レイの心模様

第3話     食事


打ちっぱなしのコンクリートに囲まれた、簡易ベットと小さな茶箪笥、冷蔵庫だけがある寂れた部屋

そんな部屋でレイは、料理をしているシンジの後姿をじっとみつめていた

胸に込み上げてくる、何処か暖かく、何か叫び出したくなるような、そんな想いを感じながら

だが、今のレイはその事に戸惑う事は無い

何故なら、今感じているものが、シンジが教えてくれた嬉しいという感情に他ならない事を知っているから

ただ、あの時とは比較にならないほど、その想いを強く感じてはいたが・・・・・

レイは、嬉しさに身を委ねつつ、今日の昼休憩の時間の出来事を思い出す





キーン・コーン・カーン・コーン

四時間目の終了を知らせるチャイムが教室に鳴り渡る

教師は、チャイムとともに授業を終わらせると、さっさと教室を後にする

待ってましたとばかりに動き出す生徒達

購買部にパンを求めて走り出る者、仲の良い者同士で集まり席をくっつける者、外に出て行く者

それぞれがお弁当を持って、楽しそうにしている

「ふー」

シンジは周りの机をくっつけて、トウジとケンスケが帰ってくるのを待つ

その机の上には、シンジお手製の弁当が入った弁当箱が置かれている

何気なく、レイが居るであろう方向に視線を送ると・・・・・

席を立つレイの姿が目に入った

何かを持っているようには見えない

また、この時間から購買部に行ったとして、果たしてどれだけのパンが残っているか

「綾波!」

ひょっとしたら無視されるかもという思いもあったが思い切って声を掛ける

レイは立ち止まるとシンジの方に振り向く

その顔には何の表情も浮かんでいない

自分の言葉に反応してくれた事に安堵を覚えるシンジであったが

レイの何時も通りの態度につい、臆病風に吹かれてしまう

それでも、何とか声を絞り出す

「お、お弁当。ど、如何するの?」



レイはシンジの問いに答えながら、ビタミン剤などの栄養補助食をシンジに見せる

余りの事に一瞬言葉をなくすシンジ

恐る恐る、夕ご飯もそうなのか問う

返ってきたのは予想通りの答え

心が苦しくなるシンジ

だから、思わず言ってしまった

「じゃ、じゃあ、今日の夕食は僕が作ってあげるよ!」







何時もの風景を見ながら、レイはビタミン剤などの栄養補助食を取り出すと、水を求めて席を立った

その時、シンジに呼び止められる

「何?」

呼び止められた事に嬉しさを感じつつも、何とか何時も通りの表情を保って問うレイ

しどろもどろになりつつも、シンジはレイにお弁当のことについて訊ねてきた

今までのレイなら「貴方には関係無いわ」と言って立ち去ってしまっていたのだろうが、今のレイはそんな態度を取ろうと思わない

だから答えた、栄養補助食を見せながら

「赤木博士が、これで生きていくのに十分な栄養が摂取出来るって渡してくれたわ」



驚くシンジに何故か胸苦しくなるレイ

この前感じたのとは違う、胸を締めつけられるような痛み

レイは、一刻も早くこの場から立ち去りたいと思ってしまった

そこに、更にシンジから

「じゃ、じゃあ、夕ご飯もそうなの?」

と聞かれた

「ええそうよ」

本当のことなので、短く答える

だが、その答えに更に暗くなったシンジの顔に居たたまれなくなり、逃げ出そうとする

体が一歩動いた時、レイはシンジから信じられないような言葉を聞いた





そこまで思い出して、レイは笑みを浮かべる

それは、振り返ったシンジが驚き、顔を赤くして俯いてしまうほどの綺麗な微笑み

レイにとって、今日の放課後は新鮮で、刺激的であった

シンジと共に学校帰りにスーパーに寄って買い物をして

シンジが作ってくれた料理をシンジと共に食べる

初めての食事は、シンジと一緒という事もあってかとても美味しく、有意義に感じられた

レイは寝るまで嬉しさに包まれて、微笑を絶やさなかった

シンジが帰ってしまったことに切なさを感じはしたが

シンジと過ごした時間が、レイにそれ以上の喜びを与えていた

今日の晩餐が、木の成長を促す水や栄養のように、レイの心を成長させる時間となったのは確かな事だった



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後書き


リニューアル第3話です

元々がかなり短かかった分、今回も短いですね

さて、次はアスカ来日前という事だったと思いますが・・・・・

どうなります事やら

それでは

タッチでした




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