餅を頬張る。 「非常に美味だわ♪」 彼女は無我夢中に桜餅を頬張り続けるものの…。 「えっ?」 (誰かしら?僧侶っぽいわね…) 隣席には僧侶らしき人物が和菓子屋に来店する。 (彼には見覚えが…) 「誰だったっけ?」 僧侶らしき人物とは六日前に闇夜の荒神山にて対面した僧侶の三蔵郎であり奇遇にも彼が東国の和菓子屋にて来店したのである。 「ひょっとして三蔵郎様?」 すると三蔵郎は身震いした様子で恐る恐る…。 「桜花姫様?如何してこんな場所に?」 三蔵郎は小声で問い掛ける。 「如何してって…私は単純に和菓子屋で桜餅を食べたかっただけよ♪私は桜餅が大好きだからね♪」 三蔵郎は恐る恐る周囲を警戒した様子で…。 「生憎妖気を感じられるのは私だけですが…」 警戒する三蔵郎に問い掛ける。 「あんた…私を信用出来ないの?」 「信用するも何も…失礼ですが貴女様は魑魅魍魎の集合体です…正直妖怪である桜花姫様を信用するのは…」 実際に桜花姫が暴走した場合…。三蔵郎が全力で法力を駆使しても彼女の暴走を阻止するのは実質不可能である。 「あんたは本当に心配性なのね♪私なら大丈夫よ♪」 桜花姫は笑顔で即答する。 「私は荒神山で三蔵郎様に加勢してから…大勢の妖怪達に毛嫌いされたのよ♪」 「えっ!?毛嫌いですと!?」 三蔵郎は驚愕したのである。 「今現在の私は一匹狼だからね♪妖怪達に敵対視されちゃったから♪」 「一匹狼って…」 (同種の妖怪に敵対視された?彼女は平気なのか?) 平気そうな彼女に不思議がる。 (月影桜花姫…彼女は本当に摩訶不思議の妖怪だな…) すると桜花姫は無我夢中に桜餅を頬張り始める。無我夢中に桜餅を頬張る桜花姫に…。 (彼女は列記とした妖怪ですが…本当に人間らしく感じられる…本当に妖怪なのか?) 桜花姫は純粋無垢であり非常に人間らしく感じられ彼女が本当に妖怪なのか疑問視する。すると直後である。 「ん!?」 (別の妖気か!?) 突如として妖気を察知…。三蔵郎は警戒する。 「えっ?」 桜花姫も妖気に反応したのである。 「三蔵郎様も察知したみたいね…」 「方角から南方地帯でしょうか…南国の海域に妖気が感じられます…」 突如として南国の海域より妖気を察知する。 「南国に妖怪が出現したのね♪」 「妖気は非常に強力です…大妖怪の一歩手前でしょうか?」 妖気は大妖怪よりは若干下回るものの…。非常に強力である。 「面白そうね♪私の出番かしら♪」 「私は即刻妖怪を退治しなくては…」 三蔵郎は一目散に和菓子屋から南国へと疾走する。 「えっ!?三蔵郎様!?」 桜花姫も全力で疾走…。三蔵郎を追尾したのである。必死に三蔵郎を追尾し続けるのだが…。三蔵郎の身動きは神速であり身体能力が愚鈍の桜花姫では彼を追尾出来ない。東国と南国を直結する両国橋を通過してより三分後…。 「はぁ…はぁ…」 (三蔵郎様を見失っちゃったわ…) 桜花姫は草臥れたのか南国の村里の道中で一休みする。 「仕方ないわね…」 (妖術を使用しちゃいましょう♪) 桜花姫は即座に瞬間移動の妖術を発動…。疾走し続ける三蔵郎の目前に瞬間移動したのである。 「三蔵郎様♪」 「うわっ!桜花姫様!?」 突如として目前より出現した桜花姫に驚愕する。 「桜花姫様は妖術で先回りしたのですか?」 「勿論よ♪」 すると桜花姫は笑顔で…。 「私を置いてきぼりなんて…三蔵郎様の意地悪♪」 「仕方ないですね…」 三蔵郎は桜花姫と一緒に南国の海岸へと直行したのである。一時間後…。二人は海岸へと到達する。 「到着したわね♪」 「ですが妖怪は?」 海岸の砂浜には木造の漁船が数隻…。十数人の漁師達が確認出来る。彼等は非常に困惑した様子であり三蔵郎は恐る恐る問い掛ける。 「如何されましたか?」 「法師様ですか…」 「先程ですが…突然海辺に妖怪が出現しましてね…」 「妖怪ですと?」 「大山みたいな巨大真蛸ですよ…普通の妖怪よりも桁違いに巨体ですね…」 数時間前の出来事である。彼等は漁猟活動中…。突如として規格外の巨大真蛸が出現したのである。巨大真蛸の出現によって漁船は襲撃されたものの…。彼等は危機一髪巨大真蛸の襲撃から海岸に戻ったのである。 「一瞬妖怪に殺されるかと…」 「俺達は命拾い出来ましたが…漁猟が出来なくて…」 すると先程から沈黙した桜花姫が発言し始める。 「ひょっとして巨大真蛸の正体は水難妖怪の【海難入道】かしら…」 「海難入道ですか?」 海難入道とは水難事故によって死亡した亡者達の霊魂が妖怪化した化身…。目撃者の証言では海難入道の姿形は規格外の巨大真蛸が通説である。海面上で海難入道に遭遇すると船舶は沈没され…。海難入道と遭遇した人間は溺死するのが通例である。 「漁船を襲撃したのが水難妖怪の海難入道であれば…即刻仕留めなければ…」 三蔵郎は即刻退治を決意するのだが…。 「海難入道は私が仕留めるわ♪」 「えっ…桜花姫様?」 桜花姫の発言に周囲の者達は驚愕したのである。 「姉ちゃんよ…相手は本物の妖怪だぞ…」 「人間のあんたでは妖怪を退治するなんて…」 漁師達は呆れ果てる。 「私が人間ですって♪」 桜花姫は笑顔で…。 「私は正真正銘…妖怪なのよ♪」 「あんたが妖怪だって?」 「姉ちゃんよ…面白くない冗談だな…」 自身を妖怪と名乗る桜花姫に漁師達や揶揄したのである。 「仕方ないわね…」 桜花姫は木造の漁船を直視するなり…。 「桜餅に変化しなさい♪」 変化の妖術を発動する。すると木造の漁船は白煙に覆い包まれ…。小皿に配置された桜餅に変化したのである。 「なっ!?俺達の漁船が…」 「桜餅に!?如何してこんな…」 変化の妖術はあらゆる物体を別物に変化させられる。 「変化の妖術は私の得意妖術なのよ♪」 漁師達は勿論…。三蔵郎も桜花姫の妖術に愕然とする。漁師達は恐る恐る…。 「あんたは…本当に妖怪なのか?」 「勿論♪私は正真正銘妖怪なのよ♪」 問い掛けられた桜花姫は笑顔で即答する。すると漁師達は身震いした様子で恐る恐る後退りしたのである。 「ひっ!此奴は本物の妖怪だ!」 「殺されちまう!逃げろ!」 周囲の漁師達は桜花姫に畏怖したのか一目散に逃走する。 「逃げちゃったわ…」 「当然の反応でしょうね…」 現実問題…。妖怪と人間は敵対関係であり妖怪に敵意が無くとも人間達は必要以上に妖怪を脅威に感じるのが現状である。 「兎にも角にも…私は海難入道を征伐するわよ♪」 再度変化の妖術を発動する。すると桜花姫の下半身が銀鱗の大魚へと変化…。黒髪の長髪は銀髪に変色したのである。 「なっ!?桜花姫様が人魚に!?」 三蔵郎は驚愕する。 「私は変化の妖術で人魚に変化出来るのよ♪」 桜花姫は即座に海中へと潜水したのである。 「海難入道は?」 海中は意外にも暗闇であり魚類は確認出来ても巨大真蛸らしき物体は何一つとして確認出来ない。 (こんな暗闇だと海難入道は発見出来ないわね…) すると直後である。強大なる妖気が自身に接近するのを感じる。 「妖気!?」 (ひょっとして海難入道の妖気かしら?) 接近する妖気に桜花姫は警戒したのである。数秒後…。暗闇の遠方より白鯨らしき巨大移動物体が接近する。 「何かしら?」 巨大移動物体を凝視し続けると半透明の体表に無数の触手…。頭部は巨大坊主であり全体的に真蛸らしき物体だったのである。 (巨大真蛸…) 「海難入道だわ…」 海中の巨大移動物体とは水難妖怪…。海難入道だったのである。通常の妖怪とは桁外れの巨体であり全長は大島に匹敵する。すると海難入道は両方の大目玉で海中の桜花姫を凝視し始める。 「ん?人魚の小娘かと思いきや…貴様はあらゆる妖怪の集合体…月影桜花姫だな…人魚に変化したのか?」 海難入道は人語で発言したのである。 「私は変化の妖術で人魚にも変化出来るからね♪」 桜花姫は笑顔で返答する。 「今現在の俺は空腹だ…邪魔するなら貴様も食い殺すぞ…」 海難入道は獰猛で強欲の妖怪である。彼自身は極度の食いしん坊であり自身が空腹であれば相手が妖怪であっても捕食する。 「空腹ね…私こそあんたを食い殺しちゃおうかしら♪」 「はっ?」 桜花姫の挑発に海難入道は苛立ったのである。 「所詮は陸地の妖怪である貴様が…水難妖怪である俺を食い殺すと?海中では俺を仕留められる妖怪は皆無であるぞ…」 海難入道は妖力こそ大妖怪よりは若干下回るが…。海中で彼を上回る海中の妖怪は存在しない。 「噂話は熟知したぞ…近頃貴様は人間の僧侶に加勢して…同種の妖怪達を征伐したらしいな?」 「人間に加勢したから何よ?私は鬱陶しい邪魔者を仕留めただけなのよね♪」 桜花姫は笑顔で反論したのである。 「貴様…気に入らないな…」 「気に入らないなら如何するのかしら♪」 「妖怪の面汚しである貴様は死滅しろ…」 海難入道は即座に巨大触手で攻撃するのだが…。桜花姫は瞬間移動の妖術により海難入道の背後へと瞬間移動したのである。 「危機一髪だったわね♪」 「此奴…妖術で俺の攻撃を回避しやがったか…」 「今度は私の出番ね♪」 桜花姫は両手より雷光の発光体を凝縮…。雷光の球体を形作る。 「あんたこそ死滅しなさい♪」 両手から雷光の球体を発射したのである。雷光の球体は海難入道に直撃する。 「直撃♪直撃♪」 雷光の球体は海難入道の皮膚に直撃するのだが…。 「えっ?」 「残念だったな…桜花姫よ…」 桜花姫が発射した雷光の球体は海難入道の体内へと吸収されたのである。 「妖力を吸収するなんて…」 普段は冷静の桜花姫であるが…。海難入道の吸収能力に一瞬動揺する。 (海難入道には妖術が通用しないのかしら…) 「不思議そうな表情だな…桜花姫…俺はあらゆる妖力を吸収出来…妖術を無力化出来るのだ…」 海難入道の最強の特殊能力である吸収能力は自身の肉体に接触した多種多様の妖力を吸収出来…。あらゆる妖術を無力化出来る。基本的に妖力を駆使した攻撃法では海難入道は仕留められない。 「貴様程度の妖術では俺を仕留められない!」 (妖術が通用しないなんて…此奴は意外と厄介だわ…) あらゆる魑魅魍魎の集合体である桜花姫でも…。妖力を吸収する妖怪を仕留めるのは非常に困難である。 (出直そうかな?) 恐る恐る後退りする。後退りする桜花姫に…。 「先程の威勢は如何した?俺に恐怖したか?」 「別に…」 問い掛けられた桜花姫は無表情で返答する。 「貴様は妖力だけなら大妖怪に匹敵するな…是非とも貴様を捕食したい…」 「私を捕食ですって?」 「あらゆる妖怪の集合体である貴様を食い殺せば…俺は大妖怪の領域に到達出来るからな♪」 豪語する海難入道に桜花姫は笑顔で…。 「私を捕食なんて…あんた程度の妖怪に出来るかしら♪」 桜花姫は笑顔で挑発したのである。 「貴様…本当に食い殺されたいらしいな…」 「食い殺せるのであれば私を食い殺しなさいよ♪」 桜花姫は再度挑発する。 「妖怪の小娘風情が…貴様は本当に気に入らない小娘だな…」 すると蛸足の巨大触手で桜花姫を拘束したのである。 「えっ?」 「貴様を食い殺す!」 一口で桜花姫を捕食…。口内で彼女を咀嚼したのである。 「所詮桜花姫はこんな程度の妖怪だ…」 すると直後…。桜花姫を捕食した影響からか先程よりも妖力が急上昇したのである。 「俺の妖力が増大化したぞ!」 妖力のみなら今現在の海難入道は大妖怪に匹敵…。海難入道は強大化した自身の妖力に大喜びしたのである。 「今日から俺も大妖怪の仲間入りだな♪」 すると直後…。 「ん?」 海難入道の全身が白煙に覆い包まれ…。二町規模の巨大さである海難入道の肉体が消滅したのである。すると白煙の内部から海難入道によって食い殺された桜花姫が出現…。彼女は無傷であり平気そうな様子だったのである。 「海難入道を仕留めたし♪」 (陸地に戻りましょう♪) 桜花姫は再度瞬間移動の妖術を駆使…。海岸の砂浜へと戻ったのである。 「なっ!?桜花姫様!?」 三蔵郎と合流する。 「三蔵郎様♪妖怪は無事征伐したわ♪」 「海難入道を征伐されたみたいですね…一瞬桜花姫様の妖気が消滅したので食い殺されたのかと…」 「一度海難入道に捕食されちゃったけれどね♪」 桜花姫は一時的に海難入道に捕食されたものの…。体内の胃袋から海難入道の肉体と同化したのである。 「反対に私が海難入道を捕食したのよ♪」 「えっ…捕食ですと?」 今現在海難入道は桜花姫の肉体の一部に変化する。 「兎にも角にも…海難入道は仕留めたから南国の海域は安全よ♪」 「事件は無事解決したので一件落着ですね…」 三蔵郎も一安心したのである。 「事件も解決したし♪戻りましょう♪」 「解散しますかね…」 桜花姫と三蔵郎は解散…。二人は村里へと戻ったのである。
第三話
強襲
南国での海難入道との大海戦から六日後の真夜中…。桜花姫は暇潰しに北国の村里にて散歩したのである。 「退屈ね…」 時間帯は深夜であり村人達は確認出来ない。 「妖怪でも出現しないかしら?」 基本的に多数の百鬼夜行が活動するのは真夜中であり日中に出現するのは中級以上の妖怪である。 「戻ろうかな?」 戻ろうかと思いきや…。 「ん!?」 突如として周囲より無数の気配を感じる。 (気配だわ…) 桜花姫は恐る恐る周囲を警戒し始める。 (無数の妖気みたいね…) 「妖怪みたいね…」 気配の正体は妖気であり無数の妖怪達が自身に接近するのを察知する。 「何が出現するのかしら?」 すると直後である。 「食人餓鬼だわ…」 周囲の地面より数十体もの食人餓鬼が出現…。周囲を包囲されたのである。 (敵意も感じられるわね…) 突如として出現した食人餓鬼であるが…。 「如何やらあんた達…私が気に入らないみたいね♪」 本来食人餓鬼は同種の妖怪には手出ししない性質なのだが…。桜花姫を敵対視した様子だったのである。直後…。食人餓鬼の大群は桜花姫に殺到する。 「はぁ…あんた達は命知らずね…」 桜花姫は呆れ果てるものの…。 「死滅しなさい♪」
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宇宙大動乱 ( No.72 ) |
- 日時: 2021/09/03 22:33
- 名前: 月影桜花姫
- ジャンル
スペースオペラ
世界観 宇宙文明
登場人物 大銀河帝国軍 【ブラッドフォード】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦692年7月16日 星座:牡牛座 実年齢:30歳 所属:大銀河帝国軍 役職:大総統 階級:総帥 性別:男性 身長:168cm 体重:68kg 血液型:AB型 一人称:私 性格:冷静沈着、合理主義、強硬 趣味:ライフル射撃
【ストライダー】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦674年3月22日 星座:牡羊座 実年齢:48歳 所属:大銀河帝国軍 役職:副総統 階級:大将 性別:男性 身長:199cm 体重:88kg 血液型:B型 一人称:私 性格:適当、面倒臭がり 趣味:プラモデル作成、設計
【ホムンクルス】 種別:クローン人間 所属:大銀河帝国軍 生産数:700万人〜7億人
タイラントキラー 【ウィグノール】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦678年9月28日 星座:天秤座 実年齢:44歳 所属:大銀河帝国軍〜タイラントキラー 役職:総帥 階級:中将 性別:男性 身長:200cm 体重:89kg 血液型:AB型 一人称:私 性格:生真面目 趣味:骨董品集め、サバイバルゲーム
【ウェンフィールド】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦700年8月17日 星座:獅子座 実年齢:22歳 所属:タイラントキラー〜ホープセイバーズ 役職:職業軍人 階級:大佐 性別:男性 身長:176cm 体重:76kg 血液型:O型 一人称:私 性格:誠実 趣味:ホラーゲーム
ホープセイバーズ 【ルーヴェルハルト】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦668年4月25日 星座:牡牛座 実年齢:54歳 所属:大銀河帝国軍〜ホープセイバーズ 役職:総帥 階級:少将 性別:男性 身長:198cm 体重:87kg 血液型:A型 一人称:私 性格:穏和、野心的 趣味:宇宙旅行
登場国家 『大銀河帝国』 成立日:宇宙新暦376年7月4日 総人口:900億人
自治領 『ユートピアサイド』 統治勢力:大銀河帝国軍 総人口:70億人
『エデンプラネット』 統治勢力:タイラントキラー 総人口:50億人
『ホープエリア』 統治勢力:ホープセイバーズ 総人口:20億人
登場兵器 大銀河帝国軍 『アルセイス』 諸元 正式名:上級大将専用宇宙戦艦アルセイス 所属:大銀河帝国軍 建造所:ユートピアサイド軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:7隻 起工日:宇宙新暦722年3月27日 進宙日:宇宙新暦722年4月24日 就役日:宇宙新暦722年4月30日 全長:400m 全幅:220m 全高:80m 総重量:70万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 輸送要員:300人〜800人 兵装 990mm超弩級波動砲ケラウノス:1基 600mm高エネルギー連装砲:2基 50mm対空パルスレーザー機関砲:8基 光子魚雷発射機:2基 多目的ミサイル発射機:12基 艦載機:4機※無人機 装甲 主砲装甲:990mm 舷側装甲:750mm 甲板装甲:550mm 装甲材質:エターナルメタル 動力炉:ハイパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『スレイプニル』 諸元 正式名:宇宙要塞母艦スレイプニル 所属:大銀河帝国軍 建造所:プルトロン軍事工場 艦種:宇宙空母 同型艦:18隻 起工日:宇宙新暦722年4月29日 進宙日:宇宙新暦722年5月26日 就役日:宇宙新暦722年5月30日 全長:990m 全幅:860m 全高:140m 総重量:950万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 輸送要員:5万人〜8万人 兵装 990mm超弩級怪光砲ケラウノス:1基 600mm高エネルギー連装砲:6基 50mm対空パルスレーザー機関砲:80基 光子魚雷発射機:12基 多目的ミサイル発射機:30基 艦載機:400機※無人機 装甲 主砲装甲:990mm 舷側装甲:800mm 甲板装甲:720mm 装甲材質:貴金属 動力炉:ハイパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『セイバードラゴン』 諸元 正式名:宇宙戦艦セイバードラゴン 所属:大銀河帝国軍 建造所:ユートピアサイド軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:2万隻 起工日:宇宙新暦652年4月22日 進宙日:宇宙新暦654年9月19日 就役日:宇宙新暦654年12月27日 全長:800m 全幅:600m 全高:120m 総重量:500万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:320人 輸送要員:2万人〜4万人 兵装 800mm高エネルギー連装砲:8基 50mm対空パルスレーザー機関砲:40基 光子魚雷発射機:8基 多目的ミサイル発射機:20基 艦載機:90機 装甲 主砲装甲:750mm 舷側装甲:500mm 甲板装甲:460mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能
『バジリスク』 諸元 正式名:宇宙巡洋艦バジリスク 所属:大銀河帝国軍 建造所:ユートピアサイド軍事工場 艦種:宇宙巡洋艦 同型艦:6万隻〜8万隻 起工日:宇宙新暦722年3月26日 進宙日:宇宙新暦722年4月12日 就役日:宇宙新暦722年4月15日 全長:200m 全幅:140m 全高:40m 総重量:5万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 300mm高エネルギー連装砲:3基 50mm対空パルスレーザー機関砲:12基 光子魚雷発射機:2基 艦載機:1機〜2機※無人機 装甲 主砲装甲:440mm 舷側装甲:250mm 甲板装甲:130mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『アスピドケロン』 諸元 正式名:宇宙駆逐艦アスピドケロン 所属:大銀河帝国軍 建造所:メティス軍事工場 艦種:宇宙駆逐艦 同型艦:9万隻〜15万隻 起工日:宇宙新暦722年5月14日 進宙日:宇宙新暦722年5月26日 就役日:宇宙新暦722年6月4日 全長:180m 全幅:150m 全高:40m 総重量:4万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 250mm高エネルギー連装砲:4基 40mm対空パルスレーザー機関砲:12基 光子魚雷発射機:2基 艦載機:2機※無人機 装甲 主砲装甲:370mm 舷側装甲:240mm 甲板装甲:230mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『スペースバード』 諸元 機種:宇宙戦闘機 所属:大銀河帝国軍 初飛行:宇宙新暦699年12月24日 生産数:8万機 運用開始:宇宙新暦700年6月2日 全長:17m 全幅:16m 全高:6m 総重量:14t 全速力:マッハ15 搭乗員:1人 武装 30mm対空用パルスレーザー:2基 多目的ミサイル〜光子魚雷:2基 設備 スーパーレーダー シールド装置
『セイバードローン』 諸元 機種:無人機 所属:大銀河帝国軍 初飛行:宇宙新暦722年4月26日 生産数:780万機 運用開始:宇宙新暦722年5月12日 全長:15m 全幅:14m 全高:4m 総重量:12t 全速力:マッハ15〜超光速 武装 30mm対空用パルスレーザー:2基 光子魚雷:4基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
『ケルベロス』 諸元 機種:無人機 所属:大銀河帝国軍 初飛行:宇宙新暦722年6月30日 生産数:400万機 運用開始:宇宙新暦722年7月15日 全長:16m 全幅:12m 全高:5m 総重量:20t 全速力:マッハ22〜超光速 武装 50mm対空用パルスレーザー:2基 新型光子魚雷:4基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
タイラントキラー 『サラマンダー』 諸元 正式名:宇宙戦艦サラマンダー 所属:タイラントキラー 建造所:エデンプラネット軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:750隻 起工日:宇宙新暦628年1月24日 進宙日:宇宙新暦630年5月25日 就役日:宇宙新暦650年7月30日 全長:780m 全幅:540m 全高:90m 総重量:300万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:280人 輸送要員:2万人〜3万人 兵装 550mm高エネルギー連装砲:8基 40mm対空パルスレーザー機関砲:38基 光子魚雷発射機:4基 多目的ミサイル発射機:16基 艦載機:150機 装甲 主砲装甲:650mm 舷側装甲:480mm 甲板装甲:240mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能
『レヴィアタン』 諸元 正式名:宇宙戦闘母艦レヴィアタン 所属:タイラントキラー 建造所:エデンプラネット軍事工場 艦種:宇宙空母 同型艦:560隻 起工日:宇宙新暦718年3月29日 進宙日:宇宙新暦719年4月13日 就役日:宇宙新暦719年7月12日 全長:960m 全幅:530m 全高:120m 総重量:620万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:20人 輸送要員:4万人〜6万人 兵装 320mm高エネルギー連装砲:2基 50mm対空パルスレーザー機関砲:44基 艦載機:400機※無人機 装甲 主砲装甲:480mm 舷側装甲:340mm 甲板装甲:190mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『シーサーペント』 諸元 正式名:宇宙巡洋艦シーサーペント 所属:タイラントキラー 建造所:エデンプラネット軍事工場 艦種:宇宙巡洋艦 同型艦:4万隻 起工日:宇宙新暦720年1月27日 進宙日:宇宙新暦720年2月28日 就役日:宇宙新暦720年4月24日 全長:250m 全幅:180m 全高:50m 総重量:6万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 280mm高エネルギー連装砲:4基 50mm対空パルスレーザー機関砲:14基 光子魚雷発射機:4基 艦載機:2機〜4機※無人機 装甲 主砲装甲:470mm 舷側装甲:290mm 甲板装甲:150mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『スペースドローン』 諸元 機種:無人機 所属:タイラントキラー 初飛行:宇宙新暦720年2月27日 生産数:500万機 運用開始:宇宙新暦720年11月29日 全長:14m 全幅:12m 全高:3m 総重量:12t 全速力:マッハ14〜超光速 武装 20mm対空用パルスレーザー:2基 多目的ミサイル〜光子魚雷:2基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置
『ホワイトピクシー』 諸元 機種:無人機 所属:タイラントキラー 初飛行:宇宙新暦721年3月12日 生産数:2万機 運用開始:宇宙新暦721年3月15日 全長:18m 全幅:16m 全高:6m 総重量:15t 全速力:マッハ20〜超光速 武装 50mm対空用パルスレーザー:2基 多目的ミサイル〜光子魚雷:6基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
ホープセイバーズ 『リトルヴィーナス』 諸元 正式名:宇宙戦艦リトルヴィーナス 所属:ホープセイバーズ 建造所:ホープエリア軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:14隻 起工日:宇宙新暦652年4月25日 進宙日:宇宙新暦654年9月19日 就役日:宇宙新暦654年12月27日 全長:850m 全幅:650m 全高:200m 総重量:600万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 輸送要員:5万人〜8万人 兵装 990mm超弩級対艦防衛砲サイクロプス:1基 450mm高エネルギー連装砲:8基 50mm対空パルスレーザー機関砲:40基 光子魚雷発射機:12基 多目的ミサイル発射機:30基 艦載機:120機〜140機※無人機 装甲 主砲装甲:950mm 舷側装甲:580mm 甲板装甲:560mm 装甲材質:エターナルメタル 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『フェンリル』 諸元 正式名:宇宙巡洋艦デュラハン 所属:ホープセイバーズ 建造所:ホープエリア軍事工場 艦種:宇宙巡洋艦 同型艦:4万隻〜5万隻 起工日:宇宙新暦720年11月26日 進宙日:宇宙新暦721年12月30日 就役日:宇宙新暦721年2月24日 全長:350m 全幅:280m 全高:65m 総重量:7万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 450mm高エネルギー連装砲:4基 50mm対空パルスレーザー機関砲:16基 光子魚雷発射機:2基 艦載機:5機※無人機 装甲 主砲装甲:680mm 舷側装甲:420mm 甲板装甲:270mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『ハイパードローン』 諸元 機種:無人機 所属:ホープセイバーズ 初飛行:宇宙新暦721年4月15日 生産数:900万機 運用開始:宇宙新暦721年5月30日 全長:12m 全幅:8m 全高:4m 総重量:8t 全速力:マッハ22〜超光速 武装 50mm対空用パルスレーザー:2基 新型光子魚雷:2基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
作中用語 『ケラウノス』超大型戦略高エネルギー兵器 『ツァーリーボンバ』超大型戦略貫通ミサイル 『ダウンフォール』銀河系殲滅兵器 『メティス基地』小惑星 『プルトロン基地』人工惑星 『メタリックアイ』小惑星 『エターナルメタル』特殊超合金 『スーパーリアクター』無限動力炉 『ハイパーリアクター』新型無限動力炉
第一話
宇宙艦隊戦闘
太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。 「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」 セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。 「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」 セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。 「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」 「はっ!承知しました!」 通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。 「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」 「はっ!ワープ機能作動!」 ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。 「艦長!スペースレーダーが反応しました!」 サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。 「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」 旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。 「恐らく敵軍の艦隊だろう…」 すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。 「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」 「敵艦隊の総数は七万隻か…」 今現在投入された戦力では大銀河帝国軍宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。 「直進せよ…」 ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。 「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」 問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。 「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」 最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。 「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」 旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。シールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。 「艦首が被弾しました!」 「本艦への被害状況は?」 ウィグノールは乗組員に問い掛ける。 「艦首は大破です…」 「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」 ブリッジの乗組員が恐る恐る…。 「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」 長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するシールド機能が搭載されるのが基本である。 「恐らく奴等の実弾兵器にはシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」 シールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。 「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」 するとウィグノールが無表情で…。 「狼狽えるな…」 戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。 (こんなにも劣勢なのに冷静なんて…) 同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。 「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」 「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」 「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」 「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」 大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。 「大総統…如何されましたか?」 するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。 「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」 ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。 「スペースレーダーが反応しました!」 「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」 周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。 「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」 「小型の機影だと?」 小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。 「恐らく宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」 「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」 「はっ!承知しました!」 通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。 「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」 「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」 ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。 「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」 「承知しました…」 大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型シールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。 「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」 「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」 ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。 「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」 スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。大銀河帝国軍にも宇宙用の偵察型ドローンは使用されるが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型シールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。 「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」 同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。 「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」 すると直後…。 「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」 スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。シールド機能が使用出来なくなる。 「大変です!本艦のシールド機能が無力化されました…」 セイバードラゴンのシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。 「狼狽えるな…」 こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。 「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」 爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。 「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」 「えっ!?ロケットエンジンが!?」 先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。 「大総統…脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」 ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。 「止むを得ないな…」 ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。 「大総統…危機一髪でしたね♪」 一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。 「何が危機一髪だ…」 ブラッドフォードは睥睨したのである。 「ひっ!」 睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。 「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」 同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。 「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」 「承知しました…」 通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。 「本船もワープさせろ…」 総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。 「艦長!敵軍が撤退します!」 ウィグノールは無表情で…。 「防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」 今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。
第二話
亡命艦隊
第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。 (今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…) 今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。 「誰だ?」 大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。 「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」 大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。 (誰かと思いきや…) 「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」 ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。 「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」 ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。 「貴様…」 「失礼です♪失礼です♪」 ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。 「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」 ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。 「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」 ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。 「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」 「結局貴様の用事とは?」 ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。 「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で新型兵器を見物しませんか?」 「暇潰しには好都合だ…承知した…」 ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。 「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」 「承知しました…」 ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。 「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」 軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。 「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」 近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。 「新型艦か…」 地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。 「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」 三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。 「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させる予定ですから♪」 するとストライダーは新型艦を紹介する。 「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」 バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。 「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」 ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。 (大総統…) ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。 「此奴は…」 ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。 「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」 ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。 「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」 「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」 大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。 「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」 ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。 「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」 ブラッドフォードは無表情で…。 「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」 「大総統…」 (本当に偏屈だな…) ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。 「今後の開発プランとやらは?」 「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」 ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。 「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」 「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」 すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。 「ん?通信機だと?」 ブラッドフォードは応答する。 「私だが…一体何事だ?」 「ブラッドフォード大総統!大変です!」 「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」 ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。 「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」 第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。 「愚民の暴走程度で報告するな…」 「えっ!?大総統…」 ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。 「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を一発投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」 「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」 躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。 「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」 ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。 「承知しました…大総統…」 ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。 「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」 ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。 「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」 「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」 同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。 「ウィグノール総帥!緊急事態です!」 「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」 ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。 「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」 ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。 「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」 「残念ですが…本当みたいです…」 「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」 ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。 「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」 ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。 「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」 ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。 「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」 「私は当然…本気だ!」 「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」 現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。 「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」 実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。 「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」 直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。 「ん?ホログラム?」 ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。 「ん?通信兵か?」 「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」 「緊急事態だと?今度は何事だ?」 「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『メタリックアイ』に接近中との情報です…」 小惑星メタリックアイとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。 「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」 「現段階では不明ですが…恐らくは…」 ウィグノールは再度問い掛ける。 「宇宙艦隊の規模は?」 「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」 「極小規模の小艦隊だな…」 「ウィグノール総帥…如何されますか?」 ウィグノールは一息するなり…。 「小惑星メタリックアイに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」 「承知しました…」 宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。メタリックアイの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。
第三話
奇襲大作戦
宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。 「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」 タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。 「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」 通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。 「奴等…行動を開始したな…」 ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。 「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」 「援軍は不要だ…」 問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。 「援軍は不要ですと?」 「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」 「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」 ブラッドフォードは一息するなり…。 「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」 「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」 ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。 「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」 大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。 「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」 (今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…) ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。 「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」 「はっ!承知しました!」 ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。 「改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」 「上出来だ…」 ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。 「出撃は五分後だ…」 「承知しました…」 五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。 「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」 「奇襲作戦か…」 タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。 「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」 「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」 現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。 「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」 地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。 「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」 ウィグノールは一息したのである。 「民間人への被害は最小限に努力しろ…」 数秒後…。 「全軍攻撃開始!敵軍を排除せよ!」 タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。 「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」 タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。 「非常に奇妙だな…」 「奇妙ですと?」 奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。 「何が奇妙なのですか?」 「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」 ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。 「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」 戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。 「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」 するとウィグノールは恐る恐る…。 「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」 「えっ!?敵軍のトラップですと?」 直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。 「ん?何事だ…」 モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。 「此奴は…大銀河帝国軍の…」 「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」 「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」 ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。 「ウィンフィールド…」 「如何されましたか?ウィグノール総帥…」 普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。 (ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…) ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。 「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」 ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。 「えっ!?今更撤退ですと!?」 「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」 「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」 ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。 (コンピュータゲームみたいだな…) ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。 「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」 一息するなり…。 「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」 改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。 「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」 ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。 (此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…) 不本意であるが…。 「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」 直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。 「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」 「主力の宇宙艦隊は無事だが…」 先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。
第四話
新型宇宙戦艦
ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。 「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」 軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。 「大総統♪こんな場所で一体何を?」 「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」 「新型兵器の見物ですか♪」 副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。 「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」 「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」 艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。 「えっ?改名って…」 ストライダーは困惑したのである。 「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アルセイス』だ…」 「えっ…アルセイスって…」 ストライダーはハッとする。 「アルセイスとは…大総統の令夫人の名前では…」 「勿論…彼女の名前だ…」 アルセイスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。 「大総統が希望すのであれば…」 新型宇宙戦艦の艦名はアルセイスと改名される。 「此奴の性能は?」 アルセイスは全長四百メートルサイズで全幅は二百二十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり主砲…。超弩級波動砲『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。 「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」 「エターナルメタルだと?」 エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。 「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」 「であれば好都合だ…」
第五話
猛反撃
三日後…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アルセイスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。 「全軍に伝達する!今回は小惑星メタリックアイを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」 今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星メタリックアイを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星メタリックアイの宙域へと到達する。 「メタリックアイの宙域に無事到達出来たな…」 旗艦アルセイスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。 「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」 「メタリックアイを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…奴等を絶望させるぞ…」 タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のメタリックアイのみである。 (タイラントキラーの資源宝庫であるメタリックアイを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…) タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。 「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」 艦内のスペースレーダーがメタリックアイの防衛宇宙艦隊をキャッチする。 「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」 「推計一万五千隻です…」 「一万五千隻か…」 (敵軍の規模は一個艦隊程度だな…) 敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。 「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始せよ!」 防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型シールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。 「大総統…高エネルギー兵器が無力化されました…」 「シールド装置だな…であれば光子魚雷と多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」 各艦は無数の光子魚雷…。多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はシールドジャミング装置が搭載され…。シールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。 「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」 部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。 「油断大敵だ…新型宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」 今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アルセイスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装はアルセイスと同様に主砲のケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアルセイス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。 「圧倒的だな…」 ブラッドフォードはアルセイスの艦内ホログラムからドローン部隊による空戦の様子を直視する。 「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」 「意外とドローン兵器も役立つな…」 今現在セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜され…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。 「敵軍のドローン部隊は壊滅した…作戦中のドローン部隊には後方の敵軍艦隊への攻撃を続行させろ…」 「承知しました…」 セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。セイバードローンは光子魚雷やら多目的ミサイルで敵艦に攻撃したのである。ドローン部隊の攻撃で小型艦艇は勿論…。十数隻もの大型艦が撃沈されたのである。当然としてタイラントキラーの宇宙艦隊も迎撃するのだが…。セイバードローンにはシールド装置により対空パルスレーザー機関砲は無力化され光子魚雷やら多目的ミサイルは機体に搭載された対空パルスレーザー機関砲により迎撃される。 「ドローン部隊が敵軍を圧倒しました…」 「であれば即刻敵軍宇宙艦隊に接近…総攻撃を仕掛ける!」 大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はワープ機能を再作動…。メタリックアイが肉眼でも視認出来る距離へと到達する。 「到達したな…」 メタリックアイ防衛艦隊との距離は七百キロメートルと至近距離である。 「ドローン部隊の攻撃で敵軍は大分疲弊した様子ですね…」 「全軍総攻撃を開始せよ…敵部隊を壊滅させろ…」 ブラッドフォードは総攻撃を指示…。全軍による総攻撃が開始されたのである。主力艦隊による艦砲射撃と実弾攻撃でメタリックアイ防衛艦隊の多数の宇宙艦艇が大破…。撃沈されたのである。
反帝国主義
宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。 「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」 「大銀河帝国に穏健派の帝国軍人は不要だ…」 (彼奴は目障りだからな…) ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。 「ホープセイバーズですが…如何されますか?」 問い掛けられたブラッドフォードは即答する。 「当然として…敵対勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」
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桜花姫 ( No.73 ) |
- 日時: 2021/09/03 22:33
- 名前: 月影桜花姫
- 第一話
真夜中
太古の大昔…。極東の島国『太平神国』での出来事である。数百年と長引いた戦乱時代は終焉…。太平神国は弱肉強食の戦乱時代から共生共存の安穏時代へと突入したのである。村人達の生活は毎日が平穏であったが…。各地に神出鬼没の百鬼夜行が出現し始める。五十年後の天地暦一万二十年五月上旬…。南国に聳え立つ荒神山にて一人の僧侶が真夜中の荒神山を視察する。 「荒神山か…」 荒神山は南国の最高峰であり観光地として有名である。近頃は無数の魑魅魍魎が荒神山に出現…。荒神山を占拠したのである。今現在荒神山は魑魅魍魎の魔窟同然であり人間は誰一人として荒神山へは近寄れない。 「何やら無数の妖気が感じられる…」 (如何やら今回の相手も大群だな…) 僧侶の名前は【三蔵郎】であり国内屈指の法力を所持する随一の僧侶である。 「こんな重苦しい妖気だ…普通の人間は近寄れないな…」 周囲の自然林からは非常に物静かな風音と川音が響き渡るのだが…。空気は非常に重苦しい。数分後…。荒神山の頂上へと到達する。 「荒神山の頂上だな…」 天辺からは南国の村里が眺望出来る。 「絶妙の景色だ…」 (即刻荒神山の妖怪達を撃退して…元通りの観光地に戻さなくては…) 直後である。 「ん!?」 (気配だ…) 突如として無数の気配を察知…。三蔵郎は警戒したのである。 (此奴は妖気か?) 「如何やら大群みたいだな…」 姿形こそ不明瞭であるが…。無数の妖気が接近するのは認識出来る。数秒後…。暗闇の自然林より一体の人影を確認する。 (人影みたいだな…) 体格は非常に小柄でありふら付いた身動きで接近する。 「人間では無さそうだな…」 周辺は暗闇であり人影の正体は認識出来ないが…。極度の悪臭により人間とは無縁の存在であるのは認識出来る。人影はふら付いた様子で一歩ずつ頂上の中心地へと近寄る。直後である。 (此奴は…) 人影は全身が血塗れで皮膚が腐敗…。眼球と体内の臓物が噴出した人外の化身である。 「此奴は妖怪…【食人餓鬼】だな…」 人影の正体とは妖怪の食人餓鬼である。食人餓鬼とは戦乱時代に飢饉やら疫病によって死去した人間達の無念が妖怪化した存在…。特定の地域では疫病神とも呼称される。性格は非常に強欲であり人間と遭遇すれば相手が誰であろうと捕食する。 「食人餓鬼が出現するとは…」 (相手が食人餓鬼程度なら…) 三蔵郎は即座に法力を駆使…。直後である。自身を食い殺そうと近寄る食人餓鬼の肉体を自然発火…。食人餓鬼は三蔵郎の発動した法力によって焼失したのである。 「妖怪よ…成仏せよ…」 焼死した食人餓鬼に合掌する。 「安心は出来ないな…」 今度は周囲の自然林より無数の食人餓鬼が出現…。 「大群だな…」 無数の食人餓鬼はふら付いた身動きで三蔵郎に近寄る。 「荒神山の妖気の正体は彼等だったか…」 総勢数十体から数百体もの食人餓鬼に包囲されるも…。圧倒的に劣勢であったが三蔵郎は畏怖せず冷静だったのである。 「飢饉と疫病によって辛苦する亡者達よ…貴様達を成仏させる…」 再度法力を駆使…。殺到する無数の食人餓鬼の全身を発火させたのである。発火により三蔵郎の周囲には食人餓鬼の焼死体が無数に埋没する。 「今度の相手は…」 (食人餓鬼よりも強大なる妖気だな…) 恐る恐る背後を警戒…。背後には無数の食人餓鬼が融合化した肉塊の怪物が出現する。肉塊の怪物は巨体の人型であるが…。全身の体表には無数の食人餓鬼の頭部が確認出来る。 「此奴は食人餓鬼の親玉…【百鬼食人餓鬼】か…」 百鬼食人餓鬼は通常の食人餓鬼の集合体であり食人餓鬼の親玉である。 (厄介なのが出現したな…) 体表の無数の頭部が三蔵郎を睥睨…。口先より熱風を放出する。 「熱風!?」 三蔵郎は即座に法力の結界を発動…。百鬼食人餓鬼の熱風を無力化したのである。 (絶大なる妖力だな…) 熱風の無力化には成功するが…。先程の結界により大半の法力を消耗する。 (予想以上に強力だな…) 「一か八か…」 直後…。黒雲が天空を覆い包む。 「死滅せよ!」 黒雲から落雷を発動…。百鬼食人餓鬼の頭上より高熱の落雷が直撃したのである。地面が陥没…。南国全域に雷光と爆発音が響き渡る。 「はぁ…はぁ…」 先程の攻撃で法力は消耗…。極度の疲労により法力が使用出来なくなる。 「百鬼食人餓鬼は仕留めたか…」 (戻ろうか…) 一安心した直後…。複数の強大なる妖気が接近するのを感じる。 「なっ!?」 (複数の妖気か!?) すると周囲の自然林から三体の百鬼食人餓鬼が出現する。 「百鬼食人餓鬼か…」 (三体も出現するなんて…) 最早複数の百鬼食人餓鬼を相手に反撃する余力は皆無であり三蔵郎は撤退を余儀無くされる。 (不本意だが…撤退しなければ…) 撤退する直前…。 「えっ…」 今度は百鬼食人餓鬼をも上回る不吉の妖気を感じる。 「今度は別の妖気だ…」 (百鬼食人餓鬼よりも数段階強力だな…ひょっとして大妖怪か!?) 不吉の妖気は大妖怪に匹敵する妖気であり刻一刻と荒神山の頂上に接近する。 (遭遇すれば…私は確実に殺される…) 「即刻退散しなければ…」 退散する寸前…。 「えっ…」 三蔵郎の背後には小柄の女性が佇立する。 (彼女は…人間の女性?) 背後の女性は外見のみなら人一倍容姿端麗であり両目の瞳孔は半透明の血紅色…。頭髪は黒毛の長髪であり赤色の口紅が非常に魅了される。巨乳のおっぱいも非常に魅力的であり正真正銘絶世の童顔美少女である。彼女の最大の特徴である赤色の着物は桜吹雪模様の花柄であり耳朶の耳装飾は金剛石で形作られた勾玉…。頭髪には八重桜の髪装飾が確認出来る。背丈は小柄であるものの非常に颯爽とした雰囲気である。 (彼女から邪気は感じられないが…妖気は感じる…) 女性が列記とした妖怪なのは確実であるが…。敵意も邪気も感じられない。すると彼女は無表情で…。 「氷結の妖術…発動!」 女性が氷結の妖術を発動すると三体の百鬼食人餓鬼は一瞬で全身が氷結したのである。数秒後…。氷結した肉体が崩れ落ちる。 「所詮は雑魚ね…」 すると女性は三蔵郎を凝視し始める。 「なっ!?」 三蔵郎は警戒した様子で恐る恐る後退りしたのである。強張った表情で恐る恐る女性に問い掛ける。 「貴女様は一体何者ですか?失礼ですが…人間では無さそうですね…」 女性は笑顔で名前を名乗る。 「私の名前は【月影桜花姫】♪妖怪の一員よ♪」 桜花姫は自身を妖怪の一員と名乗ったのである。 「貴女様は妖怪でしたか…」 桜花姫は正真正銘妖怪であるが…。彼女からは敵意も殺意も感じられない。 (姿形のみなら人間の小町娘ですが…) 三蔵郎は再度警戒した様子で恐る恐る後退りする。彼女からは敵意は感じられないが正直桜花姫を信用出来ず只管警戒し続ける。 (彼女の肉体から無数の妖怪達の妖気を感じるぞ…) 可愛らしい外見とは裏腹に桜花姫の体内からは数百体から数千体もの無数の妖気が感じられる。 「あんたは人間の僧侶ね♪警戒しないで…別に私は人間には手出ししないから…」 「えっ…」 (人間を…殺さないって!?) 本来人間と妖怪は敵対関係である。俗界に存在する大半の妖怪達は人間と遭遇すれば即座に敵意…。襲撃するのが通例だったのである。桜花姫は列記とした妖怪であるものの…。彼女の様子に意外であると感じる。 (摩訶不思議だな…妖怪でも人間に手出ししない妖怪が存在するなんて…ん?) 桜花姫を直視し続けると彼女の肉体から人間の気配を感じる。 (一体何が?人間の気配だ…如何して妖怪である彼女の肉体から…人間の気配が感じられるのか?) すると桜花姫は三蔵郎を凝視するなり…。 「あんた…不思議そうな表情ね♪」 「えっ!?」 桜花姫は説明する。 「妖怪は妖怪でも…私は特殊なのよ…」 「特殊ですと?」 「私の肉体の一部…【月影桃子姫】って名前だったかしら?桃子姫って人間の巫女と無数の妖怪達が集合して誕生したのが私なのよ♪」 「月影桃子姫様とは…伝説の巫女の?」 月影桃子姫とは人間の巫女であり強大なる霊力で多種多様の妖怪を征伐…。伝説の巫女として有名である。とある大妖怪との戦闘により失踪…。今現在では彼女の行方は不明である。 「勿論♪」 桜花姫は月影桃子姫と名乗る人間の巫女と無数の妖怪達が一体化した存在…。彼女は所謂無数の魑魅魍魎から誕生した異例の集合体である。 「失礼ですが…桜花姫様は魑魅魍魎の集合体なのですね?」 (彼女が非常に人間っぽい雰囲気だったのも…肉体の一部である人間の巫女の影響だったのか…) 三蔵郎は再度桜花姫に質問する。 「先程は如何して人間である私を攻撃せず…同種の妖怪である百鬼食人餓鬼を攻撃されたのですか?」 桜花姫は笑顔で即答したのである。 「私は気紛れなの♪今回は単純に百鬼食人餓鬼が目障りだっただけだけどね♪」 (気紛れだったか…) 理解するのは非常に困難であるが…。桜花姫の様子から三蔵郎は内心一安心する。 「勿論…僧侶のあんたが私に手出しするのであれば…私は手加減しないわよ♪」 桜花姫の発言に三蔵郎は一瞬畏怖したのである。 「私は貴女様を征伐しませんよ…生憎私自身実力不足ですし…大妖怪に匹敵する貴女様を単独で征伐するなんて百年修行し続けても不可能でしょう…」 「私が大妖怪なんてあんたは大袈裟ね♪」 (私が大妖怪ですって♪) 桜花姫は内心大喜びする。 「兎にも角にも私は退散します…先程の桜花姫様の妖術で荒神山の妖怪達は無事征伐されました…」 すると桜花姫は恐る恐る…。 「あんたの名前は?」 「えっ…私の名前ですと…私は僧侶の三蔵郎です…」 自身の名前を名乗ると三蔵郎は即座に荒神山から退散したのである。数秒後…。 「私も西国に戻ろうかしら…」 桜花姫も自身の祖国である西国に戻ったのである。戻ってより二時間後…。無事に西国の村里へと戻った桜花姫は自宅の近辺に聳え立つ『天霊山』に移動する。 「露天風呂で入浴しましょう♪」 田舎村の西国であるが…。太平神国の温泉郷と呼称され時たま観光客が西国の温泉に入浴する。天霊山の頂上に到達すると天辺の中心部には石造りの露天風呂が確認出来る。 「露天風呂だ♪」 天霊山の露天風呂は妖怪が入浴すると消耗した妖力を蓄積…。回復させられる。 (折角だし変化の妖術を使用しちゃおうかしら♪) 桜花姫はあらゆる妖怪の集合体である。当然として変化の妖術も使用出来…。変化の妖術を駆使すると多種多様の動植物やら器物にも変化出来る。 「変化の妖術…発動!」 変化の妖術を発動すると彼女の全身から白煙が発生…。すると下半身が銀鱗の大魚に変化したのである。両目の血紅色の瞳孔は半透明の瑠璃色に発光…。黒毛の長髪だった頭髪は銀髪に変色する。 「入浴するわよ♪」 巨体の人魚に変化した桜花姫は即座に露天風呂へと入浴する。 「極楽♪極楽♪」 彼女にとって天霊山での入浴は一日の日課である。桜花姫は満足したのか天空の夜空を眺望する。 (妖怪の征伐も意外と面白いわね♪今度も妖怪を征伐しちゃおうかな?) 直後…。突如として背後の竹林より気配を感じる。 「えっ?」 (気配だわ…) 何者かによる正体不明の気配は露天風呂に接近する。 (妖気かしら?) 「如何やら妖怪みたいね…」 気配の正体は妖気であり露天風呂に接近するのは妖怪であると認識したのである。桜花姫は背後を直視する。 「誰かと思いきや…」 露天風呂の近辺には白装束の着物姿の少女が佇立…。青紫色の口紅と黒髪の長髪が特徴的である。体格は桜花姫よりも小柄であり半透明の血紅色の瞳孔で入浴中の桜花姫を凝視する。 「あんたは粉雪妖怪の【雪女郎】♪」 「桜花姫…入浴中だったのね…」 彼女は粉雪妖怪の雪女郎である。姿形は人間の小町娘だが…。列記とした妖怪であり桜花姫にとって唯一の悪友である。桜花姫は笑顔で…。 「折角だしあんたも私と一緒に入浴しない♪雪女郎♪」 「誰が熱湯の温泉なんかに入浴しますか!こんな暑苦しい場所で…」 粉雪妖怪の雪女郎は高温の温泉が苦手である。 「私が入浴すると肉体が崩れ落ちちゃうわよ…」 「冗談よ♪冗談♪御免あそばせ♪」 桜花姫は笑顔で謝罪する。 「入浴しないなら…如何してこんな場所に?ひょっとして覗き見とか♪あんたは相当の物好きね♪」 揶揄する桜花姫に雪女郎は苛立ったのである。 「あんた…私に殺されたいみたいね…」 「私に用事かしら?」 桜花姫が問い掛けると雪女郎は真剣そうな表情で…。 「大変なの…桜花姫…」 「何が大変なのよ?」 雪女郎に恐る恐る問い掛ける。 「先程…あんたが南国の荒神山で百鬼食人餓鬼を殺したわよね?」 「問題だったかしら?」 「大問題よ!」 桜花姫が荒神山に出没した百鬼食人餓鬼を仕留めたのを契機に…。一部の妖怪達が桜花姫の行為を批判したのである。 「あんたが人間の僧侶に加勢しちゃったから…」 噂話は全国各地に出回る。一部の妖怪達が桜花姫を敵対視したのである。 「何体かの大妖怪もあんたを敵対視したみたいなのよ…如何するのよ!?」 雪女郎は非常に不安がる。極度に不安視する雪女郎に…。 「雪女郎…あんたは極度の心配性ね♪気にしない♪気にしない♪」 桜花姫は特段気にならなかったのか非常に平気そうな様子である。 (桜花姫…) 「あんたは本当に気楽ね…」 桜花姫の様子に呆れ果てる。 「気楽も何も…私は無数の妖怪達の集合体なのよ♪人間の匪賊達を食べ過ぎちゃったからね♪妖力だけなら大妖怪に匹敵するかも知れないわね…」 以前は大勢の山賊やら匪賊達を殺害…。食い殺したのである。彼等を食い殺し続けた結果…。彼女は妖力のみなら大妖怪に匹敵する領域へと到達したのである。 「相手が大妖怪であっても…私に手出しするなら手加減しないわよ♪猛反撃しちゃうからね♪」 「桜花姫…」 断言する桜花姫に雪女郎は苦笑いする。 「私は加勢しないわよ…一人で頑張りなさいね…」 雪女郎は自宅へと戻ったのである。 「面白くなったわね♪」 内心大喜びする。
第二話
大海戦
南国の荒神山での戦闘から六日後の真昼…。桜花姫は娯楽を主目的に東国の中心街へと出掛ける。 「東国だわ…」 東国とは太平神国でも比較的老熟した全国一の城下町である。総人口も太平神国では最大級の大規模都市であり唯一の文明地帯である。桜花姫は和菓子屋にて大好きな桜餅を頬張る。 「非常に美味だわ♪」 彼女は無我夢中に桜餅を頬張り続けるものの…。 「えっ?」 (誰かしら?僧侶っぽいわね…) 隣席には僧侶らしき人物が和菓子屋に来店する。 (彼には見覚えが…) 「誰だったっけ?」 僧侶らしき人物とは六日前に闇夜の荒神山にて対面した僧侶の三蔵郎であり奇遇にも彼が東国の和菓子屋にて来店したのである。 「ひょっとして三蔵郎様?」 すると三蔵郎は身震いした様子で恐る恐る…。 「桜花姫様?如何してこんな場所に?」 三蔵郎は小声で問い掛ける。 「如何してって…私は単純に和菓子屋で桜餅を食べたかっただけよ♪私は桜餅が大好きだからね♪」 三蔵郎は恐る恐る周囲を警戒した様子で…。 「生憎妖気を感じられるのは私だけですが…」 警戒する三蔵郎に問い掛ける。 「あんた…私を信用出来ないの?」 「信用するも何も…失礼ですが貴女様は魑魅魍魎の集合体です…正直妖怪である桜花姫様を信用するのは…」 実際に桜花姫が暴走した場合…。三蔵郎が全力で法力を駆使しても彼女の暴走を阻止するのは実質不可能である。 「あんたは本当に心配性なのね♪私なら大丈夫よ♪」 桜花姫は笑顔で即答する。 「私は荒神山で三蔵郎様に加勢してから…大勢の妖怪達に毛嫌いされたのよ♪」 「えっ!?毛嫌いですと!?」 三蔵郎は驚愕したのである。 「今現在の私は一匹狼だからね♪妖怪達に敵対視されちゃったから♪」 「一匹狼って…」 (同種の妖怪に敵対視された?彼女は平気なのか?) 平気そうな彼女に不思議がる。 (月影桜花姫…彼女は本当に摩訶不思議の妖怪だな…) すると桜花姫は無我夢中に桜餅を頬張り始める。無我夢中に桜餅を頬張る桜花姫に…。 (彼女は列記とした妖怪ですが…本当に人間らしく感じられる…本当に妖怪なのか?) 桜花姫は純粋無垢であり非常に人間らしく感じられ彼女が本当に妖怪なのか疑問視する。すると直後である。 「ん!?」 (別の妖気か!?) 突如として妖気を察知…。三蔵郎は警戒する。 「えっ?」 桜花姫も妖気に反応したのである。 「三蔵郎様も察知したみたいね…」 「方角から南方地帯でしょうか…南国の海域に妖気が感じられます…」 突如として南国の海域より妖気を察知する。 「南国に妖怪が出現したのね♪」 「妖気は非常に強力です…大妖怪の一歩手前でしょうか?」 妖気は大妖怪よりは若干下回るものの…。非常に強力である。 「面白そうね♪私の出番かしら♪」 「私は即刻妖怪を退治しなくては…」 三蔵郎は一目散に和菓子屋から南国へと疾走する。 「えっ!?三蔵郎様!?」 桜花姫も全力で疾走…。三蔵郎を追尾したのである。必死に三蔵郎を追尾し続けるのだが…。三蔵郎の身動きは神速であり身体能力が愚鈍の桜花姫では彼を追尾出来ない。東国と南国を直結する両国橋を通過してより三分後…。 「はぁ…はぁ…」 (三蔵郎様を見失っちゃったわ…) 桜花姫は草臥れたのか南国の村里の道中で一休みする。 「仕方ないわね…」 (妖術を使用しちゃいましょう♪) 桜花姫は即座に瞬間移動の妖術を発動…。疾走し続ける三蔵郎の目前に瞬間移動したのである。 「三蔵郎様♪」 「うわっ!桜花姫様!?」 突如として目前より出現した桜花姫に驚愕する。 「桜花姫様は妖術で先回りしたのですか?」 「勿論よ♪」 すると桜花姫は笑顔で…。 「私を置いてきぼりなんて…三蔵郎様の意地悪♪」 「仕方ないですね…」 三蔵郎は桜花姫と一緒に南国の海岸へと直行したのである。一時間後…。二人は海岸へと到達する。 「到着したわね♪」 「ですが妖怪は?」 海岸の砂浜には木造の漁船が数隻…。十数人の漁師達が確認出来る。彼等は非常に困惑した様子であり三蔵郎は恐る恐る問い掛ける。 「如何されましたか?」 「法師様ですか…」 「先程ですが…突然海辺に妖怪が出現しましてね…」 「妖怪ですと?」 「大山みたいな巨大真蛸ですよ…普通の妖怪よりも桁違いに巨体ですね…」 数時間前の出来事である。彼等は漁猟活動中…。突如として規格外の巨大真蛸が出現したのである。巨大真蛸の出現によって漁船は襲撃されたものの…。彼等は危機一髪巨大真蛸の襲撃から海岸に戻ったのである。 「一瞬妖怪に殺されるかと…」 「俺達は命拾い出来ましたが…漁猟が出来なくて…」 すると先程から沈黙した桜花姫が発言し始める。 「ひょっとして巨大真蛸の正体は水難妖怪の【海難入道】かしら…」 「海難入道ですか?」 海難入道とは水難事故によって死亡した亡者達の霊魂が妖怪化した化身…。目撃者の証言では海難入道の姿形は規格外の巨大真蛸が通説である。海面上で海難入道に遭遇すると船舶は沈没され…。海難入道と遭遇した人間は溺死するのが通例である。 「漁船を襲撃したのが水難妖怪の海難入道であれば…即刻仕留めなければ…」 三蔵郎は即刻退治を決意するのだが…。 「海難入道は私が仕留めるわ♪」 「えっ…桜花姫様?」 桜花姫の発言に周囲の者達は驚愕したのである。 「姉ちゃんよ…相手は本物の妖怪だぞ…」 「人間のあんたでは妖怪を退治するなんて…」 漁師達は呆れ果てる。 「私が人間ですって♪」 桜花姫は笑顔で…。 「私は正真正銘…妖怪なのよ♪」 「あんたが妖怪だって?」 「姉ちゃんよ…面白くない冗談だな…」 自身を妖怪と名乗る桜花姫に漁師達や揶揄したのである。 「仕方ないわね…」 桜花姫は木造の漁船を直視するなり…。 「桜餅に変化しなさい♪」 変化の妖術を発動する。すると木造の漁船は白煙に覆い包まれ…。小皿に配置された桜餅に変化したのである。 「なっ!?俺達の漁船が…」 「桜餅に!?如何してこんな…」 変化の妖術はあらゆる物体を別物に変化させられる。 「変化の妖術は私の得意妖術なのよ♪」 漁師達は勿論…。三蔵郎も桜花姫の妖術に愕然とする。漁師達は恐る恐る…。 「あんたは…本当に妖怪なのか?」 「勿論♪私は正真正銘妖怪なのよ♪」 問い掛けられた桜花姫は笑顔で即答する。すると漁師達は身震いした様子で恐る恐る後退りしたのである。 「ひっ!此奴は本物の妖怪だ!」 「殺されちまう!逃げろ!」 周囲の漁師達は桜花姫に畏怖したのか一目散に逃走する。 「逃げちゃったわ…」 「当然の反応でしょうね…」 現実問題…。妖怪と人間は敵対関係であり妖怪に敵意が無くとも人間達は必要以上に妖怪を脅威に感じるのが現状である。 「兎にも角にも…私は海難入道を征伐するわよ♪」 再度変化の妖術を発動する。すると桜花姫の下半身が銀鱗の大魚へと変化…。黒髪の長髪は銀髪に変色したのである。 「なっ!?桜花姫様が人魚に!?」 三蔵郎は驚愕する。 「私は変化の妖術で人魚に変化出来るのよ♪」 桜花姫は即座に海中へと潜水したのである。 「海難入道は?」 海中は意外にも暗闇であり魚類は確認出来ても巨大真蛸らしき物体は何一つとして確認出来ない。 (こんな暗闇だと海難入道は発見出来ないわね…) すると直後である。強大なる妖気が自身に接近するのを感じる。 「妖気!?」 (ひょっとして海難入道の妖気かしら?) 接近する妖気に桜花姫は警戒したのである。数秒後…。暗闇の遠方より白鯨らしき巨大移動物体が接近する。 「何かしら?」 巨大移動物体を凝視し続けると半透明の体表に無数の触手…。頭部は巨大坊主であり全体的に真蛸らしき物体だったのである。 (巨大真蛸…) 「海難入道だわ…」 海中の巨大移動物体とは水難妖怪…。海難入道だったのである。通常の妖怪とは桁外れの巨体であり全長は大島に匹敵する。すると海難入道は両方の大目玉で海中の桜花姫を凝視し始める。 「ん?人魚の小娘かと思いきや…貴様はあらゆる妖怪の集合体…月影桜花姫だな…人魚に変化したのか?」 海難入道は人語で発言したのである。 「私は変化の妖術で人魚にも変化出来るからね♪」 桜花姫は笑顔で返答する。 「今現在の俺は空腹だ…邪魔するなら貴様も食い殺すぞ…」 海難入道は獰猛で強欲の妖怪である。彼自身は極度の食いしん坊であり自身が空腹であれば相手が妖怪であっても捕食する。 「空腹ね…私こそあんたを食い殺しちゃおうかしら♪」 「はっ?」 桜花姫の挑発に海難入道は苛立ったのである。 「所詮は陸地の妖怪である貴様が…水難妖怪である俺を食い殺すと?海中では俺を仕留められる妖怪は皆無であるぞ…」 海難入道は妖力こそ大妖怪よりは若干下回るが…。海中で彼を上回る海中の妖怪は存在しない。 「噂話は熟知したぞ…近頃貴様は人間の僧侶に加勢して…同種の妖怪達を征伐したらしいな?」 「人間に加勢したから何よ?私は鬱陶しい邪魔者を仕留めただけなのよね♪」 桜花姫は笑顔で反論したのである。 「貴様…気に入らないな…」 「気に入らないなら如何するのかしら♪」 「妖怪の面汚しである貴様は死滅しろ…」 海難入道は即座に巨大触手で攻撃するのだが…。桜花姫は瞬間移動の妖術により海難入道の背後へと瞬間移動したのである。 「危機一髪だったわね♪」 「此奴…妖術で俺の攻撃を回避しやがったか…」 「今度は私の出番ね♪」 桜花姫は両手より雷光の発光体を凝縮…。雷光の球体を形作る。 「あんたこそ死滅しなさい♪」 両手から雷光の球体を発射したのである。雷光の球体は海難入道に直撃する。 「直撃♪直撃♪」 雷光の球体は海難入道の皮膚に直撃するのだが…。 「えっ?」 「残念だったな…桜花姫よ…」 桜花姫が発射した雷光の球体は海難入道の体内へと吸収されたのである。 「妖力を吸収するなんて…」 普段は冷静の桜花姫であるが…。海難入道の吸収能力に一瞬動揺する。 (海難入道には妖術が通用しないのかしら…) 「不思議そうな表情だな…桜花姫…俺はあらゆる妖力を吸収出来…妖術を無力化出来るのだ…」 海難入道の最強の特殊能力である吸収能力は自身の肉体に接触した多種多様の妖力を吸収出来…。あらゆる妖術を無力化出来る。基本的に妖力を駆使した攻撃法では海難入道は仕留められない。 「貴様程度の妖術では俺を仕留められない!」 (妖術が通用しないなんて…此奴は意外と厄介だわ…) あらゆる魑魅魍魎の集合体である桜花姫でも…。妖力を吸収する妖怪を仕留めるのは非常に困難である。 (出直そうかな?) 恐る恐る後退りする。後退りする桜花姫に…。 「先程の威勢は如何した?俺に恐怖したか?」 「別に…」 問い掛けられた桜花姫は無表情で返答する。 「貴様は妖力だけなら大妖怪に匹敵するな…是非とも貴様を捕食したい…」 「私を捕食ですって?」 「あらゆる妖怪の集合体である貴様を食い殺せば…俺は大妖怪の領域に到達出来るからな♪」 豪語する海難入道に桜花姫は笑顔で…。 「私を捕食なんて…あんた程度の妖怪に出来るかしら♪」 桜花姫は笑顔で挑発したのである。 「貴様…本当に食い殺されたいらしいな…」 「食い殺せるのであれば私を食い殺しなさいよ♪」 桜花姫は再度挑発する。 「妖怪の小娘風情が…貴様は本当に気に入らない小娘だな…」 すると蛸足の巨大触手で桜花姫を拘束したのである。 「えっ?」 「貴様を食い殺す!」 一口で桜花姫を捕食…。口内で彼女を咀嚼したのである。 「所詮桜花姫はこんな程度の妖怪だ…」 すると直後…。桜花姫を捕食した影響からか先程よりも妖力が急上昇したのである。 「俺の妖力が増大化したぞ!」 妖力のみなら今現在の海難入道は大妖怪に匹敵…。海難入道は強大化した自身の妖力に大喜びしたのである。 「今日から俺も大妖怪の仲間入りだな♪」 すると直後…。 「ん?」 海難入道の全身が白煙に覆い包まれ…。二町規模の巨大さである海難入道の肉体が消滅したのである。すると白煙の内部から海難入道によって食い殺された桜花姫が出現…。彼女は無傷であり平気そうな様子だったのである。 「海難入道を仕留めたし♪」 (陸地に戻りましょう♪) 桜花姫は再度瞬間移動の妖術を駆使…。海岸の砂浜へと戻ったのである。 「なっ!?桜花姫様!?」 三蔵郎と合流する。 「三蔵郎様♪妖怪は無事征伐したわ♪」 「海難入道を征伐されたみたいですね…一瞬桜花姫様の妖気が消滅したので食い殺されたのかと…」 「一度海難入道に捕食されちゃったけれどね♪」 桜花姫は一時的に海難入道に捕食されたものの…。体内の胃袋から海難入道の肉体と同化したのである。 「反対に私が海難入道を捕食したのよ♪」 「えっ…捕食ですと?」 今現在海難入道は桜花姫の肉体の一部に変化する。 「兎にも角にも…海難入道は仕留めたから南国の海域は安全よ♪」 「事件は無事解決したので一件落着ですね…」 三蔵郎も一安心したのである。 「事件も解決したし♪戻りましょう♪」 「解散しますかね…」 桜花姫と三蔵郎は解散…。二人は村里へと戻ったのである。
第三話
強襲
南国での海難入道との大海戦から六日後の真夜中…。桜花姫は暇潰しに北国の村里にて散歩したのである。 「退屈ね…」 時間帯は深夜であり村人達は確認出来ない。 「妖怪でも出現しないかしら?」 基本的に多数の百鬼夜行が活動するのは真夜中であり日中に出現するのは中級以上の妖怪である。 「戻ろうかな?」 戻ろうかと思いきや…。 「ん!?」 突如として周囲より無数の気配を感じる。 (気配だわ…) 桜花姫は恐る恐る周囲を警戒し始める。 (無数の妖気みたいね…) 「妖怪みたいね…」 気配の正体は妖気であり無数の妖怪達が自身に接近するのを察知する。 「何が出現するのかしら?」 すると直後である。 「食人餓鬼だわ…」 周囲の地面より数十体もの食人餓鬼が出現…。周囲を包囲されたのである。 (敵意も感じられるわね…) 突如として出現した食人餓鬼であるが…。 「如何やらあんた達…私が気に入らないみたいね♪」 本来食人餓鬼は同種の妖怪には手出ししない性質なのだが…。桜花姫を敵対視した様子だったのである。直後…。食人餓鬼の大群は桜花姫に殺到する。 「はぁ…あんた達は命知らずね…」 桜花姫は呆れ果てるものの…。 「死滅しなさい♪」 念力の妖術を発動する。すると食人餓鬼の全身が肥大化…。破裂したのである。桜花姫の地面周辺には無数の鮮血やら肉片が散乱する。 (変化の妖術を使用しちゃおうかしら♪) 「桜餅に変化しなさい♪」 今度は変化の妖術を発動すると周辺の肉片が小皿に配置された桜餅に変化したのである。 (変化の妖術成功♪) 「桜餅に変化したわね♪」 桜花姫は大喜びするなり…。無我夢中に桜餅を頬張り始める。数分後…。数百個もの桜餅を頬張ったのである。 「満足♪満足♪消耗しちゃった妖力も回復出来たわね♪」 戻ろうかと思いきや…。 「今度も無数の妖気を感じるわ…」 周囲より無数の妖気を察知する。 「今度も大群ね…」 すると周囲より数十体から数百体もの食人餓鬼の大群が出現…。今度は五体の百鬼食人餓鬼も確認出来る。 「先程よりも大群だわ…」 (今度は百鬼食人餓鬼も出現するなんてね…) 百鬼食人餓鬼と食人餓鬼の大群に包囲される。 「鬱陶しい奴等ね…」 面倒臭いと感じるのか体内の妖力を急上昇…。天空が黒雲により覆い包まれる。 「死滅しなさい♪」 落雷の妖術を発動…。黒雲から落雷が発生したのである。落雷が地面に直撃すると地面が抉られ…。周囲の食人餓鬼と百鬼食人餓鬼を一掃させる。 「所詮は雑魚妖怪ね♪大妖怪に相当する私に挑戦するなんて無謀なのよ♪」 夜空の満月を眺望するなり…。 「西国に戻ろうかしら…」 直後である。 「えっ?」 突如として不吉の気配を感じる。 (何かしら?) 「妖気?」 不吉の妖気が一歩ずつ接近する。 (妖気なのは確実だけど…) 普段は冷静沈着の桜花姫であるが…。不吉の妖気に戦慄したのである。 (妖気は妖気でも…此奴は大妖怪の妖気ね…) 不吉の妖気は大妖怪の妖気であり桜花姫は警戒する。 (一体何が出現するのかしら?) すると背後より…。 「貴様はあらゆる妖怪の集合体…月影桜花姫か…」 「えっ!?」 桜花姫は警戒した様子で背後を直視したのである。 「あんたは…」 彼女の背後に佇立するのは大陸風の甲冑を装備した小柄の武人であり桜花姫を凝視する。 「私は…【夜叉丸】…大妖怪の一人だ…」 夜叉丸とは武人の妖怪であり外見は小柄の青年である。絶大なる妖力により北国一帯を支配する大妖怪であり人間達は勿論…。数多の妖怪達が彼を畏怖する。 「大妖怪夜叉丸…こんな場所であんたと遭遇するなんてね…」 桜花姫は畏怖したのか恐る恐る後退りしたのである。
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宇宙大艦隊 ( No.74 ) |
- 日時: 2021/09/04 11:24
- 名前: 月影桜花姫
- 第一話
宇宙艦隊戦闘
太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。 「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」 セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。 「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」 セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。 「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」 「はっ!承知しました!」 通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。 「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」 「はっ!ワープ機能作動!」 ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。 「艦長!スペースレーダーが反応しました!」 サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。 「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」 旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。 「恐らく敵軍の艦隊だろう…」 すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。 「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」 「敵艦隊の総数は七万隻か…」 今現在投入された戦力では大銀河帝国軍主力宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。 「直進せよ…」 ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍主力宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍主力宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。 「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」 問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。 「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」 最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。 「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」 旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。シールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。 「艦首が被弾しました!」 「本艦への被害状況は?」 ウィグノールは乗組員に問い掛ける。 「艦首は大破です…」 「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」 ブリッジの乗組員が恐る恐る…。 「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」 長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するシールド機能が搭載されるのが基本である。 「恐らく奴等の実弾兵器にはシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」 シールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。 「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」 するとウィグノールが無表情で…。 「狼狽えるな…」 戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。 (こんなにも劣勢なのに冷静なんて…) 同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。 「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」 「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」 「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」 「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」 大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。 「大総統…如何されましたか?」 するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。 「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」 ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。 「スペースレーダーが反応しました!」 「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」 周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。 「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」 「小型の機影だと?」 小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。 「恐らく宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」 「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」 「はっ!承知しました!」 通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。 「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」 「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」 ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。 「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」 「承知しました…」 大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型シールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。 「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」 「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」 ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。 「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」 スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。大銀河帝国軍にも宇宙用の偵察型ドローンは使用されるが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型シールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。 「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」 同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。 「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」 すると直後…。 「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」 スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。シールド機能が使用出来なくなる。 「大変です!本艦のシールド機能が無力化されました…」 セイバードラゴンのシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。 「狼狽えるな…」 こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。 「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」 爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。 「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」 「えっ!?ロケットエンジンが!?」 先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。 「大総統…脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」 ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。 「止むを得ないな…」 ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。 「大総統…危機一髪でしたね♪」 一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。 「何が危機一髪だ…」 ブラッドフォードは睥睨したのである。 「ひっ!」 睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。 「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」 同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。 「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」 「承知しました…」 通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。 「本船もワープさせろ…」 総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。 「艦長!敵軍が撤退します!」 ウィグノールは無表情で…。 「防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」 今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。
第二話
亡命艦隊
第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。 (今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…) 今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。 「誰だ?」 大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。 「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」 大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。 (誰かと思いきや…) 「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」 ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。 「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」 ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。 「貴様…」 「失礼です♪失礼です♪」 ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。 「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」 ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。 「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」 ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。 「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」 「結局貴様の用事とは?」 ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。 「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で新型兵器を見物しませんか?」 「暇潰しには好都合だ…承知した…」 ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。 「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」 「承知しました…」 ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。 「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」 軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。 「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」 近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。 「新型艦か…」 地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。 「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」 三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。 「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させる予定ですから♪」 するとストライダーは新型艦を紹介する。 「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」 バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。 「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」 ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。 (大総統…) ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。 「此奴は…」 ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。 「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」 ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。 「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」 「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」 大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。 「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」 ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。 「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」 ブラッドフォードは無表情で…。 「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」 「大総統…」 (本当に偏屈だな…) ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。 「今後の開発プランとやらは?」 「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」 ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。 「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」 「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」 すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。 「ん?通信機だと?」 ブラッドフォードは応答する。 「私だが…一体何事だ?」 「ブラッドフォード大総統!大変です!」 「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」 ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。 「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」 第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。 「愚民の暴走程度で報告するな…」 「えっ!?大総統…」 ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。 「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を一発投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」 「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」 躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。 「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」 ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。 「承知しました…大総統…」 ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。 「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」 ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。 「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」 「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」 同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。 「ウィグノール総帥!緊急事態です!」 「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」 ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。 「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」 ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。 「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」 「残念ですが…本当みたいです…」 「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」 ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。 「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」 ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。 「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」 ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。 「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」 「私は当然…本気だ!」 「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」 現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。 「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」 実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。 「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」 直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。 「ん?ホログラム?」 ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。 「ん?通信兵か?」 「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」 「緊急事態だと?今度は何事だ?」 「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『メタリックアイ』に接近中との情報です…」 小惑星メタリックアイとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。 「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」 「現段階では不明ですが…恐らくは…」 ウィグノールは再度問い掛ける。 「宇宙艦隊の規模は?」 「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」 「極小規模の小艦隊だな…」 「ウィグノール総帥…如何されますか?」 ウィグノールは一息するなり…。 「小惑星メタリックアイに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」 「承知しました…」 宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。メタリックアイの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。
第三話
奇襲大作戦
宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。 「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」 タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。 「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」 通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。 「奴等…行動を開始したな…」 ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。 「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」 「援軍は不要だ…」 問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。 「援軍は不要ですと?」 「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」 「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」 ブラッドフォードは一息するなり…。 「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」 「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」 ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。 「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」 大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。 「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」 (今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…) ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。 「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」 「はっ!承知しました!」 ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。 「改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」 「上出来だ…」 ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。 「出撃は五分後だ…」 「承知しました…」 五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。 「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」 「奇襲作戦か…」 タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。 「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」 「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」 現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。 「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」 地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。 「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」 ウィグノールは一息したのである。 「民間人への被害は最小限に努力しろ…」 数秒後…。 「全軍攻撃開始!敵部隊を排除せよ!」 タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。 「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」 タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。 「非常に奇妙だな…」 「奇妙ですと?」 奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。 「何が奇妙なのですか?」 「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」 ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。 「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」 戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。 「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」 するとウィグノールは恐る恐る…。 「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」 「えっ!?敵軍のトラップですと?」 直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。 「ん?何事だ…」 モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。 「此奴は…大銀河帝国軍の…」 「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」 「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」 ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。 「ウィンフィールド…」 「如何されましたか?ウィグノール総帥…」 普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。 (ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…) ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。 「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」 ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。 「えっ!?今更撤退ですと!?」 「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」 「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」 ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。 (コンピュータゲームみたいだな…) ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。 「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」 一息するなり…。 「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」 改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。 「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」 ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。 (此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…) 不本意であるが…。 「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」 直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。 「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」 「主力の宇宙艦隊は無事だが…」 先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。
第四話
新型宇宙戦艦
ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。 「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」 軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。 「大総統♪こんな場所で一体何を?」 「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」 「新型兵器の見物ですか♪」 副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。 「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」 「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」 艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。 「えっ?改名って…」 ストライダーは困惑したのである。 「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アルセイス』だ…」 「えっ…アルセイスって…」 ストライダーはハッとする。 「アルセイスとは…大総統の令夫人の名前では…」 「勿論…彼女の名前だ…」 アルセイスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。 「大総統が希望すのであれば…」 新型宇宙戦艦の艦名はアルセイスと改名される。 「此奴の性能は?」 アルセイスは全長四百メートルサイズで全幅は二百二十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり主砲…。超弩級波動砲『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。 「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」 「エターナルメタルだと?」 エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。 「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」 「であれば好都合だ…」
第五話
制圧作戦
三日後の四月二十七日早朝…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アルセイスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。 「全軍に伝達する!今回は小惑星メタリックアイを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」 今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星メタリックアイを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星メタリックアイの宙域へと到達する。 「メタリックアイの宙域に無事到達出来たな…」 旗艦アルセイスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。 「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」 「メタリックアイを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…徹底的に奴等を絶望させるぞ…」 タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のメタリックアイのみである。 (タイラントキラーの資源宝庫であるメタリックアイを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…) タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。 「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」 艦内のスペースレーダーがメタリックアイの防衛宇宙艦隊をキャッチする。 「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」 「推計一万五千隻です…」 「一万五千隻か…」 (敵軍の規模は一個艦隊程度だな…) 敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。 「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始せよ!」 防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型シールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。 「大総統…高エネルギー兵器が無力化されました…」 「シールド装置だな…であれば光子魚雷と多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」 各艦は無数の光子魚雷…。多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はシールドジャミング装置が搭載され…。シールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。 「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」 部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。 「油断大敵だ…巨大宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」 今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アルセイスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装はアルセイスと同様に主砲のケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアルセイス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。 「圧倒的だな…」 ブラッドフォードはアルセイスの艦内ホログラムからドローン部隊による空戦の様子を直視する。 「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」 「意外とドローン兵器も役立つな…」 今現在セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜され…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。 「敵軍のドローン部隊は壊滅した…作戦中のドローン部隊には後方の敵軍艦隊への攻撃を続行させろ…」 「承知しました…」 セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。セイバードローンは光子魚雷やら多目的ミサイルで敵艦に攻撃したのである。ドローン部隊の攻撃で小型艦艇は勿論…。十数隻もの大型艦が撃沈されたのである。当然としてタイラントキラーの宇宙艦隊も迎撃するのだが…。セイバードローンにはシールド装置により対空パルスレーザー機関砲は無力化され光子魚雷やら多目的ミサイルは機体に搭載された対空パルスレーザー機関砲により迎撃される。 「ドローン部隊が敵軍を圧倒しました…」 「であれば即刻敵軍宇宙艦隊に接近…総攻撃を仕掛ける!」 大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はワープ機能を再作動…。メタリックアイが肉眼でも視認出来る距離へと到達する。 「到達したな…」 メタリックアイ防衛艦隊との距離は七百キロメートルと至近距離である。 「ドローン部隊の攻撃で敵軍艦隊は大分疲弊した様子ですね…」 「全軍総攻撃を開始せよ…敵部隊を壊滅させろ…」 ブラッドフォードは総攻撃を指示…。全軍による総攻撃が開始されたのである。主力艦隊による艦砲射撃と実弾攻撃でメタリックアイ防衛艦隊の多数の宇宙艦艇が大破…。撃沈されたのである。戦闘不能と判断したのか残存艦隊は撤退を開始…。メタリックアイは無人化したのである。 「敵軍艦隊は撤退を開始しました…メタリックアイを制圧しましょう…」 大銀河帝国軍主力宇宙艦隊は無事メタリックアイを制圧…。今回の制圧作戦で大銀河帝国軍の圧倒的大勝利に終結する。今回の戦闘でタイラントキラーは五十四隻のサラマンダー級大型宇宙戦艦と四十七隻のレヴィアタン級大型宇宙空母を喪失…。百八十三隻の旧型宇宙戦艦と八十二隻の旧型宇宙空母を喪失する。中型艦では二百十二隻のシーサーペント級宇宙巡洋艦が撃沈され…。四百五十六隻の旧型宇宙巡洋艦が撃沈されたのである。小型艦艇では二千七百六十八隻の宇宙駆逐艦と三千四百八十五隻の宇宙警備艇が撃沈され…。三百六十六機のスペースドローンが撃墜されたのである。二十六隻の宇宙戦艦と十七隻の宇宙空母が大破…。百七十六隻の宇宙巡洋艦と五千八百七十四隻の小型艦艇が大破したのである。人的損害では推計五十三万人の将兵が戦死する。一方の大銀河帝国軍は十二隻の宇宙戦艦と三十七隻の旧型宇宙巡洋艦を喪失…。六隻の宇宙戦艦と四十八隻の宇宙巡洋艦が大破したのである。三機の戦闘用ドローンが損傷…。人的損害では九百二十六人の将兵が戦死したのである。兵器を一新させた大銀河帝国軍であるが…。予想以上の損害の軽微に驚愕したのである。
第六話
殲滅作戦
無事メタリックアイを制圧した大銀河帝国軍はメタリックアイで放置された三十四隻の宇宙戦艦と十八隻の新型宇宙空母…。二十七隻の新型宇宙巡洋艦と艦載機のスペースドローン七十八機を鹵獲したのである。メタリックアイ制圧作戦から六日後の五月三日…。大総統のブラッドフォードは小惑星メティス基地で副総統のストライダーと再会する。 「大総統♪見事でしたな♪メタリックアイ制圧作戦は大銀河帝国軍の圧勝でしたね♪」 メタリックアイ制圧作戦の圧倒的勝利にストライダーは大喜びしたのである。 「当然の結果だ…ストライダーよ…総司令官であるウィグノールが自害した今現在のタイラントキラーは単なる烏合の衆…」 「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのでは…タイラントキラーは投降する以外に選択肢は皆無ですからね♪」 最早戦力をズタズタに破壊されたタイラントキラーは誰しもが投降するものと思考するのだが…。 「大総統!緊急事態です!」 通信兵がソワソワした様子で司令室に入室する。 「何事だ?」 通信兵は恐る恐る…。 「ウィンフィールドと名乗る人物がタイラントキラーの新指導者に任命され…各惑星に戦闘継続を伝播させました…」 「なっ!?戦闘継続だと!?」 ストライダーは驚愕する。 「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのに…奴等は正気か?」 するとブラッドフォードはボソッと一言…。 「余程死にたいらしいな…奴等…」 「大総統…如何されましょうか?」 問い掛けられたブラッドフォードは即答する。 「奴等が戦闘続行を決断するのであれば…此方も戦闘を続行…今度こそ奴等を徹底的に殲滅するだけだ…」 ブラッドフォードはストライダーを凝視するなり…。 「今度は大銀河帝国軍全軍で奴等の本拠地…エデンプラネットを攻略する…今度の作戦ではストライダー…貴様も参加しろ…」 「勿論ですとも…大総統…」 ストライダーは即答したのである。 「であれば即刻作戦を実行するか…大至急全軍に伝播させろ…エデンプラネット殲滅作戦を…」 「はっ!承知しました!」 通信兵は即座に各惑星の国軍宇宙艦隊に伝播させる。翌朝の五月四日…。各惑星の国軍宇宙艦隊が再集結したのである。今回の作戦では合計十九万隻の艦隊規模であり第四字宇宙星間戦争を上回る。 「全軍が集結したな…」 ブラッドフォードは旗艦のアルセイスに乗艦…。副総統のストライダーは改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦に乗艦したのである。ブラッドフォードは各艦に伝播…。 「全軍に伝播する…終戦は目前である!今回の作戦はタイラントキラー本拠地エデンプラネット!タイラントキラーの残存勢力を徹底的に殲滅する!諸君等の奮闘を期待する…」 ブラッドフォードの演説に将兵達の士気が向上したのである。するとストライダーはホログラムで返信する。 「大総統…先程の演説で将兵達の士気が向上しました♪精一杯奮闘しましょう♪」 「当然だ…ストライダー…」 直後…。 「各艦…ワープ機能を作動せよ…」 旗艦アルセイスを先頭に各艦はワープ機能を作動させる。一秒後…。合計十九万隻もの宇宙大艦隊がタイラントキラー本拠地エデンプラネットの宙域へと到達したのである。 「エデンプラネットの宙域に到達しました…味方艦隊とエデンプラネットの距離は一光年です…」 すると艦内のスペースレーダーが反応する。 「スペースレーダーが反応しました…」 「敵軍か?」
第七話
反帝国主義
宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。 「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」 「大銀河帝国に穏健派の帝国軍人は不要だ…」 (彼奴は目障りだからな…) ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。 「ホープセイバーズですが…如何されますか?」 問い掛けられたブラッドフォードは即答する。 「当然として…大銀河帝国に敵対する勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」
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宇宙大動乱 ( No.75 ) |
- 日時: 2021/09/05 19:43
- 名前: 月影桜花姫
- ジャンル
スペースオペラ
世界観 宇宙文明
登場人物 大銀河帝国軍 【ブラッドフォード】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦692年7月16日 星座:牡牛座 実年齢:30歳 所属:大銀河帝国軍 役職:大総統 階級:総帥 性別:男性 身長:168cm 体重:68kg 血液型:AB型 一人称:私 性格:冷静沈着、合理主義、強硬 趣味:ライフル射撃
【ストライダー】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦674年3月22日 星座:牡羊座 実年齢:48歳 所属:大銀河帝国軍 役職:副総統 階級:大将 性別:男性 身長:199cm 体重:88kg 血液型:B型 一人称:私 性格:適当、面倒臭がり 趣味:プラモデル作成、設計
【ホムンクルス】 種別:クローン人間 所属:大銀河帝国軍 生産数:700万人〜7億人
タイラントキラー 【ウィグノール】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦678年9月28日 星座:天秤座 実年齢:44歳 所属:大銀河帝国軍〜タイラントキラー 役職:総帥 階級:中将 性別:男性 身長:200cm 体重:89kg 血液型:AB型 一人称:私 性格:生真面目 趣味:骨董品集め、サバイバルゲーム
【ウェンフィールド】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦700年8月17日 星座:獅子座 実年齢:22歳 所属:タイラントキラー〜ホープセイバーズ 役職:職業軍人 階級:大佐 性別:男性 身長:176cm 体重:76kg 血液型:O型 一人称:私 性格:誠実 趣味:ホラーゲーム
ホープセイバーズ 【ルーヴェルハルト】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦668年4月25日 星座:牡牛座 実年齢:54歳 所属:大銀河帝国軍〜ホープセイバーズ 役職:総帥 階級:少将 性別:男性 身長:198cm 体重:87kg 血液型:A型 一人称:私 性格:穏和、野心的 趣味:宇宙旅行
登場国家 『大銀河帝国』 成立日:宇宙新暦376年7月4日 総人口:900億人
自治領 『ユートピアサイド』 統治勢力:大銀河帝国軍 総人口:70億人
『エデンプラネット』 統治勢力:タイラントキラー 総人口:50億人
『ホープエリア』 統治勢力:ホープセイバーズ 総人口:20億人
登場兵器 大銀河帝国軍 『アルセイス』 諸元 正式名:上級大将専用宇宙戦艦アルセイス 所属:大銀河帝国軍 建造所:ユートピアサイド軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:7隻 起工日:宇宙新暦722年3月27日 進宙日:宇宙新暦722年4月24日 就役日:宇宙新暦722年4月30日 全長:400m 全幅:220m 全高:80m 総重量:70万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 輸送要員:300人〜800人 兵装 990mm超弩級波動砲ケラウノス:1基 600mm高エネルギー連装砲:2基 50mm対空パルスレーザー機関砲:8基 光子魚雷発射機:2基 多目的ミサイル発射機:12基 艦載機:4機※無人機 装甲 主砲装甲:990mm 舷側装甲:750mm 甲板装甲:550mm 装甲材質:エターナルメタル 動力炉:ハイパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『スレイプニル』 諸元 正式名:宇宙要塞母艦スレイプニル 所属:大銀河帝国軍 建造所:プルトロン軍事工場 艦種:宇宙空母 同型艦:18隻 起工日:宇宙新暦722年4月29日 進宙日:宇宙新暦722年5月26日 就役日:宇宙新暦722年5月30日 全長:990m 全幅:860m 全高:140m 総重量:950万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 輸送要員:5万人〜8万人 兵装 990mm超弩級怪光砲ケラウノス:1基 600mm高エネルギー連装砲:6基 50mm対空パルスレーザー機関砲:80基 光子魚雷発射機:12基 多目的ミサイル発射機:30基 艦載機:400機※無人機 装甲 主砲装甲:990mm 舷側装甲:800mm 甲板装甲:720mm 装甲材質:貴金属 動力炉:ハイパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『セイバードラゴン』 諸元 正式名:宇宙戦艦セイバードラゴン 所属:大銀河帝国軍 建造所:ユートピアサイド軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:2万隻 起工日:宇宙新暦652年4月22日 進宙日:宇宙新暦654年9月19日 就役日:宇宙新暦654年12月27日 全長:800m 全幅:600m 全高:120m 総重量:500万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:320人 輸送要員:2万人〜4万人 兵装 800mm高エネルギー連装砲:8基 50mm対空パルスレーザー機関砲:40基 光子魚雷発射機:8基 多目的ミサイル発射機:20基 艦載機:90機 装甲 主砲装甲:750mm 舷側装甲:500mm 甲板装甲:460mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能
『バジリスク』 諸元 正式名:宇宙巡洋艦バジリスク 所属:大銀河帝国軍 建造所:ユートピアサイド軍事工場 艦種:宇宙巡洋艦 同型艦:6万隻〜8万隻 起工日:宇宙新暦722年3月26日 進宙日:宇宙新暦722年4月12日 就役日:宇宙新暦722年4月15日 全長:200m 全幅:140m 全高:40m 総重量:5万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 300mm高エネルギー連装砲:3基 50mm対空パルスレーザー機関砲:12基 光子魚雷発射機:2基 艦載機:1機〜2機※無人機 装甲 主砲装甲:440mm 舷側装甲:250mm 甲板装甲:130mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『アスピドケロン』 諸元 正式名:宇宙駆逐艦アスピドケロン 所属:大銀河帝国軍 建造所:メティス軍事工場 艦種:宇宙駆逐艦 同型艦:9万隻〜15万隻 起工日:宇宙新暦722年5月14日 進宙日:宇宙新暦722年5月22日 就役日:宇宙新暦722年6月4日 全長:180m 全幅:150m 全高:40m 総重量:4万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 250mm高エネルギー連装砲:4基 40mm対空パルスレーザー機関砲:12基 光子魚雷発射機:2基 艦載機:2機※無人機 装甲 主砲装甲:370mm 舷側装甲:240mm 甲板装甲:230mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『スペースバード』 諸元 機種:宇宙戦闘機 所属:大銀河帝国軍 初飛行:宇宙新暦699年12月24日 生産数:8万機 運用開始:宇宙新暦700年6月2日 全長:17m 全幅:16m 全高:6m 総重量:14t 全速力:マッハ15 搭乗員:1人 武装 30mm対空用パルスレーザー:2基 多目的ミサイル〜光子魚雷:2基 設備 スーパーレーダー シールド装置
『セイバードローン』 諸元 機種:無人機 所属:大銀河帝国軍 初飛行:宇宙新暦722年4月26日 生産数:140万機 運用開始:宇宙新暦722年5月12日 全長:15m 全幅:14m 全高:4m 総重量:12t 全速力:マッハ15〜超光速 武装 30mm対空用パルスレーザー:2基 光子魚雷:4基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
『ケルベロス』 諸元 機種:無人機 所属:大銀河帝国軍 初飛行:宇宙新暦722年6月30日 生産数:78万機 運用開始:宇宙新暦722年7月15日 全長:16m 全幅:12m 全高:5m 総重量:20t 全速力:マッハ22〜超光速 武装 50mm対空用パルスレーザー:2基 新型光子魚雷:4基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
タイラントキラー 『サラマンダー』 諸元 正式名:宇宙戦艦サラマンダー 所属:タイラントキラー 建造所:エデンプラネット軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:750隻 起工日:宇宙新暦628年1月24日 進宙日:宇宙新暦630年5月25日 就役日:宇宙新暦650年7月30日 全長:780m 全幅:540m 全高:90m 総重量:300万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:280人 輸送要員:2万人〜3万人 兵装 550mm高エネルギー連装砲:8基 40mm対空パルスレーザー機関砲:38基 光子魚雷発射機:4基 多目的ミサイル発射機:16基 艦載機:150機 装甲 主砲装甲:650mm 舷側装甲:480mm 甲板装甲:240mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能
『レヴィアタン』 諸元 正式名:宇宙戦闘母艦レヴィアタン 所属:タイラントキラー 建造所:エデンプラネット軍事工場 艦種:宇宙空母 同型艦:560隻 起工日:宇宙新暦722年1月22日 進宙日:宇宙新暦722年2月13日 就役日:宇宙新暦722年2月24日 全長:960m 全幅:530m 全高:120m 総重量:620万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:20人 輸送要員:4万人〜6万人 兵装 320mm高エネルギー連装砲:2基 50mm対空パルスレーザー機関砲:44基 艦載機:400機※無人機 装甲 主砲装甲:480mm 舷側装甲:340mm 甲板装甲:190mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『シーサーペント』 諸元 正式名:宇宙巡洋艦シーサーペント 所属:タイラントキラー 建造所:エデンプラネット軍事工場 艦種:宇宙巡洋艦 同型艦:4万隻 起工日:宇宙新暦722年2月28日 進宙日:宇宙新暦722年3月14日 就役日:宇宙新暦722年3月20日 全長:250m 全幅:180m 全高:50m 総重量:6万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 280mm高エネルギー連装砲:4基 50mm対空パルスレーザー機関砲:14基 光子魚雷発射機:4基 艦載機:2機〜4機※無人機 装甲 主砲装甲:470mm 舷側装甲:290mm 甲板装甲:150mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『スペースドローン』 諸元 機種:無人機 所属:タイラントキラー 初飛行:宇宙新暦722年2月27日 生産数:50万機 運用開始:宇宙新暦722年3月12日 全長:14m 全幅:12m 全高:3m 総重量:12t 全速力:マッハ14〜超光速 武装 20mm対空用パルスレーザー:2基 多目的ミサイル〜光子魚雷:2基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置
『ホワイトピクシー』 諸元 機種:無人機 所属:タイラントキラー 初飛行:宇宙新暦722年4月28日 生産数:700機 運用開始:宇宙新暦722年5月2日 全長:18m 全幅:16m 全高:6m 総重量:15t 全速力:マッハ20〜超光速 武装 50mm対空用パルスレーザー:2基 多目的ミサイル〜光子魚雷:6基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
ホープセイバーズ 『リトルヴィーナス』 諸元 正式名:宇宙戦艦リトルヴィーナス 所属:ホープセイバーズ 建造所:ホープエリア軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:14隻 起工日:宇宙新暦722年5月27日 進宙日:宇宙新暦722年6月4日 就役日:宇宙新暦722年6月10日 全長:850m 全幅:650m 全高:200m 総重量:600万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 輸送要員:5万人〜8万人 兵装 990mm超弩級対艦防衛砲サイクロプス:1基 450mm高エネルギー連装砲:8基 50mm対空パルスレーザー機関砲:40基 光子魚雷発射機:12基 多目的ミサイル発射機:30基 艦載機:120機〜140機※無人機 装甲 主砲装甲:950mm 舷側装甲:580mm 甲板装甲:560mm 装甲材質:エターナルメタル 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『フェンリル』 諸元 正式名:宇宙巡洋艦デュラハン 所属:ホープセイバーズ 建造所:ホープエリア軍事工場 艦種:宇宙巡洋艦 同型艦:400隻〜500隻 起工日:宇宙新暦722年5月26日 進宙日:宇宙新暦722年6月3日 就役日:宇宙新暦722年6月9日 全長:350m 全幅:280m 全高:65m 総重量:7万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 450mm高エネルギー連装砲:4基 50mm対空パルスレーザー機関砲:16基 光子魚雷発射機:2基 艦載機:5機※無人機 装甲 主砲装甲:680mm 舷側装甲:420mm 甲板装甲:270mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『ハイパードローン』 諸元 機種:無人機 所属:ホープセイバーズ 初飛行:宇宙新暦722年5月30日 生産数:90万機 運用開始:宇宙新暦722年6月13日 全長:12m 全幅:8m 全高:4m 総重量:8t 全速力:マッハ22〜超光速 武装 50mm対空用パルスレーザー:2基 新型光子魚雷:2基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
作中用語 『ケラウノス』超大型戦略高エネルギー兵器 『ツァーリーボンバ』超大型戦略貫通ミサイル 『ダウンフォール』銀河系殲滅兵器 『メティス基地』小惑星 『プルトロン基地』人工惑星 『メタリックアイ』小惑星 『エターナルメタル』特殊超合金 『スーパーリアクター』無限動力炉 『ハイパーリアクター』新型無限動力炉
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宇宙大動乱 ( No.76 ) |
- 日時: 2021/09/07 11:36
- 名前: 月影桜花姫
- ジャンル
スペースオペラ
世界観 宇宙文明
登場人物 大銀河帝国軍 【ブラッドフォード】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦692年7月16日 星座:牡牛座 実年齢:30歳 所属:大銀河帝国軍 役職:大総統 階級:総帥 性別:男性 身長:168cm 体重:68kg 血液型:AB型 一人称:私 性格:冷静沈着、合理主義、強硬 趣味:ライフル射撃
【ストライダー】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦674年3月22日 星座:牡羊座 実年齢:48歳 所属:大銀河帝国軍 役職:副総統 階級:大将 性別:男性 身長:199cm 体重:88kg 血液型:B型 一人称:私 性格:適当、面倒臭がり 趣味:プラモデル作成、設計
【ホムンクルス】 種別:クローン人間 所属:大銀河帝国軍 生産数:700万人〜7億人
タイラントキラー 【ウィグノール】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦678年9月28日 星座:天秤座 実年齢:44歳 所属:大銀河帝国軍〜タイラントキラー 役職:総帥 階級:中将 性別:男性 身長:200cm 体重:89kg 血液型:AB型 一人称:私 性格:生真面目 趣味:骨董品集め、サバイバルゲーム
【ウェンフィールド】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦700年8月17日 星座:獅子座 実年齢:22歳 所属:タイラントキラー〜ホープセイバーズ 役職:職業軍人 階級:大佐 性別:男性 身長:176cm 体重:76kg 血液型:O型 一人称:私 性格:誠実 趣味:ホラーゲーム
ホープセイバーズ 【ルーヴェルハルト】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦668年5月7日 星座:牡牛座 実年齢:54歳 所属:大銀河帝国軍〜ホープセイバーズ 役職:総帥 階級:少将 性別:男性 身長:198cm 体重:87kg 血液型:A型 一人称:私 性格:穏和、野心的 趣味:宇宙旅行
登場国家 『大銀河帝国』 成立日:宇宙新暦376年7月4日 総人口:900億人
自治領 『ユートピアサイド』 統治勢力:大銀河帝国軍 総人口:70億人
『エデンプラネット』 統治勢力:タイラントキラー 総人口:50億人
『ホープエリア』 統治勢力:ホープセイバーズ 総人口:20億人
登場兵器 大銀河帝国軍 『アプセラス』 諸元 正式名:上級大将専用宇宙戦艦アプセラス 所属:大銀河帝国軍 建造所:ユートピアサイド軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:7隻 起工日:宇宙新暦722年3月27日 進宙日:宇宙新暦722年4月24日 就役日:宇宙新暦722年4月30日 全長:400m 全幅:220m 全高:80m 総重量:70万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 輸送要員:300人〜800人 兵装 990mm超弩級波動砲ケラウノス:1基 600mm高エネルギー連装砲:2基 50mm対空パルスレーザー機関砲:8基 光子魚雷発射機:2基 多目的ミサイル発射機:12基 艦載機:4機※無人機 装甲 主砲装甲:990mm 舷側装甲:750mm 甲板装甲:550mm 装甲材質:エターナルメタル 動力炉:ハイパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『スレイプニル』 諸元 正式名:宇宙要塞母艦スレイプニル 所属:大銀河帝国軍 建造所:プルトロン軍事工場 艦種:宇宙空母 同型艦:18隻 起工日:宇宙新暦722年3月29日 進宙日:宇宙新暦722年4月26日 就役日:宇宙新暦722年4月30日 全長:990m 全幅:860m 全高:140m 総重量:950万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 輸送要員:5万人〜8万人 兵装 990mm超弩級怪光砲ケラウノス:1基 600mm高エネルギー連装砲:6基 50mm対空パルスレーザー機関砲:80基 光子魚雷発射機:12基 多目的ミサイル発射機:30基 艦載機:400機※無人機 装甲 主砲装甲:990mm 舷側装甲:800mm 甲板装甲:720mm 装甲材質:貴金属 動力炉:ハイパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『セイバードラゴン』 諸元 正式名:宇宙戦艦セイバードラゴン 所属:大銀河帝国軍 建造所:ユートピアサイド軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:2万隻〜3万隻 起工日:宇宙新暦652年4月22日 進宙日:宇宙新暦654年9月19日 就役日:宇宙新暦654年12月27日 全長:800m 全幅:600m 全高:120m 総重量:500万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:320人 輸送要員:2万人〜4万人 兵装 800mm高エネルギー連装砲:8基 50mm対空パルスレーザー機関砲:40基 光子魚雷発射機:8基 多目的ミサイル発射機:20基 艦載機:90機 装甲 主砲装甲:750mm 舷側装甲:550mm 甲板装甲:460mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能
『バジリスク』 諸元 正式名:宇宙巡洋艦バジリスク 所属:大銀河帝国軍 建造所:ユートピアサイド軍事工場 艦種:宇宙巡洋艦 同型艦:6万隻〜8万隻 起工日:宇宙新暦722年3月26日 進宙日:宇宙新暦722年4月12日 就役日:宇宙新暦722年4月15日 全長:200m 全幅:140m 全高:40m 総重量:5万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 300mm高エネルギー連装砲:3基 50mm対空パルスレーザー機関砲:12基 光子魚雷発射機:2基 艦載機:1機〜2機※無人機 装甲 主砲装甲:440mm 舷側装甲:250mm 甲板装甲:130mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『アスピドケロン』 諸元 正式名:宇宙駆逐艦アスピドケロン 所属:大銀河帝国軍 建造所:メティス軍事工場 艦種:宇宙駆逐艦 同型艦:9万隻〜15万隻 起工日:宇宙新暦722年5月14日 進宙日:宇宙新暦722年5月22日 就役日:宇宙新暦722年6月4日 全長:180m 全幅:150m 全高:40m 総重量:4万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 250mm高エネルギー連装砲:4基 40mm対空パルスレーザー機関砲:12基 光子魚雷発射機:2基 艦載機:2機※無人機 装甲 主砲装甲:370mm 舷側装甲:240mm 甲板装甲:230mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『スペースバード』 諸元 機種:宇宙戦闘機 所属:大銀河帝国軍 初飛行:宇宙新暦699年12月24日 生産数:8万機 運用開始:宇宙新暦700年6月2日 全長:17m 全幅:16m 全高:6m 総重量:14t 全速力:マッハ15 搭乗員:1人 武装 30mm対空用パルスレーザー:2基 多目的ミサイル〜光子魚雷:2基 設備 スーパーレーダー シールド装置
『セイバードローン』 諸元 機種:無人機 所属:大銀河帝国軍 初飛行:宇宙新暦722年4月26日 生産数:140万機 運用開始:宇宙新暦722年5月12日 全長:15m 全幅:14m 全高:4m 総重量:12t 全速力:マッハ15〜超光速 武装 30mm対空用パルスレーザー:2基 光子魚雷:4基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
『ケルベロス』 諸元 機種:無人機 所属:大銀河帝国軍 初飛行:宇宙新暦722年6月30日 生産数:78万機 運用開始:宇宙新暦722年7月15日 全長:16m 全幅:12m 全高:5m 総重量:20t 全速力:マッハ22〜超光速 武装 50mm対空用パルスレーザー:2基 新型光子魚雷:4基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
タイラントキラー 『サラマンダー』 諸元 正式名:宇宙戦艦サラマンダー 所属:タイラントキラー 建造所:エデンプラネット軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:600隻〜700隻 起工日:宇宙新暦628年1月24日 進宙日:宇宙新暦630年5月25日 就役日:宇宙新暦650年7月30日 全長:780m 全幅:540m 全高:90m 総重量:300万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:280人 輸送要員:2万人〜3万人 兵装 750mm高エネルギー連装砲:8基 40mm対空パルスレーザー機関砲:38基 光子魚雷発射機:4基 多目的ミサイル発射機:16基 艦載機:150機 装甲 主砲装甲:650mm 舷側装甲:480mm 甲板装甲:240mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能
『レヴィアタン』 諸元 正式名:宇宙戦闘母艦レヴィアタン 所属:タイラントキラー 建造所:エデンプラネット軍事工場 艦種:宇宙空母 同型艦:500隻〜600隻 起工日:宇宙新暦722年1月22日 進宙日:宇宙新暦722年2月13日 就役日:宇宙新暦722年2月24日 全長:960m 全幅:530m 全高:120m 総重量:620万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:20人 輸送要員:4万人〜6万人 兵装 320mm高エネルギー連装砲:2基 50mm対空パルスレーザー機関砲:44基 艦載機:400機※無人機 装甲 主砲装甲:480mm 舷側装甲:340mm 甲板装甲:190mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『シーサーペント』 諸元 正式名:宇宙巡洋艦シーサーペント 所属:タイラントキラー 建造所:エデンプラネット軍事工場 艦種:宇宙巡洋艦 同型艦:3万隻〜4万隻 起工日:宇宙新暦722年2月28日 進宙日:宇宙新暦722年3月14日 就役日:宇宙新暦722年3月20日 全長:250m 全幅:180m 全高:50m 総重量:6万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 280mm高エネルギー連装砲:4基 50mm対空パルスレーザー機関砲:14基 光子魚雷発射機:4基 艦載機:2機〜4機※無人機 装甲 主砲装甲:470mm 舷側装甲:290mm 甲板装甲:150mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『スペースドローン』 諸元 機種:無人機 所属:タイラントキラー 初飛行:宇宙新暦722年2月27日 生産数:50万機 運用開始:宇宙新暦722年3月12日 全長:14m 全幅:12m 全高:3m 総重量:12t 全速力:マッハ14〜超光速 武装 20mm対空用パルスレーザー:2基 多目的ミサイル〜光子魚雷:2基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置
『ホワイトピクシー』 諸元 機種:無人機 所属:タイラントキラー 初飛行:宇宙新暦722年4月28日 生産数:700機 運用開始:宇宙新暦722年5月2日 全長:18m 全幅:16m 全高:6m 総重量:15t 全速力:マッハ20〜超光速 武装 50mm対空用パルスレーザー:2基 多目的ミサイル〜光子魚雷:6基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
ホープセイバーズ 『リトルヴィーナス』 諸元 正式名:宇宙戦艦リトルヴィーナス 所属:ホープセイバーズ 建造所:ホープエリア軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:14隻 起工日:宇宙新暦722年5月27日 進宙日:宇宙新暦722年6月4日 就役日:宇宙新暦722年6月10日 全長:850m 全幅:650m 全高:200m 総重量:600万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 輸送要員:5万人〜8万人 兵装 990mm超弩級対艦防衛砲サイクロプス:1基 450mm高エネルギー連装砲:8基 50mm対空パルスレーザー機関砲:40基 光子魚雷発射機:12基 多目的ミサイル発射機:30基 艦載機:120機〜140機※無人機 装甲 主砲装甲:950mm 舷側装甲:580mm 甲板装甲:560mm 装甲材質:エターナルメタル 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『フェンリル』 諸元 正式名:宇宙巡洋艦デュラハン 所属:ホープセイバーズ 建造所:ホープエリア軍事工場 艦種:宇宙巡洋艦 同型艦:400隻〜500隻 起工日:宇宙新暦722年5月26日 進宙日:宇宙新暦722年6月3日 就役日:宇宙新暦722年6月9日 全長:350m 全幅:280m 全高:65m 総重量:7万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 450mm高エネルギー連装砲:4基 50mm対空パルスレーザー機関砲:16基 光子魚雷発射機:2基 艦載機:5機※無人機 装甲 主砲装甲:680mm 舷側装甲:420mm 甲板装甲:270mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『ハイパードローン』 諸元 機種:無人機 所属:ホープセイバーズ 初飛行:宇宙新暦722年5月30日 生産数:90万機 運用開始:宇宙新暦722年6月13日 全長:12m 全幅:8m 全高:4m 総重量:8t 全速力:マッハ22〜超光速 武装 50mm対空用パルスレーザー:2基 新型光子魚雷:2基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
作中用語 『ケラウノス』超大型戦略高エネルギー兵器 『ツァーリーボンバ』超大型戦略貫通ミサイル 『ダウンフォール』銀河系殲滅兵器 『メティス基地』小惑星 『プルトロン基地』人工惑星 『メタリックアイ』小惑星 『エターナルメタル』特殊超合金 『スーパーリアクター』無限動力炉 『ハイパーリアクター』新型無限動力炉
第一話
宇宙艦隊戦闘
太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。 「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」 セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。 「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」 セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。 「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」 「はっ!承知しました!」 通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。 「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」 「はっ!ワープ機能作動!」 ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。 「艦長!スペースレーダーが反応しました!」 サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。 「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」 旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。 「恐らく敵軍の艦隊だろう…」 すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。 「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」 「敵艦隊の総数は七万隻か…」 今現在投入された戦力では大銀河帝国軍主力宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。 「直進せよ…」 ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍主力宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍主力宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。 「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」 問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。 「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」 最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。 「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」 旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。シールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。 「艦首が被弾しました!」 「本艦への被害状況は?」 ウィグノールは乗組員に問い掛ける。 「艦首は大破です…」 「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」 ブリッジの乗組員が恐る恐る…。 「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」 長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するシールド機能が搭載されるのが基本である。 「恐らく奴等の実弾兵器にはシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」 シールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。 「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」 するとウィグノールが無表情で…。 「狼狽えるな…」 戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。 (こんなにも劣勢なのに冷静なんて…) 同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。 「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」 「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」 「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」 「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」 大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。 「大総統…如何されましたか?」 するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。 「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」 ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。 「スペースレーダーが反応しました!」 「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」 周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。 「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」 「小型の機影だと?」 小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。 「恐らく宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」 「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」 「はっ!承知しました!」 通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。 「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」 「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」 ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。 「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」 「承知しました…」 大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型シールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。 「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」 「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」 ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。 「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」 スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。当然として大銀河帝国軍でも宇宙用の偵察型ドローンは多数使用されるのだが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型シールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。 「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」 同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。 「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」 すると直後…。 「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」 スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。シールド機能が使用出来なくなる。 「大変です!本艦のシールド機能が無力化されました…」 セイバードラゴンのシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。 「狼狽えるな…」 こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。 「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」 爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。 「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」 「えっ!?ロケットエンジンが!?」 先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。 「大総統…脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」 ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。 「止むを得ないな…」 ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。 「大総統…危機一髪でしたね♪」 一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。 「何が危機一髪だ…」 ブラッドフォードは睥睨したのである。 「ひっ!」 睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。 「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」 同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。 「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」 「承知しました…」 通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。 「本船もワープさせろ…」 総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。 「艦長!敵軍が撤退します!」 ウィグノールは無表情で…。 「防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」 今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。
第二話
亡命艦隊
第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。 (今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…) 今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。 「誰だ?」 大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。 「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」 大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。 (誰かと思いきや…) 「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」 ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。 「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」 ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。 「貴様…」 「失礼です♪失礼です♪」 ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。 「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」 ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。 「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」 ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。 「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」 「結局貴様の用事とは?」 ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。 「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で新型兵器を見物しませんか?」 「暇潰しには好都合だ…承知した…」 ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。 「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」 「承知しました…」 ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。 「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」 軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。 「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」 近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。 「新型艦か…」 地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。 「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」 三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。 「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させる予定ですから♪」 するとストライダーは新型艦を紹介する。 「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」 バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。 「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」 ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。 (大総統…) ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。 「此奴は…」 ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。 「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」 ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。 「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」 「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」 大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。 「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」 ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。 「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」 ブラッドフォードは無表情で…。 「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」 「大総統…」 (本当に偏屈だな…) ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。 「今後の開発プランとやらは?」 「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」 ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。 「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」 「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」 すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。 「ん?通信機だと?」 ブラッドフォードは応答する。 「私だが…一体何事だ?」 「ブラッドフォード大総統!大変です!」 「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」 ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。 「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」 第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。 「愚民の暴走程度で報告するな…」 「えっ!?大総統…」 ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。 「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を一発投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」 「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」 躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。 「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」 ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。 「承知しました…大総統…」 ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。 「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」 ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。 「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」 「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」 同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。 「ウィグノール総帥!緊急事態です!」 「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」 ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。 「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」 ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。 「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」 「残念ですが…本当みたいです…」 「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」 ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。 「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」 ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。 「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」 ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。 「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」 「私は当然…本気だ!」 「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」 現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。 「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」 実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。 「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」 直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。 「ん?ホログラム?」 ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。 「ん?通信兵か?」 「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」 「緊急事態だと?今度は何事だ?」 「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『メタリックアイ』に接近中との情報です…」 小惑星メタリックアイとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。 「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」 「現段階では不明ですが…恐らくは…」 ウィグノールは再度問い掛ける。 「宇宙艦隊の規模は?」 「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」 「極小規模の小艦隊だな…」 「ウィグノール総帥…如何されますか?」 ウィグノールは一息するなり…。 「小惑星メタリックアイに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」 「承知しました…」 宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。メタリックアイの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。
第三話
奇襲大作戦
宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。 「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」 タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。 「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」 通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。 「奴等…行動を開始したな…」 ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。 「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」 「援軍は不要だ…」 問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。 「援軍は不要ですと?」 「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」 「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」 ブラッドフォードは一息するなり…。 「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」 「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」 ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。 「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」 大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。 「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」 (今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…) ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。 「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」 「はっ!承知しました!」 ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。 「改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」 「上出来だ…」 ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。 「出撃は五分後だ…」 「承知しました…」 五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。 「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」 「奇襲作戦か…」 タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。 「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」 「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」 現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。 「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」 地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。 「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」 ウィグノールは一息したのである。 「民間人への被害は最小限に努力しろ…」 数秒後…。 「全軍攻撃開始!敵部隊を排除せよ!」 タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。 「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」 タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。 「非常に奇妙だな…」 「奇妙ですと?」 奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。 「何が奇妙なのですか?」 「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」 ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。 「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」 戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。 「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」 するとウィグノールは恐る恐る…。 「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」 「えっ!?敵軍のトラップですと?」 直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。 「ん?何事だ…」 モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。 「此奴は…大銀河帝国軍の…」 「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」 「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」 ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。 「ウィンフィールド…」 「如何されましたか?ウィグノール総帥…」 普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。 (ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…) ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。 「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」 ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。 「えっ!?今更撤退ですと!?」 「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」 「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」 ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。 (コンピュータゲームみたいだな…) ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。 「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」 一息するなり…。 「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」 改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。 「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」 ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。 (此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…) 不本意であるが…。 「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」 直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。 「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」 「主力の宇宙艦隊は無事だが…」 先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。
第四話
新型宇宙戦艦
ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。 「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」 軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。 「大総統♪こんな場所で一体何を?」 「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」 「新型兵器の見物ですか♪」 副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。 「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」 「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」 艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。 「えっ?改名って…」 ストライダーは困惑したのである。 「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アプセラス』だ…」 「えっ…アプセラスって…」 ストライダーはハッとする。 「アプセラスとは…大総統の令夫人の名前では…」 「勿論…彼女の名前だ…」 アプセラスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。 「大総統が希望すのであれば…」 新型宇宙戦艦の艦名はアプセラスと改名される。 「此奴の性能は?」 アプセラスは全長四百メートルサイズで全幅は二百二十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり主砲…。超弩級波動砲『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。 「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」 「エターナルメタルだと?」 エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。 「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」 「であれば好都合だ…」
第五話
制圧作戦
三日後の四月二十七日早朝…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アプセラスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。 「全軍に伝達する!今回は小惑星メタリックアイを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」 今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星メタリックアイを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星メタリックアイの宙域へと到達する。 「メタリックアイの宙域に無事到達出来たな…」 旗艦アプセラスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。 「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」 「メタリックアイを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…徹底的に奴等を絶望させるぞ…」 タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のメタリックアイのみである。 (タイラントキラーの資源宝庫であるメタリックアイを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…) タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。 「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」 艦内のスペースレーダーがメタリックアイの防衛宇宙艦隊をキャッチする。 「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」 「推計一万五千隻です…」 「一万五千隻か…」 (敵軍の規模は一個艦隊程度だな…) 敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。 「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始せよ!」 防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型シールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。 「大総統…高エネルギー兵器が無力化されました…」 「シールド装置だな…であれば光子魚雷と多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」 各艦は無数の光子魚雷…。多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はシールドジャミング装置が搭載され…。シールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。 「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」 部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。 「油断大敵だ…巨大宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」 今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アプセラスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装はアプセラスと同様に主砲のケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアプセラス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。 「圧倒的だな…」 ブラッドフォードはアプセラスの艦内ホログラムからドローン部隊による空戦の様子を直視する。 「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」 「意外とドローン兵器も役立つな…」 今現在セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜され…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。 「敵軍のドローン部隊は壊滅した…作戦中のドローン部隊には後方の敵軍艦隊への攻撃を続行させろ…」 「承知しました…」 セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。セイバードローンは光子魚雷やら多目的ミサイルで敵艦に攻撃したのである。ドローン部隊の攻撃で小型艦艇は勿論…。十数隻もの大型艦が撃沈されたのである。当然としてタイラントキラーの宇宙艦隊も迎撃するのだが…。セイバードローンにはシールド装置により対空パルスレーザー機関砲は無力化され光子魚雷やら多目的ミサイルは機体に搭載された対空パルスレーザー機関砲により迎撃される。 「ドローン部隊が敵軍を圧倒しました…」 「であれば即刻敵軍宇宙艦隊に接近…総攻撃を仕掛ける!」 大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はワープ機能を再作動…。メタリックアイが肉眼でも視認出来る距離へと到達する。 「到達したな…」 メタリックアイ防衛艦隊との距離は七百キロメートルと至近距離である。 「ドローン部隊の攻撃で敵軍艦隊は大分疲弊した様子ですね…」 「全軍総攻撃を開始せよ…敵部隊を壊滅させろ…」 ブラッドフォードは総攻撃を指示…。全軍による総攻撃が開始されたのである。主力艦隊による艦砲射撃と実弾攻撃でメタリックアイ防衛艦隊の多数の宇宙艦艇が大破…。撃沈されたのである。戦闘不能と判断したのか残存艦隊は撤退を開始…。メタリックアイは無人化したのである。 「敵軍艦隊は撤退を開始しました…メタリックアイを制圧しましょう…」 大銀河帝国軍主力宇宙艦隊は無事メタリックアイを制圧…。今回の制圧作戦で大銀河帝国軍の圧倒的大勝利に終結する。今回の戦闘でタイラントキラーは五十四隻のサラマンダー級大型宇宙戦艦と四十七隻のレヴィアタン級大型宇宙空母を喪失…。百八十三隻の旧型宇宙戦艦と八十二隻の旧型宇宙空母を喪失する。中型艦では二百十二隻のシーサーペント級宇宙巡洋艦が撃沈され…。四百五十六隻の旧型宇宙巡洋艦が撃沈されたのである。小型艦艇では二千七百六十八隻の宇宙駆逐艦と三千四百八十五隻の宇宙警備艇が撃沈され…。三百六十六機のスペースドローンが撃墜されたのである。二十六隻の宇宙戦艦と十七隻の宇宙空母が大破…。百七十六隻の宇宙巡洋艦と五千八百七十四隻の小型艦艇が大破したのである。人的損害では推計五十三万人の将兵が戦死する。一方の大銀河帝国軍は十二隻の宇宙戦艦と三十七隻の旧型宇宙巡洋艦を喪失…。六隻の宇宙戦艦と四十八隻の宇宙巡洋艦が大破したのである。三機の戦闘用ドローンが損傷…。人的損害では九百二十六人の将兵が戦死したのである。兵器を一新させた大銀河帝国軍であるが…。予想以上の損害の軽微に驚愕したのである。
第六話
殲滅作戦
無事メタリックアイを制圧した大銀河帝国軍はメタリックアイで放置された三十四隻の宇宙戦艦と十八隻の新型宇宙空母…。二十七隻の新型宇宙巡洋艦と艦載機のスペースドローン七十八機を鹵獲したのである。メタリックアイ制圧作戦から六日後の五月三日…。大総統のブラッドフォードは小惑星メティス基地で副総統のストライダーと再会する。 「大総統♪見事でしたな♪メタリックアイ制圧作戦は大銀河帝国軍の圧勝でしたね♪」 メタリックアイ制圧作戦の圧倒的勝利にストライダーは大喜びしたのである。 「当然の結果だ…ストライダーよ…総司令官であるウィグノールが自害した今現在のタイラントキラーは単なる烏合の衆…」 「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのでは…タイラントキラーは投降する以外に選択肢は皆無ですからね♪」 最早戦力をズタズタに破壊されたタイラントキラーは誰しもが投降するものと思考するのだが…。 「大総統!緊急事態です!」 通信兵がソワソワした様子で司令室に入室する。 「何事だ?」 通信兵は恐る恐る…。 「ウィンフィールドと名乗る人物がタイラントキラーの新指導者に任命され…各惑星に戦闘継続を伝播させました…」 「なっ!?戦闘継続だと!?」 ストライダーは驚愕する。 「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのに…奴等は正気か?」 するとブラッドフォードはボソッと一言…。 「余程死にたいらしいな…奴等…」 「大総統…如何されましょうか?」 問い掛けられたブラッドフォードは即答する。 「奴等が戦闘続行を決断するのであれば…此方も戦闘を続行…今度こそ奴等を徹底的に殲滅するだけだ…」 ブラッドフォードはストライダーを凝視するなり…。 「今度は大銀河帝国軍全軍で奴等の本拠地…エデンプラネットを攻略する…今度の作戦ではストライダー…貴様も参加しろ…」 「勿論ですとも…大総統…」 ストライダーは即答したのである。 「であれば即刻作戦を実行するか…大至急全軍に伝播させろ…エデンプラネット殲滅作戦を…」 「はっ!承知しました!」 通信兵は即座に各惑星の国軍宇宙艦隊に伝播させる。翌朝の五月四日…。各惑星の国軍宇宙艦隊が再集結したのである。今回の作戦では合計十九万隻の艦隊規模であり第四字宇宙星間戦争を上回る。 「全軍が集結したな…」 ブラッドフォードは旗艦のアプセラスに乗艦…。副総統のストライダーは改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦に乗艦したのである。ブラッドフォードは各艦に伝播…。 「全軍に伝播する…終戦は目前である!今回の作戦はタイラントキラー本拠地エデンプラネット!タイラントキラーの残存勢力を徹底的に殲滅する!諸君等の奮闘を期待する…」 ブラッドフォードの演説に将兵達の士気が向上したのである。するとストライダーはホログラムで返信する。 「大総統…先程の演説で将兵達の士気が向上しました♪精一杯奮闘しましょう♪」 「当然だ…ストライダー…」 直後…。 「各艦…ワープ機能を作動せよ…」 旗艦アプセラスを先頭に各艦はワープ機能を作動させる。一秒後…。合計十九万隻もの宇宙大艦隊がタイラントキラー本拠地エデンプラネットの宙域へと到達したのである。 「エデンプラネットの宙域に到達しました…味方艦隊とエデンプラネットの距離は一光年です…」 旗艦アプセラス艦内のスペースレーダーが反応する。 「大総統…スペースレーダーが反応しました…」 「敵軍の宇宙艦隊か?宇宙艦艇の総数は?」 「宇宙艦艇の総数は推計二万五千隻です…」 特殊無線技士のホムンクルス将兵が即答したのである。 「二万五千隻か…タイラントキラーの残存勢力にとっては最大戦力だな…」 度重なる敗北によりタイラントキラーの宇宙艦隊は二万五千隻に激減…。本拠地を防衛するのが手一杯だったのである。 「ですがこんな瀕死の状態で抵抗するなんて…」 ホムンクルス将兵の発言にブラッドフォードは即答する。 「所詮馬鹿の一つ覚えだな…超古代文明のとある大帝国に酷似する…最早戦力の激減したタイラントキラーでは国民主権の大銀河共和国の再興は夢物語なのに…」 大銀河帝国が建国される以前…。銀河系には大銀河共和国と呼称される民主主義国家が存在したのである。大銀河共和国は政治の腐敗やら度重なる内戦…。最大の反政府勢力である大銀河革命軍との大銀河戦争により崩壊…。民主制の大銀河共和国は独裁制の大銀河帝国へと再建されたのである。 「所謂タイラントキラーは大銀河共和国の残党勢力だ…徹底的に殲滅せよ…」
第七話
反帝国主義
宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。 「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」 「大銀河帝国に穏健派の帝国軍人は不要だ…」 (彼奴は目障りだからな…) ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。 「ホープセイバーズですが…如何されますか?」 問い掛けられたブラッドフォードは即答する。 「当然として…大銀河帝国に敵対する勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」 「当然の判断ですね…」 同時刻…。ホープセイバーズ本拠地ホープエリアの総本部拠点ではとある人物が訪問する。ホープセイバーズ総帥ルーヴェルハルトの専用室にて何者かがコンッとドアをノックしたのである。 「誰だ?」 すると若齢の将校が入室する。 「失礼します…」 「貴方は…」 「私はタイラントキラー将兵…ウィンフィールド…階級は大佐です…」 「ウィンフィールド大佐か…」 両者は敬礼したのである。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。 「悪かった…私達の暴走で貴方の故郷は…」 ルーヴェルハルトは落涙…。謝罪したのである。 「気にしないで下さい…ルーヴェルハルト総帥…」 ウィンフィールドはルーヴェルハルトを非難せず…。 「大銀河帝国にも貴方みたいな穏健派の軍人が存在するだけで…私は大満足です♪」 ウィンフィールドは笑顔で返答する。 「突然で混乱するかも知れないが…今後のホープセイバーズの方針を伝達する…」 「今後の方針ですか?」 ルーヴェルハルトは一息するなり…。 「ホープエリアは大銀河帝国から独立…小規模だが大銀河共和国の継承国家…宇宙新共和国を建国する予定だ…」 「宇宙新共和国ですと?」 今後の方針である大銀河帝国からの独立にウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。 「大銀河帝国からの独立なのですが…独立なんて可能なのですかね?相手は大銀河帝国です…大銀河共和国の継承勢力であるタイラントキラーも大銀河帝国軍によって徹底的に殲滅させられたのです…」
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宇宙大動乱 ( No.77 ) |
- 日時: 2021/09/07 15:57
- 名前: 月影桜花姫
- ジャンル
スペースオペラ
世界観 宇宙文明
登場人物 大銀河帝国軍 【ブラッドフォード】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦692年7月16日 星座:牡牛座 実年齢:30歳 所属:大銀河帝国軍 役職:大総統 階級:総帥 性別:男性 身長:168cm 体重:68kg 血液型:AB型 一人称:私 性格:冷静沈着、合理主義、強硬 趣味:ライフル射撃
【ストライダー】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦674年3月22日 星座:牡羊座 実年齢:48歳 所属:大銀河帝国軍 役職:副総統 階級:大将 性別:男性 身長:199cm 体重:88kg 血液型:B型 一人称:私 性格:適当、面倒臭がり 趣味:プラモデル作成、設計
【ホムンクルス】 種別:クローン人間 所属:大銀河帝国軍 生産数:700万人〜7億人
タイラントキラー 【ウィグノール】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦678年9月28日 星座:天秤座 実年齢:44歳 所属:大銀河帝国軍〜タイラントキラー 役職:総帥 階級:中将 性別:男性 身長:200cm 体重:89kg 血液型:AB型 一人称:私 性格:生真面目 趣味:骨董品集め、サバイバルゲーム
【ウェンフィールド】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦700年8月17日 星座:獅子座 実年齢:22歳 所属:タイラントキラー〜ホープセイバーズ 役職:職業軍人 階級:大佐 性別:男性 身長:176cm 体重:76kg 血液型:O型 一人称:私 性格:誠実 趣味:ホラーゲーム
ホープセイバーズ 【ルーヴェルハルト】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦668年5月7日 星座:牡牛座 実年齢:54歳 所属:大銀河帝国軍〜ホープセイバーズ 役職:総帥 階級:少将 性別:男性 身長:198cm 体重:87kg 血液型:A型 一人称:私 性格:穏和、野心的 趣味:宇宙旅行
登場国家 『大銀河帝国』 成立日:宇宙新暦376年7月4日 総人口:900億人
自治領 『ユートピアサイド』 統治勢力:大銀河帝国軍 総人口:70億人
『エデンプラネット』 統治勢力:タイラントキラー 総人口:50億人
『ホープエリア』 統治勢力:ホープセイバーズ 総人口:20億人
登場兵器 大銀河帝国軍 『アプセラス』 諸元 正式名:上級大将専用宇宙戦艦アプセラス 所属:大銀河帝国軍 建造所:ユートピアサイド軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:7隻 起工日:宇宙新暦722年3月27日 進宙日:宇宙新暦722年4月24日 就役日:宇宙新暦722年4月30日 全長:400m 全幅:220m 全高:80m 総重量:70万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 輸送要員:300人〜800人 兵装 990mm超弩級波動砲ケラウノス:1基 600mm高エネルギー連装砲:2基 50mm対空パルスレーザー機関砲:8基 光子魚雷発射機:2基 多目的ミサイル発射機:12基 艦載機:4機※無人機 装甲 主砲装甲:990mm 舷側装甲:750mm 甲板装甲:550mm 装甲材質:エターナルメタル 動力炉:ハイパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『スレイプニル』 諸元 正式名:宇宙要塞母艦スレイプニル 所属:大銀河帝国軍 建造所:プルトロン軍事工場 艦種:宇宙空母 同型艦:18隻 起工日:宇宙新暦722年3月29日 進宙日:宇宙新暦722年4月26日 就役日:宇宙新暦722年4月30日 全長:990m 全幅:860m 全高:140m 総重量:950万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 輸送要員:5万人〜8万人 兵装 990mm超弩級怪光砲ケラウノス:1基 600mm高エネルギー連装砲:6基 50mm対空パルスレーザー機関砲:80基 光子魚雷発射機:12基 多目的ミサイル発射機:30基 艦載機:400機※無人機 装甲 主砲装甲:990mm 舷側装甲:800mm 甲板装甲:720mm 装甲材質:貴金属 動力炉:ハイパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『セイバードラゴン』 諸元 正式名:宇宙戦艦セイバードラゴン 所属:大銀河帝国軍 建造所:ユートピアサイド軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:2万隻〜3万隻 起工日:宇宙新暦652年4月22日 進宙日:宇宙新暦654年9月19日 就役日:宇宙新暦654年12月27日 全長:800m 全幅:600m 全高:120m 総重量:500万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:320人 輸送要員:2万人〜4万人 兵装 800mm高エネルギー連装砲:8基 50mm対空パルスレーザー機関砲:40基 光子魚雷発射機:8基 多目的ミサイル発射機:20基 艦載機:90機 装甲 主砲装甲:750mm 舷側装甲:550mm 甲板装甲:460mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能
『バジリスク』 諸元 正式名:宇宙巡洋艦バジリスク 所属:大銀河帝国軍 建造所:ユートピアサイド軍事工場 艦種:宇宙巡洋艦 同型艦:6万隻〜8万隻 起工日:宇宙新暦722年3月26日 進宙日:宇宙新暦722年4月12日 就役日:宇宙新暦722年4月15日 全長:200m 全幅:140m 全高:40m 総重量:5万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 300mm高エネルギー連装砲:3基 50mm対空パルスレーザー機関砲:12基 光子魚雷発射機:2基 艦載機:1機〜2機※無人機 装甲 主砲装甲:440mm 舷側装甲:250mm 甲板装甲:130mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『アスピドケロン』 諸元 正式名:宇宙駆逐艦アスピドケロン 所属:大銀河帝国軍 建造所:メティス軍事工場 艦種:宇宙駆逐艦 同型艦:9万隻〜15万隻 起工日:宇宙新暦722年5月14日 進宙日:宇宙新暦722年5月22日 就役日:宇宙新暦722年6月4日 全長:180m 全幅:150m 全高:40m 総重量:4万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 250mm高エネルギー連装砲:4基 40mm対空パルスレーザー機関砲:12基 光子魚雷発射機:2基 艦載機:2機※無人機 装甲 主砲装甲:370mm 舷側装甲:240mm 甲板装甲:230mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『スペースバード』 諸元 機種:宇宙戦闘機 所属:大銀河帝国軍 初飛行:宇宙新暦699年12月24日 生産数:8万機 運用開始:宇宙新暦700年6月2日 全長:17m 全幅:16m 全高:6m 総重量:14t 全速力:マッハ15 搭乗員:1人 武装 30mm対空用パルスレーザー:2基 多目的ミサイル〜光子魚雷:2基 設備 スーパーレーダー シールド装置
『セイバードローン』 諸元 機種:無人機 所属:大銀河帝国軍 初飛行:宇宙新暦722年4月26日 生産数:140万機 運用開始:宇宙新暦722年5月12日 全長:15m 全幅:14m 全高:4m 総重量:12t 全速力:マッハ15〜超光速 武装 30mm対空用パルスレーザー:2基 光子魚雷:4基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
『ケルベロス』 諸元 機種:無人機 所属:大銀河帝国軍 初飛行:宇宙新暦722年6月30日 生産数:78万機 運用開始:宇宙新暦722年7月15日 全長:16m 全幅:12m 全高:5m 総重量:20t 全速力:マッハ22〜超光速 武装 50mm対空用パルスレーザー:2基 新型光子魚雷:4基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
タイラントキラー 『サラマンダー』 諸元 正式名:宇宙戦艦サラマンダー 所属:タイラントキラー 建造所:エデンプラネット軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:600隻〜700隻 起工日:宇宙新暦628年1月24日 進宙日:宇宙新暦630年5月25日 就役日:宇宙新暦650年7月30日 全長:780m 全幅:540m 全高:90m 総重量:300万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:280人 輸送要員:2万人〜3万人 兵装 750mm高エネルギー連装砲:8基 40mm対空パルスレーザー機関砲:38基 光子魚雷発射機:4基 多目的ミサイル発射機:16基 艦載機:150機 装甲 主砲装甲:650mm 舷側装甲:480mm 甲板装甲:240mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能
『レヴィアタン』 諸元 正式名:宇宙戦闘母艦レヴィアタン 所属:タイラントキラー 建造所:エデンプラネット軍事工場 艦種:宇宙空母 同型艦:500隻〜600隻 起工日:宇宙新暦722年1月22日 進宙日:宇宙新暦722年2月13日 就役日:宇宙新暦722年2月24日 全長:960m 全幅:530m 全高:120m 総重量:620万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:20人 輸送要員:4万人〜6万人 兵装 320mm高エネルギー連装砲:2基 50mm対空パルスレーザー機関砲:44基 艦載機:400機※無人機 装甲 主砲装甲:480mm 舷側装甲:340mm 甲板装甲:190mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『シーサーペント』 諸元 正式名:宇宙巡洋艦シーサーペント 所属:タイラントキラー 建造所:エデンプラネット軍事工場 艦種:宇宙巡洋艦 同型艦:3万隻〜4万隻 起工日:宇宙新暦722年2月28日 進宙日:宇宙新暦722年3月14日 就役日:宇宙新暦722年3月20日 全長:250m 全幅:180m 全高:50m 総重量:6万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 280mm高エネルギー連装砲:4基 50mm対空パルスレーザー機関砲:14基 光子魚雷発射機:4基 艦載機:2機〜4機※無人機 装甲 主砲装甲:470mm 舷側装甲:290mm 甲板装甲:150mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『スペースドローン』 諸元 機種:無人機 所属:タイラントキラー 初飛行:宇宙新暦722年2月27日 生産数:50万機 運用開始:宇宙新暦722年3月12日 全長:14m 全幅:12m 全高:3m 総重量:12t 全速力:マッハ14〜超光速 武装 20mm対空用パルスレーザー:2基 多目的ミサイル〜光子魚雷:2基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置
『ホワイトピクシー』 諸元 機種:無人機 所属:タイラントキラー 初飛行:宇宙新暦722年4月28日 生産数:700機 運用開始:宇宙新暦722年5月2日 全長:18m 全幅:16m 全高:6m 総重量:15t 全速力:マッハ20〜超光速 武装 50mm対空用パルスレーザー:2基 多目的ミサイル〜光子魚雷:6基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
ホープセイバーズ 『リトルヴィーナス』 諸元 正式名:宇宙戦艦リトルヴィーナス 所属:ホープセイバーズ 建造所:ホープエリア軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:14隻 起工日:宇宙新暦722年5月27日 進宙日:宇宙新暦722年6月4日 就役日:宇宙新暦722年6月10日 全長:850m 全幅:650m 全高:200m 総重量:600万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 輸送要員:5万人〜8万人 兵装 990mm超弩級対艦防衛砲サイクロプス:1基 450mm高エネルギー連装砲:8基 50mm対空パルスレーザー機関砲:40基 光子魚雷発射機:12基 多目的ミサイル発射機:30基 艦載機:120機〜140機※無人機 装甲 主砲装甲:950mm 舷側装甲:580mm 甲板装甲:560mm 装甲材質:エターナルメタル 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『フェンリル』 諸元 正式名:宇宙巡洋艦デュラハン 所属:ホープセイバーズ 建造所:ホープエリア軍事工場 艦種:宇宙巡洋艦 同型艦:400隻〜500隻 起工日:宇宙新暦722年5月26日 進宙日:宇宙新暦722年6月3日 就役日:宇宙新暦722年6月9日 全長:350m 全幅:280m 全高:65m 総重量:7万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 450mm高エネルギー連装砲:4基 50mm対空パルスレーザー機関砲:16基 光子魚雷発射機:2基 艦載機:5機※無人機 装甲 主砲装甲:680mm 舷側装甲:420mm 甲板装甲:270mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『ハイパードローン』 諸元 機種:無人機 所属:ホープセイバーズ 初飛行:宇宙新暦722年5月30日 生産数:90万機 運用開始:宇宙新暦722年6月13日 全長:12m 全幅:8m 全高:4m 総重量:8t 全速力:マッハ22〜超光速 武装 50mm対空用パルスレーザー:2基 新型光子魚雷:2基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
作中用語 『ケラウノス』超大型戦略高エネルギー兵器 『ツァーリーボンバ』超大型戦略貫通ミサイル 『ダウンフォール』銀河系殲滅兵器 『メティス基地』小惑星 『プルトロン基地』人工惑星 『メタリックアイ』小惑星 『エターナルメタル』特殊超合金 『スーパーリアクター』無限動力炉 『ハイパーリアクター』新型無限動力炉
第一話
宇宙艦隊戦闘
太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。 「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」 セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。 「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」 セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。 「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」 「はっ!承知しました!」 通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。 「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」 「はっ!ワープ機能作動!」 ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。 「艦長!スペースレーダーが反応しました!」 サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。 「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」 旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。 「恐らく敵軍の艦隊だろう…」 すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。 「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」 「敵艦隊の総数は七万隻か…」 今現在投入された戦力では大銀河帝国軍主力宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。 「直進せよ…」 ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍主力宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍主力宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。 「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」 問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。 「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」 最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。 「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」 旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。シールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。 「艦首が被弾しました!」 「本艦への被害状況は?」 ウィグノールは乗組員に問い掛ける。 「艦首は大破です…」 「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」 ブリッジの乗組員が恐る恐る…。 「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」 長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するシールド機能が搭載されるのが基本である。 「恐らく奴等の実弾兵器にはシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」 シールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。 「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」 するとウィグノールが無表情で…。 「狼狽えるな…」 戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。 (こんなにも劣勢なのに冷静なんて…) 同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。 「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」 「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」 「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」 「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」 大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。 「大総統…如何されましたか?」 するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。 「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」 ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。 「スペースレーダーが反応しました!」 「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」 周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。 「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」 「小型の機影だと?」 小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。 「恐らく宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」 「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」 「はっ!承知しました!」 通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。 「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」 「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」 ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。 「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」 「承知しました…」 大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型シールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。 「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」 「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」 ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。 「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」 スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。当然として大銀河帝国軍でも宇宙用の偵察型ドローンは多数使用されるのだが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型シールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。 「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」 同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。 「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」 すると直後…。 「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」 スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。シールド機能が使用出来なくなる。 「大変です!本艦のシールド機能が無力化されました…」 セイバードラゴンのシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。 「狼狽えるな…」 こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。 「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」 爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。 「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」 「えっ!?ロケットエンジンが!?」 先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。 「大総統…脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」 ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。 「止むを得ないな…」 ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。 「大総統…危機一髪でしたね♪」 一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。 「何が危機一髪だ…」 ブラッドフォードは睥睨したのである。 「ひっ!」 睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。 「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」 同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。 「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」 「承知しました…」 通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。 「本船もワープさせろ…」 総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。 「艦長!敵軍が撤退します!」 ウィグノールは無表情で…。 「防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」 今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。
第二話
亡命艦隊
第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。 (今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…) 今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。 「誰だ?」 大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。 「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」 大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。 (誰かと思いきや…) 「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」 ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。 「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」 ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。 「貴様…」 「失礼です♪失礼です♪」 ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。 「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」 ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。 「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」 ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。 「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」 「結局貴様の用事とは?」 ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。 「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で新型兵器を見物しませんか?」 「暇潰しには好都合だ…承知した…」 ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。 「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」 「承知しました…」 ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。 「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」 軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。 「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」 近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。 「新型艦か…」 地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。 「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」 三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。 「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させる予定ですから♪」 するとストライダーは新型艦を紹介する。 「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」 バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。 「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」 ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。 (大総統…) ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。 「此奴は…」 ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。 「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」 ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。 「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」 「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」 大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。 「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」 ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。 「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」 ブラッドフォードは無表情で…。 「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」 「大総統…」 (本当に偏屈だな…) ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。 「今後の開発プランとやらは?」 「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」 ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。 「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」 「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」 すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。 「ん?通信機だと?」 ブラッドフォードは応答する。 「私だが…一体何事だ?」 「ブラッドフォード大総統!大変です!」 「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」 ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。 「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」 第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。 「愚民の暴走程度で報告するな…」 「えっ!?大総統…」 ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。 「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を一発投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」 「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」 躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。 「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」 ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。 「承知しました…大総統…」 ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。 「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」 ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。 「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」 「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」 同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。 「ウィグノール総帥!緊急事態です!」 「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」 ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。 「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」 ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。 「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」 「残念ですが…本当みたいです…」 「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」 ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。 「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」 ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。 「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」 ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。 「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」 「私は当然…本気だ!」 「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」 現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。 「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」 実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。 「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」 直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。 「ん?ホログラム?」 ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。 「ん?通信兵か?」 「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」 「緊急事態だと?今度は何事だ?」 「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『メタリックアイ』に接近中との情報です…」 小惑星メタリックアイとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。 「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」 「現段階では不明ですが…恐らくは…」 ウィグノールは再度問い掛ける。 「宇宙艦隊の規模は?」 「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」 「極小規模の小艦隊だな…」 「ウィグノール総帥…如何されますか?」 ウィグノールは一息するなり…。 「小惑星メタリックアイに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」 「承知しました…」 宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。メタリックアイの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。
第三話
奇襲大作戦
宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。 「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」 タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。 「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」 通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。 「奴等…行動を開始したな…」 ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。 「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」 「援軍は不要だ…」 問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。 「援軍は不要ですと?」 「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」 「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」 ブラッドフォードは一息するなり…。 「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」 「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」 ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。 「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」 大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。 「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」 (今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…) ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。 「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」 「はっ!承知しました!」 ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。 「改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」 「上出来だ…」 ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。 「出撃は五分後だ…」 「承知しました…」 五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。 「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」 「奇襲作戦か…」 タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。 「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」 「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」 現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。 「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」 地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。 「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」 ウィグノールは一息したのである。 「民間人への被害は最小限に努力しろ…」 数秒後…。 「全軍攻撃開始!敵部隊を排除せよ!」 タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。 「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」 タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。 「非常に奇妙だな…」 「奇妙ですと?」 奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。 「何が奇妙なのですか?」 「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」 ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。 「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」 戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。 「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」 するとウィグノールは恐る恐る…。 「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」 「えっ!?敵軍のトラップですと?」 直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。 「ん?何事だ…」 モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。 「此奴は…大銀河帝国軍の…」 「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」 「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」 ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。 「ウィンフィールド…」 「如何されましたか?ウィグノール総帥…」 普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。 (ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…) ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。 「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」 ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。 「えっ!?今更撤退ですと!?」 「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」 「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」 ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。 (コンピュータゲームみたいだな…) ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。 「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」 一息するなり…。 「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」 改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。 「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」 ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。 (此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…) 不本意であるが…。 「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」 直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。 「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」 「主力の宇宙艦隊は無事だが…」 先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。
第四話
新型宇宙戦艦
ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。 「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」 軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。 「大総統♪こんな場所で一体何を?」 「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」 「新型兵器の見物ですか♪」 副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。 「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」 「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」 艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。 「えっ?改名って…」 ストライダーは困惑したのである。 「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アプセラス』だ…」 「えっ…アプセラスって…」 ストライダーはハッとする。 「アプセラスとは…大総統の令夫人の名前では…」 「勿論…彼女の名前だ…」 アプセラスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。 「大総統が希望するのであれば…」 新型宇宙戦艦の艦名はアプセラスと改名される。 「此奴の性能は?」 アプセラスは全長四百メートルサイズで全幅は二百二十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり最強の主砲…。超大型戦略高エネルギー兵器『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で大惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。 「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」 「エターナルメタルだと?」 エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。 「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」 「であれば好都合だ…」
第五話
制圧作戦
三日後の四月二十七日早朝…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アプセラスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。 「全軍に伝達する!今回は小惑星メタリックアイを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」 今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星メタリックアイを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星メタリックアイの宙域へと到達する。 「メタリックアイの宙域に無事到達出来たな…」 旗艦アプセラスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。 「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」 「メタリックアイを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…徹底的に奴等を絶望させるぞ…」 タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のメタリックアイのみである。 (タイラントキラーの資源宝庫であるメタリックアイを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…) タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。 「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」 艦内のスペースレーダーがメタリックアイの防衛宇宙艦隊をキャッチする。 「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」 「推計一万五千隻です…」 「一万五千隻か…」 (敵軍の規模は一個艦隊程度だな…) 敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。 「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始せよ!」 防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型シールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。 「大総統…高エネルギー兵器が無力化されました…」 「シールド装置だな…であれば光子魚雷と多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」 各艦は無数の光子魚雷…。多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はシールドジャミング装置が搭載され…。シールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。 「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」 部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。 「油断大敵だ…巨大宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」 今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アプセラスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。推計五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装は旗艦アプセラスと同様に主砲の超大型戦略高エネルギー兵器ケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアプセラス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。 「圧倒的だな…」 ブラッドフォードはアプセラスの艦内ホログラムからドローン部隊による空戦の様子を直視する。 「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」 「意外とドローン兵器も役立つな…」 今現在セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜され…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。 「敵軍のドローン部隊は壊滅した…作戦中のドローン部隊には後方の敵軍艦隊への攻撃を続行させろ…」 「承知しました…」 セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。セイバードローンは光子魚雷やら多目的ミサイルで敵艦に攻撃したのである。ドローン部隊の攻撃で小型艦艇は勿論…。十数隻もの大型艦が撃沈されたのである。当然としてタイラントキラーの宇宙艦隊も迎撃するのだが…。セイバードローンにはシールド装置により対空パルスレーザー機関砲は無力化され光子魚雷やら多目的ミサイルは機体に搭載された対空パルスレーザー機関砲により迎撃される。 「ドローン部隊が敵軍を圧倒しました…」 「であれば即刻敵軍宇宙艦隊に接近…総攻撃を仕掛ける!」 大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はワープ機能を再作動…。メタリックアイが肉眼でも視認出来る距離へと到達する。 「到達したな…」 メタリックアイ防衛艦隊との距離は七百キロメートルと至近距離である。 「ドローン部隊の攻撃で敵軍艦隊は大分疲弊した様子ですね…」 「全軍総攻撃を開始せよ…敵部隊を壊滅させろ…」 ブラッドフォードは総攻撃を指示…。全軍による総攻撃が開始されたのである。主力艦隊による艦砲射撃と実弾攻撃でメタリックアイ防衛艦隊の多数の宇宙艦艇が大破…。撃沈されたのである。戦闘不能と判断したのか残存艦隊は撤退を開始…。メタリックアイは無人化したのである。 「敵軍艦隊は撤退を開始しました…メタリックアイを制圧しましょう…」 大銀河帝国軍主力宇宙艦隊は無事メタリックアイを制圧…。今回の制圧作戦で大銀河帝国軍の圧倒的大勝利に終結する。今回の戦闘でタイラントキラーは五十四隻のサラマンダー級大型宇宙戦艦と四十七隻のレヴィアタン級大型宇宙空母を喪失…。百八十三隻の旧型宇宙戦艦と八十二隻の旧型宇宙空母を喪失する。中型艦では二百十二隻のシーサーペント級宇宙巡洋艦が撃沈され…。四百五十六隻の旧型宇宙巡洋艦が撃沈されたのである。小型艦艇では二千七百六十八隻の宇宙駆逐艦と三千四百八十五隻の宇宙警備艇が撃沈され…。三百六十六機のスペースドローンが撃墜されたのである。二十六隻の宇宙戦艦と十七隻の宇宙空母が大破…。百七十六隻の宇宙巡洋艦と五千八百七十四隻の小型艦艇が大破したのである。人的損害では推計五十三万人の将兵が戦死する。一方の大銀河帝国軍は十二隻の宇宙戦艦と三十七隻の旧型宇宙巡洋艦を喪失…。六隻の宇宙戦艦と四十八隻の宇宙巡洋艦が大破したのである。三機の戦闘用ドローンが損傷…。人的損害では九百二十六人の将兵が戦死したのである。兵器を一新させた大銀河帝国軍であるが…。予想以上の損害の軽微に驚愕したのである。
第六話
殲滅作戦
無事メタリックアイを制圧した大銀河帝国軍はメタリックアイで放置された三十四隻の宇宙戦艦と十八隻の新型宇宙空母…。二十七隻の新型宇宙巡洋艦と艦載機のスペースドローン七十八機を鹵獲したのである。メタリックアイ制圧作戦から六日後の五月三日…。大総統のブラッドフォードは小惑星メティス基地で副総統のストライダーと再会する。 「大総統♪見事でしたな♪メタリックアイ制圧作戦は大銀河帝国軍の圧勝でしたね♪」 メタリックアイ制圧作戦の圧倒的勝利にストライダーは大喜びしたのである。 「当然の結果だ…ストライダーよ…総司令官であるウィグノールが自害した今現在のタイラントキラーは単なる烏合の衆…」 「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのでは…タイラントキラーは投降する以外に選択肢は皆無ですからね♪」 最早戦力をズタズタに破壊されたタイラントキラーは誰しもが投降するものと思考するのだが…。 「大総統!緊急事態です!」 通信兵がソワソワした様子で司令室に入室する。 「何事だ?」 通信兵は恐る恐る…。 「ウィンフィールドと名乗る人物がタイラントキラーの新指導者に任命され…各惑星に戦闘継続を伝播させました…」 「なっ!?戦闘継続だと!?」 ストライダーは驚愕する。 「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのに…奴等は正気か?」 するとブラッドフォードはボソッと一言…。 「この期に及んで奴等は余程死にたいらしいな…」 「大総統…如何されましょうか?」 問い掛けられたブラッドフォードは即答する。 「奴等が戦闘続行を決断するのであれば…此方も戦闘を続行…今度こそ奴等を徹底的に殲滅するだけだ…」 ブラッドフォードはストライダーを凝視するなり…。 「今度は大銀河帝国軍全軍で奴等の本拠地…エデンプラネットを攻略する…今度の作戦ではストライダー…貴様も参加しろ…」 「勿論ですとも…大総統…」 ストライダーは即答したのである。 「であれば即刻作戦を実行するか…大至急全軍に伝播させろ…エデンプラネット殲滅作戦を…」 「はっ!承知しました!」 通信兵は即座に各惑星の国軍宇宙艦隊に伝播させる。翌朝の五月四日…。各惑星の国軍宇宙艦隊が再集結したのである。今回の作戦では合計十九万隻の艦隊規模であり第四字宇宙星間戦争を上回る。 「全軍が集結したな…」 ブラッドフォードは旗艦のアプセラスに乗艦…。副総統のストライダーは改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦に乗艦したのである。ブラッドフォードは各艦に伝播…。 「全軍に伝播する…終戦は目前である!今回の作戦はタイラントキラー本拠地エデンプラネット!タイラントキラーの残存勢力を徹底的に殲滅する!諸君等の奮闘を期待する…」 ブラッドフォードの演説に将兵達の士気が向上したのである。するとストライダーはホログラムで返信する。 「大総統…先程の演説で将兵達の士気が向上しました♪精一杯奮闘しましょう♪」 「当然だ…ストライダー…」 直後…。 「各艦…ワープ機能を作動せよ…」 旗艦アプセラスを先頭に各艦はワープ機能を作動させる。一秒後…。合計十九万隻もの宇宙大艦隊がタイラントキラー本拠地エデンプラネットの宙域へと到達したのである。 「エデンプラネットの宙域に到達しました…味方艦隊とエデンプラネットの距離は一光年です…」 旗艦アプセラス艦内のスペースレーダーが反応する。 「大総統…スペースレーダーが反応しました…」 「敵軍の宇宙艦隊か?宇宙艦艇の総数は?」 「宇宙艦艇の総数は推計二万五千隻です…」 特殊無線技士のホムンクルス将兵が即答したのである。 「二万五千隻か…タイラントキラーの残存勢力にとっては最大戦力だな…」 度重なる敗北によりタイラントキラーの宇宙艦隊は二万五千隻に激減…。本拠地を防衛するのが手一杯だったのである。 「ですがこんな瀕死の状態で抵抗するなんて…」 ホムンクルス将兵の発言にブラッドフォードは即答する。 「所詮馬鹿の一つ覚えだな…超古代文明のとある大帝国に酷似する…最早戦力の激減したタイラントキラーでは国民主権の大銀河共和国の再興は夢物語なのに…」 大銀河帝国が建国される以前…。銀河系には大銀河共和国と呼称される民主主義国家が存在したのである。大銀河共和国は政治の腐敗やら度重なる内戦…。最大の反政府勢力である大銀河革命軍との大銀河戦争により崩壊…。民主制の大銀河共和国は独裁制の大銀河帝国へと再建されたのである。 「所謂タイラントキラーは大銀河共和国の残党勢力だ…徹底的に殲滅せよ…」
第七話
反帝国主義
宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。 「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」 「大銀河帝国に穏健派の帝国軍人は不要だ…」 (彼奴は目障りだからな…) ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。 「ホープセイバーズですが…如何されますか?」 問い掛けられたブラッドフォードは即答する。 「当然として…大銀河帝国に敵対する勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」 「当然の判断ですね…」 同時刻…。ホープセイバーズ本拠地ホープエリアの総本部拠点ではとある人物が訪問する。ホープセイバーズ総帥ルーヴェルハルトの専用室にて何者かがコンッとドアをノックしたのである。 「誰だ?」 すると若齢の将校が入室する。 「失礼します…」 「貴方は…」 「私はタイラントキラー将兵…ウィンフィールド…階級は大佐です…」 「ウィンフィールド大佐か…」 両者は敬礼したのである。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。 「本当に悪かった…私達の暴走で貴方の故郷は…」 ルーヴェルハルトは落涙…。謝罪したのである。 「気にしないで下さい…ルーヴェルハルト総帥…」 ウィンフィールドはルーヴェルハルトを非難せず…。 「大銀河帝国にも貴方みたいな穏健派の軍人が存在するだけで…私は大満足です♪」 ウィンフィールドは笑顔で返答する。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。 「突然で混乱するかも知れないが…今後のホープセイバーズの方針を伝達する…」 「今後の方針ですか?」 ルーヴェルハルトは一息するなり…。 「ホープエリアは大銀河帝国から独立…小規模だが大銀河共和国の継承国家…宇宙新共和国を建国する予定だ…」 「宇宙新共和国ですと?」 今後の方針である大銀河帝国からの独立にウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。 「大銀河帝国からの独立なのですが…現実的に独立なんて可能なのですかね?相手は大銀河帝国です…大銀河共和国の継承勢力であるタイラントキラーも大銀河帝国軍によって徹底的に殲滅させられたのです…恐らく簡単には…」 「困難なのは承知だ…」
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宇宙大動乱 ( No.78 ) |
- 日時: 2021/09/08 10:30
- 名前: 月影桜花姫
- ジャンル
スペースオペラ
世界観 宇宙文明
登場人物 大銀河帝国軍 【ブラッドフォード】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦692年7月16日 星座:牡牛座 実年齢:30歳 所属:大銀河帝国軍 役職:大総統 階級:総帥 性別:男性 身長:168cm 体重:68kg 血液型:AB型 一人称:私 性格:冷静沈着、合理主義、強硬 趣味:ライフル射撃
【ストライダー】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦674年3月22日 星座:牡羊座 実年齢:48歳 所属:大銀河帝国軍 役職:副総統 階級:大将 性別:男性 身長:199cm 体重:88kg 血液型:B型 一人称:私 性格:適当、面倒臭がり 趣味:プラモデル作成、設計
【ホムンクルス】 種別:クローン人間 所属:大銀河帝国軍 生産数:700万人〜7億人
タイラントキラー 【ウィグノール】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦678年9月28日 星座:天秤座 実年齢:44歳 所属:大銀河帝国軍〜タイラントキラー 役職:総帥 階級:中将 性別:男性 身長:200cm 体重:89kg 血液型:AB型 一人称:私 性格:生真面目 趣味:骨董品集め、サバイバルゲーム
【ウェンフィールド】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦700年8月17日 星座:獅子座 実年齢:22歳 所属:タイラントキラー〜ホープセイバーズ 役職:職業軍人 階級:大佐 性別:男性 身長:176cm 体重:76kg 血液型:O型 一人称:私 性格:誠実 趣味:ホラーゲーム
ホープセイバーズ 【ルーヴェルハルト】 出身地:大銀河帝国 誕生日:宇宙新暦668年5月7日 星座:牡牛座 実年齢:54歳 所属:大銀河帝国軍〜ホープセイバーズ 役職:総帥 階級:少将 性別:男性 身長:198cm 体重:87kg 血液型:A型 一人称:私 性格:穏和、野心的 趣味:宇宙旅行
登場国家 『大銀河帝国』 成立日:宇宙新暦376年7月4日 総人口:900億人
自治領 『ユートピアサイド』 統治勢力:大銀河帝国軍 総人口:70億人
『エデンプラネット』 統治勢力:タイラントキラー 総人口:50億人
『ホープエリア』 統治勢力:ホープセイバーズ 総人口:20億人
登場兵器 大銀河帝国軍 『アルセウイス』 諸元 正式名:上級大将専用宇宙戦艦アルセウイス 所属:大銀河帝国軍 建造所:ユートピアサイド軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:7隻 起工日:宇宙新暦722年3月27日 進宙日:宇宙新暦722年4月24日 就役日:宇宙新暦722年4月30日 全長:400m 全幅:220m 全高:80m 総重量:70万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 輸送要員:300人〜800人 兵装 990mm超弩級波動砲ケラウノス:1基 600mm高エネルギー連装砲:2基 50mm対空パルスレーザー機関砲:8基 光子魚雷発射機:2基 多目的ミサイル発射機:12基 艦載機:4機※無人機 装甲 主砲装甲:990mm 舷側装甲:750mm 甲板装甲:550mm 装甲材質:エターナルメタル 動力炉:ハイパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『スレイプニル』 諸元 正式名:宇宙要塞母艦スレイプニル 所属:大銀河帝国軍 建造所:プルトロン軍事工場 艦種:宇宙空母 同型艦:18隻 起工日:宇宙新暦722年3月29日 進宙日:宇宙新暦722年4月26日 就役日:宇宙新暦722年4月30日 全長:990m 全幅:860m 全高:140m 総重量:950万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 輸送要員:5万人〜8万人 兵装 990mm超弩級怪光砲ケラウノス:1基 600mm高エネルギー連装砲:6基 50mm対空パルスレーザー機関砲:80基 光子魚雷発射機:12基 多目的ミサイル発射機:30基 艦載機:400機※無人機 装甲 主砲装甲:990mm 舷側装甲:800mm 甲板装甲:720mm 装甲材質:貴金属 動力炉:ハイパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『セイバードラゴン』 諸元 正式名:宇宙戦艦セイバードラゴン 所属:大銀河帝国軍 建造所:ユートピアサイド軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:2万隻〜3万隻 起工日:宇宙新暦652年4月22日 進宙日:宇宙新暦654年9月19日 就役日:宇宙新暦654年12月27日 全長:800m 全幅:600m 全高:120m 総重量:500万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:320人 輸送要員:2万人〜4万人 兵装 800mm高エネルギー連装砲:8基 50mm対空パルスレーザー機関砲:40基 光子魚雷発射機:8基 多目的ミサイル発射機:20基 艦載機:90機 装甲 主砲装甲:750mm 舷側装甲:550mm 甲板装甲:460mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能
『バジリスク』 諸元 正式名:宇宙巡洋艦バジリスク 所属:大銀河帝国軍 建造所:ユートピアサイド軍事工場 艦種:宇宙巡洋艦 同型艦:6万隻〜8万隻 起工日:宇宙新暦722年3月26日 進宙日:宇宙新暦722年4月12日 就役日:宇宙新暦722年4月15日 全長:200m 全幅:140m 全高:40m 総重量:5万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 300mm高エネルギー連装砲:3基 50mm対空パルスレーザー機関砲:12基 光子魚雷発射機:2基 艦載機:1機〜2機※無人機 装甲 主砲装甲:440mm 舷側装甲:250mm 甲板装甲:130mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『アスピドケロン』 諸元 正式名:宇宙駆逐艦アスピドケロン 所属:大銀河帝国軍 建造所:メティス軍事工場 艦種:宇宙駆逐艦 同型艦:9万隻〜15万隻 起工日:宇宙新暦722年5月14日 進宙日:宇宙新暦722年5月22日 就役日:宇宙新暦722年6月4日 全長:180m 全幅:150m 全高:40m 総重量:4万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 250mm高エネルギー連装砲:4基 40mm対空パルスレーザー機関砲:12基 光子魚雷発射機:2基 艦載機:2機※無人機 装甲 主砲装甲:370mm 舷側装甲:240mm 甲板装甲:230mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『スペースバード』 諸元 機種:宇宙戦闘機 所属:大銀河帝国軍 初飛行:宇宙新暦699年12月24日 生産数:8万機 運用開始:宇宙新暦700年6月2日 全長:17m 全幅:16m 全高:6m 総重量:14t 全速力:マッハ15 搭乗員:1人 武装 30mm対空用パルスレーザー:2基 多目的ミサイル〜光子魚雷:2基 設備 スーパーレーダー シールド装置
『セイバードローン』 諸元 機種:無人機 所属:大銀河帝国軍 初飛行:宇宙新暦722年4月26日 生産数:140万機 運用開始:宇宙新暦722年5月12日 全長:15m 全幅:14m 全高:4m 総重量:12t 全速力:マッハ15〜超光速 武装 30mm対空用パルスレーザー:2基 光子魚雷:4基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
『ケルベロス』 諸元 機種:無人機 所属:大銀河帝国軍 初飛行:宇宙新暦722年6月30日 生産数:78万機 運用開始:宇宙新暦722年7月15日 全長:16m 全幅:12m 全高:5m 総重量:20t 全速力:マッハ22〜超光速 武装 50mm対空用パルスレーザー:2基 新型光子魚雷:4基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
タイラントキラー 『サラマンダー』 諸元 正式名:宇宙戦艦サラマンダー 所属:タイラントキラー 建造所:エデンプラネット軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:600隻〜700隻 起工日:宇宙新暦628年1月24日 進宙日:宇宙新暦630年5月25日 就役日:宇宙新暦650年7月30日 全長:780m 全幅:540m 全高:90m 総重量:300万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:280人 輸送要員:2万人〜3万人 兵装 750mm高エネルギー連装砲:8基 40mm対空パルスレーザー機関砲:38基 光子魚雷発射機:4基 多目的ミサイル発射機:16基 艦載機:150機 装甲 主砲装甲:650mm 舷側装甲:480mm 甲板装甲:240mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能
『レヴィアタン』 諸元 正式名:宇宙戦闘母艦レヴィアタン 所属:タイラントキラー 建造所:エデンプラネット軍事工場 艦種:宇宙空母 同型艦:500隻〜600隻 起工日:宇宙新暦722年1月22日 進宙日:宇宙新暦722年2月13日 就役日:宇宙新暦722年2月24日 全長:960m 全幅:530m 全高:120m 総重量:620万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:20人 輸送要員:4万人〜6万人 兵装 320mm高エネルギー連装砲:2基 50mm対空パルスレーザー機関砲:44基 艦載機:400機※無人機 装甲 主砲装甲:480mm 舷側装甲:340mm 甲板装甲:190mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『シーサーペント』 諸元 正式名:宇宙巡洋艦シーサーペント 所属:タイラントキラー 建造所:エデンプラネット軍事工場 艦種:宇宙巡洋艦 同型艦:3万隻〜4万隻 起工日:宇宙新暦722年2月28日 進宙日:宇宙新暦722年3月14日 就役日:宇宙新暦722年3月20日 全長:250m 全幅:180m 全高:50m 総重量:6万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 280mm高エネルギー連装砲:4基 50mm対空パルスレーザー機関砲:14基 光子魚雷発射機:4基 艦載機:2機〜4機※無人機 装甲 主砲装甲:470mm 舷側装甲:290mm 甲板装甲:150mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『スペースドローン』 諸元 機種:無人機 所属:タイラントキラー 初飛行:宇宙新暦722年2月27日 生産数:50万機 運用開始:宇宙新暦722年3月12日 全長:14m 全幅:12m 全高:3m 総重量:12t 全速力:マッハ14〜超光速 武装 20mm対空用パルスレーザー:2基 多目的ミサイル〜光子魚雷:2基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置
『ホワイトピクシー』 諸元 機種:無人機 所属:タイラントキラー 初飛行:宇宙新暦722年4月28日 生産数:700機 運用開始:宇宙新暦722年5月2日 全長:18m 全幅:16m 全高:6m 総重量:15t 全速力:マッハ20〜超光速 武装 50mm対空用パルスレーザー:2基 多目的ミサイル〜光子魚雷:6基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
ホープセイバーズ 『リトルヴィーナス』 諸元 正式名:宇宙戦艦リトルヴィーナス 所属:ホープセイバーズ 建造所:ホープエリア軍事工場 艦種:宇宙戦艦 同型艦:14隻 起工日:宇宙新暦722年5月27日 進宙日:宇宙新暦722年6月4日 就役日:宇宙新暦722年6月10日 全長:850m 全幅:650m 全高:200m 総重量:600万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 輸送要員:5万人〜8万人 兵装 990mm超弩級対艦防衛砲サイクロプス:1基 450mm高エネルギー連装砲:8基 50mm対空パルスレーザー機関砲:40基 光子魚雷発射機:12基 多目的ミサイル発射機:30基 艦載機:120機〜140機※無人機 装甲 主砲装甲:950mm 舷側装甲:580mm 甲板装甲:560mm 装甲材質:エターナルメタル 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『フェンリル』 諸元 正式名:宇宙巡洋艦デュラハン 所属:ホープセイバーズ 建造所:ホープエリア軍事工場 艦種:宇宙巡洋艦 同型艦:400隻〜500隻 起工日:宇宙新暦722年5月26日 進宙日:宇宙新暦722年6月3日 就役日:宇宙新暦722年6月9日 全長:350m 全幅:280m 全高:65m 総重量:7万t 全速力:超光速※ワープ機能 全出力:測定不能 航続距離:無限光年 乗組員:1人〜3人 兵装 450mm高エネルギー連装砲:4基 50mm対空パルスレーザー機関砲:16基 光子魚雷発射機:2基 艦載機:5機※無人機 装甲 主砲装甲:680mm 舷側装甲:420mm 甲板装甲:270mm 装甲材質:貴金属 動力炉:スーパーリアクター 設備 スーパーレーダー シールド装置 ワープ機能 ステルス機能
『ハイパードローン』 諸元 機種:無人機 所属:ホープセイバーズ 初飛行:宇宙新暦722年5月30日 生産数:90万機 運用開始:宇宙新暦722年6月13日 全長:12m 全幅:8m 全高:4m 総重量:8t 全速力:マッハ22〜超光速 武装 50mm対空用パルスレーザー:2基 新型光子魚雷:2基 設備 スーパーレーダー シールド装置 シールドジャミング装置 ステルス機能
作中用語 『ケラウノス』超大型戦略高エネルギー兵器 『ツァーリーボンバ』超大型戦略貫通ミサイル 『ダウンフォール』銀河系殲滅兵器 『メティス基地』小惑星 『プルトロン基地』人工惑星 『メタリックアイ』小惑星 『エターナルメタル』特殊超合金 『スーパーリアクター』無限動力炉 『ハイパーリアクター』新型無限動力炉
第一話
宇宙艦隊戦闘
太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。 「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」 セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。 「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」 セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢二十九歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。 「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」 「はっ!承知しました!」 通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。 「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」 「はっ!ワープ機能作動!」 ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。 「艦長!スペースレーダーが反応しました!」 サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。 「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」 旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。 「恐らく敵軍の艦隊だろう…」 すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。 「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」 「敵艦隊の総数は七万隻か…」 今現在投入された戦力では大銀河帝国軍主力宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。 「直進せよ…」 ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍主力宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍主力宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。 「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」 問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。 「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」 最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。 「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」 旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。シールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。 「艦首が被弾しました!」 「本艦への被害状況は?」 ウィグノールは乗組員に問い掛ける。 「艦首は大破です…」 「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」 ブリッジの乗組員が恐る恐る…。 「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」 長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するシールド機能が搭載されるのが基本である。 「恐らく奴等の実弾兵器にはシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」 シールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。 「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」 するとウィグノールが無表情で…。 「狼狽えるな…」 戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。 (こんなにも劣勢なのに冷静なんて…) 同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。 「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」 「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」 「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」 「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」 大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。 「大総統…如何されましたか?」 するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。 「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」 ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。 「スペースレーダーが反応しました!」 「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」 周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。 「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」 「小型の機影だと?」 小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。 「恐らく宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」 「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」 「はっ!承知しました!」 通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。 「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」 「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」 ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。 「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」 「承知しました…」 大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型シールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。 「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」 「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」 ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。 「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」 スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。当然として大銀河帝国軍でも宇宙用の偵察型ドローンは多数使用されるのだが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型シールド機能が搭載されたのである。ドローン兵器の技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。 「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたのか…」 同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。 「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」 すると直後…。 「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」 スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。シールド機能が使用出来なくなる。 「大変です!本艦のシールド機能が無力化されました…」 セイバードラゴンのシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。 「狼狽えるな…」 こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。 「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」 爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。 「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」 「えっ!?ロケットエンジンが!?」 先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。 「大総統…即刻脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」 ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。 「止むを得ないな…」 ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。 「大総統…危機一髪でしたね♪」 一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。 「何が危機一髪だ…」 ブラッドフォードは睥睨したのである。 「ひっ!」 睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。 「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」 同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。 「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」 「承知しました…」 通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。 「本船もワープさせろ…」 総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。 「艦長!敵軍が撤退します!」 ウィグノールは無表情で…。 「防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」 今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。
第二話
亡命艦隊
第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。 (今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…) 今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。 「誰だ?」 大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。 「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」 大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。 (誰かと思いきや…) 「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」 ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。 「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」 ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。 「貴様…」 「失礼です♪失礼です♪」 ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。 「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」 ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。本来クローン人間の製造は倫理観の問題点から民主制の国家では禁止される反面…。大銀河帝国は独裁制の国家でありクローン人間の製造も容易に実施出来る。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。 「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」 ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。 「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」 「結局貴様の用事とは?」 ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。 「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で新型兵器を見物しませんか?」 「暇潰しには好都合だ…承知した…」 ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。 「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」 「承知しました…」 ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。 「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」 軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。 「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」 近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。 「新型艦か…」 地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。 「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」 三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。 「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させる予定ですから♪」 するとストライダーは新型艦を紹介する。 「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」 バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。 「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」 ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。 (大総統…) ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。 「此奴は…」 ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。 「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」 ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。 「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」 「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」 大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。 「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」 ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。 「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」 ブラッドフォードは無表情で…。 「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」 「大総統…」 (本当に偏屈だな…) ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。 「今後の開発プランとやらは?」 「今後の開発プランは第二十四次宇宙星間戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」 ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。 「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」 「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」 すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。 「ん?通信機だと?」 ブラッドフォードは応答する。 「私だが…一体何事だ?」 「ブラッドフォード大総統!大変です!」 「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」 ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。 「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」 第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。 「愚民の暴走程度で報告するな…」 「えっ!?大総統…」 ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。 「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を一発投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」 「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」 躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。 「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」 ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。 「承知しました…大総統…」 ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。 「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」 ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。 「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」 「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」 同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『エデンプラネット』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。 「ウィグノール総帥!緊急事態です!」 「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」 ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。 「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」 ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。 「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」 「残念ですが…本当みたいです…」 「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」 ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。 「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」 ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。 「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」 ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。 「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」 「私は当然…本気だ!」 「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!エデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」 現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるエデンプラネットから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。 「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でエデンプラネットの滅亡も予想されましょう…」 実際タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪エデンプラネットの滅亡も否定出来ない。 「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」 直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。 「ん?ホログラム?」 ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。 「ん?通信兵か?」 「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」 「緊急事態だと?今度は何事だ?」 「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星『メタリックアイ』に接近中との情報です…」 小惑星メタリックアイとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。 「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍の奇襲部隊か?」 「現段階では不明ですが…恐らくは…」 ウィグノールは再度問い掛ける。 「宇宙艦隊の規模は?」 「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と…二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」 「極小規模の小艦隊だな…」 「ウィグノール総帥…如何されますか?」 ウィグノールは一息するなり…。 「小惑星メタリックアイに宇宙警備艦隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙小艦隊を駆逐せよ…」 「承知しました…」 宇宙警備艦隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させると本拠地のエデンプラネットから推定百四十光年に位置する小惑星…。メタリックアイの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備艦隊は所属不明の宇宙小艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙小艦隊は交戦の意思が皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。所属不明の宇宙小艦隊の正体は大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はエデンプラネットでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ…。避難民達は無事に保護されたのである。
第三話
奇襲大作戦
宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。 「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」 タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。 「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」 通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。 「奴等…行動を開始したな…」 ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるエデンプラネットに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。 「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」 「援軍は不要だ…」 問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。 「援軍は不要ですと?」 「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」 「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」 ブラッドフォードは一息するなり…。 「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」 「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」 ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。 「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」 大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。 「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」 (今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…) ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。 「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」 「はっ!承知しました!」 ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。 「改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」 「上出来だ…」 ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。 「出撃は五分後だ…」 「承知しました…」 五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級大型宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。 「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」 「奇襲作戦か…」 タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。 「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」 「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」 現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。 「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」 地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。 「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」 ウィグノールは一息したのである。 「民間人への被害は最小限に努力しろ…」 数秒後…。 「全軍攻撃開始!敵部隊を排除せよ!」 タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。 「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」 タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。 「非常に奇妙だな…」 「奇妙ですと?」 奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。 「何が奇妙なのですか?」 「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」 ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。 「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」 戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。 「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」 するとウィグノールは恐る恐る…。 「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」 「えっ!?敵軍のトラップですと?」 直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。 「ん?何事だ…」 モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。 「此奴は…大銀河帝国軍の…」 「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」 「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」 ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。 「ウィンフィールド…」 「如何されましたか?ウィグノール総帥…」 普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。 (ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…) ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。 「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」 ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。 「えっ!?今更撤退ですと!?」 「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」 「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」 ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。 (コンピュータゲームみたいだな…) ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。 「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」 一息するなり…。 「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」 改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。 「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」 ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。 (此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…) 不本意であるが…。 「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」 直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。 「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」 「主力の宇宙艦隊は無事だが…」 先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。
第四話
新型宇宙戦艦
ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十四日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。 「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」 軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。すると背後より…。 「大総統♪こんな場所で一体何を?」 「ストライダーか…暇潰しに新型兵器を見物しただけだ…」 「新型兵器の見物ですか♪」 副総統のストライダーも新型宇宙戦艦を直視する。 「此奴はセイバードラゴン級宇宙戦艦の後継艦…キングタイタンですよ♪」 「キングタイタンだと?即刻改名しろ…」 艦名が気に入らなかったのか後継艦の改名を要求したのである。 「えっ?改名って…」 ストライダーは困惑したのである。 「であれば私が名付ける…此奴の艦名は『アルセウイス』だ…」 「えっ…アルセウイスって…」 ストライダーはハッとする。 「アルセウイスとは…大総統の令夫人の名前では…」 「勿論…彼女の名前だ…」 アルセウイスとは二年前の四月に大病で死去したブラッドフォードの令夫人の名前でありブラッドフォードの唯一の理解者である。 「大総統が希望するのであれば…」 新型宇宙戦艦の艦名はアルセウイスと改名される。 「此奴の性能は?」 アルセウイスは全長四百メートルサイズで全幅は二百二十メートルサイズ…。全備総重量は七十万トンの巨大宇宙戦艦である。全長が八百メートルサイズのセイバードラゴン級宇宙戦艦の二分の一のサイズであるが…。戦闘能力は段違いであり砲撃に特化された完全攻撃型宇宙戦艦である。兵装は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が二基…。対空兵装では五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八基搭載される。実弾兵器は光子魚雷発射機が二基…。多目的ミサイル発射機が十二基配置される。本艦にとって最大の兵装であり最強の主砲…。超大型戦略高エネルギー兵器『ケラウノス』は無限の電力を内包するスパークストーンが使用され一撃で大惑星を消滅させる。動力炉はスーパーリアクターの改良型である新型無限動力炉『ハイパーリアクター』が搭載される。艦載機は無人機が四機…。乗組員は一人から三人程度で運用出来る。正式名は上級大将専用宇宙戦艦であり居住設備も豪華客船に匹敵する。本艦を一隻建造するだけでセイバードラゴン級宇宙戦艦二百隻の予算が使用…。政府首脳陣専用の宇宙戦艦であり実質ブラッドフォードのみが乗艦出来る。 「本艦の装甲は『エターナルメタル』ですからね…」 「エターナルメタルだと?」 エターナルメタルとは資源採掘惑星レアメタルスターで採掘された不朽性であり未知の鉄鉱石である。非常に軽量であるが…。硬度は金剛石以上であり半永久的に原物を維持出来る。 「エターナルメタルを使用すれば…メンテナンスは非常に安価ですからね♪」 「であれば好都合だ…」
第五話
制圧作戦
三日後の四月二十七日早朝…。人工惑星プルトロン基地から三万隻もの宇宙大艦隊が出撃を開始する。旗艦は新型宇宙戦艦アルセウイスであり大銀河帝国軍総司令官のブラッドフォードが乗艦したのである。 「全軍に伝達する!今回は小惑星メタリックアイを確保…タイラントキラーの防衛宇宙艦隊を殲滅せよ!」 今回の作戦では新型宇宙巡洋艦バジリスクが推計二千隻…。六千隻もの新型宇宙駆逐艦『アスピドケロン』が投入され艦載機は新型戦闘用ドローン『セイバードローン』が投入される。将兵の大半がクローン人間のホムンクルスであり人間の将兵は少数である。一新された大銀河帝国宇宙艦隊はタイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインである小惑星メタリックアイを目標に全速前進…。各艦艇はワープ機能で小惑星メタリックアイの宙域へと到達する。 「メタリックアイの宙域に無事到達出来たな…」 旗艦アルセウイスを先頭に…。背後からは三万隻もの宇宙艦艇がワープ機能で到達したのである。するとブリッジのホムンクルス将兵が発言する。 「味方の宇宙艦隊が到達したみたいですね…」 「メタリックアイを攻略…奴等の最終防衛ラインを陥落させ…徹底的に奴等を絶望させるぞ…」 タイラントキラーの保有する惑星は実質母星であるエデンプラネットと最終防衛拠点のメタリックアイのみである。 (タイラントキラーの資源宝庫であるメタリックアイを陥落させれば…実質大銀河帝国の大勝利だ…) タイラントキラーはユートピアサイド攻略作戦の失敗で戦力が低下…。最高指導者である総帥ウィグノールの自殺により以前より士気も戦争遂行能力も低下した状態だったのである。タイラントキラーは国民主権の勢力であり大勢の民間人が安住するエデンプラネットでの本土決戦は回避…。投降するのではと思考したのである。 「艦長!敵部隊の防衛宇宙艦隊を発見しました!」 艦内のスペースレーダーがメタリックアイの防衛宇宙艦隊をキャッチする。 「敵部隊の宇宙艦艇の総数は?」 「推計一万五千隻です…」 「一万五千隻か…」 (敵軍の規模は一個艦隊程度だな…) 敵軍の規模から片手間であると感じるものの…。 「全軍…全速前進だ!戦闘艦艇は敵艦に砲撃を開始せよ!」 防衛艦隊との射程距離は推定十七光年と近距離であり各艦は高エネルギー砲塔から高エネルギーの光弾を射出…。数十万発もの発光体が各艦の砲塔から発射される。大銀河帝国軍宇宙主力艦隊の猛攻により数百隻もの宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇が轟沈したのである。宇宙巡洋艦クラスの大型艦は超大型シールド装置の設置により高エネルギー兵器を無力化…。ノーダメージだったのである。 「大総統…高エネルギー兵器が無力化されました…」 「シールド装置だな…であれば光子魚雷と多目的ミサイルの実弾攻撃で対応せよ…」 各艦は無数の光子魚雷…。多目的ミサイルを発射する。大銀河帝国軍の実弾兵器はシールドジャミング装置が搭載され…。シールド装置を無力化させ大型艦に攻撃したのである。実弾兵器の猛攻で二百隻以上の宇宙巡洋艦クラスは勿論…。宇宙戦艦クラスの大型艦を撃沈する。 「大総統…大銀河帝国軍の優勢です!」 部下の報告にブラッドフォードは一安心するものの…。 「油断大敵だ…巨大宇宙空母『スレイプニル』から新型ドローン部隊を出撃させろ!」 今回の作戦では宇宙用の新型宇宙巨大空母スレイプニルが一隻投入されたのである。艦名はスレイプニルと命名され…。正式名は宇宙要塞母艦スレイプニルである。スレイプニル級宇宙空母はプルトロン軍事工場で建造されたドローン搭載型母艦であり十八隻が建造される。全長は九百九十メートルであり全長八百メートルクラスのセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。艦体の総重量は九百五十万トンと桁外れであり超光速の速力を発揮出来る。宇宙戦艦アルセウイスと同様に動力炉はハイパーリアクターが使用され…。航続距離は実質無限光年である。規格外の巨大さのスレイプニル級宇宙空母であるが…。乗組員は一人から三人体制であり少人数での運用が可能である。推計五万人から八万人もの輸送要員を乗艦させられる。艦載機は無人兵器のドローン兵器が四百機搭載される。兵装は旗艦アルセウイスと同様に主砲の超大型戦略高エネルギー兵器ケラウノスが艦首に設置…。副砲は六百ミリメートル高エネルギー連装砲が六基と対空兵装は五十ミリメートル対空パルスレーザー機関砲が八十基搭載されたのである。実弾兵器は光子魚雷発射機が十二基と多目的ミサイル発射機が三十基搭載され…。実質従来型の宇宙戦艦をも上回る戦闘空母である。補助兵装ではアルセウイス同様…。ステルス機能と館内には娯楽施設が設置されたのである。スレイプニルの宇宙用甲板からは三百機ものセイバードローンが出撃…。ワーム機能を作動させ超光速で敵軍艦隊の射程圏内へと突入したのである。タイラントキラーのレヴィアタン級宇宙戦闘母艦もドローン兵器スペースドローンを発進させる。ドローン兵器同士による空戦が開始されるが…。セイバードローンは鹵獲したスペースドローンをベースに開発された機体でありスペースドローンは圧倒される。一分間の空戦で二百機以上のスペースドローンが撃墜されたのである。 「圧倒的だな…」 ブラッドフォードはアルセウイスの艦内ホログラムからドローン部隊による空戦の様子を直視する。 「セイバードローンは予想以上の戦果ですね…」 「意外とドローン兵器も役立つな…」 今現在セイバードローンの損害は皆無であり敵機はバタバタと撃墜され…。タイラントキラーのドローン部隊は壊滅したのである。 「敵軍のドローン部隊は壊滅した…作戦中のドローン部隊には後方の敵軍艦隊への攻撃を続行させろ…」 「承知しました…」 セイバードローンは後方のタイラントキラー宇宙艦隊に攻撃を仕掛ける。セイバードローンは光子魚雷やら多目的ミサイルで敵艦に攻撃したのである。ドローン部隊の攻撃で小型艦艇は勿論…。十数隻もの大型艦が撃沈されたのである。当然としてタイラントキラーの宇宙艦隊も迎撃するのだが…。セイバードローンにはシールド装置により対空パルスレーザー機関砲は無力化され光子魚雷やら多目的ミサイルは機体に搭載された対空パルスレーザー機関砲により迎撃される。 「ドローン部隊が敵軍を圧倒しました…」 「であれば即刻敵軍宇宙艦隊に接近…総攻撃を仕掛ける!」 大銀河帝国軍宇宙主力艦隊はワープ機能を再作動…。メタリックアイが肉眼でも視認出来る距離へと到達する。 「到達したな…」 メタリックアイ防衛艦隊との距離は七百キロメートルと至近距離である。 「ドローン部隊の攻撃で敵軍艦隊は大分疲弊した様子ですね…」 「全軍総攻撃を開始せよ…敵部隊を壊滅させろ…」 ブラッドフォードは総攻撃を指示…。全軍による総攻撃が開始されたのである。主力艦隊による艦砲射撃と実弾攻撃でメタリックアイ防衛艦隊の多数の宇宙艦艇が大破…。撃沈されたのである。戦闘不能と判断したのか残存艦隊は撤退を開始…。メタリックアイは無人化したのである。 「敵軍艦隊は撤退を開始しました…メタリックアイを制圧しましょう…」 大銀河帝国軍主力宇宙艦隊は無事メタリックアイを制圧…。今回の制圧作戦で大銀河帝国軍の圧倒的大勝利に終結する。今回の戦闘でタイラントキラーは五十四隻のサラマンダー級大型宇宙戦艦と四十七隻のレヴィアタン級大型宇宙空母を喪失…。百八十三隻の旧型宇宙戦艦と八十二隻の旧型宇宙空母を喪失する。中型艦では二百十二隻のシーサーペント級宇宙巡洋艦が撃沈され…。四百五十六隻の旧型宇宙巡洋艦が撃沈されたのである。小型艦艇では二千七百六十八隻の宇宙駆逐艦と三千四百八十五隻の宇宙警備艇が撃沈され…。三百六十六機のスペースドローンが撃墜されたのである。二十六隻の宇宙戦艦と十七隻の宇宙空母が大破…。百七十六隻の宇宙巡洋艦と五千八百七十四隻の小型艦艇が大破したのである。人的損害では推計五十三万人の将兵が戦死する。一方の大銀河帝国軍は十二隻の宇宙戦艦と三十七隻の旧型宇宙巡洋艦を喪失…。六隻の宇宙戦艦と四十八隻の宇宙巡洋艦が大破したのである。三機の戦闘用ドローンが損傷…。人的損害では九百二十六人の将兵が戦死したのである。兵器を一新させた大銀河帝国軍であるが…。予想以上の損害の軽微に驚愕したのである。
第六話
殲滅作戦
タイラントキラーの資源宝庫であり最終防衛ラインであるメタリックアイを無事制圧した大銀河帝国軍はメタリックアイで放置された三十四隻の大型宇宙戦艦と十八隻の新型宇宙空母…。二十七隻の新型宇宙巡洋艦と艦載機のスペースドローン七十八機を鹵獲したのである。メタリックアイ制圧作戦から六日後の五月三日…。大総統のブラッドフォードは小惑星メティス基地で副総統のストライダーと再会する。 「大総統♪見事でしたな♪メタリックアイ制圧作戦は大銀河帝国軍の圧勝でしたね♪」 メタリックアイ制圧作戦の圧倒的勝利にストライダーは大喜びしたのである。 「当然の結果だ…ストライダーよ…総司令官であるウィグノールが自害した今現在のタイラントキラーは単なる烏合の衆…」 「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのでは…タイラントキラーは投降する以外に選択肢は皆無ですからね♪」 最早戦力をズタズタに破壊されたタイラントキラーは誰しもが投降するものと思考するのだが…。 「大総統!緊急事態です!」 通信兵がソワソワした様子で司令室に入室する。 「何事だ?」 通信兵は恐る恐る…。 「ウィンフィールドと名乗る人物がタイラントキラーの新指導者に任命され…各惑星に戦闘継続を伝播させました…」 「なっ!?戦闘継続だと!?」 ストライダーは驚愕する。 「資源宝庫のメタリックアイが制圧されたのに…奴等は正気か?」 するとブラッドフォードはボソッと一言…。 「この期に及んで奴等は余程死にたいらしいな…」 「大総統…如何されましょうか?」 問い掛けられたブラッドフォードは即答する。 「奴等が戦闘続行を決断するのであれば…此方も戦闘を続行…今度こそ奴等を徹底的に殲滅するだけだ…」 ブラッドフォードはストライダーを凝視するなり…。 「今度は大銀河帝国軍全軍で奴等の本拠地…エデンプラネットを攻略する…今度の作戦ではストライダー…貴様も参加しろ…」 「勿論ですとも…大総統…」 ストライダーは即答したのである。 「であれば即刻作戦を実行するか…大至急全軍に伝播させろ…エデンプラネット殲滅作戦を…」 「はっ!承知しました!」 通信兵は即座に各惑星の国軍宇宙艦隊に伝播させる。翌朝の五月四日…。各惑星の国軍宇宙艦隊が再集結したのである。今回の作戦では合計十九万隻の艦隊規模であり第四字宇宙星間戦争を上回る。 「全軍が集結したな…」 ブラッドフォードは旗艦のアルセウイスに乗艦…。副総統のストライダーは改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦に乗艦したのである。ブラッドフォードは各艦に伝播…。 「全軍に伝播する…終戦は目前である!今回の作戦はタイラントキラー本拠地エデンプラネット!タイラントキラーの残存勢力を徹底的に殲滅する!諸君等の奮闘を期待する…」 ブラッドフォードの演説に将兵達の士気が向上したのである。するとストライダーはホログラムで返信する。 「大総統…先程の演説で将兵達の士気が向上しました♪精一杯奮闘しましょう♪」 「当然だ…ストライダー…」 直後…。 「各艦…ワープ機能を作動せよ…」 旗艦アルセウイスを先頭に各艦はワープ機能を作動させる。一秒後…。合計十九万隻もの宇宙大艦隊がタイラントキラー本拠地エデンプラネットの宙域へと到達したのである。 「エデンプラネットの宙域に到達しました…味方艦隊とエデンプラネットの距離は一光年です…」 旗艦アルセウイス艦内のスペースレーダーが反応する。 「大総統…スペースレーダーが反応しました…」 「敵軍の宇宙艦隊か?宇宙艦艇の総数は?」 「宇宙艦艇の総数は推計二万五千隻です…」 特殊無線技士のホムンクルス将兵が即答したのである。 「二万五千隻か…タイラントキラーの残存勢力にとっては最大戦力だな…」 度重なる敗北によりタイラントキラーの宇宙艦隊は二万五千隻に激減…。本拠地を防衛するのが手一杯だったのである。 「ですがこんな瀕死の状態で抵抗するなんて…」 ホムンクルス将兵の発言にブラッドフォードは即答する。 「所詮馬鹿の一つ覚えだな…超古代文明のとある大帝国に酷似する…最早戦力の激減したタイラントキラーでは国民主権の大銀河共和国の再興は夢物語なのに…」 大銀河帝国が建国される以前…。銀河系には大銀河共和国と呼称される民主主義国家が存在したのである。大銀河共和国は政治の腐敗やら度重なる内戦…。最大の反政府勢力である大銀河革命軍との大銀河戦争により崩壊…。民主制の大銀河共和国は独裁制の大銀河帝国へと再建されたのである。 「所謂タイラントキラーは大銀河共和国の残党勢力だ…徹底的に殲滅せよ…」
第七話
反帝国主義
宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終戦略兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星エデンプラネットを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派の帝国軍人ルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの臨時政府軍宇宙艦隊が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残存艦隊が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。 「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」 「大銀河帝国に穏健派の帝国軍人は不要だ…」 (彼奴は目障りだからな…) ブラッドフォードにとって穏健派のルーヴェルハルトは正直目の上のたん瘤でありルーヴェルハルトの脱退は非常に好都合だったのである。 「ホープセイバーズですが…如何されますか?」 問い掛けられたブラッドフォードは即答する。 「当然として…大銀河帝国に敵対する勢力は徹底的に殲滅する予定だ…」 「当然の判断ですね…」 同時刻…。ホープセイバーズ本拠地ホープエリアの総本部拠点ではとある人物が訪問する。ホープセイバーズ総帥ルーヴェルハルトの専用室にて何者かがコンッとドアをノックしたのである。 「誰だ?」 すると若齢の将校が入室する。 「失礼します…」 「貴方は…」 「私はタイラントキラー将兵だった…ウィンフィールド…階級は大佐です…」 「ウィンフィールド大佐か…」 両者は敬礼したのである。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。 「本当に悪かった…私達の暴走で貴方の故郷は…」 ルーヴェルハルトは落涙…。謝罪したのである。 「気にしないで下さい…ルーヴェルハルト総帥…」 ウィンフィールドはルーヴェルハルトを非難せず…。 「大銀河帝国にも…貴方みたいな穏健派の軍人が存在するだけで…私の心情は救済されました♪」 ウィンフィールドは笑顔で返答する。するとルーヴェルハルトは恐る恐る…。 「突然で混乱するかも知れないが…今後のホープセイバーズの方針を伝達する…」 「今後の方針ですか?」 ルーヴェルハルトは一息するなり…。 「ホープエリアは大銀河帝国から独立…小規模だが大銀河共和国の継承国家…宇宙新共和国を建国する予定だ…」 「宇宙新共和国ですと?」 今後の方針である大銀河帝国からの独立にウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。 「大銀河帝国からの独立なのですが…現実的に独立なんて可能なのですかね?相手は大銀河帝国です…大銀河共和国の継承勢力であるタイラントキラーも大銀河帝国軍によって徹底的に殲滅させられたのです…恐らく簡単には…」 「困難なのは承知だ…」
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ホムンクルス事変 ( No.79 ) |
- 日時: 2021/09/08 22:22
- 名前: 月影桜花姫
- 第一話
潜入
世界暦七百二十二年四月四日の出来事である。国連軍特殊調査隊に所属する二人の隊員が高速調査艇に乗艇…。とある大南海に位置する孤島へと直行したのである。 「隊長…折角全世界が統一されたのに物騒ですね…」 世界各国は三年前に一国へと統一化…。現存する全世界の軍事組織は国連軍に統合化されたのである。 「仕方ないよ…所詮世界が統一されてもテロは撲滅されないからな…」 すると若齢の隊員が再度問い掛ける。 「今回の任務ですが…南方の孤島に潜伏するテロ組織の基地内の調査だけでしたよね?」 「勿論だ…」 若齢の隊員は不安視したのか恐る恐る…。 「間違っても…戦闘は…」 「最悪の場合戦闘は回避出来ないぞ…【ウィグノール】…」 「えっ…」 ウィグノールは新米の隊員であり当然として実戦経験は皆無である。 (実戦なんて…) ハラハラする。新米の彼にとって実戦は不安であり極度に緊張したのである。 「相手が相手だからな…」 「ですが【ルーヴェルハルト】隊長…俺は実戦経験が…」 「緊張するのは同感だが…今回の任務が成功すれば俺達は政府から特別ボーナスが支給されるのだぞ…」 「えっ!?特別ボーナスですか♪」 (任務を達成しなくては!) 特別ボーナスの一言に反応したのかウィグノールは態度が大幅に変化する。 (此奴は…単純だな…) ルーヴェルハルトは内心単純であると感じる。 「隊長♪即刻任務を達成して♪特別ボーナスをゲットしましょうね♪」 「はぁ…」 ルーヴェルハルトは呆れ果てる。数分後…。 「隊長!十数キロメートルの長距離より小規模の孤島を発見しました…ひょっとして…」 「恐らく目的地だろうな…」 肉眼でも孤島を直視出来る。 「全速力で孤島に直行するぞ…」 ルーヴェルハルトは猛スピードで高速調査艇を高加速化…。全速力で驀進したのである。三十分後…。彼等は無事に孤島へと到達する。
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ホムンクルス事変 ( No.80 ) |
- 日時: 2021/09/09 18:00
- 名前: 月影桜花姫
- 第一話
潜入
世界暦七百二十二年四月四日の出来事である。国連軍特殊調査隊に所属する二人の隊員が高速調査艇に乗艇…。とある大南海に位置する孤島サウスアイランドへと直行したのである。 「隊長…折角全世界が統一されたのに物騒ですね…」 世界各国は三年前に一国へと統一化…。現存する全世界の軍事組織は国連軍に統合化されたのである。 「仕方ないよ…所詮世界が統一されてもテロは撲滅されないからな…」 すると若齢の隊員が再度問い掛ける。 「今回の任務ですが…サウスアイランドに潜伏するテロ組織の秘密基地の調査だけでしたよね?」 「勿論だ…」 若齢の隊員は不安視したのか恐る恐る…。 「間違っても…戦闘は…」 「最悪の場合戦闘は回避出来ないぞ…【ウィグノール】…」 「えっ…」 ウィグノールは新米の隊員であり当然として実戦経験は皆無である。 (実戦なんて…) ハラハラする。新米の彼にとって実戦は不安であり極度に緊張したのである。 「相手が相手だからな…」 「ですが【ルーヴェルハルト】隊長…俺は実戦経験が…」 「緊張するのは同感だが…今回の任務が成功すれば俺達は政府から特別ボーナスが支給されるのだぞ…」 「えっ!?特別ボーナスですか♪」 (任務を達成しなくては!) 特別ボーナスの一言に反応したのかウィグノールは態度が大幅に変化する。 (此奴は…単純だな…) ルーヴェルハルトは内心単純であると感じる。 「隊長♪即刻任務を達成して♪特別ボーナスをゲットしましょうね♪」 「はぁ…」 ルーヴェルハルトは呆れ果てる。数分後…。 「隊長!十数キロメートルの長距離より小規模の孤島を発見しました…ひょっとしてサウスアイランドでしょうか?」 「恐らく目的地だろうな…」 肉眼でも南方の孤島を直視出来る位置へと到達する。 「全速力でサウスアイランドに直行するぞ…」 ルーヴェルハルトは猛スピードで高速調査艇を高加速化…。全速力で驀進したのである。三十分後…。彼等は無事にサウスアイランドへと到達する。 「人気は感じられませんね…無人島みたいですよ…」 サウスアイランドは全体的に人気が皆無であり無人島みたいな雰囲気だったのである。二人は護身用の装備品を所持…。警戒した様子で恐る恐る孤島へと上陸する。 「こんな場所にテロ組織の秘密基地が存在するのでしょうか?」 「現段階では不明瞭だが…秘密基地が存在しないとも断言出来ないからな…」 ルーヴェルハルトはサウスアイランドに何も無ければ再度出直そうと思考したのである。二人は恐る恐る無人の獣道へと潜入…。周囲の自然林を警戒したのである。 「隊長…不吉ですね…幽霊が出現しそうな雰囲気ですよ…」 ウィグノールは畏怖したのかブルブルと身震いし始める。 「貴様は子供か?幽霊なんて存在するかよ…」 ウィグノールの様子に再度呆れ果てる。すると移動中…。 「ウィグノール?」 「えっ?如何されましたか?隊長?」 ルーヴェルハルトは恐る恐る特定の地面を指差したのである。 「なっ!?」 ルーヴェルハルトが指差した地面の方向には直径二メートルサイズの合金製の大型ハッチが確認出来る。 「此奴はシェルターか…」 「核シェルターのハッチみたいですね…」 ウィグノールは恐る恐る大型ハッチに接触したのである。 「ひょっとしてテロ組織の秘密基地とは地下施設なのでしょうね…」 「であれば此奴で…」 ルーヴェルハルトは護身用の『レーザーライフル』を所持する。レーザーライフルとは近年国連軍が開発した新型光学兵器であり基本装備として各部隊に配備されたのである。 「レーザーライフルで直接ハッチを破壊する…」 「えっ?レーザーライフルを使用するのですか?」 (隊長…強引だな…) 強引であると感じる。ルーヴェルハルトはレーザーライフルを射出…。すると合金製のハッチは一筋の光線により簡単に破壊されたのである。 「えっ…」 レーザーライフルの威力にウィグノールは絶句する。ハッチはレーザーライフルにより破壊され…。スッポリと円形の風穴が形作られる。 「潜入するぞ…」 二人は警戒した様子で内部に潜入すると目前には昇降機が確認出来る。 「昇降機だな…」 昇降機は大人二人分のサイズでありルーヴェルハルトとウィグノールは恐る恐る昇降機に佇立する。直後…。 「ん?」 昇降機は自動で作動…。地下へと昇降したのである。するとウィグノールが恐る恐る…。 「隊長…テロ組織の施設としては…設備が非常に高度ですよね…」 内部は非常に近未来的であり本当にテロ組織の施設なのか疑問視したのである。すると直後…。 「なっ!?」 「えっ!?」 突如として二人の目前よりホログラム装置が作動され黒服の男性の姿形が映写されたのである。 「貴様は一体何者だ?」 ルーヴェルハルトがホログラムの男性に問い掛けると男性は即答する。 「私は『太平帝国軍』の総帥…【アルバード】です…」 「えっ?太平帝国って…」 「第二次世界戦争で滅亡した旧帝国だったな…」 太平帝国とは近代に存在した大帝国である。強大なる軍事力を保有した超大国であったが…。七十年前に勃発した第二次世界戦争で連合軍の攻勢により滅亡したのである。 「アルバードだったか?貴様は負け犬である太平帝国の残党を自称する異端者か?」 ルーヴェルハルトの問い掛けにアルバードは即答する。 「私が異端者ですか…私は列記とした太平帝国の後継者なのです…」
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