一人目は笑わない

Written by 双子座   


9.

マヤは誰もいない休憩室で、一人落ち着かない様子で待っていた。普段なら温かい紅茶かコー
ヒーを飲むところなのだが、今はそんな気にはなれなかった。今は――待ち人が綾波レイであ
るときは。
ため息をつくと、壁掛け時計を見て、誰もいないと分かっているのにきょろきょろと部屋の中
を見回す。
以前のことを思い出したのだ。椅子の下も確認したくなるが、さすがにそれは我慢した。
ここの休憩室は、十畳ぐらいのスペースで、長椅子と湯沸かし器、自動販売機がある程度の、
小ぢんまりした空間だった。
他にもっと大規模の休憩所があり、たいていの職員はそちらで休んでいるから、こちらは空い
ていることが多い。
とはいえ、いつ誰が入ってくるか分からない。マヤに落ち着きのない原因の一つだった。
もう一つの理由――。すでに約束の時間を二十分ほどオーバーしている。
今回の用件を考えると、なるべく早く済ませて帰りたいのだが……。
マヤが腰を浮かせ、いったん外に出ようかと思ったとき、ドアがシュッという音を立てて開い
た。
「レイちゃん」
マヤの声に安堵の色が混じる。
レイは遅れた詫びなど言う素振りも見せず、マヤのもとにつかつかと歩み寄ると、無造作に手
を伸ばした。
マヤはその小ぶりな手にひるみつつも、脇に抱えたファイルの中からホッチキスで数枚綴じて
ある束を抜き出して、レイに差し出した。
「これが、アスカちゃんの個人データ。その……悪用は、絶対にしないでね?」
我ながら白々しい物言いだとマヤは思う。悪用しないわけがないのだ。そのためにマヤに頼ん
だのだから。
「何でこんなに時間がかかったの?」
「それは……プロテクトを解除するためのプログラムを一から作らなくちゃダメで……。プリ
ントアウトしたのもコピー禁止までは解除できなかったの……」
レイの赤い目はすべてを見通すかのようにマヤには思われた。
「ほ……本当ですよ!」
「別に嘘とは言ってないけど」
レイは唇の両端をほんの少し持ち上げた。
「う……」
「ま、信用するわ」レイは肩をすくめる。「それじゃ、伊吹さん。ごきげんよう」
「あ、あの。写真は……」
「大丈夫。厳重に保管しておくから。ごきげんよう、伊吹さん」
ううう、と泣きべそをかきながらマヤが退場すると、レイは長椅子に座ってアスカの個人デー
タを読みにかかった。
すぐにレイの瞳が強い光を放ちはじめた。
――あらあら。ずいぶん面白いトラウマを持ってるのね。まるで人間みたいじゃない。
くすくすと笑い出した。
レイは、またしてもいいオモチャを手に入れたのだった。

家に帰り、電気を点けて自分の部屋を見回すと、微妙な違和感を覚えた。
最近――具体的に言うならミサトのマンションから戻ってからだが、どういうわけか、部屋が
広く感じられることがたまにあるのだ。
これはおかしいことだった。ミサトの部屋はここよりも広かったのだから、前よりも狭く感じ
るのが理屈だろう。
なのになぜ広く感じるのか。
それに――。
静かだ。
観光客も訪れない、学者の調査も入らない、死者のみがひっそりと眠る古代の遺跡のように。
あるいは海の底のように、静かな場所。
いや、静かなのは前からだ。この静謐さを以前は認識していなかっただけだ。
静かに感じるのは、うるさいところから帰ってきたからだろう。これは分かる。理屈に合って
いる。
ただ、それだけのことだ。大した意味はない。
レイは首を振った。
そう。
私は、何も思わない。
何をどうとも、思ってはいない。

まどろみに落ちる前に、今日もリツコから渡された錠剤を飲むのを忘れていたことに気がつい
た。
別に意識して、ということではないのだが、最近飲まないことが多くなっている。
明日にしよう、とレイは眠りに落ちる寸前に思う。
明日に――。


レイは思いきりよく飛び込んだ。水飛沫がほとんど飛ばない。人の身体が水の中に勢いをつけ
て入ったとは思えないようなスムーズさだった。
クロールも平泳ぎもせずに、ただひたすら潜水で水中を進む。
水の感触や、冷たさが心地いい。
それに、水の中だと自由になれる気がして気持ちよかった。もっとも、別に陸の上で不自由を
感じているわけではなかったが。
――場所は室内プール。修学旅行に行けない三人のために、せめて気分だけでもとミサトが勧
めたのだった。
壁際まで進むと、いったん浮上して大きく息を吸う。
ふと、いつもゲンドウと行っている実験のことを思い出す。実験とは言うが、レイはあれが何
であるのかは分からない。仮に、実験と言っているだけだ。
LCLで満たされた容器の中でぷかぷかと浮いているだけ。
あれは一体何のためにやっているのだろう。小さいころからの、ほとんど習慣化された行為ゆ
えに、何の疑問も持たなかった。
そういうものだと思っていたのだ。
いくつの頃だったか、一度訊いたことがあるが、ゲンドウは「身体のためだ」と言ったきりだ
った。「お前は特別なのだ」とも言った気がする。
特別であることに異存はなく、それきりだった。別に害があるわけでもない。
自分がかなり自由に行動していることは自覚しているので、その代償と無意識のうちに考えて
いるのかも知れない。
レイはふたたび潜水して、向こう側を目指す。
ひょっとするとゲンドウは自分に性的な欲望を抱いているのだろうかと疑問に思ったことがあ
った。
そうではないのはすぐに分かった。ゲンドウは違うものを見ている。それが何であるのかは分
からないが、自分――綾波レイを見ているのではないことは確かだった。
ゲンドウと言えば、何かのときのために、密かに設置したビデオカメラで容器に浮かぶ自分を
見つめる姿を隠し撮りしてある。
ロリコンの変態の汚名を着せられたのでは司令の座は保てないだろう。
保険は常にかけておくものだ。
レイはプールから上がると、タオルを手に身体を拭きながら、おかしなことだと思った。
普段はこんなことを考えたりしないのに。水の中に入ったせいだろうか。
レイの思考は二人の――シンジとアスカの声に遮られた。目も自然と二人の方に向けられる。
アスカがシンジにのしかかるようにしてシンジのPCを覗き込んでいた。
会話の内容を聞くと、宿題のことらしい。
「熱膨張? 幼稚な事やってるのね。とどのつまり、ものってのはあたためれば……」
「そりゃそうだけど……」
「あたしの場合、胸だけあたためれば、少しはオッパイが大きくなるのかな?」
「そ、そんなこと聞かれたって、分かんないよ!」
シンジは顔を赤らめている。
――?
レイは眉をしかめ、胸を手でおさえた。胸の辺りが息苦しい感じがする。先ほどまでの快適な
気分は消え去って、不愉快になっていた。
プールサイドに場所を移したアスカに、シンジはちらちらと視線を送っている。
「見て見てシンジ、バックロールエントリー!」
アスカが能天気なかけ声とともにプールに入り、派手な音と水飛沫が飛んだ。
レイは顔を背けると、レイの身体にはやや大きめのデッキチェアに身を横たえた。
天井を見上げる。何故だか分からないがむかむかする。何か――悪いものでも食べたのだろう
か? 
人の気配を感じた。
「綾波」
シンジだった。いつもの気弱そうな微笑を浮かべている。拒否されたらどうしようかと考えて
いるような、弱い笑み。
シンジはおずおずと向かいの椅子に腰をかけた。
「大丈夫? 気分悪くない?」
レイはシンジの観察眼に少し驚いた。ぼーっとしているようで、意外とよく見ている男だ。
「ええ、大丈夫。久しぶりに泳いだせいかも知れない」
「あまり無理しないほうがいいよ」
レイは黙っていた。無理をしたつもりはないし、指図されるのも嫌いだ。
二人はしばらく沈黙する。アスカのはしゃぐ声が室内に響いている。
――うるさい猿だ。
レイは心持ち苛立ちを覚える。
どこかに行けばいいのに。
シンジはアスカに少し目をやり、それからレイに戻した。
「修学旅行、残念だったね」
「別に」
あんなものに行く気は毛頭なかった。ばかばかしいことこの上ない。
「綾波は、どこかに旅行に行きたいと思わない?」
「別に」と、レイは同じ言葉で答える。
シンジはつれないレイの返答にも意に介した様子を見せず、
「行き先は沖縄だって。海がすごく綺麗らしいよ。……いや、綾波、さっき気持ちよさそうに
泳いでいたから。沖縄とか行って泳いでみたいんじゃないかって思って」
「……見てたの?」
自分が動揺していることに気がついて、レイは驚いた。さらに驚くことに、動揺は怒りには繋
がらなかった。
「い、いや、その……」シンジは赤くなった。「別に見てたってわけじゃなくて……。ただ、
綾波のああいう表情って見たことなかったから」
「……そう」
「あ、もうこんな時間だ」シンジは話題を逸らすように、「お昼にしない? お腹空いたよ」
「ええ、そうね」と、レイはうなずいた。
それから不思議そうに首をかしげ、小声で「あれ……?」と呟いていた。
いつの間にか、胸の痛みも、息苦しさも、不愉快な気分も消えていた。先ほどの快適な気分が
戻っている。
いや、むしろ前よりも気分がいいくらいだった。
たぶん――。
レイは深くは考えなかった。
たぶん、気のせいだったのだろう。


浅間山地震研究所。
使徒観測という想定外の目的を達成するために限界を超えて沈降させたため、観測機は圧壊し
た。
いきなり押しかけてきて、無理難題を言う部外者への反感から生じる冷たい空気は、むろんミ
サトには通じなかった。
「解析は?」
「ぎりぎりで間に合いましたね。パターン青です」
「間違いない。使徒だわ」
ミサトはうなずいた。観測機もこれで報われたというものだ。
研究所はネルフの管轄下に置かれたことを宣言し、電話をかけるために部屋の外に出た。


「これが使徒?」
召集されたチルドレンの目には、巨大な卵の中に眠る、奇怪な胎児のような姿が映っている。
リツコはかすかにうなずいて言った。「そうよ。まだ完成体になっていない蛹の状態みたいな
ものね」
リツコの説明をBGM代わりにして、三人はじっとスクリーンを見ている。
「今回の作戦は使徒の捕獲を最優先とします。できうる限り原形をとどめ、生きたまま回収す
ること」
「できなかったときは?」
「即時殲滅。いいわね?」
「はい」
「作戦担当者は……」
アスカはぴょんぴょんと飛び跳ねながら元気よく手を挙げた。
「はいは〜い、私が潜る!」
シンジが横目でアスカを見る。何かを諦めているような――同時に何かを期待しているような
顔。
しかし、次のリツコの台詞を聞いて意外そうな表情になった。
「アスカ。弐号機で担当して」
「はーい! こんなの楽勝じゃん!」
レイには好都合な話だった。レイが好むのは肉弾戦による殲滅だった。水の中ならともかく、
マグマの中になど潜りたくない。
アスカが潜りたいのなら好きなだけ潜ればいい。
もっとも零号機には特殊装備は規格外なので、もともとレイの可能性はなかったのだが。
「レイは……」
リツコとレイの視線が合う。
「……レイも一緒に来てもらいます。初号機と火口で待機してちょうだい。零号機にはD型装
備は取り付けられないけど、万が一アスカが捕獲できなかったときの――」
リツコの言葉を耳にして、アスカが頬をぷっと膨らませた。
「私、失敗なんかしない! バカシンジじゃあるまいし! 縁起でもないこと言わないでよね!」
「失敗するなんて思ってないわ。でも、万が一に備えるのが大人なのよ、アスカ」
「ふん」と、アスカはそっぽを向いた。
レイは相変わらずのアスカの子供っぽさに少し呆れる。
保険はつねにかけておくものだ。賭け金が多いときは、特に。
アスカはレイの視線に気がついたのか、レイの方を見て、「いっとくけど、あんたの出番なん
かないからね」と宣言した。
「……だと、いいわね」
「なによ、その言い方」
「まぁまぁ、二人とも」と、シンジが即座に仲裁に入る。先ごろさんざん経験したので、パブ
ロフの犬のように反射的に割って入ってしまうのだった。
……当初はレイは本部で待機のはずだった。それを読んだレイが、自分も出撃させるよう、リ
ツコに掛け合ったのだ。
だいたい本部で待機など意味の無い行為だ。第3新東京市の迎撃システムはいまだ復帰の途中
であるし、そもそもが大して役に立たない。
つまり、使徒をどこで迎え撃つか、場所は浅間山だろうが第3新東京市だろうが大して関係な
いということだ。
それなら戦力を分散するより、初号機と一緒にいたほうがいい。
以上の理屈をもって、レイは「ある行為」と引き換えに同行を要求した。
D型装備を見たアスカの行動など簡単に予測できる。その対応を自分がやってやろうというの
だった。
「……まぁ、分かったわ。もしアスカがそういう行動に出て、あなたが阻止できたら許可しま
す」
リツコはやや訝しげだったが、とりあえずはそう答えておいた。

「いやぁぁぁ! なによ、これぇ!」
案の定――耐熱仕様のプラグスーツに格好悪いだのダサいだの大騒ぎしたあと、D型装備を身
に着けた弐号機を見て、アスカは金切り声を上げた。
加持のさりげない誘導にもアスカの意志は変わらないようだった。
レイは笑いを堪えるのに苦労する。まったく、予想していた通りに動いてくれるのだから笑い
も漏れるというものだ。
レイは、僕が……と言い出したシンジを抑えて手を挙げた。
「私が弐号機で出るわ」
またしても予想通りにアスカは行動した。レイが挙げた手を振り払って、鋭い声で言った。
「あなたには私の弐号機に触って欲しくないの、悪いけど」
それからリツコのほうを向いて、
「ファーストが出るくらいなら私が行くわ」
リツコを思わずレイを見た。レイの赤い目はこう言っていた。
ほら、私の言った通りでしょう?


限界深度まで潜っても使徒は見つからなかったが、レイにはどうでもいいことだった。
ミサトはさらなる沈降を命令したようだ。
どうせなら底まで潜ってしまえばいいのに――とレイは思う。そこで一生暮らしていればいい。
と――。
レイのモニターにもアスカの見ている映像が映っているが、何かがいた。
どうやら使徒を発見したようだ。しばらくののち、
「目標、捕獲しました」
全員の安堵のため声が聞こえてくるようだった。
「アスカ、大丈夫?」
シンジの無線がレイの耳にも届く。
レイはふと違和感を覚えた。違和感の正体はすぐに分かった。
アスカ?
いつの間にあの猿を下の名前で呼ぶようになったのだろう?
「あったり前よ、案ずるより生むが易し、てね。やっぱ楽勝じゃん? でもこれじゃあ……」
アスカは緊張が解けたのか、いっぺんに喋りだした。
「ちっ」
レイは舌打ちした。面白くない。こんなことならわざわざ出向くことはなかった。ばかばかし
い。
天井を見上げて顔をしかめたレイだったが、突然鳴り出した警戒音に反射的にモニターに目を
やる。
使徒が羽化をはじめたのだった。
――面白くなってきたわね。
レイは目を細めて事の成り行きを見守ることにした。

……しかし、レイの期待通りには展開しなかった。
――なんだ、詰まらない。
アスカが機転をきかせて使徒を撃破した。してしまったのだ。
アスカの得意顔など見せられてはたまらない。レイがモニターを切ろうとしたとき、そのモニ
ターに、アスカが見ているのと同じ光景が映し出された。
弐号機と地上を結んでいるケーブルが、次々と切れていく光景が。
ただの偶然か、それとも最期のあがきか、弐号機に食いついていた使徒が死に際にちぎってい
ったのだ。
思わず手を叩きそうになる。
――さ・よ・な・ら。弐号機パイロット。口ほどにもなかったわね。最期にあなたがあげる悲
鳴を心ゆくまで味わってあげるわ。
レイは、唇の両端を吊り上げた。やはり来てよかった。最高の瞬間が見られるのだから。
しかし、次の瞬間――。
「!?」
レイは目を見開いていた。
滅多にないことだが、レイは心の底から驚愕していたのだった。
モニターには初号機の姿が映っていた。
アスカを助け出すために、マグマの中に飛び込んだ、初号機の姿が。
「何……やってるの……」
レイは呆然と呟いた。
「何やってるの、碇君!?」
脳裏にシンジの笑顔が浮かんだ。
……綾波が無事で、良かったよ。
――何が無事で良かったよ、だ。
――誰でもいいのか。
誰でも助けるのか。
レイは操縦桿を力いっぱい握り締めた。怒りのあまり、目の前が白くなる。
いや。違う。目の前で同僚がピンチになったいるのだから、助けるのは当然だと言える。
シンジはレイではない。レイは助けたりはしないが、レイ以外は誰だってそうするのだ。
だから。
だから、これは別に怒るようなことではない。
しかし、気分が悪いのは事実だ。怒っているのは事実だ。
どうして私は怒っているのだろう? その理由を考えるのは大事なことのような気がした。
レイは珍しく、自分の心を探る。マグマのように煮えたぎっている、自分の心の中を。
――。
そうか。
私は、別に、碇君が猿を助けたことに怒っているのではない。
猿が助かったことに気分を害しているだけだ。
それだけのことだった。それだけのことだったのだ。
考えてみると、あっけないほど簡単なことだった。急速に怒りもおさまってくる。
――?
レイは胸をおさえた。また胸が痛くなったのだ。刺すような痛みだった。
さっきは気のせいだと思ったのに。
一時的にしろ、激怒したせいだろうか?
あまりこういうことが続くようだと、医者に診てもらう必要があるかも知れない――レイはぼ
んやりとそう考えていた。

リツコは、こつ、こつとペンで机を叩きながらモニターに映るレイの表情を見ていた。
いや、ただ見ていたわけではない。
観察していたのだ。薄い笑みを浮かべながら、貴重な研究対象を観察するように、レイを見て
いた。
その細められた目がどんなことを読み取っているのかは、誰にも分からないことだった。

エヴァから降りたシンジとアスカはひとしきり話し込んでいる。
なぜか助けられた方が偉そうだ。
「これで私に貸しが出来たとは考えないことね。貸し借り損益計算書を調べたら、まだまだ私
のは大幅な黒字、あんたのは大幅な赤字なんだからね!」
「そんえき……? ……まぁ、分かってるよ。別に貸しとか、思ってないから。今度僕がピン
チになったら助けてもらうよ」
「ふん! 男のクセに女に頼ろうっての?」
「いや、別にそういうことを期待してるわけじゃないんだけどな……」
苦笑していたシンジだったが、立ち去ろうとしていたレイに気がつくと、慌てて駆け寄ってき
た。
「綾波! これからみんなで、温泉に行くんだって。綾波も……来るよね?」
「私は行かない」
「え……」
てっきり了承の返事が来るものと思っていたシンジは、意外な反応に固まってしまう。
「弐号機パイロットと一緒に行けばいいじゃない。温泉ですって? ちょうどいいわ、背中の
ノミでも取り合いっこすれば?」
レイは呆気に取られているシンジを振り向きもせず、足取り荒く格納庫から出て行った。




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