レイの心模様

第20話     畏怖と信頼


シンジの帰還

それはレイとアスカに大きな喜びをもたらした

二度と感じることが出来ないであろうと思っていた優しさと温かさ

それを再び感じることが出来るのだから

しかも、今シンジから感じるのはそれだけではない

ボキャブラリーの少ない、まして感情と無縁であったレイにそれを言い表す事は出来ない



アスカに言わせると、優しさ以外に懐の広さと心強さを感じるようになった

ということらしい

今ひとつ意味の飲み込めないレイ

だが、シンジの傍に居る事で感じる包み込まれるような安心感と

瞳から溢れるなにものにも屈しない意思を秘めた光を見ることで、感覚的にその意味を見出していた

シンジから感じる暖かさにレイもアスカも嬉しさを感じる

次の使徒戦でシンジに危険が及ぶのであれば・・・・・

と、以前の決意をもう一度しっかりと心に刻み込むレイと

シンジからの包まれるような優しさ、暖かさに身を委ねてしまいたいと思うアスカ

二人の心に去来する思いはそれぞれ違ってはいたが・・・・・





衛星軌道上に新たな使徒が現れた

地球の自転に合わせているかのように同じ位置に留まりながら

そこはエヴァ及び、エヴァの装備では殲滅する事が不可能な位置

歯噛みするネルフスタッフ

リツコも色々とMAGIを使ってシミュレーションしているようだが、芳しい結果は出てこないようだ

しかも、こちらの出方を伺うかのように何もしてこないことに不気味さを感じる

「リツコ・・・・・ポジトロンライフル使える?」

ミサトがリツコに問う

「・・・使えるけど、射程距離外よ」

ミサトの質問に難しい顔で答えるリツコ

「でも、ポジトロンライフル以外に有効そうな武器って無いのよね?」

そんなリツコに確認するミサト

「・・・ミサト・・・貴方まさか・・・」

リツコの呆れたような顔の前に人差し指を立て、左右に振ると

「何事も試してみないと分からないでしょ?で、第五使徒戦時以上の強度に至急してもらったとして、どれだけのパワーに耐えられる?」

そういうミサト

「・・・・・簡単に言わないでくれる?」

コメカミに指を当てて頭を振るリツコ

「・・・・・やっぱり無理?」

残念そうにそう言うミサトに

「無理ね。もし、仮に出来たとして、電力はどうするの?今度は日本中からだけじゃ足りないし、まして周知してない以上地上は混乱するでしょうね」

と返すリツコ

「う・・・」

その言葉に詰まるミサト

「しゃーない、だめもとでやってみますか、リツコ、ポジトロンライフルの用意をして」

リツコにそう要請した

「本気なの?」

ミサトの要請に確認を取るリツコ

ミサトはただ頷く事で返した

「はぁ〜」

リツコは溜息を吐くと

「分かったわ」

そう返した





待機しているレイに出撃の命令が下る



「待ってミサト!アタシにやらせて!」

アスカがミサトにそう通信を入れる

「アスカ、貴方よりレイの方が射撃の成績が良いのよ」

何か理由があるのだろうとは思いつつも、レイを選んだ理由を説明するミサト

「分かってるわよ!それでも今回はアタシに任せて欲しいの」

ミサトの説明にそう答えるアスカ

「どうして?」

そんなアスカに問いかけるミサト

「・・・・・」

が、アスカは俯き押し黙って答えない

(はは〜ん、シンちゃんに良いところ見せたいのね?)

アスカの様子にそう考えたミサトは

「OK!様子見に攻撃したい所だけど以前の落ちてくる使徒のせいで攻撃衛星全部パアになっちゃったから・・・・・十分気をつけてね」

そうアスカに言う

「了解!」

ミサトの言葉を聞いた瞬間、元気に答えて出撃していくアスカ

レイもバックアップとして出撃する

その頃シンジはエントリープラグの中に居て目を瞑っていた

ゲンドウの命令で初号機は凍結となってしまっているからだ

その事に不安を感じるネルフスタッフ

最強のカードを封印されてしまっているのだ、それもしょうがない

そんな事をミサトが考えていると、弐号機が地上に姿を現した

その弐号機の足元に射出されてくるネルフ謹製のポジトロンライフル

レイも弐号機から少し離れた所に射出され、戦自のポジトロンライフルを構える

準備が整った所でアスカの頭の上にOHSが降りてくる

余りに遠いからなのかなかなか照準が合わない

焦れるアスカ

照準が合ったと思った瞬間・・・・・

使徒が一際明るく輝いたかのようにアスカには見えた

そして・・・・・

何者かが自分の心の中に入り込んできたのを感じるアスカ

次から次へと嫌な思い出が湧き出してくる

母の自殺、父の浮気と継母との冷たい会話、誰も彼も自分を相手にしてくれない

自分は要らない子なのかと心から叫ぶアスカ

その叫びは発令所にも響き、ミサトが三人のオペレーターが、ネルフスタッフが唇を噛み締める

シートの上に蹲るアスカ

アスカの中には新たな影が

レイに嫉妬しているアスカの姿

自分を一人の少女として見てくれるシンジに寄せる想い

だが、シンジには蒼銀の髪を持つ少女が・・・・・

己のどす黒い欲望に押し潰されそうになる

その時、アスカはシンジに助けを求めた

心の中で

ありったけの想いも込めて・・・・・





何も起こっていない筈なのにもがく二号機を見てレイは危険を感じた

急ぎ照準を合わせ、使徒に向かってポジトロンライフルを撃つが、その光線は使徒のA・Tフィールドによってあっさりと拡散される

焦るレイ

その間にもアスカは苦しみ続ける

アスカを助ける為の方法を模索するレイ

そんなレイにゲンドウから直接命令が下る

ロンギヌスの槍を使うようにと・・・・・

「了解!」

そう答え、一旦地下に戻ろうとしたレイは感じた・・・・・

力強い何かの波動を

発令所が騒ぎ出した事でレイは理解した

この波動は初号機の・・・いや、シンジのモノであると

波動の力強さはどんどん増していき、やがて・・・・

ウォオォォオオオオォォオン!!

獣のような咆哮を上げ、地表を割って姿を現す初号機

その背には六対十二枚の禍々しい翼

そのまま零号機も弐号機も一瞥せず、更に上空へと飛翔する

それと共に、弐号機はもがくのを止めていた

そう、アスカの心に侵入していたモノが居なくなったのだ

そのあっけなさに呆然とするアスカ

もう少しで心が壊れる所であったアスカは安堵すると共に辺りを見回す

すると、上空をみつめる零号機の姿が目に入った

その視線を辿り、息を呑む

禍々しい翼を背負った初号機の姿を見て・・・・・

恐らく、あの精神に対しての攻撃は今、初号機に向けられている筈

だが、まったくそのような様子を見せず使徒に近付いていく初号機の姿に

そして容易に辿り着き、簡単に使徒のA・Tフィールドを裂き、使徒を殲滅するその姿に

恐怖を感じるアスカとレイ

発令所も静まり返っている

だが、そんな恐怖とは別に二人は初号機に魅せられていた

禍々しくはあれど神々しい翼を背負うその姿に

それは二人がシンジを信頼しているからこそ

敵ではなく、自分達を護ってくれる自分達が想いを寄せている一人の少年として

ゆっくりと舞い降りてくる初号機

その初号機に駆け寄ったのが、その何よりの証であろう・・・・・





収容される三機のエヴァ

ブリーフィングルームでシンジに対してあの翼の事で詰め寄るミサト

その後ろに控えながらも興味深そうな光を目に宿すリツコ

そんな二人に対してうろたえ、怯えるシンジを見てレイは確信する

シンジはシンジであると

そう思うとレイは安堵した

それと共に、シンジを庇うように前に進み出て

「葛城三佐、覚えていないものはしょうがないと思います。今は疲れているので休ませて欲しいのですが」

そう言い放つ

同じようにシンジの前に進み出るアスカ

二人の少女の視線に何も言えなくなるミサト

リツコも溜息を吐くと

「そうね、覚えてないのならしょうがないわね・・・・・ご苦労様。上がって良いわよ」

そう言う

ミサトは何か言いたげな視線をリツコに送るが

「ま、良いわ。それじゃお疲れ様」

最後には折れて三人にそう言う

「お疲れ様でした」

そう言ってブリーフィングルームを後にする三人

シンジの両腕を二人の少女がそれぞれしっかりと抱え込んで・・・・・



【前話】   【次話】

後書き


やっと書けました心模様リニューアル20話(T_T)

いや、tambさんに呼び出されるほど遅くなるとは自分でも思っていませんでした(笑

さて、BBSにも書きましたがリニューアルは後2話で終了予定です

後の五話分は・・・・・

皆さんの要望次第って事で(爆

いや、ぶっちゃけ、22話までは完全に自分の記憶の中にあったストーリーを書いてただけで、23話から資料としてビデオを見るようになったその差を埋めるべく始めたものなので

出来れば今月中の終了を目指したいのですが・・・・・無理だと思われ(T_T)

もう少しお付き合いいただくことになりますが、宜しくお願いいたします

それでは

タッチでした




ぜひあなたの感想をタッチさんまでお送りください >[touch_an007@ksj.biglobe.ne.jp]


【「レイの心模様 RENEWAL」目次】   【投稿作品の目次】   【HOME】