白い尾を曳いて飛ぶ二機のウィングキャリアーには、エヴァンゲリオンの初号機と弐号機がそれぞれ搭載されている
「折角、日本でのデビュー戦だって言うのに、何で一人でやらせてくれないのかしら」
エントリープラグの中でぶつぶつと文句を言うアスカ
視界の端に開いた通信モニター越しに、シンジが苦笑しているのが映る
「判ってるわよ!今投入出来る最大の戦力で敵を殲滅するって言うんでしょ?」
バツの悪くなったアスカは、誤魔化すようにシンジに食って掛かる
「その通りよ、アスカ」
アスカに答えたのはミサト
そんなミサトの答えに、アスカは頬を膨らませて、そっぽを向いた
だが、それは唯のポーズ
その証拠に、目標地点に到着するまでの間、他愛の無い話をシンジと交わしている
そんな二人を、レイは発令所のモニターでじっと見ていた
モニターには、波打ち際に姿を現した使徒が映っている
それを視界の端に捉えながらも、レイは未だにもう一つのモニターに心を奪われている
拳を握りこむレイ
二人だけで話をしている所を見るたびに、心が掻き毟られる
二人だけで笑顔を交わす所を見るたびに、悲しくなる
戦いに出られない事で、彼女がシンジの傍に居る事で、自分とシンジの絆が消えてしまいそうで
今までは戦いに出られない事は仕方の無い事と思ってきた
シンジを助け、シンジに助けられた結果なのだからと
あの時の光景は、今でも色鮮やかに思い浮かべられる
それは、シンジとの絆を感じるための一種の儀式
レイ一人だけの、とても神聖な・・・・・
だが、今は状況が変わってしまった
今まではパイロットが二人だけであった為、申し訳なさを感じつつも、しょうがない事と思ってきた
しかし、自分からシンジを奪い取りかねない少女が出現したのだ
しかも、同じエヴァのパイロットとして、シンジと共に戦える力を持って・・・・・
画面には見事なコンビネーションで使徒を両断した初号機と弐号機の姿が・・・・・
サブモニターには、喜び合う二人の笑顔
レイはそんな光景を唇を噛み締めてみつめる
何故自分は此処に居るのか
そう自問しながら
一人、思考の淵に沈みこんでいるレイの耳に届く、シンジ達の悲鳴
慌ててモニターに目を向けると、そこには分裂した使徒によってやられたであろう、海中に頭から突き立てられている初号機と、山に埋もれている弐号機の姿が・・・・・
そんな光景をを見て、レイはシンジを助けられなかった事に悔しさを感じていた
「無様ね・・・・・」
ビデオによって先程の戦闘が映された後の、リツコのコメント
レイは、そのコメントに怒りを覚える
自分達はただ、安全な場所に居て傍観していたに過ぎない
なのに、その言葉は何なのだ!
と
それは、自分の中に湧き上がる思いをも飲み込んで、口から溢れ出しそうになる
それを必死に抑えるレイ
彼女はきつく冷たい視線を、リツコに向けた
だが、その心の内と表情がかけ離れているためなのか
レイの様子など関係なく進むブリーフィング
モニターには、N2爆弾によって形を変えた沿岸線を表す地図が映っている
それを見て
「また地図を書き直さんとならんな」
そう呟く冬月
その言葉は二人に精神的なダメージを与えたのだろう
二人は俯いてしまう
そんな二人に更に追い討ちをかける
「パイロット両名!君達の仕事は何か判るか?」
冬月のその問いに、上げた顔を再び俯かせる二人
悔しさをその顔に滲ませて・・・・・
だが、すぐに顔を上げ直すと
「「使徒を倒す事!」」
ぴったり同じ答えを返す二人
二人の息の合った答えに、胸が痛くなるレイ
戦いに出られない自分に対して苛立ちが募る
シンジが遠くに行ってしまうという強迫観念が彼女に圧し掛かり
早く戦線復帰しないとと思う
だが、まだ零号機は修理及び改装が済んでいない
その事が、更にレイの焦燥と苛立ちに拍車を掛ける
しかし、何も出来ないレイには、一日でも早く戦線復帰する為の手立てを見つける事が出来なかった
後書き
大変遅れまして申し訳ありませんでした(−−;
いや、4月は忙しかったもので・・・・・
5月はtambさんが大丈夫なら結構なペースで更新出来るかと・・・・・
確約は致しませんが(^^;
それでは
タッチでした