レイの心模様

外伝     求める想い・・・・・揺れる心


真っ白な閃光が発令所を包む

何も映らないモニター

状況を把握しようと飛び交う怒声

そんな中、マコトの声が聞こえてくる

「駄目です!カメラもレーダーも全然反応しません!」

爆発が近く、しかも強烈だったからなのだろうか?

余りの事にアタシは呆然と立ち尽くす

折角心許せる仲間が出来たというのに・・・・・

全てが終われば楽しい生活を送れるかも知れないと思っていたのに・・・・・

なのに、二人とも失ってしまうなんて・・・・・

そんな思いが頭の中をぐるぐると駆け巡る

アタシはその場にへたり込むと、蹲って泣き始める

何も出来なかった自分が悔しくて

心に空いた大きな穴に吹く

寒い風に心を振るわせながら

失ってしまった愛しい少年を

自分を必要としてくれる少女の事を思って





そんな状態のアタシの耳に信じられない言葉が届く

「初・・・・・初号機・・・・・確認・・・・・」

アタシはその言葉に顔を上げるとメインモニターに目を向ける

さっきまでは真っ白な光だけを映していたモニター

しかしそこには、炎の中、こちらに向かって歩いてくる影が映っていた

それは、おぼろげながらゆっくりと、しかし確実に一つの形になっていく

そう、初号機という形に

そして、初号機の手に捧げ持たれる棒のような物

それは間違い無く、エントリープラグである事が判る

込み上げてくる歓喜の心

さっきとは違う涙が溢れ始める

二人が生きている事を確信して

そこに、リツコの言葉が聞こえてくる

「あの閃光は・・・・・。まさか!A・Tフィールドだったというの!?結界になりうる程の・・・・・」

それはアタシの確信に確たる根拠を与える言葉だった





アタシは病院に向かって駆ける

大事な二人を迎えるために

病室に着くと、そこにはシンジとレイが並んで寝ていた

身体のあちこちに包帯を巻かれているレイ

でも、命に別状は無いらしい

シンジはただ眠っているだけらしい

極度の精神的疲労が原因と聞いた

暫く二人の寝顔を眺めていると、シンジがゆっくりと瞼を開いた

アタシはシンジに声を掛ける

そんなアタシにシンジは笑顔になると

「おはよう」

そう言った

それが何故か堪らなく嬉しく感じて、またアタシの涙腺が決壊する

涙するアタシをシンジは抱き締めてくれた

優しく髪を梳いてくれるシンジ

シンジの腕の中が暖かくて、安心できて、それが恥ずかしくて

シンジの腕の中から逃れると、思わず悪態を吐いてしまった

それを嬉しそうに受け止めてくれるシンジ

そんなシンジに今まで以上の胸の高鳴りを感じる

顔に血が集まってくるのが判る

それをどう隠そうかと思った時、病室にミサトが駆け込んできた

シンジを抱き締めて泣きじゃくるミサト

姉としての行動なのだろうか?

だけど、胸に湧き上がる嫉妬心にアタシはシンジとミサトを引き離す

そんなアタシの行動に、一瞬驚き、次第にチャシャ猫のような笑顔を浮かべるミサト

でも、何も言わずにシンジに退院を告げるミサト

それが不気味で、思わずシンジに擦り寄る

アタシの行動に焦るシンジと、さらに笑顔を深めるミサト

しまった!と思った時には既に遅かった

休憩室で一息吐いた後、シンジはレイを見舞うと言って立ち去った

それが悪かった

シンジが戻って来るまでと、家に帰り着くまでの車中、散々ミサトにからかわれてしまった

それでもシンジの傍にいられる事に安心感を感じて、その場から離れる事が出来なかった





ミサトはまだ仕事があるらしく、アタシ達を送るとネルフに戻っていった

ミサトに散々からかわれたせいだろうか?

シンジを求める心に歯止めが効かなくなったアタシは

ママの事を

パパの事を

アタシの過去を

そして、本当のアタシをシンジに打ち明ける

シンジならアタシを受け止めてくれると信じて

シンジはアタシの話しを真剣に聞いてくれる

涙を流しながら

最後の方は自分でも何を言っているか判らない状態になっていた

そんなアタシを、優しく、でも力強く抱き締めてくれるシンジ

シンジの暖かさに再び包まれたアタシは次第に自分を取り戻す

シンジが向けてくる笑顔が嬉しくて、恥ずかしくて

それでもシンジの暖かさが気持ち良くて、今度は逃げずにじっとしていた

シンジのアタシの髪を優しく撫で梳く手の動きを感じながら





どれくらい時間が経ったのだろう?

Prrrrrrrrrrr・・・・・・・・

二人の耳に届く電話の着信音

シンジはゆっくりとアタシを離すと電話に出る

その声に緊張感が混ざる

どうやら司令からの電話らしい

シンジ共々アタシもネルフに呼び出される

シンジと共にネルフに着くと、ゲート前に司令が立っていた

何処かに案内されるらしい

これまでの司令の雰囲気と、何処か違う事に戸惑いながらも大人しく付き従う

最初に立ち寄ったのはリツコの研究室

アタシ達は待っているように言われた為、外で待機している

どれだけ時間が経ったのだろうか?

司令はリツコを伴って研究室から出てきた

そのリツコは瞼を腫らし、目が赤くなっていた

泣いていたのだろう

何があったのかは判らない

ただ、リツコを包む空気が以前の冷たさを感じさせない事から、何か良い事があった事だけは判った

そのまま地下深くに案内されるアタシとシンジ

昔、レイが育ったという薄ら寒い部屋を抜けると、何処か広いホールへと出た

真中には、L.C.Lに満たされているのであろう水槽がある

司令はその水槽に近づくとアタシ達の方に振り返り

「これからレイの秘密を教える。これを見ればレイを避けるようになるかも知れん。だが、出来る事ならお前達にはレイの心を、レイ自身を救ってやって欲しい」

そう言って、アタシ達に深く頭を下げた

驚きに目を見張るアタシとシンジ

そして、ホール内に明りが灯される

廻りには水槽

その中には・・・・・

アタシは絶叫する

そんなアタシの絶叫に反応してこちらに顔を向ける、レイ、レイ、レイ・・・・・・・・・・・・

沢山のレイが水槽の中に漂っていた・・・・・

余りの秘密にアタシの頭は司令の言葉を拒否する

それでも

シンジの様子を伺うと、青褪めながらもしっかりと司令の言葉を聞いている

そう、アタシの過去を受け入れた様に、レイの秘密をしっかりと受け止めると言う意思の篭った眼差しをたたえながら

アタシは衝撃を受けた、シンジの態度に

それと共に、自分の不甲斐無さに歯噛みする思いが湧き上がる

そう、レイはレイなのだ

例え、シンジの母であるユイ博士の遺伝子と使徒のコアを使って作られた存在であったとしても、その心はヒトなのだ

ならば、アタシもシンジと同じようにレイを受け入れよう、そう決心した





ネルフから戻ると、ドアのスリットにカードを滑らせ、今まさに家に入ろうとしているレイの姿があった

アタシの隣から駆けだし、レイを抱き締めるシンジ

レイは一瞬抵抗しようとする素振りを見せるが、すぐに大人しくシンジに寄り掛かった

シンジがレイに何か言ったようだ

嬉し涙を流しながら笑顔を見せるレイに

アタシはそう直感した

アタシはシンジの心が欲しいと思う

でも、今日知ったレイの秘密を思うと、レイからシンジを奪う事に躊躇いを感じる

アタシは二つの気持ちに心が揺れ動くのを感じた


後書き


アスカサイドの外伝 求める心・・・・・揺れる想い お届けしました

まだシンジのセリフは内緒です(笑

全体的に切な系ですね

アスカがレイの秘密を知るSSは少ないと思いますが、このSSの中のアスカなら受け止められる

そう思って、この展開にしてみました

次はシンジサイドの外伝です

そして、遂にシンジのセリフが(爆

それでは

タッチでした




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