レイの心模様

第10話     変化の兆し


「アスカー、お土産買ってくるからねー!」

「あぁー、二人とも残念だったなー!」

「オマエラの分まで楽しんで来たるワー、ナハハハハハハハ!」

友人たちのそんな言葉を思い出しつつ、クラスメートの乗る飛行機を見送るシンジ達

飛行機が見えなくなったところで彼等はネルフに向かう

何でも、修学旅行に行けなくなったお詫びに、今日一日ネルフの職員プールを三人の貸切にしてくれるらしい

もちろん一番にこの話に飛びついたのはアスカ

アスカ曰く

「沖縄行けないんだから、これくらい当たり前よ!」

という事らしい

水の中に居る事に不思議な安堵感を覚えるレイにとってもこの申し出には異論がなかった

だが、レイにとって不可解なのはどうしてここまでアスカが喜ぶのかという事だ

しかしそれは、プールの更衣室に着くと氷解した

アスカはあの時に買った水着を持ってきていたのだ

「折角買ったンだから♪」

と言うアスカの言葉に?を浮かべるレイ

「新しく買ったんだから、着ないと勿体無いし、アンタの場合シンジを意識してンでしょ?新しい水着でしっかり自分を印象付けなきゃ!」

レイに意地悪く言いながら、流し目を送るアスカ

意味が飲み込めたのか、真っ赤になって俯くレイ

だが、心の中では新しい水着を持って来なかった事を少し後悔していた

そんなレイを横目に見ながら着替えるアスカ

着替え終わったところで、未だに着替えず考え込んでいるレイに

「ジャ〜ン!」

と、見せたのはレイの新しい水着

レイは思考がショートしたのか、きょとんとした表情でアスカを見ている

「アンタの事だから持って来ないだろうと思ってね」

そう言って笑顔を見せるアスカ

「・・・・・そう・・・・・有難う」

素直にアスカに感謝するレイ

真っ直ぐに向けられる感謝の気持ちが照れ臭かったのか

「こ、こ、こんなの女の子の嗜みよ、た・し・な・み!」

真っ赤になってドモリながらそう言って、そっぽを向くアスカ

その様子が可笑しくて、レイはクスクスと笑い出す

「な、何よ?何が可笑しいって言うのヨ!!」

レイに笑われて余計に恥ずかしくなったのか、アスカは真っ赤な顔のままレイに詰め寄る

その言葉と行動が更に可笑しく思えて、笑いが止まらなくなるレイ

「!!も、もう知らない!」

アスカはそう言うと、一人で先に着替えだす

それを見たレイは慌てて自分も着替えだす

だが、可笑しさはまだ収まっていない

肩が震えて、上手く着替える事が出来ない

そんなレイの様子に、ますます顔を紅くしたアスカは、そのまま先に更衣室を出てしまう

何とか着替え終えると、急いでアスカを追いかけるレイ

だが、その顔はまだにやけていた





プールに着くと、シンジが一足先にプールに来ていて、プールサイドのテーブルでノートパソコンを開いていた

何か真剣な表情をしているように見えたため、シンジの邪魔をしないようにまずはプールに飛び込む

水の中は気持ち良く、レイは水と存分に戯れる

― レイが水と戯れているころ

「何してンの?」

アスカはシンジに近づき、問いかけた

「理科の勉強」

集中しているせいか、ぶっきらぼうに答えるシンジ

「ッタク〜お利口さんなんだからー」

そんなシンジにアスカは呆れた様に言う

「そんな事言ったって、やらなきゃいけないんだから」

アスカの言い様に、反論するように言いながら顔を上げたシンジは、瞬時に顔を紅くした

シンジの様子に満足したアスカは胸を張るような格好をすると

「沖縄でスクーバ出来ないんだから、此処で潜るの」

と宣言する

「・・・・・そう」

アスカの言葉に、今度はシンジが少し呆れてしまう

「どれどれ〜、何やってンの?」

そう言ってシンジの前のPCを前屈みになりながら覗き込むアスカ

アスカの年齢のわりに豊かなバストが目前に迫り、更に顔を紅くするシンジ

「ちょっと見せて・・・・・この程度の数式が出来ないの?」

自分が大学出たせいであろうか、そういうアスカ

少しキーボードを打つと

「ハイ出来た、簡単ジャン」

そう言って姿勢を正す

「どうしてこんな難しい数式が出来て、学校のテストが駄目なの?」

余りの事に、つい聞いてしまうシンジ

「問題に何が書いてあるのか分からなかったのよ」

別段、気にした風も無く答えるアスカ

「それって、日本語の設問が読めなかったって事?」

だからか、さっきの答えで容易に想像つきそうな事まで聞いてしまう

「そ!まだ漢字全部覚えてないのよネー。向こうの大学じゃ習ってなかったし・・・・・」

思わぬ単語が出てきて

「大学!?」

と聞き返すシンジ

「あ、去年卒業したの。で、こっちのコレは何て書いてあンの?」

シンジはアスカが大学を卒業している事にショックを覚え気後れしながらも

「熱膨張に関する問題だよ」

と答える

「熱膨張?幼稚な事ヤッテンのねー。とどのつまり、物って言うのは温めれば膨らんで大きくなるし、冷やせば縮んで小さくなるってことじゃない」

簡潔に、要点だけを抑えた答えを言うアスカ

「そりゃそうだけど・・・・・」

シンジはもごもごと答える

「アタシの場合胸だけ温めれば、少しはオッパイ大きくなるのかな〜?」

胸を掌で包んで、明らかなからかい口調でシンジに問うアスカ

「そ、そんなの知らないよ!!」

顔を真っ赤にして、慌てるシンジ

「何よアンタ、やっぱりレイのようなスレンダーな体が良いわけ?」

更にからかい口調が強くなるアスカ

「べ、べ、別にそ、そ、そんな事言ってないじゃないか!?」

アスカとシンジがそんな事を言い合いながらじゃれあっていると

プールから上がったレイが二人の様子に気付き、二人のほうに向かう

それに気付いたアスカはシンジから離れるとプールに向かった

「頑張ンなさいよ」

レイの横を通るときにそう囁いて・・・・・

何の事だか分からずにきょとんとするレイ

アスカはそんなレイの様子を後ろ目に見て苦笑する

飛び込み台に後ろ向きに腰掛けると

「見て見て、シンジ、レイ!バックロールエントリー」

と言って後転しながらプールに飛び込む

水の中を気持ち良さそうに泳ぐアスカ

その様子に、レイの心は揺れる

シンジの元にも行きたいが、プールでも泳ぎたい

そんな想いに

ふとシンジを見ると、再びパソコンでの作業に没頭している様子

レイはシンジの傍に行くことを諦め、再びプールへと向かい泳ぎだす

二人の水を掻き、蹴る音と楽しそうな笑い声に釣られたのか、プールサイドに寄っていくシンジ

それを待ってましたとばかりに、シンジの足首を捕まえて強引にプールに引き擦り込むアスカ

当然泳げないシンジは溺れだす

そんなシンジの様子に気がついたレイが急いで救助に向かう

だが、溺れている者の力は強い

小学校の低学年でも下手な救助の仕方をしようとすれば大人が一緒に溺れてしまうほどなのだ

当然レイ一人ではどうにもならず、アスカも加わってシンジを何とかプールサイドに引っ張り上げる

だが、大量に水を飲んだのか、まるっきり反応を示さないシンジ

呼吸も止まっている事に気がついたレイは急いで人工呼吸を始める

気道を確保すると、口の中に溜まっている水を掻き出す

次に、胸が上下するか見える体制になると、15秒息を吹き込む

それでも反応が無いので、心臓の上辺りを体重を乗せつつ肋骨が折れない程度の強い力で15回押して離すを繰り返す

何度それを繰り返したのだろうか

漸くシンジは肺から水を吐き出して自発呼吸を始めた

その様子に安堵したレイは鋭い、糾弾するような視線をアスカに向ける

アスカが何事か口を開こうとしたときに聞こえてきたシンジのうめき声

バッ!と言う音が聞こえてきそうなほどの速さで振り返ったレイの視線の先で

シンジがゆっくりと瞼を持ち上げる

安堵と嬉しさに、思わず涙するシンジ

「御免、心配かけちゃったね」

シンジの言葉に首を振って顔を上げ、笑顔を見せるレイ

レイの笑顔にシンジが見蕩れていると

「どうかしら?お姫様の口付けで目覚めた気分は?」

アスカの嫉妬ともからかいとも取れる一言がシンジに降り注いだ

レイはアスカの突然の言葉に真っ赤になって再びアスカを睨み付け、シンジの方をちらと見る

シンジは状況が飲み込めたのか真っ赤になってちらちらとこちらを見ては視線を逸らすというのを繰り返している

シンジが自分を真っ直ぐに見てくれない事に戸惑うレイ

その時、非常召集が告げられた



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後書き


結構変わったのではないでしょうか?

まあ、特に此処はアスカとシンジの会話で成り立ってたシーンでしたしね

さて、次でマグマダイバーも終わり

それでは

タッチでした




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