第弐拾五話、午前

前日のサイクリングと飲酒により、三人は決戦前日とは思えないほど快眠した。懸念されていた二日酔いもなく、すこぶる冴え渡った朝である。レイとアスカが尿意で起床し、しばしふたりで彼の寝顔を観察したあとシンジが目を覚ました。

朝食がないため支度を整えると部屋を出る。回収されなさそうなゴミ袋を捨てると保安部による迎えの車がすぐに横づけされたので乗り込んだ。車内から外を眺めるが誰も言葉を発しない。無人となった町では野良猫が残飯を漁り、タヌキが道路を横切った。粗大ゴミが思いのほか少ないのはまた戻ってくるのを想定しているからか。割れた窓ガラス、落書きされたシャッターといった混沌も目にしなかった。

最後の見回りをしているパトカーや消防車とすれ違い、中心地に差しかかると少しばかり景観が形を変えている。使徒戦で用いた兵装ビルが()りあがっていたからだ。修復もままならずかなり痛みが激しいものの、眠らせるつもりも出し惜しむつもりもなく総力戦の構えだと知ってアスカは知らず拳を握り締める。三人で写真を撮った公園に地上発射型のミサイルを搭載した兵器が鎮座しているのを見ればレイも眉尻をさげた。空はこんなに青く空気も澄んでいるのに戦闘機で埋め尽くされる予感がしてシンジは睨む。そして彼らの憂いを遮るように無骨な金属の壁が現れる。もう場所はカートレインの出入り口だった。

カートレインで螺旋状にジオフロントの壁面をさがればそこは本部のすぐ近くだ。高所から見た限り変化はないように思われたが、ここにもいくつかの兵器が配備されている。いや、よく見ればそこかしこに巧妙に隠された兵器の山だ。地上にあったものよりずっと量が多い。こちらが本命かもしれない、と誰もが感じた。

何度となく行き来したエントランスをくぐると見たこともない堅牢そうな防壁が背後で閉まる。館内ではどこそこのルートを封鎖した、本部の出入りの凍結といった進捗の報告が繰り返し流されていた。

まだ誰とも顔をあわせていない三人だが食堂に行けば大勢の職員が料理をつついていた。男女問わず皆まるで一日分を食い溜めしようかというほど頬を膨らませ、腹を撫でている。殺伐とした雰囲気を想像していただけにシンジとアスカはもとよりレイも目を丸くして驚く。

「なんか鉄火場みたいだね……」

家を出てからここに来てシンジの第一声だ。ずいぶんな賑わいに声を張らないといけないほどである。ちらちらと飛ぶ視線に思わず髪やらスカートの裾やらを気にしたアスカが応じた。

「そ、そうね。英気を養うってやつかしら」

レイの家に着替えがないため彼女の服装は昨日と同じだ。シャツや下着などは洗濯したが、こうも大勢の職員がいると自分の姿に恥ずかしさがある。まるでデートの途中に迷い込んだかのようだ。一番近くにいた若い男性が笑顔を向けてきたので手を振って応じる。いや、それも違うような気がすると顔を赤くした。

「私たちも食べましょ。腹が減っては、よ」

レイは馬上競技の小さいイラストが刺繍されたポロシャツにグレーのチェック柄スカートという服装だが、動じることなく受取カウンターへ向かった。彼女の目はなんのメニューにしようかと左右に動いている。

シンジたちは知らないが、チルドレンを見かけても過剰な激励はするなという命令が下っていた。これはゲンドウからの指示である。なぜそんなことをわざわざと思う職員も多くいたが、真相を知るのは冬月だけだ。

「って、アスカ……朝からステーキ!? しかもでかいっ」
「アンタこそなんで焼き鮭定食なのよ。レイを見習いなさい、カツ丼よ」
「チキンカツだから平気だと思ったの」

起きてまだ一時間くらいなのになかなか重いメニューだとシンジは顔を引きつらせるが、高タンパク質を朝に摂るのは効果的というアスカの説明と力強く頷くレイに閉口した。

「たんぱく質ってこれくらいしか……」
「だからって追加で納豆2パックはないと思うのよね、シンジ。LCLん中ネバネバになるわ」
「碇くん、あとで歯を磨きましょ」

かくしてシンジたちは朝食や諸々を終えるとミサトの待つブリーフィングルームへ向かう。部屋にはミサトとチルドレンの三人しかおらず、プロジェクターのスクリーンと密着して並ぶ椅子があるだけだ。

「あら、あなたたちずいぶん可愛い格好してるじゃない」

化粧が厚いのは連日の疲れを隠すためだがそれでもミサトは柔らかい笑みを浮かべてレイとアスカを見る。とくにレイの雰囲気には驚いた。たった数日でここまでひとは変わるものだと、子供たちの成長の早さを感じさせる。アスカも溌剌(はつらつ)としていて、とても失踪するほど精神を病んでいたようには思えない。

「前置きはいいわ。さっさと始めて」
「なぁによぉ、アスカぁ。ちょっとくらい雑談してもいいじゃない」
「あたし焦らされるの嫌なの。早くガツっと大事なこと言いなさよ」

不承不承といった表情を返すミサトだが、自分が気遣われていると思って内心苦笑いする。虚勢を張らずとも気合充分と見れば小手先の詮索は無用だ。ならばと、スクリーンに映像を写して説明を始めた。

「言ったと思うけど、まだ戦いは終わってないわ。いいえ、使徒の殲滅は完了よ。でもね、しあげが残ってるの」

そう言うとスクリーンにデジタルのカウントダウンが表示される。残り数時間でなにが起こるのか、無言で聞いているシンジたちには想像すらつかない結末だろう。

「これがゼロになったとき、ここネルフ本部は攻撃されるでしょうね。相手は宇宙人なんかじゃないわ、人間よ」
「えっ……人間ってことは戦争ですか?」

この質問はシンジだ。なぜ人類を守ったネルフが人間相手に戦うのかわからない。いま備えを着々と進めている職員たちだって同じ想いである。使徒との勝利に称賛を受けても銃を突きつけられる理由はないのだ。

「ちょっと違うわね。早い話が邪魔になったのよ、私たちが。いまやエヴァは名実ともに最強の兵器よ。その気になれば世界だって征服できる……そう焚きつけるやつがいても不思議じゃないわね。で、暴れられたらサードインパクトが起こるかもしれないって言うんで消してしまおうってこと」
「消すって……解体とかじゃなく、ですか? それにサードインパクトって……」
「わけわかんないでしょ? でもね、あながち間違いでもないのよ、これが。じつを言うと、私もつい先日知ったんだけど、どうやらそれも予定にあったってことなの。つまり、ネルフがサードインパクトを起こす計画があったってこと」
「はい? あの、なにを言ってるか僕にはよく……いや、その……」

シンジはまさに虚を突かれたような顔で首を前に出している。酒の呑みすぎでついにイカレたか、と言われている気がして苦笑した。そう思うのも無理はないと頭を掻いていると彼の横で渋い顔をしたアスカがあいの手を入れる。

「あたしたちが悪の片棒を担いでるっていうのが誤解じゃないってことよ」
「いや、それはそう……そうなの?」
「知らないわよ。でも大勢のひとが準備してんのよ? これがドッキリなら最低の視聴率ね」
「じゃあ……僕たち騙されてたってこと?」

シンジの言葉が堪える。本当は悪事に加担していたなど、とても子供たちには耐えられないだろう。最前線で命を懸けて戦い、多くの犠牲を孕んだ上での勝利なのだ。いまも地上では凄惨な残痕がそこかしこに刻まれている。だが、ことはそう単純な話でもないから困るのだ。

「シンジ君。あなたたちは間違ってないわ。ここからは少し難しい話になるんだけども、よく考えて欲しいの」
「難しいんですか?」
「そうよ。誰が善で悪で、っていうことならまだよかったんだけどね……一概には言えないのよ」
「入り組んだ事情ってことですね……」

ミサトはあますことなく伝えるつもりだった。しかし話の順序は大切である。先入観を排除した上でシンジたちに決めてもらいたい。これはチルドレンに限らずすべての人類に言えるのだ。

「まず初めに、いま世界で起こっているさまざまな問題はなにかしら? 紛争、貧困や病気、食料危機に、治安や経済の悪化……そして、少子化ってとこね」
「なんとなくは、はい」
「ではこの問題はどうして……いいえ、なにを目的としてる?」
「目的、ですか?」
「そう……なんのために戦ったり食料を用意したりしてると思う?」
「将来のため……じゃないですか」

小気味いい質疑応答に頷く。争っている原因や問題はさまざまあれども、目指すところがなんなのかというのを基本に考えなければならない。少し学校の授業のようになったが、彼女の表情は教師のそれではなく政治家のように気難しい。

「正解よ。将来のため、未来や子供のため……でも、それが意味をなさなかったらどう?」
「意味をなさない……未来、子供……少子化?」
「そういうことね。わかるかしら、みんな。少子化……これはいまや世界的な危機なの。そして十五年前から著しく出生率が低下している」
「ニュースでは何度か耳にしましたが……それって」
「ええ、隠蔽されてるの。謎の病気とか紛争なんかを理由にしているけれど、実際はそうじゃないわ。魂がないのよ……だから産まれない」
「魂……?」

シンジの視線は背後にあるスクリーンへ注がれる。減ってゆくデジタル表示と言葉が重なって、はっとした顔になった。ミサトはたしかめるような眼差しを受けてゆっくりと頷く。

「今年に産まれる子供が最後よ。そのさき、新しい命が誕生することはないわ」
「そんなことって……病気じゃないんですよね?」
「違うわね。ここからはさらに突飛な話になるけど、私の顔を見れば冗談じゃないのがわかると思う」
「ええそれはわかりますが、魂って……いや、そう……なのか」

シンジが思い当たるのを知っている。望まずに見せられた過去の光景とリツコの独白だ。彼は顔を動かさずに床を見るがアスカはほんの少しだけふたつ隣のレイに視線を送っている。なるほど、彼から聞いているのなら話は早いと続けた。

「わかりやすく言えば、神さまがもう大丈夫って判断したのよ。これ以上人類が増える必要はないってね」
「でもそれだと……いや、なぜですか?」
「南極で見つけてしまったからよ。神話的に言えば生命の果実……私たち的に言えば初号機が獲得したS2機関ね」
「S2機関が生命の果実……それってなんなんですか?」
「不老不死の素、みたいなものかしら。永遠の命を得ることができるわけ……実際シンジ君も経験しているでしょ?」
「バッテリーがないのに動いた、あれですね……でもそれはエヴァの話じゃ……」

シンジもなんとなく察しているようだ。アスカは眉間に(しわ)を寄せて俯き、レイはとくに反応はないがどこか動揺しているようにも見える。ここからの会話はとくに慎重を期する必要があると息を吐いた。

「そう。いまのところエヴァにしか使えない。そもそもなんなのかもわかってないんだから、人間には応用なんて無理ね。でも神さまは永遠の命があるなら増えなくてもいいじゃない、って判断したの」
「だから子供が産まれない……手に入れてないのに、そう判断された。じゃあ人類はやがて……」
「滅びるわね。ましてや戦争だのなんだのがあれば、早くそのときが訪れるでしょう。そうなる前に手を打とうっていうのがネルフがやろうとしていた補完計画よ。正式には人類補完計画」
「補完計画……ネルフってことは父さん、なんですか?」

否定も肯定もしないでミサトは無言を貫いた。父が悪の親玉と考えるほど浅薄(せんぱく)ではなくてもいまはまず情報をしっかりと与えなければならない。

「いずれ滅びる運命にあるから、その前に皆で避難しようってわけ。でも行きさきはエヴァ初号機……エントリープラグではなく、コアよ」
「コアに? どうやって……あ、そうか! 魂……」
「正解ね。魂だけの状態にして、皆でひとつになろうっていう計画。身体がなくなるから心だけの存在になるの」
「心だけ一緒……みんな、ですよね?」
「そう。知らないオジサンも私も、アスカもいるわ。なにからなにまで全部知られるでしょうね。お尻の拭きかたから恥ずかしい過去、好きとか嫌いとか、あらゆるものが丸裸って意味ね」
「いやいや……そんなの嫌ですよ」

恐れおののくようにしてシンジは首を振る。たとえどんなに信頼していても、レイであっても知られたくない心はあるだろう。それは秘密というよりも自分の暗部だ。文章や会話だけでは伝えきれないし、胸の奥に隠した闇を覗かれれば幻滅される可能性がある。

ひとには言えない恥ずかしい過去、秘めごと、寝る前にする妄想。そんなものは可愛いほうだ。たとえば表面上は仲良く振る舞っている友人関係でも本音では鬱陶しい苦手だと感じているひとは大勢いる。ほかにも一生懸命に親の介護をする子供は早く死んでくれと願っているかもしれない。ありがたい説法する傍らで金の勘定をしている聖人はいるだろうし、校長の話が長いと辟易している生徒も多い。万人が嫌がるに決まっている。

「私だって嫌よ。いまでこそこんな作戦本部長なんてやってるけど、あなたたちに見せられるような過去じゃないわ。どんな名君でも信仰に厚くても、心に秘めたことはある……アスカにもレイにもね。悪いとかじゃなくて、ひととして当然なの」
「ならどうして……」
「避難するなら早いほうがいいわね。ただ、対象は全人類よ……やりたいひとがやればいいって話じゃないの。それに残っても地上は酷い有様になるわ」
「たしかにそうなりますよね……どうせ滅ぶんなら、って」
「選択の余地ないわね。でも、それだけじゃないのよ……べつのプランってやつがあるの」
「まだあるんですか?」

もう勘弁してくれと言わんばかりにシンジは渋面だ。アスカも腕を組んで天を仰いでいる。レイは下を向き両手を握り締めていた。本当にふざけた話だとミサトもつくづく思うが言わねばならない。

「そのプランはべつの組織が考えたんだけど、リセットしましょうってこと。人類は間違っているからこうなった、生命の果実なんて手にする前に戻らなければいけないって、聞こえはいいわね……でもリセットってどこまでって話。タイムマシーンなんてないわよ?」
「見当もつきませんが」
「原初に戻るのよ。生命の根源って言ってもピンとこない……いいえ、アスカはわかったみたいね。そう、LCL……あれは原初の地球と同じ成分」
「LCL……」

そう聞いてシンジはならばなんとかなるのではないかと一瞬考えたようだ。彼は実際に経験している。しかし彼の内心を見抜いたアスカがすぐさま釘を刺す。

「シンジ。あわよくば復活とか考えてんでしょうけど、アンタのときはひとりだったのよ? それだってほとんど失敗して偶然成功したって」
「そうらしいけど……難しいか」
「いい? ミックスジュースからオレンジだけをどうやって抜き取るってぇの。何億人ものジュース……で、その操作を誰がやんのよ?」
「あっ、そっか……」

規模も違いすぎるし、誰ひとりいなくなったら機械も操作できないだろう。当たり前のことをいまになって気づいたといった顔だ。どちらの結果になっても絶望しかない状況だが、話を続けた。

「溶けるだけじゃなくて魂まで還元されるから、記憶だって残らない。人類がいまの形になるまで何億年もかかるわね。もしかしたらタコみたいな姿になっちゃうかもしれないし、シンジ君が女の子になるかもね」
「それじゃあ死ぬのと変らないじゃないですか。ほかに案はないんですか?」

まさにそうなのだ。どうしてそんな自殺まがいの選択肢しか存在しないのか。自分たちはいったいなんのために生まれ、戦ってきたのか。この世界にいるすべての人間が思うことである。勝手に決めてくれるなと。

「だからいま私たちは準備してるの。わかる? これはね、人間の尊厳を懸けた戦いなのよ。滅びが待っているからと黙って一瞬で死ぬのか、それともギリギリまで精一杯生きるのか。もしかしたら万にひとつ、将来なにか解決できるかもしれないから希望を残したい。いま動いている職員はそう思って準備しているわけ」
「自分で考えて自分で決める……そういうことか」
「碇司令としては無駄に死んでしまうよりって考えのようだったけど、それも諦めたみたい」
「諦めた……父さんが?」
「なにも残らなくなる可能性より、ひとの生きた証ってやつかしら」
「エヴァに入るのが、ですか?」

マギで得た過去のデータだけではゲンドウの心の内まではわからない。しかしなぜ諦めたのかは察しがつく。そしてつぎに出るであろうシンジの質問もだ。

「シンジ君……神さまにお願いすればって思ったでしょ?」
「はい……なんか、おかしな話ですけど」
「間違ってないわ。むしろ神さまが無への回帰を望まなかったから、どちらの案も破綻する可能性が残ったのよ」
「可能性、ですか? どうして……」

ミサトはここからが正念場だと心を落ち着かせた。目線はくれぐれも平等に注がなければいけない。責任を負わせる、罪悪感を与える。それだけはなにがあっても許されないのだ。

「ねぇ、シンジ君……レイのこと、どう思う?」

唐突な話題の変化に戸惑っていたのは一瞬で、シンジは中空を見詰めながらレイに対する想いを語る。初めて逢ったときから他人のような気がしなかった琴線に始まり、ヤシマ作戦で伝えた言葉、失ってようやく気づいた自身の胸の内。決して能弁ではないがそれでもしっかりと言い切ったあと最後にこう締め括った。

「――いまではとても、愛してます」

大人ですら気恥ずかしくてなかなか言えない台詞を迷いなく口にできる彼が羨ましい。ついぞ聞けなかった恋人の声を脳裏に浮かべながらミサトは頷き返す。補完計画の話を出したとき、レイに含みのある感情を向けるのではと危惧していた自分がいかに愚昧(ぐまい)であったか。アスカにしてもそうだ。だからかつての態度を改め本当の友達として名前で呼んでいる。いまさら確認するまでもなかった。

「レイはあの白い巨人を起源にしているわ。そしてお気づきのとおり、あれが神さまよ。レイは言わば神さまの分身、いえ……さしずめ巫女かしら。もともとね、神さまには心がなかったの。いつ消えてもいいって、この世界にこだわりがなかったのよ。だからレイにも同じような衝動があった。司令は、神さまが虚無へ還りたいっていう回帰願望……本能的なものを利用して、魂をひとつにしようとしていた」
「虚無……ですか?」
「なぜレイに魂が宿ったのか、それはわからないわ。もしかしたら神さまは消える前に世界を見ようとしたのかもしれないわね。人間はどんなものなのか、世界がどんな色なのかってね。でもやっぱりなにも感じなかった……だから消えてしまおうって」
「そんなっ……綾波は!」
「そうよ、シンジ君。彼女は人間よ。いいえ、人間であることを望んだの。衝動を振り払ってここにいることを願ったの。それはほかの誰でもない、あなたがそうしたからよ? あなたがレイの心を見つけたの。ないと思われていた彼女の、神さまの心をね、気づかせたの……あの夜あなたが部屋に行った日に、そして結ばれたからよ?」
「僕が……きみを……」

シンジが隣のレイを見ると初めはぽたりとひとつ、つぎにいくつもの涙を落とした。彼がすぐさま彼女の手を取ればレイは待っていたかのようにすすり泣く。たまらず肩を抱くと、彼の袖を強く掴み返していた。

「シンジ君……レイが私たちに尊厳を与えてくれたの。他人に押しつけられた自殺ではなく、自分たちで決められる未来をね。しっかり生きて、それから死ぬ未来よ」

まさかこのような重大な秘密がレイにあるとは誰も想像がおよばなかっただろう。本人さえ知らなかったはずだ。ただ、いまでこそこれだけの熱い想いを秘めたシンジだがほんのわずかなボタンのかけ違いひとつでべつの道を辿っていたかもしれない、とミサトは思った。レイに心が残っていると気づかなければ避けていたはずである。それでいて似た雰囲気のカヲルへ拘泥(こうでい)しただろう。そのあと使徒と知ってさらなる絶望に染まる光景まで想像がついた。もしかすると彼も頭の隅に可能性が浮かんでいるのではないだろうか。そしてそんな自身を否定するようにレイを全力で愛しているのかもしれない。いまがしあわせだからこそ〝もしも〟の自分が嫌いで怖いのだ。

「それにね、アスカもそうなのよ。いまだから言えるけど、彼女かなり危険な状態でね……心が壊れかかってたわ。私がしたことは保護者失格どころじゃなくて、完全な虐待よ。でも、それでも……シンジ君、あなたたちがいてくれたから。きっとアスカも触発されたんだと思うの。こんなにも華やかになって、奇跡なんてものじゃないわ」

シンジがさっとアスカに振り向くが、彼女は俯いたまま肩を震わせ片手で彼を制する。気遣いは無用と言っているように見えるがもう片手は力なくシャツの裾を掴んでいた。それを放っておける彼ではない。すぐさま腕を伸ばして彼女も抱き寄せた。するとやはり待っていたアスカは声を殺して涙するのだ。シンジは彼女に代わるように声をあげて泣いた。

「シンジ君。べつにふたりをどうこうして欲しいって意味で言ってるわけじゃないことは理解して。でもね……あなたが、レイを見つけたから、アスカも救われたの。それは事実よ。あなたは決して強くはないけれど、始まりはすべてあなたから……それを、忘れないで……」

ミサトもまた涙を滲ませた。自身も救われている。だからこそ無駄にはしたくないし未来へ繋げたい。そのための今日なのだ。三人に気づかれないようそっと涙をぬぐうと改めて気丈夫に伝えた。

「私は勝つわよ」

両肩にレイとアスカを乗せ、顔を歪ませたシンジも無言で頷く。たとえ勝ったところで人類に残されているのは死出への旅しかない。神話で語られる地獄もかくやという光景が繰り広げられるだろう。それでも、ひとは生きていかねばならないのだ。

それから三人へ今後の作戦について概要を伝える。おもにアスカとレイが質問を交え、ひと心地ついたところでミサトは表情を翻した。からかうときに出る顔だとアスカはいち早く察したようだ。

「それにしても、レイはずいぶんな熱愛っぷりだし、アスカがねぇ……そんな女の子してるなんて、眼福だわ」

シンジの片腕には絡まったレイが手をしっかりと握っており、片や反対側ではアスカの甲に彼の手が重ねられている。彼女は少し居心地が悪そうに膝を突きあわせて肩も窄めた。向けられる視線から逃れるように顔を逸らすと唇を尖らせて呟く。

「いいじゃん……べつにぃ」

見る見る顔を赤くしてシンジをちらちらと窺った。ここで彼がきりりと凛々しい表情でもしていれば絵になったのだろうが、なんとも締まりのないヘラヘラ面だ。片腕のレイはどこ吹く風で、話は終わったとばかりに肩へ頬ずりしている。もし自分がこの部屋を出たら始まりそうなくらい熱気がむんむんだと思った。軍人としての知識もあるミサトは作戦開始までの数時間でそういった行為が営まれても不思議ではないと考えているし、強く賛成するだろう。これは理屈ではなく種族保存の本能である。ただ、軍人であるがゆえにべつの提案もしなければならない。

「ええ、3Pでもナマでもどんどんヤっちゃって構わないわよ。法律なんて知ったこっちゃないわ。でもね、もしべつの方法で発散してもいいって言うなら準備はできてるけど、どうする?」

視線を投げた相手はシンジだ。彼とて言葉をそのまま受け取ってはいないだろう。残る時間の有効な使い道はもう初めから決めていたと言わんばかりに(おとこ)の眼光を放つと、邪念のない決意を発した。

「訓練、やらせてください」

かくしてシンジたち三人は戦闘シミュレーションに取りかかるのであった。想定される敵の装備や人員、侵攻ルートから攻撃パターンまで、マギをフル活用した訓練は実践さながらの様相を呈するのである。


二十世紀最後の年はセカンドインパクトが起こった年である。南極大陸の氷床は融解し、巨大な津波が各国を襲った。沿岸部では壊滅的な被害を受け、とりわけ島国である日本は激甚な災害に見舞われる。

全世界で二十億人とも言われる死者を出した未曾有の天災であったが、混乱の機に乗じて図版を拡大させようと企てる国もあり、セカンドインパクトのわずか一週間後には東京に爆弾が投下された。五十万人の犠牲者によって東京は壊滅し、日本政府は長野県松本市への遷都(せんと)を決定する。そして、三年という短い期間を得て首都としての都市機能を充分に備えた町は〝第二新東京市〟と名づけられた。

その町の一角、首相官邸では水を打ったように静まり返っている。目と鼻のさきにある国連本部より極秘で通達された内容に、官僚たちは言葉を失い顔面も蒼白だ。よりにもよって第三新東京市でネルフがサードインパクトを起こそうとしている。にわかに信じ難い話だ。

だが、いままでの暴挙を思えばとても反証する気にはなれない。この大混乱の世の中で復興の途上にあるというのに、何度となく煮え湯を飲まされてきたのだ。エヴァや使徒といった情報を封じながら人員、資金、物資とあらゆるものが特務権限の下に徴発され、最終的な遷都(せんと)さきとして尽力した町もいまや度重なる戦闘によって一部は水没までしている。

情報によればもう使徒の侵攻は終わったと言う。ならば憂いなくことを成せる。放置すれば骨の髄まで吸い尽くされるのだ。いや、(むくろ)さえ食われかねない。ネルフは愚かにも自ら住人たちを避難させている。不倶戴天(ふぐたいてん)の敵を駆逐するのにこれほどの好機はあるまい。裁判で時間を稼がせる温情など与えるものか。あらゆる痕跡を消し、あとは風致(ふうち)地区にでもすればよい。

こうして政府はすぐさま決定を下した。サードインパクトの阻止という(にしき)御旗(みはた)を掲げ、ネルフ本部への侵攻を指示するのである。


セックス、すなわち性は生の前の小事である。人類がいまの形になる前から脈々と営まれてきた存続のための基本だ。生きる環境が厳しいほど克服するように数と可能性を向上させてきた。そしてひとはそこに愛という概念を加えてより要用にし、悦楽を神秘的なものとして昇華させる。ゆえに、性愛の否定は生きることの否定だ。愛しいあなたと繋がりたい、生きた証を残したいという欲求は人類だけが持つ最大の美徳といえよう。

いまエントリープラグ内でシミュレーションに勤しむ三人のチルドレンは、まさに種族の滅亡という渦中にあった。ミサトからの甘い提案を振り払い一丸となって砲火を交える姿は、さながら激しい性行為のようだ。模擬戦とは違い肩を並べる初号機と弐号機は、ときに素早く、ときに繊細に、あるいは我武者(がむしゃ)らな獣となって全身をくねらせた。

「シンジっ、あっちを攻めて」
「了解!」

くるりと反転した初号機が手にしたスナイパーライフルを放てば、弾丸は精液のような熱いパトスとなって飛び散る。まわし蹴りを繰り出す弐号機の軌跡は薄明かりに浮かぶ裸体のように艶かしい。互いに背中を預けて触れあうと、睾丸と卵巣に熱を帯びる。仮想敵の砲弾から抱きつくように弐号機を庇い、大地を二転三転とベッドさながらに絡まっては汗と粘液をLCLへ溶かす。

初号機が弐号機の手を掴んで立ちあがらせる。それだけで三人は胸が高鳴った。それぞれ違う場所を見ているのに、まるで意中の相手と視線を絡めているようだ。歯を食い縛り必死な顔でありつつも頬が緩みそうになる幸福。言葉を交わさなくても相手の意図は理解できるのに声が聞きたい。何度も耳にした音がいまはとても新鮮だ。

シンジもレイもアスカも息を切らし、精神を高揚させる。こんなシンクロはいままで一度として感じたことがない。生死を懸けた戦いが待っているのに、身体中が滾ってしかたがなかった。それはあまりにも苛烈な仮想敵の攻撃だからか、プラグスーツを着けずに全裸でいるからか。わずかでもエヴァの運動性能を向上させるためにおこなわれた以前の実験が、いま実を結ぼうとしている。

「碇くんっ、九時の方向から敵影八」
「了解!」

弐号機を片腕で抱きあげ、初号機はもう片手を翻す。オレンジ色をした光の壁が現れ無数の攻撃から彼らを守った。アスカはフィードバックを通じて知覚するシンジの手にますます身体を熱くする。もし彼が彼女の胸部なり股間なりをひと掬いでもすればたちまち果ててしまえるほどの充血だ。しかし、エヴァを通じて得られる感覚はとても曖昧だった。平時よりぼやけており、まるで風が撫でているようにしか感じない。

「シンジっ、もっとよ!」
「了ぉ……解ぃぃ!!」
「碇くんんっ!」

初号機がシンジの咆哮とともに立ちあがると、雄々しい彼の陰茎をレイは感じた。挿入しているわけでもないのに同じLCLに浸かっている反動か、もしくは攻め込むという彼の意思ゆえか。シンクロを共有している彼女はアスカをも超える痺れを全身に覚えた。そしてレイから滾々と湧き出る愛液には多くの成分が含まれている。彼はそれを取り込むことによってさらなるリビドーを滾らせるのだ。もちろん、逆もしかりである。

「なんか、えらいことになってるわねぇ……」

そう呟いたのはシミュレーションを見守るミサトである。プライバシー保護のためプラグ内の映像はサーモグラフィになっており裸体は映っていない。だが、表示される熱分布は子供たちの明らかな欲情を示しており、余計に生々しかった。

「逝きそうで逝かないみたいな? 寸止めとも違う感じかしら」
「まったく。あなたとんでもないこと考えるわね、ミサト」

彼女の隣で立ちながらコーヒーを飲むのは白衣の天才科学者、リツコだ。マギへのプログラミングがひと息ついたので細かい作業をマヤに任せて休憩がてら様子を窺っている。ミサトが奇策を思いつくのは先刻承知としても、この崖っぷちの状況で提案するものではない。いくら前例があるとはいえ、もっと慎重に検証を重ねてから実施すべきである。

「リツコの好例があればこそよ」

定期検診の際に実施したオートパイロットの実験で得られたデータは、ダミープラグの製作に使用されるものだった。プラグスーツの補助を受けず肉体から直接ハーモニクスを取ると言う説明に当時は不承不承なアスカだったが、いま彼女が一番高い数値を記録している。初号機と同じ動きをしているわけでもないのにユニゾン作戦のときさながらの連携だ。立案したミサト自身、ここまでの効果が出るとは驚きだった。

片やリツコはダミープラグの秘密があるだけに手放しに喜べないものの、友人の雑で単純な発想もときには必要なのかもしれないと学ばされた。数式や理論といったロジカルだけがすべてではない。エヴァを操縦するのがひとの感情であれば余計にである。

「いいから、とりあえず音声もう少し抑えなさいな。青葉君と日向君が困ってるわ」

あからさまな喘ぎ声が出ているわけではないが、経験がある者が聞けば明らかに睦みあっているような甘い吐息だ。いつ嬌声を口走ってもおかしくはないだろうからと、プライバシーの観点からもミサトは応じた。オペレータ席くらいしか聞こえないものの独身男ふたりには毒だろう。

「これもA10神経の影響ってこと?」
「基本はエヴァと同じね。でもいまの彼らはコアを経由しているだけ……求めているのは外部、異性への愛よ」
「なるほどねぇ。で、レイのほうが密着感も強いから偉いことになってる、と」
「そのレイよ。あれはいったいどういうこと? 私、あんな彼女知らないわ」

リツコはレイの画面を凝視しながら疑問を口にした。アスカはまだわかる。強い敵対心と虚栄心は彼女の鎧だ。裏を返せばそれだけ心が弱いとも言える。それがシンジという甘美な心地よさを知り、生来の強気が彼に対しサディスティックな性質として露になった。甘えと支配欲だ。だがレイは違う。虚無に等しい心にそういった感情は芽生えないはずだ。外見は人間そのものでありながら中身はロボットと変わらず与えられたコマンドを実行しているだけ。にもかかわらずゲンドウは彼女をひとさながらに扱った。刷り込みの意図があったにせよ、偏愛(へんあい)しているとリツコには映ったのだ。ゆえにレイを憎み、それでいて接するときは徹底して私情を隠した。あの瞳を恐れたことさえある。なにを見て、なにを思うのか。露見しないとわかってても相手が神に等しい存在だと理解しているからこそ、必死に逃れた。

「ああ、そっか。そうよねぇ……」

シンジたちは元気にも三戦目に突入しているがそろそろ潮時だろうミサトは判断し、これで終わりの旨をマコトに言う。エヴァがなければ物足りないなどというのを危惧しているのではなく、逆に性感が開発されすぎるのを懸念していた。極度の依存症になってもよくない。

ミサトはリツコに目配せしてオペレータ席から距離を取った。機密ではなくとも純然たる個人のプライベートだ。それくらいの配慮はして当然である。彼女は半分くらい推測も交えている、と前置きしてここ数日のできごとを語った。聞き終えたリツコはさすがに予想外で、動揺を隠し切れない。

「そんな……あのレイが? しかもふたりが受け入れるなんて」
「悪いのはあなただけじゃないわ、私たち大人の責任よ。なにも見えてなかったのね」
「なによ、これ……嘘でしょ」

ささきほどのブリーフィングルームでの録画記録をリツコに見せればさらに目を丸くして驚く。レイは顔をほころばせ、ときには赤面し、涙を流す。あまつさえ愛おしそうにシンジの腕に身を寄せているのだ。ミサトが作戦の内容を伝えながら入れる軽口やアスカのからかい、シンジの冗談にくすりと笑うなど別人としか思えない。これが三人目に移行してますます人形じみたあのレイなのか。

ひととおり見聞きするのとシンジたちがシミュレーションを終えるのは同時だ。リツコは手元にある小さなモニタでサーモグラフィを見ている。三人は互いの健闘を労いLCLが排出されるとシンジとレイは口づけをしていた。それも子供じみたしぐさや挨拶ではなく、恋仲をしっかりと窺わせる濃厚なものだ。彼女は目眩(めまい)がしたのかと思うほどに頭がくらくらして、積みあげたものが音を立てて崩れるのを感じた。もう疑う余地はない。

「いまのネルフはこの子たちを希望の象徴だと思っているわ。使徒との戦いなんて目じゃないくらいのね」
「だからなのね、誰も彼も忙しそうにしながら生き生きとしているのは」
「ええ。写真を配って、少しの小話を添えただけなのに飛びついたわよ」
「本物の希望を前にしたらテレビの偶像なんて霞むはね……いいえ、比べるのさえ愚かなことかしら」

リツコはモニタを切ると椅子に座った。伏せ目がちにつく溜息の重さは憎悪を向けた年月に比例しているのか。すっかり力が抜けたと見てミサトはデスクに腰かけるとかつて友人が言った台詞を引用する。

「とかくこの世は謎だらけ、でしょ?」
「ええ、本当にそうね。さっき私が話した推論も半分は適当よ。エヴァのしくみもそうだけれど、あんなシンクロなんてもはやオカルトの域ですもの。プラグスーツの有無だけじゃないわ。意識の共有、超高度な共感とでも言うのかしらね。とにかくATフィールドを介して感覚を鋭敏にしている。触覚ではないのよ、きっと」
「愛で世界を救うなんて、昔のアニメみたいじゃない」
「男と女はロジックじゃないってことよ、ミサト」

リツコの言葉にミサトはピンときて横にあった灰皿を彼女に差し出す。根掘り葉掘り聞き出すつもりはないが、十年来の友人を売り渡すに等しいことをした引け目がある。できれば軽口で応じて欲しかった。

「出張……ずいぶん急に戻ってきたわね」
「私だって驚いたわよ」

リツコはそう返すと白衣のポケットからスリムのタバコを取り出して火を点ける。ミサトもあやかって一本もらった。こんなときにこんな場所で吸うなんて初めてだ。もともとは気取っていただけなので銘柄なんてどうでもいい。ふたりの女性から紫煙が昇って、虚ろに消える。

「マヤが寂しがってたわよ。あの子、あなたにべったりだったじゃない」
「私にレズビアンの趣味はないわよ。それに……」
「それに?」
「わからないの。どうしてかしらね……断ってもよかったのに、受けてしまったわ」

リツコが監禁されていた一室にゲンドウが来たとき彼は言った。きみを必要としている、頼めるか、と。ただ命令すればいいものを、部屋に入ってからたっぷりと時間をかけてようやく口にした台詞がそれだ。半ば囚人の彼女相手に護衛もつけず、退室するときも不自然と思えるほど長く背を向けていた。

「後悔してる? 奴らからしたら、私たちこそ悪の枢軸よ」
「まさか。むしろ腕が鳴るわ……マギが五台も相手なんて、ね」
「ロジカルじゃなくてフィジカルかしら?」
「そうね……でも、安心して。自棄になってるわけじゃないわ」

そう言うとリツコは灰皿で半分ほど残ったタバコを消す。それは押しつけるような消しかたではなく、火種だけを転がすものだった。友人の目元を見ても感情が読めないミサトは、無言で立ちあがってマギに戻ろうとする白衣の背へ言う。

「あなたも……いいえ、なんでもないわ。あと頼むわね、リツコ」

小さく笑ったように聞こえたのは気のせいか。ミサトは残りのタバコを吸い終えるとコーヒーを口に含む。マコトが臭うと顔をしかめるのを想像しながらオペレータ席へ戻った。ちょうど子供たちが自動洗浄機で戯れているところで、楽しそうな声が聞こえる。

「いいかしら? こっちでいつでもカメラがオンにできることを忘れないでね、アスカ。それにレイもよ?」

なにかしているわけでないのは知っている。それぞれ個室でシャンプーがどうの水圧がくすぐったいだの絶妙なところに当たるだの言ってるだけだが、ミサトはなんとなくそこに加わりたくて茶化すのだ。いまは少しでも早く三人の顔が見たかった。