浅間山山頂の火口を偵察するVTOL
それから送られてきた画像には不審な影が・・・・・
ブリーフィングルームで会議をする冬月達
影の正体を探るべく、ミサトは浅間山地震観測所を訪れていた
シンジ達の足元に、浅間山地震観測所で撮影された使徒の写真が映されている
それはまるで、繭のような物に覆われた胎児のように見え
「これが使徒?」
思わずシンジはリツコに質問してしまう
「そうよ、まだ完成体になっていない、蛹のような物ね」
シンジの質問に答えるリツコ
「今回の作戦は使徒の捕獲を最優先とします。出来うる限り原型を留め、生きたまま回収すること」
そのまま作戦概要を説明する
「出来なかったら?」
それが一番の心配事
だから、アスカはその場合の対処法を尋ねる
「即時殲滅、良いわね?」
それに対してすばやく答えるリツコ
作戦の概要が分かった所で
「「「はい」」」
三人揃って返事をする
「作戦担当者は・・・・」
リツコの言葉に
「ハイ、ハ〜イ!私が潜る!!」
アスカが元気に手を上げて、立候補する
そんなアスカを見ながら
(でも、また僕なんだろうな)
と、思うシンジであったが
「アスカ」
思いもしなかった言葉がリツコの口から漏れる
「え?」
思わずリツコのほうに振り返るシンジであったが、リツコはそんなシンジを無視して
「弐号機で担当して」
そう発表する
特殊装甲が規格外のレイはもしもの為に本部の防衛を命じられ
シンジはアスカのバックアップを命じられる
二人と共に行動出来ないことに寂しさを感じるレイ
だが、レイには本部でしなければならない事もあった為
今回は素直に残る事にした
プラグスーツに着替えたアスカ
しかし、何処も変わったように見えない
と、リツコから右手首のスイッチを押すように言われ、指示に従う
風船の様に、みるみる膨らんでいくアスカのプラグスーツ
「うわぁ〜、嫌〜!何よコレ〜!?」
アスカは余りの事に叫ぶが
リツコはそんな叫び等無視して
「弐号機の仕度も出来てるわ」
と、冷静に言い放つ
―そんな会話(?)がアスカとリツコの間で交わされている頃
「本部の防衛・・・・・一人で大丈夫?綾波」
シンジが心配そうにレイに問いかける
そんなシンジの気遣いに心を暖かくしながら
「二体の使徒に拠る同時攻撃の可能性は極めて低いと思うわ。問題ないわ」
そう言ってシンジに微笑む
レイの笑顔に顔を赤くして
「そ、そう?う、うん、分かった」
シンジはそう答える
レイは使徒の二体同時侵攻が無い事を知っている
だが、それをシンジに伝える必要性が無い
いや、伝える事で自分が人でない事を知られるのが怖いと思っているのだ
だから黙っている
シンジとの絆を護る為に
と、格納庫にアスカの
「嫌〜〜!!何よ〜コレ〜〜!!?」
という叫び声が木霊する
振り向くと、達磨な格好をしたアスカの姿
だが、やはりそんなアスカの叫びを無視して説明を始めるリツコ
「嫌よ、アタシ!こんなのシンジにやらせりゃ良いじゃない!!」
自分の格好と弐号機の格好に、我侭を言い出すアスカ
シンジは諦めて自分が立候補しようとするが、それより先に
「私が弐号機で出ます」
レイが手を挙げて、そう言う
レイの提案に
「それではレイ、急いでシンクロ実験をしましょう」
そう言って格納庫を去ろうとするリツコ
「ちょ、ちょっと待ってよ!分かったわよ!アタシが出るわよ」
余りの展開に、自分が出ると言い出すアスカ
「御免ね」
アスカは弐号機に、不細工な格好をさせていることを謝った
レイに手を振って出撃していくシンジと、ダルマなアスカ
レイは二人を笑顔で見送る
寂しそうな顔をすれば、二人が心配をするからと思い
二人の乗る機体が見えなくなるまで見送ると、レイはネルフへと向かう
自分のしなければいけないことをする為に
ネルフに着くと、ターミナルドグマに降りるレイ
その奥の、ネルフの高官でもほんの一握りの人間しか知らない部屋へと入っていくレイ
そこにあるのは、真ん中に子宮を模ったかのような形をした人が一人入れそうな大きさの水槽と
それを取り巻くように設置されている水槽
取り巻くように設置されている水槽の中には沢山のレイと同じ姿をした少女達が漂っている
そんな常軌を逸した部屋で着ているものを全て脱ぎ去ると、レイは中央の水槽に入る
それはレイの体を保つための定期チェックと
今のレイが死んでしまったときに新たなレイが不都合無く生きていく為に記憶のバックアップを取る為
部屋の隅ではリツコが端末を操作してデータ取りをしている
レイは大人しく水槽の中で目を瞑り、体から力を抜いてリツコの指示を待つ
何気に目を開けると、ガラス越しにゲンドウが近づいてくるのが見えた
ゲンドウに微笑むレイ
ゲンドウもレイに微笑み返す
だが、レイはゲンドウの微笑みに寒さを感じた
まるで自分を突き抜けて、他の者に笑顔を向けているように感じて
自分に誰かを重ねているような感覚
シンジやアスカと暮らし、自分自身に向けられる笑顔というものを知ったレイは
ゲンドウの微笑みに彼らの笑顔とは異質なものを感じた
絆が感じられないのだと気付いたレイは、初めてゲンドウに不信感を抱く
今までまったく動じなかったゲンドウへの信頼が揺れ動き
その気持ちがレイの心に動揺を誘う
それは、ゲンドウの計画を崩壊させる前兆なのかもしれない
夕方、レイはペンペンと共に、一つの温泉宿の前に立っていた
無事に作戦が終了し、修学旅行代わりに温泉宿で一泊する事になったのだ
その為、呼び出されたレイ
レイは玄関で優しいシンジの笑顔に迎えられる
ターミナルドグマで感じた寒さを引き摺っていたレイの心は、シンジの笑顔に暖められる
レイは何も言わず、シンジの胸に飛び込んだ
シンジは最初驚いたが、レイの肩が細かく震えている事に気付くと、優しく抱きしめる
体中から暖かさを感じ、安心感に包まれていくレイ
と、そこに
「あっついわねー、あんた達」
ミサトのからかいの声が飛んできた
ギギギ・・・・・
そんな音が聞こえてきそうな感じで振り向いたシンジの視線の先には、チャシャ猫のような笑顔を浮かべたミサトと、頭を掻いているアスカの姿
慌ててシンジは、レイを抱きしめていた腕を解く
シンジの態度に不満そうな表情をするレイ
だが、アスカに腕を引っ張られると、そのまま更衣室に姿を消していく
それを呆然と見送るシンジとミサト
二人は顔を見合わせると、苦笑してそれぞれの更衣室に向かう
アスカ達と入る温泉は賑々しく、そして暖かかった
P.S.
アスカに頼まれて投げたボディシャンプーがアスカの体の何処かに当たったらしい
壁越しに聞こえてくるアスカ達の嬌声に
「膨張してしまった・・・・・」
と、シンジが恥ずかしそうに下半身を抑えていたのは秘密なのである(笑
後書き
最後に一寸ギャグを入れてみました(笑
幾つか手を加えてみましたが、如何だったでしょうか?
それでは
タッチでした