新創世記のアダムとイヴ

〜Positively〜

最終話     終わる楽園そして日常へ



「今日も良い天気だね」

二人で街を散歩しているとき、不意にシンジがそんな事を口にした

「・・・・・(コクッ)」

レイはシンジを見上げると、何も言わずただ頷いた

言葉が無くても安らぎの中に居られる二人

それでも偶にシンジは寂しさを感じてしまう

音があり、緑があり、動物達がいる

賑やかな世界では有るが物足りない

そう、二人以外のヒトが存在しない世界

それはやはり何処かおかしく、正しくないと感じるのだ

誰も還って来ない事に不安を抱くシンジ

人との触れ合いを恐れていたが

レイとの触れ合いによって人が居ないことに寂しさを感じるようになったのだ

だから、ふと声に出してしまう

感じた寂しさを紛らわすために





二人がマンションに帰ってくると、玄関の前に小さな黒い影が

そこに居たのは・・・・・

「ペンペン!?」

シンジは驚いたように声を上げる

「クェッ」

玄関前に居た黒い影=ペンペンは、シンジの声に反応し、振り向くと

「クエッ!クエッ!クエエェェェ!」

そう鳴きながらシンジの方に駆けてきた

ペンペンを抱き上げるシンジ

「そっか、お前も帰ってきてたんだね」

家族の一人(?)が帰ってきたことを嬉しいと思う

シンジの様子を窺いながらペンペンの方に視線を移すレイ

愛らしい円らな瞳と出会い、思わず手を伸ばしてペンペンを抱きしめる

「・・・・・温かい」

嬉しそうなレイを見て、シンジもホッとして胸を撫で下ろす

「さ、家に入ろ」

シンジはレイを促すと、ドアを開ける

ペンペンを抱えたままいそいそと家に入るレイ

一時でも離すのが惜しそうなその姿にシンジは苦笑せざるをえなかった





夕食を終え、団欒の時間を過ごした後

レイはペンペンを連れてお風呂場へと向かった

そんなレイを苦笑しつつ見送ると、シンジは片づけを始める

片づけが終わり、TVを見ているとお風呂場の方からレイの楽しそうな笑い声

あの頃も今も聞いた事の無いレイの楽しそうな笑い声にシンジは嬉しさを感じる

と、不意にレイの笑い声が止まった

如何したのかと振り返ると、ペンペンが慌てた様子で風呂場から出てくる

その様子に、シンジは急いで風呂場に行くと

逆上せて気を失っているレイの姿が目に入った

シンジは急いでレイに駆け寄ると

「綾波、綾波!」

軽く頬を叩きながら呼びかける

その呼びかけにレイは少し身じろぎすると

「・・・う・・・ん」

薄く目を開ける

その紅い瞳にシンジの姿が映った瞬間

「・・・・・碇・・・・・君?」

初めてシンジの名前を呼んだ

その事に驚き、笑顔になるシンジ

「・・・・・やっと・・・・・名前呼んでくれたね」

シンジの笑顔にレイは二人目の記憶を全て思い出す

そして、三人目の記憶も・・・・・

「・・・・・碇君・・・・・ここは?」

突然の記憶の氾濫に困惑し、今を把握出来なくなったレイが問う

「僕達の家だよ。サードインパクトの後でも残ってたんだ」

レイの記憶の混乱を察してか、シンジはそう答える

「・・・・・そう」

レイはそう答えると、立ち上がり

「・・・・・碇君・・・・・皆と会いたい?」

そう訊ねる

突然のレイの質問に戸惑いつつも

「・・・・・そりゃ、会いたいけど・・・・・」

と答える

「・・・・・そう・・・・・分かったわ」

レイはシンジの返答にそう言うと、目を瞑る

やがてレイの体が輝きだし

世界が光に包まれた





・・・他の人と居る事・・・を願う・・・のね?・・・

・・・綾波の・・・声が・・・聞こえる・・・

・・・それは・・・辛い・・・事・・・かも・・・しれないのよ?・・・

・・・分かってる・・・

・・・そう・・・良いの・・・ね?

・・・それが僕の・・・願い・・・だから・・・

・・・分かったわ・・・

・・・皆と・・・やり直したいんだ・・・

・・・皆・・・と・・・?

・・・そう・・・皆・・・僕が・・・知ってる・・・人達・・・

・・・碇・・・君が・・・知ってる・・・人達・・・?

・・・父さん・・・母さん・・・発令所の人達・・・

・・・司令・・・ユイさん・・・副司令達・・・

・・・リツコさん・・・加持さん・・・ミサトさん・・・

・・・赤木博士・・・加持一尉・・・葛城三佐・・・

・・・委員長・・・ケンスケ・・・トウジ・・・

・・・洞木さん・・・相田君・・・鈴原君・・・

・・・そして・・・アスカ・・・綾波・・・

・・・弐号機パイロット・・・わた・・・し・・・?

そう、皆で・・・

・・・良いの・・・?

何が?

・・・私が・・・傍に居ても

当たり前じゃないか

・・・でも・・・私と居るのが嫌で・・・他の人達と居る事を・・・選んだんじゃないの?

そんな訳無いじゃないか

・・・そう・・・良いのね

うん、僕はずっと綾波には傍に居て欲しいって思ってるから

・・・碇・・・君

これからも、ずっと一緒だよ・・・・・

・・・うん

レイの言葉を最後に、光が弾けた

日常の始まりを告げる合図のように・・・・・



【前話】

後書き


って事で、最後はこのような形にしました

このSSの元になった拙作をご存知の方は

またこの終わり方かよ!

と、思われたのでは?

そうです、元のSSと同じようにこの話の続きは皆さんの頭の中で作り上げて頂きたいと思います

この後の世界は色々な可能性に満ちていると思います

例えば逆行

例えばこのままEOEの世界



私自身の考える終わり方も当然ありますが・・・・・

何が一番良い終わり方かは分かりません

それでも、皆さんがこの作品を読んできて、こんな終わり方が・・・・・

と考えていただければ、この作品は成功だと思っています

それではまたいつか、新たな作品で

タッチでした




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