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You really got a hold on me
件名 | : Re: You really got a hold on me |
投稿日 | : 2015/04/08 17:48 |
投稿者 | : タン塩 |
参照先 | : |
■楓さん
カヲル「趣味?アスカを甘やかすことさ」
いいかもしれない(笑)
カヲル「趣味?アスカを甘やかすことさ」
いいかもしれない(笑)
件名 | : Re: You really got a hold on me |
投稿日 | : 2015/04/07 19:49 |
投稿者 | : 楓 |
参照先 | : |
カヲルにはアスカの側に一生いて、アスカにべたべたくっついて、そして甘やかしてほしいと思ってしまいました…。(笑)
久しぶりに、LAKが読めてとても嬉しいです。
ありがとうございました。
久しぶりに、LAKが読めてとても嬉しいです。
ありがとうございました。
件名 | : Re: You really got a hold on me |
投稿日 | : 2015/04/04 18:17 |
投稿者 | : タン塩 |
参照先 | : |
ありがとうございます。もたれ合い、とか言いますが、誰にも依存
せずに生きていけるなら、結婚なんてする必要はないだろうと。
なぜか、聞くとFFが書きたくなるビル・エヴァンス。
http://www.youtube.com/watch?v=m-pBMJZ2qY8
せずに生きていけるなら、結婚なんてする必要はないだろうと。
なぜか、聞くとFFが書きたくなるビル・エヴァンス。
http://www.youtube.com/watch?v=m-pBMJZ2qY8
件名 | : Re: You really got a hold on me |
投稿日 | : 2015/04/03 21:54 |
投稿者 | : 史燕 |
参照先 | : |
アスカとカヲルは綺麗な共依存なんですね。
>「自分の居場所は自分で作るものさ。鳥が巣を作るみたいにね」
こう言いつつカヲルはアスカを決して一人にしない、むしろできないというかなんというか……。
>思えば、一生一緒にいてくれると言う奴に、こうして抱きしめられながら月を眺めるのって、ものすごい贅沢かもしれない。これが一生続くのって、悪くない。
最終的にこの関係に行きつくわけで、二人で一緒だからこそ立っていられるのかな、と思いました。
落ち着いた雰囲気にじわじわと心の中に沁み渡っていくような作品ですね。
>「自分の居場所は自分で作るものさ。鳥が巣を作るみたいにね」
こう言いつつカヲルはアスカを決して一人にしない、むしろできないというかなんというか……。
>思えば、一生一緒にいてくれると言う奴に、こうして抱きしめられながら月を眺めるのって、ものすごい贅沢かもしれない。これが一生続くのって、悪くない。
最終的にこの関係に行きつくわけで、二人で一緒だからこそ立っていられるのかな、と思いました。
落ち着いた雰囲気にじわじわと心の中に沁み渡っていくような作品ですね。
件名 | : Re: You really got a hold on me |
投稿日 | : 2015/03/31 19:26 |
投稿者 | : タン塩 |
参照先 | : |
最近、ヤワになったと思う。日本の冬を寒いと感じるようになっ
た。北ドイツの、あの薄暗くて長い冬を知っているのに。たった三
年で、あたしは日本に馴染んでしまった。
寒さだけじゃない、食べ物もそう。一度里帰りした時、自分がか
つてこれほど脂っこいものを食べていたのかと愕然とした。好きだ
ったアイントプフ(ソーセージとジャガ芋のごった煮スープ)もダ
メだった。味は嫌いではないのだけれど、ギラギラと浮いた脂がダ
メ。昔は脂が少ないと文句を言ったものなのに。
実際、日本に来てからお肌の調子がいい。ニキビや吹き出物に悩
まされる事がなくなった。自分にあれほどの脂肪分は不必要だった
んだろう。
本当のところ、もう日本にいる必要はないし、帰ろうと思えばい
つでもドイツに帰れるのだけれど、なぜかあたしはここにいる。自
分の居場所はここだ、とさえ思う。
【A house is not a home】
by タン塩
ママが死んでから、ドイツには居場所がなかった。パパと、その
再婚相手の家庭は、あたしの家ではなかった。冷たくされたわけじ
ゃない。再婚相手は、いい人だと思う。でも、あたしのママじゃな
い。ママじゃない人相手に娘を演じるのは疲れるし、誠実じゃない。
もう、やりたくなかった。
日本なら、お芝居をしなくていい。友達もできた。いちおう、彼
氏みたいな奴もいる。そういえば、あいつはヨーロッパに帰りたい
と思ったりしないのかな。いや、どう考えても望郷の念に駆られる
カヲルなんてイメージできない。「アスカのいる場所が僕の家さ」
とか甘ったるいことを言いそうで寒気がする。
「カヲル?」
「は、話し掛けないでくれ!今、、うわぁぁぁぁぁ」
「またマインクラフト?」
「ち、ちょうどゾンビスポーンブロックに出くわした時に声をかけ
るから…あー、マグマダイブしちゃったよ」
「ホントのマグマダイブがどんなもんか教えてあげましょうか」
「目が怖いよアスカ」
「そんなに面白いの?」
「見てくれ、僕の建てた家。力作だよ」
「…何この現代アート。江戸東京博物館よりひどいセンスね」
「そ、それはあんまりだよ」
「…ねえ」
「なんだい」
「ヨーロッパに帰りたいと思った事、ある?」
「…………」
「何よ」
「いや、どう答えていいかわからなかったんだ。考えた事すらない
ね、そんな事」
「そうなの?」
「ヨーロッパは僕の故郷でもなんでもないよ。僕に故郷はない」
「…そう」
「アスカは帰りたいの?ドイツに」
「別に」
「なら、なぜ帰りたいかなんて聞くの?」
「…カヲルの居場所はどこかな、と思って」
「ここさ。アスカのいる場所が、僕の故郷だよ」
「それ、言うと思った」
「ひどいな。なら、アスカの居場所はどこ?」
「…わからない。ただ、ドイツには帰りたくない。パパとあの女の
家は、あたしの家じゃない」
「なら、自分で作ればいい」
「自分でって…」
「自分の居場所は自分で作るものさ。鳥が巣を作るみたいにね」
「鳥…」
「まず素手で木を切って道具を作ろう。そしたら本格的に伐採して
木材を揃える。できれば丸石も初日に手に入れたいね。次に作業
台でドアを製作して…」
「真面目に聞いて損した」
「ま、待ってくれよ。試しにアスカも作ってみたらいい」
「あたしがそんなゲームしなきゃいけないわけ?」
「アスカはどんな家が好みか、興味があるんだ」
「どんな、家…」
「クリエイティブモードでやるといい。敵も出ないし材料も揃ってる」
「…これ、どこに建てればいいの?」
「どこでもさ。場所選びも自由なんだ」
最初に現れた場所は砂漠だ。でも遠くに木々が見える。あっちに
行ってみよう。
森だ。オークの木の森。傍らに小高い丘。ここだ。ここがいい。
「ここにする」
「じゃあまず床を作って柱を立てて、壁を貼っていく。レゴみたい
なものさ。」
カヲルに教わりながら家を作る。結構楽しい。柱は黒い木材にし
よう。壁は白く、二階建てにして…。
「さすが、アスカは飲み込みが早いね」
「三角屋根にしたいんだけど、どうすればいいの?」
「ああ、階段を使うのさ。ほら、こう斜めに並べれば…」
「あ、なるほどね」
「平等院鳳凰堂とか、ケルン大聖堂を作った人もいるよ」
「えー、そんなの無理無理」
夢中になった。後で時計を見たら、三時間も経ってた。
「完成よ!」
「へえ、カントリーハウスだね」
オークの柱に白壁。ドイツの田舎家が、森の傍の小高い丘に。バ
ルコニーには花を飾って。この家は…。
「ど、どうしたんだいアスカ」
「なんでもない」
「泣いてるじゃないか」
なんて情けないんだろう。こんな事でメソメソするなんて子供み
たい。でも涙が止まらない。
この家は、ママの家だ。ママがおじいちゃんから受け継いだ古い
家。都会も、騒がしいのも嫌いだったママが愛した田舎家。あたし
が育った家。ママの死後、パパが手放した家。なんでこんなことを
覚えていたんだろう。忘れたいと思ってた過去を、あたしはまた思
い出してしまった。
「…大丈夫だよ、アスカ」
「カヲル?」
そっと抱きすくめられる。広い胸に包まれる。
「僕だけはずっとそばにいるよ。どこにも行かないから」
「…うん」
カヲルは本当に小憎らしい。人の心をすぐ読み取ってしまう。だ
からこいつに絡め捕られて、逃げられない。
「将来、二人で建てよう。カントリーハウスをさ」
「…それって、プロポーズ?」
「そうなのかな?どっちでもいいよ。僕は一生アスカと一緒にいる
って決めてるから」
「やだって言ったら?」
「う、嘘だろう?」
「そんな顔しないでよ。そうね、このまま一晩中抱きしめていてく
れたら考えてもいいわ」
「わ、わかったよ。一晩でも二晩でも」
カヲルの肩越しに月が見える。ずいぶん夜遅くなってしまったみ
たい。思えば、一生一緒にいてくれると言う奴に、こうして抱きし
められながら月を眺めるのって、ものすごい贅沢かもしれない。こ
れが一生続くのって、悪くない。
ママ、貴女の娘はどうにかやって行けそうです。だから、主のみ
もとで安らかに。
「…アーメン」
【終わり】
た。北ドイツの、あの薄暗くて長い冬を知っているのに。たった三
年で、あたしは日本に馴染んでしまった。
寒さだけじゃない、食べ物もそう。一度里帰りした時、自分がか
つてこれほど脂っこいものを食べていたのかと愕然とした。好きだ
ったアイントプフ(ソーセージとジャガ芋のごった煮スープ)もダ
メだった。味は嫌いではないのだけれど、ギラギラと浮いた脂がダ
メ。昔は脂が少ないと文句を言ったものなのに。
実際、日本に来てからお肌の調子がいい。ニキビや吹き出物に悩
まされる事がなくなった。自分にあれほどの脂肪分は不必要だった
んだろう。
本当のところ、もう日本にいる必要はないし、帰ろうと思えばい
つでもドイツに帰れるのだけれど、なぜかあたしはここにいる。自
分の居場所はここだ、とさえ思う。
【A house is not a home】
by タン塩
ママが死んでから、ドイツには居場所がなかった。パパと、その
再婚相手の家庭は、あたしの家ではなかった。冷たくされたわけじ
ゃない。再婚相手は、いい人だと思う。でも、あたしのママじゃな
い。ママじゃない人相手に娘を演じるのは疲れるし、誠実じゃない。
もう、やりたくなかった。
日本なら、お芝居をしなくていい。友達もできた。いちおう、彼
氏みたいな奴もいる。そういえば、あいつはヨーロッパに帰りたい
と思ったりしないのかな。いや、どう考えても望郷の念に駆られる
カヲルなんてイメージできない。「アスカのいる場所が僕の家さ」
とか甘ったるいことを言いそうで寒気がする。
「カヲル?」
「は、話し掛けないでくれ!今、、うわぁぁぁぁぁ」
「またマインクラフト?」
「ち、ちょうどゾンビスポーンブロックに出くわした時に声をかけ
るから…あー、マグマダイブしちゃったよ」
「ホントのマグマダイブがどんなもんか教えてあげましょうか」
「目が怖いよアスカ」
「そんなに面白いの?」
「見てくれ、僕の建てた家。力作だよ」
「…何この現代アート。江戸東京博物館よりひどいセンスね」
「そ、それはあんまりだよ」
「…ねえ」
「なんだい」
「ヨーロッパに帰りたいと思った事、ある?」
「…………」
「何よ」
「いや、どう答えていいかわからなかったんだ。考えた事すらない
ね、そんな事」
「そうなの?」
「ヨーロッパは僕の故郷でもなんでもないよ。僕に故郷はない」
「…そう」
「アスカは帰りたいの?ドイツに」
「別に」
「なら、なぜ帰りたいかなんて聞くの?」
「…カヲルの居場所はどこかな、と思って」
「ここさ。アスカのいる場所が、僕の故郷だよ」
「それ、言うと思った」
「ひどいな。なら、アスカの居場所はどこ?」
「…わからない。ただ、ドイツには帰りたくない。パパとあの女の
家は、あたしの家じゃない」
「なら、自分で作ればいい」
「自分でって…」
「自分の居場所は自分で作るものさ。鳥が巣を作るみたいにね」
「鳥…」
「まず素手で木を切って道具を作ろう。そしたら本格的に伐採して
木材を揃える。できれば丸石も初日に手に入れたいね。次に作業
台でドアを製作して…」
「真面目に聞いて損した」
「ま、待ってくれよ。試しにアスカも作ってみたらいい」
「あたしがそんなゲームしなきゃいけないわけ?」
「アスカはどんな家が好みか、興味があるんだ」
「どんな、家…」
「クリエイティブモードでやるといい。敵も出ないし材料も揃ってる」
「…これ、どこに建てればいいの?」
「どこでもさ。場所選びも自由なんだ」
最初に現れた場所は砂漠だ。でも遠くに木々が見える。あっちに
行ってみよう。
森だ。オークの木の森。傍らに小高い丘。ここだ。ここがいい。
「ここにする」
「じゃあまず床を作って柱を立てて、壁を貼っていく。レゴみたい
なものさ。」
カヲルに教わりながら家を作る。結構楽しい。柱は黒い木材にし
よう。壁は白く、二階建てにして…。
「さすが、アスカは飲み込みが早いね」
「三角屋根にしたいんだけど、どうすればいいの?」
「ああ、階段を使うのさ。ほら、こう斜めに並べれば…」
「あ、なるほどね」
「平等院鳳凰堂とか、ケルン大聖堂を作った人もいるよ」
「えー、そんなの無理無理」
夢中になった。後で時計を見たら、三時間も経ってた。
「完成よ!」
「へえ、カントリーハウスだね」
オークの柱に白壁。ドイツの田舎家が、森の傍の小高い丘に。バ
ルコニーには花を飾って。この家は…。
「ど、どうしたんだいアスカ」
「なんでもない」
「泣いてるじゃないか」
なんて情けないんだろう。こんな事でメソメソするなんて子供み
たい。でも涙が止まらない。
この家は、ママの家だ。ママがおじいちゃんから受け継いだ古い
家。都会も、騒がしいのも嫌いだったママが愛した田舎家。あたし
が育った家。ママの死後、パパが手放した家。なんでこんなことを
覚えていたんだろう。忘れたいと思ってた過去を、あたしはまた思
い出してしまった。
「…大丈夫だよ、アスカ」
「カヲル?」
そっと抱きすくめられる。広い胸に包まれる。
「僕だけはずっとそばにいるよ。どこにも行かないから」
「…うん」
カヲルは本当に小憎らしい。人の心をすぐ読み取ってしまう。だ
からこいつに絡め捕られて、逃げられない。
「将来、二人で建てよう。カントリーハウスをさ」
「…それって、プロポーズ?」
「そうなのかな?どっちでもいいよ。僕は一生アスカと一緒にいる
って決めてるから」
「やだって言ったら?」
「う、嘘だろう?」
「そんな顔しないでよ。そうね、このまま一晩中抱きしめていてく
れたら考えてもいいわ」
「わ、わかったよ。一晩でも二晩でも」
カヲルの肩越しに月が見える。ずいぶん夜遅くなってしまったみ
たい。思えば、一生一緒にいてくれると言う奴に、こうして抱きし
められながら月を眺めるのって、ものすごい贅沢かもしれない。こ
れが一生続くのって、悪くない。
ママ、貴女の娘はどうにかやって行けそうです。だから、主のみ
もとで安らかに。
「…アーメン」
【終わり】
件名 | : Re: You really got a hold on me |
投稿日 | : 2014/05/31 13:25 |
投稿者 | : 楓 |
参照先 | : |
アスカを好きでいることで、カヲルも満ち足りていたらいいな、ということです……アスカを癒すことがカヲルにとっての幸せの形のひとつであればいいな、と…。
と、LRSサイトさまでシンジと綾波のことに触れずLAKを語ることにやや申し訳ないです…(苦笑)
と、LRSサイトさまでシンジと綾波のことに触れずLAKを語ることにやや申し訳ないです…(苦笑)
件名 | : Re: You really got a hold on m |
投稿日 | : 2014/05/19 17:00 |
投稿者 | : タン塩 |
参照先 | : |
■楓さん
癒されるカヲル君…難しい!
■caluさん
ありがとうございます。って動画削除早っ!
加筆:さだまさし!初期の「帰去来」は好きだったなあ。
癒されるカヲル君…難しい!
■caluさん
ありがとうございます。って動画削除早っ!
加筆:さだまさし!初期の「帰去来」は好きだったなあ。
件名 | : Re: You really got a hold on me |
投稿日 | : 2014/05/19 00:19 |
投稿者 | : calu |
参照先 | : |
三話目にしてイライラしてないアスカ様がいた。
シュークリームじゃあなくて、『フルーツどっさりプリンアラモード』
を甘言に負けてチョイスした彼女の満ち足りた感は、推して知るべし、でしょう。
そんな彼女に変えた、カヲル君の奇跡の愛。
浮かんだタイトルミュージックはこの曲でした。
シュークリームじゃあなくて、『フルーツどっさりプリンアラモード』
を甘言に負けてチョイスした彼女の満ち足りた感は、推して知るべし、でしょう。
そんな彼女に変えた、カヲル君の奇跡の愛。
浮かんだタイトルミュージックはこの曲でした。
件名 | : Re: You really got a hold on me |
投稿日 | : 2014/05/07 19:39 |
投稿者 | : 楓 |
参照先 | : |
私も、他人に甘えることのできる、誰かに寄りかかることのできるアスカを妄想しているので、
その辺りの考えが似ていて嬉しいです。
あと、カヲルも、アスカを愛し癒しているつもりで、反対に癒されていたらいいです…。
また、LAKが読めることを期待しています。
その辺りの考えが似ていて嬉しいです。
あと、カヲルも、アスカを愛し癒しているつもりで、反対に癒されていたらいいです…。
また、LAKが読めることを期待しています。
件名 | : Re: You really got a hold on me |
投稿日 | : 2014/05/06 09:37 |
投稿者 | : タン塩 |
参照先 | : |
■tambさん
最初は昆布茶にしようと思ったのは秘密だ!
■楓さん
ありがとうございます。カヲアスを書くとゲロ甘にしかなりません。
それは多分、アスカさんの癒しの過程だからでしょう。愛されず、
愛なんかいらないわよと突っ張って生きてきたアスカさんに、カヲル
君の溢れる愛を与えてメロメロにしてみたい、と。胸いっぱいの愛を。
最初は昆布茶にしようと思ったのは秘密だ!
■楓さん
ありがとうございます。カヲアスを書くとゲロ甘にしかなりません。
それは多分、アスカさんの癒しの過程だからでしょう。愛されず、
愛なんかいらないわよと突っ張って生きてきたアスカさんに、カヲル
君の溢れる愛を与えてメロメロにしてみたい、と。胸いっぱいの愛を。
イライラするのは好きじゃない。好きな奴はいないか。
あたしだって、できれば毎日穏やかに過ごしたい。パリで見た鈴蘭祭のように、
派手ではないけれどなんとなく華やかな、そんな気分でいられたらどんなに素敵
だろう。なのに、あたしはイライラしてる。
窓の外は、まるで五月のパリみたいな爽やかな天気。なのにここはパリじゃない。
第二新東京市の高校の窓からは、マロニエの並木道もシテ島の橋も、鈴蘭の花売
り娘も見えない。
「あ、あの、アスカ」
「何?」
「ぼ、僕らの班の課題だけどさ、一応まとめておいたから目を通してくれない?」
何をおどおどしてるのよバカシンジ。いえ、わかってる。今のあたしはイライラ
オーラを全身から発散してるにちがいない。
「碇、くん」
シンジの後ろからあの女が顔を出す。ポーカーフェースのようでいて、どことな
く柔らかい空気を漂わせて。ああイライラする。
「はいはい、見とけばいいんでしょ」
シンジの差し出すUSBメモリを引ったくり、あたしは尋ねた。
「…あいつはどこに行ったの」
「あいつって?」
「やっぱりいい」
「あ、カ、カヲル君!?カヲル君なら昼休みに帰っちゃったよ、鞄持って」
やっぱり。あたしのイライラはもう頂点。
「碇くん」
「あ、ゴ、ゴメン綾波」
「あんたら、これからデート?」
「デ、デートなんてそんな。ただ一緒に本屋に寄って、それからお茶…」
「帰る」
なんてザマだろう。この眩しい陽射し、爽やかな風に吹かれながら、あたしは一
人トボトボと下校中。こんな気持ちのいい日に、こんな気分でいなきゃいけない
なんてバカみたい。バカシンジとあの女はますます人をイライラさせるし。
違う。あたしは嫉妬していたんだ。あの女に。あの柔らかい雰囲気に。あれは、
好きな人がそばにいる安心感。
「やあ」
いた。人の部屋に上がり込んで、勝手にシャワーを浴びたのか、上半身裸でタオ
ルを首に掛けて、しかも人のジンジャーエールを勝手に飲んで。
「上がらないの?」
「……何してんのよ」
「午後の授業は気が乗らないから、ここで少し昼寝してシャワーを浴びたのさ」
見れば、朝きっちりメイクしたベッドが寝乱れてグチャグチャ。
「…せいっ!」
「おっと、危ないなぁ。君の左ハイキックは凶器だよ」
「姿が見えないと思ったら人の部屋に上がり込んで勝手放題、キックぐらい当然よ!」
「僕の部屋よりここの方が学校から近いしね」
「だからって、ちょっとは遠慮とかないの!?」
「鍵をくれたのは君じゃないか」
「ぐっ」
「それに、自分の部屋よりアスカの部屋の方が落ち着くのさ。アスカの匂いが染
み付いているからかな」
「え」
「自分の部屋は好きじゃない。だって自分しかいないからね。この部屋にはアス
カがいる。ベッドもソファーもアスカの匂いがする。君は香水なんかつけなくて
も、とてもいい匂いがするからね」
「な、何言ってるのよ」
「ほら、こんなに」
そう言って人を勝手に抱きしめる。裸の胸に頬が埋まる。
「いい匂いで、軽くて、柔らかくて。君は本当に魅力的だ」
「……なら」
「え?」
「なら一人ぼっちにしないでよ!いつも一緒にいてよ!」
「…アスカ」
「あんたはいつもそう!フラッとどこかに行ったまま帰って来ないで。残されて
一人でいるのは嫌なのよ!」
「ごめん」
抱きしめる腕に力がこもる。裸の胸に顔が埋まる。
「そうだったね。僕は君の心を見るのを忘れていたよ。そんなに寂しかったなん
て気付かなかった。ごめん」
「……」
「僕はもうリリンになったんだ。それは自分で選んだことなのに、未だにリリン
の生き方に慣れない。君にそんな思いをさせるつもりじゃなかったんだ」
そうだ。初めて会った時、こいつは虫が好かなかった。多分、嫉妬していたんだ。
あたしはずっと束縛されていた。ママが死んでから、最後の戦いまで。飛び級で
大学を卒業して、訓練を受けて、エヴァに乗って。最大の目標だったエヴァへの
搭乗。それさえもが多分、どこかのずるい大人に誘導されたものだった。全てが
終わった時、あたしはそれを悟った。
そこにこいつが現れた。達観したような醒めた目つきで飄々と。あたしはほとん
ど生理的な嫌悪感すら感じた。面と向かって『あんた、いけ好かないのよ!』っ
て言ってやったっけ。それなのにこいつと来たらキョトンとして、それから嬉し
そうな顔をして『それが怒りという感情かい?初めて見た』なんて言うからます
ますムカついて、ひっぱたいてやった。今思えば、こいつが漂わせてた『自由の
匂い』に反発してたのかも知れない。
だけど、こいつを知るにつれて、そういう感情は薄れていった。こいつには演技
も芝居もない。根っからそういう変な奴なんだとわかってバカバカしくなった。
いつからだろう。こいつを束縛してやりたいと思うようになったのは。小鳥のよ
うに気ままに飛び回るこいつを、あたしの傍に縛り付けてやりたいと思うように
なったのは。こいつを束縛できる、世界で唯一の存在になりたいと思ったのは。
だけど、結局は逆。こいつは相変わらず自由で、あたしはこいつに身も心も搦め
捕られて身動き取れない。悔しい。悔しい。
「…えい!」
「痛っ!足を踏むなんてひどいよアスカ」
「さっさとシャツを着なさいよ!風邪引くわよ」
「大丈夫さ。アスカはあったかいから」
「……一つ聞いていい?カヲルはいつ、あたしを好きになったの?」
「さあね。強いて言うなら、初対面で君に叩かれた時かな」
「…あんたマゾ!?」
「初めてだったんだ。叩かれたのも、他人に怒りを向けられたのも。そして、激
しい感情を見せた君に興味を持った。もっと君を知りたいと思った。
結果は予想以上だったね。君の表情はクルクル変わる。笑い、泣き、怒る。豊か
で激しい感情。それこそ僕の欲しかったものだった。それを持った君はとてつも
なく魅力的で、独り占めにしたいと感じた。だから、そうした。それだけさ」
「…ふーん」
「それに、今日もまた一つ、アスカの新しい面を知った。意外とかわいいものが
好きってことさ」
「かわいいものって、なんかあんたに見せたっけ?」
「スカートでハイキックはやめた方がいいね。でないと、かわいいクマちゃんの
パンツが見えてしまうよ」
「……ていっ!」
「ぐはぁっ!裏拳は…反…則……」
【終わり】