レイの心模様

第13話     宴


ザァーーーーー

昼から突然振り出した強い雨

誰も予想しなかったのか、傘を差している人の姿は非常に少ない

蒼銀の髪と朱金の髪を雨で纏わりつかせながら家を目指して走るこの二人の少女達も予想しなかったクチなのだろう

二人は家に帰り着くと、いきなりジャンケンを始めた

「ふふふ、悪いわね、レイ」

アスカはニヤリと笑うと、自分の部屋に入り、バッグを持って出て行った

そう、家には一つのシャワーしかないのだからシンジの家のシャワーをどっちが借りるかでジャンケンをしていたのだ

勝ったのはアスカ

アスカは非常に嬉しそうに家を出て行った

それを悔しそうに見送るレイ

たが

「くしゅん」

くしゃみをしたレイは肩を抱きしめながら部屋に入り、着替えを持って浴室に向かった





シャワーを浴び終わったレイはシンジの家を訪れる

レイが隣の家に入った時、玄関が開く音がして、シンジとトウジ、ケンスケが入ってきた

「・・・・・お帰りなさい」

いきなりの状況に多少面食らいながらも、そう声を掛けるレイに

「ただいま」

笑顔で答えるシンジ

シンジの笑顔に笑顔で答えるレイを、トウジとケンスケは何処か呆然とした感じでみつめていた

だが、トウジがふと我に返ったのか

「済まんなぁシンジ、雨宿りさせてもろぉて」

と、シンジに礼を言う

ケンスケは

「ミサトさんは?」

と問う

「まだ寝てるのかなぁ?最近徹夜の仕事が多いんだ」

ケンスケの質問に答えるシンジ

「あぁ、大変な仕事やからなぁ」

トウジがシンジの言葉に相槌を打つ

「ミサトさんを起こさないように静かにしていようぜ、静かに」

ケンスケがそう提案し、トウジと共にシンジとレイに向かって立てた人差し指を唇に当ててみせる

レイは何となく感じるミサトの気配に、まだミサトは寝ているのだろうかと疑問に思っていた

すると、スッとミサトの部屋の襖が開き、ミサトが出て来た

「おー、おー、おー、おおー」

突然のミサトの出現にどもるトウジと

「お、お邪魔してます」

何とか挨拶をするケンスケ

そんな二人に気がついたミサトは

「あら、二人ともいらっしゃい」

と笑顔で二人に挨拶した後、シンジとレイに近付きながら

「お帰りなさい、今夜はハーモニクスのテストがあるから遅れないようにね」

と声を掛ける

それに声を揃えて

「「はい」」

と答えるシンジとレイ

ミサトは浴室の方に顔を向けると

「アスカも!分かってるわね?」

そう声を掛ける

「ハ〜イ」

不承不承と言った感じのアスカの返事が返ってきたとき

「はぁ〜ん?」

ミサトが横に向くことで見えた襟章に違和感を感じたのか、ケンスケは身を乗り出すようにしながら眼鏡をもっと良く見えるように支えて見る

すると

「わぁ!」

と驚き

「この度はご昇進、おめでとう御座います」

と言って頭を下げる

それにつられるように頭を下げるトウジ

「お、おめでとう御座いますぅ」

の一言を付け加えて

二人の言葉に

「有難う」

ちょっと困ったといった感じで返すミサト

それに対して

「いえ、どういたしまして」

と答えるケンスケ

ミサトはシンジとレイの方に振り返ると

「じゃ、行って来るわね」

そう声を掛ける

そのミサトに手を振り

「いってらっしゃ〜い」

と送り出すトウジとケンスケ

ミサトに何かあったのだろうかとレイが思っていると、シンジがケンスケに問いかけていた

「ミサトさんの襟章だよ!線が二本になってる。一尉から三佐に昇進したんだ」

シンジの問いに返したケンスケの答えに納得するレイ

その後もケンスケが何か言っていたようだが、興味のないレイは無視をした





ハーモニクステストが終わって、発令所に集まる

シンジがリツコに褒められている

ハーモニクスが八も上がったらしいのだ

その事にただ、凄いとだけ感じるレイ

「さっすがシンジね!でも、アタシだって負けないわよ」

アスカはシンジにそう声を掛けている

アスカの言葉に

「あ、有難う」

何処か照れたようにでも、嬉しそうにそれでいて困ったように礼を述べるシンジ

二人の様子にまた心が痛むレイ

だからなのだろうか

「おめでとう」

とシンジに声を掛ける

シンジは一瞬、少し驚いたような、何処か困ったような表情をしたが笑顔になると

「有難う」

と答えた

シンジの言葉に、笑顔に胸が暖かくなり、笑顔になるレイ

穏やかな雰囲気が発令所を包むためか、誰もリツコの目が冷たさを増した事に気がつかなかった





ミサトと家で行われる昇進祝い

思い思いの位置に腰掛ける人々の中、レイはちゃっかりとシンジの横を確保していた

ケンスケの売り込みの言葉をかわきりに始まる宴会

ヒカリが居る事を不思議に思って問うトウジに、食って掛かるアスカ

カメラでアスカ達を撮りまくるケンスケ

彼らの行動を見ながら、シンジは一人、チビチビとジュースを飲んでいる

そんなシンジに声を掛けるミサト

「まだ苦手?」



そんなミサトの問いに言葉を濁して答えるシンジ

レイはそんなシンジの様子を、不思議そうに見ていた

賑々しさを増す宴会

そこに、加持とリツコが連れ添って現れた

直ぐそこで一緒になってねと言う加持の言葉に

「怪しいわね」

と、同時に突っ込むミサトとアスカ

それに

「あら、やきもち?」

と問うリツコ

「んなわけ無いでしょ」

と答えてそっぽ向くミサトに加持が大仰に敬礼して昇進の祝辞を述べる

直ぐに何時ものくだけた感じに戻った加持にゲンドウは如何したのかと問うシンジ

答えは、ゲンドウは今冬月と共に日本から離れているというものだった

加持の答えにふと、寂しそうな表情を浮かべるシンジ

レイはそんなシンジの様子を見てシンジにもゲンドウとの絆があるのだと思った





宴会の翌日、次の使徒が現れた

ブリーフィングルームに集められるシンジ達

「え〜!?使徒を手で・・・・・受け止める〜!?」

アスカの叫びがブリーフィングルーム一杯に響き渡る

「そう、落下予測地点にエヴァを配置、A・Tフィールド最大で貴方達が直接、使徒を受け止めるのよ」

そんなミサトの言葉に

「使徒が大きくコースを外れたら?」

シンジがそう問う

「その時はアウト」

冷静に答えるミサト

「機体が衝撃に耐えられなかったら?」

アスカも問う

「その時もアウト」

そんな会話を聞きながらレイは思う

自分は無に帰る事を望んでいる

シンジ達との絆も大切ではあるが、やはり無に帰りたい

自分が死んでも代わりは居るのだからと・・・・・

だが、もし無に帰ってしまうと、シンジから貰う心地よいものまでも失ってしまう

そこまで考え付くと、レイは恐怖に駆られた

そう、シンジまでもが居なくなってしまうのだ

それは悲しい事

そこまで思いが至った時だった

「だから、嫌なら辞退出来るわ」

ミサトの言葉に何を言われたのか判らなかった

だが命令なのだ、レイとしては辞退する気など元から無い

「一応、規則だと、遺書を書く事になってるけど、どうする?」

続けられたミサトの言葉に

アスカが

「別にいいわ、そんな気無いもの」

と答えている

レイも代わりが居るという思いからだろうか

「私もいい・・・・・必要ないもの」

と答える

そう答えながらもレイは密かに決意していた

自分に何があってもシンジは護る・・・・・と





一度姿を消していた使徒が遂に姿を現した、いきなり第三新東京市直上に

発動される作戦

シンジが、アスカが、レイが、エヴァで駆ける

配置されていた場所が尤も使徒から遠い事に焦りを感じるレイ

シンジが最大にしたA・Tフィールドを展開して使徒を一人で受け止めている

自分に何があってもシンジを護ると誓ったのに、このままではシンジが押し潰されてしまう

そう感じて

必死に駆けるレイ

少し遠いがフィールドも展開する

それでもジリジリと圧されていくシンジを見て堪らず

「弐号機!フィールド全開」

と叫んでしまう

「やってるわよ!」

そんなアスカの言葉が返ってきたとき、二機は同時にシンジの元に辿り着いた

三人がかりで使徒を持ち上げると

シンジの

「今だ、綾波!」

と言う言葉に弾ける様に反応して、A・Tフィールドを切り裂き、コアを露出させる

そこにアスカが飛び込んできて、コアにナイフを突き立てた

それと同時に巻き起こる爆発

画像が回復したと同時に三機の無事も確認される

ミサトからの報告にシンジの無事を確信すると、レイは安堵した

シンジを護れた、その事に





作戦終了後、ラーメン屋に四人で来た

ミサトの財布の中身と、レイの好みを考えての選択

アスカの心遣いに感謝しながら、ニンニクラーメンチャーシュー抜きを注文するレイ

そんなレイに苦笑しながら

「駄目だよ、綾波。お肉も食べないと」

とシンジが注意するが

「いい、肉、嫌いだもの」

そう答えるレイ

「如何してそんなにお肉、嫌いなの?」

不思議に思ったのであろうシンジの問いに

「肉は血の味がするもの」

と答える

「大丈夫だよ、血の味なんかしないから。食べてみなよ」

そう言って、シンジがレイのラーメンの丼にチャーシューを入れる

困惑した表情でシンジの顔と丼の中のチャーシューを交互に見るレイ

シンジの瞳に負けて、恐る恐るチャーシューを口に運ぶレイ

一口食べてはみるが・・・・・

やはり嫌だったのか、チャーシューをシンジの丼に返す

戻ってきた食べかけのチャーシューを見て、顔を真っ赤にして固まってしまうシンジ

そんなシンジをレイは不思議そうに見ていた



【前話】   【次話】

後書き


やっと書けました(T_T)

公私共に忙しかったもので・・・・・

ただ、かなりボリュームアップした気もしますが・・・・・

如何なものでしょうか?

それでは

タッチでした




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