シンジはレイを送り届けると、急いで家に帰った
余りのシンジの勢いに、驚いた表情をするミサトとアスカ
そんな彼女達の反応など無視して、シンジはミサトにレイとも同居出来る様に頼む
そんなシンジの言葉に、ミサトはチシャ猫の様に唇を歪め、アスカは不快なように顔を顰めた
シンジはミサトのからかいの言葉が出る前に、先程聞いたレイの心境を話す
それと共に、今レイが置かれている環境の事も
そのシンジの言葉に一様に顔を顰めるアスカとミサト
アスカは、レイが置かれている環境に
ミサトは、それと共に自分が幾ら上申しても受け入れられないであろう事を分かっているが為に
首を縦に振ろうとしない保護者に、シンジは更に言い募る
今度はそれをアスカが援護する
自分の家族となった少年少女の言葉に遂にミサトは折れる
喜ぶシンジとアスカ
それと対照的にミサトの心はブルーになっていた
重い足取りで司令室に向かうミサト
これからレイとの同居を上申しに行くのだが、賛成されるなどとは微塵も思っていない
そして、それは現実だった
ゲンドウに直訴したが、あっさりと却下されたのだ
ゲンドウにしてみれば、レイの心の成長など何一つ有益な事などないのだ
本来なら、中学校に通わせる必要もなかったが、義務教育と云う事で行かせていたに過ぎない
それが、シンジとの出会いと触れ合いによって、感情が出来始めてしまっている
それは計画を破綻させることになるであろうことをゲンドウはよく承知している
一度は中学校を退学させようかと思った事もあったが、レイの中学校に行きたいという願いにそれは取りやめた
レイの心がゲンドウから離れる事が、計画の失敗の第一要因になるからだ
三人目にしたところで、それは余り変わらない
今の無口、無表情は二人目になってからの事だとゲンドウは知っている
一人目が赤木ナオコに殺された事で、人との触れ合いを恐れ、無口無表情になったのだ
バックアップされている記憶にも心は何がしらの影響を与えるらしいとはリツコの話しである
つまり、三人目にしたところで、現在の状況だとゲンドウから心が離れてしまうことは明白なのだ
だが、ここでゲンドウはミサトから思いもよらないことを告げられた
それは、レイがシンジとの同居を願っていると云うことだ
これで拒否してしまえば、レイの心はゲンドウから離れてしまうだろう
だからと云って、許可すればレイの心が成長してしまう
どちらにしても計画は失敗するのだ
そんな時、コウゾウがゲンドウに救いの手を差し伸べた
「葛城一尉のマンションにはもう空き部屋はないと思うのだが」
それを理由にもう一度拒否を言い渡そうとするゲンドウ
「両隣は空いています。同居は無理としても、どちらかに引っ越させる事は可能と思われます」
ミサトはゲンドウの拒否の前に新たな提案をした
「レイにもそれで良いとの意思の確認をしております」
更に畳み掛けるミサト
ゲンドウは思案した
そこで浮かんだのが弐号機パイロットであった
彼女は人に見てもらう事、認められる事を一番気にしている
そんな彼女と人に関心を示さないレイを同居させれば、お互いを傷つけ合い、レイの心はまた自分以外には閉ざされるのではと・・・
それはゲンドウが現状を把握していない事による間違いであった
レイは、シンジとの触れ合いによりその冷たさが影を潜めつつあるのだ
だが、ゲンドウは知らなかった
予想も出来なかった
まさか、レイの人との絆を求める心がアスカの見てもらう事、認められる事を欲する心を満たし、仲良くなる事を
だから、ゲンドウはアスカとの同居を条件にレイの引越しを承諾した
後書き
どうして、ゲンドウがレイの引越しを邪魔しなかったのかという問いにお答えする形で書きました
私なりの考え方ですので、納得できない方もいらっしゃると思います
ただ、映画のラストから考えると、レイの心がゲンドウから離れると計画は失敗しますから、あながち間違えとは思っていません
皆さんにある程度納得していただける事を切に祈って・・・
タッチでした