レイの心模様

第22話     受け継がれる思い


射し込む優しい日の光

それをレースのカーテンで遮る白で統一された寂しい空間

その空間から聞こえるのは精密機械から発せられる音のみ

それ以外は静寂が包み込む

そんな病院の一室

集中治療室と呼ばれるそこには人の気配がある

精密機械からは多くの管が伸び

それの行きつく先

そこにはベッドに横たわる一人の少女の姿が

身体の各所に管の先を貼り付けられ

または刺しこまれているその少女の名は・・・・・

「綾波レイ」





レイは病院のベッドの上で目を覚ました

頭と片目を覆うように巻かれた包帯

腕にも包帯は巻かれている

巻かれた包帯に苦労しながらも

ゆっくりと起きあがるレイ

辺りを見回すその顔は無表情を保っている

何の感情も浮かばない紅い瞳

希薄な存在感の中で虚無感だけが辺りに漂う

何者をも寄せ付けない雰囲気を醸し出すレイ

そんなレイの脳裏に何かが浮かび上がる

それは、忘れてはいけない何か

自分という存在に必要な何か

それを必死に思い出そうとするレイ

その何かはゆっくりと形を形成していく

それは、表情という形

そう、シンジの笑顔と言う形に

レイの心に衝撃が走る

その途端、レイの心に浮かび上がってくる想い

「碇君と一緒に居たい」

「碇君と一つになりたい」

その想いにレイは涙した

こんなにも強い想いが自分の中にあった事に驚きながらも・・・・・

記憶を呼び覚ますために目を瞑るレイ

自分の中にある記憶を必死に辿る

どれくらいの時間が流れたのだろうか

ゆっくりとレイは目を開く

その紅い瞳は涙に濡れ、揺れ動く

思い出すのは使徒に侵食された事

シンジを傷つけないために自爆モードをスタートさせた事

初号機の手が近くまで迫ってきて

そして、光に包まれた事

少女は思い出す

光に包まれた時の事を





零号機と使徒が一緒に爆発して、白い光に包まれた時

レイは別の心を感じた

それは優しく、暖かい波動を持つ、シンジとは違う誰かの想い

その想いで身体を包まれたと感じた時

意識の中に心が入って来た

怯えを含みながらも問うレイ

(・・・・・あなた、誰?)

(私はユイ、碇ユイ。あなたの元であり、ゲンドウの妻、シンジの母たる存在)

問いに答えるユイ

二人の心が触れ合い始める

(・・・・・ユイ博士・・・・・?)

(ええ・・・・・)

(・・・・・ユイ博士がどうして・・・・・?)

(あなたに頼みたい事があるから・・・・・)

(・・・・・私に・・・・・?)

(私はもう、シンジの、あの人の元へ帰れない)

(・・・・・それは私も同じ)

(いえ、あなたはまだ帰れるわ)

(・・・・・何故?)

(私があなたを護るから・・・・・。シンジが助けたいと願ったあなたを・・・・・)

(・・・・・私を・・・・・碇君が?・・・・・)

(そう、だからあなたはまだ戻れるわ)

(・・・・・どうやって?・・・・・もう、零号機は使徒と一緒に爆発したのよ?)

(私を信じて。あなたもシンジを悲しませたくないでしょ?)

(・・・・・碇君を悲しませる・・・・・。それは嫌)

(だから、あなたを何としてでも助けてあげる。その代わり、あなたはシンジの、あの人の傍に居てあげて?母である、妻である私の思い・・・・・受け継いで欲しい・・・・・)

(・・・・・母である、妻であるあなたの思い?)

(そう、シンジへの、あの人への愛を・・・・・)

(・・・・・碇君への、司令への愛・・・・・。・・・・・そう、判ったわ・・・・・)

(有難う・・・・・)

その言葉を最後に聞き、気を失うレイ

心に何かが満ちるのを感じながら





そこまで思い出すと

少女は呟いた

「・・・・・まだ・・・・・生きてる」

レイはベッドから起きあがると、病室を出る

窓の外を眺めていると、声が聞こえてきた

「綾波!」



そちらに振り向けばシンジが居た

目に一杯の涙を浮かべて

シンジに抱き締められるレイ

シンジの身体は小刻みに震えている

レイは胸が痛んだ

シンジに辛い思いをさせてしまった事に気がついて

だから、シンジに謝る

「ごめんなさい」



シンジが驚いた顔を見せるが、すぐに笑顔に変わる

それを見たレイは嬉しさを感じていた





レイはシンジと分かれてネルフへと向かう

ユイの言葉を、心をゲンドウに伝える為に

ゲンドウの、ゼーレの計画を中止させるために

司令室でゲンドウと面会するレイ

ゲンドウの横には冬月も居る

そんな二人にレイは伝える

自分に受け継がれたユイの言葉を

そして心を

俯く冬月

涙を流すゲンドウ

ただ一言

「済まなかった」

そう言って、司令室を去るゲンドウ

そんなゲンドウをレイは優しく見送った





家に帰りついたレイは、誰かにいきなり抱き締められた

一瞬抵抗をしようとするが

自分を抱き締める腕の温もりと匂いに安心するレイ

誰であるかは確認しなくても判る

その安心感の中、レイは聞いた

シンジの言葉を

そんなシンジに感謝を込めて

レイはあの時見せた笑顔をもう一度シンジに贈った


後書き


第22話 受け継がれる思い お送りしました

レイ、生きてます(爆

しかも、補完計画の破綻を匂わす展開が・・・・・(笑

次の二作は外伝を予定しています

同じシーンのアスカサイドとシンジサイドです

それでは

タッチでした




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