最後の戦いに向けて、ジオフロントに射出される初号機と弐号機
弐号機のすぐ近くに同じく射出されてくるのは、ポジトロンスナイパーライフル
「良い、アスカ。ゼーレのエヴァは全てS2機関内蔵と考えて良いと思うわ。つまり、正確にコアを打ち抜かないと再生して来ると考えて良いと言う事でもあるわ。」
弐号機がライフルを手にしたところで、ミサトから弐号機に通信が入る
「了〜解!まっかしといて。一発でコアを打ち抜いて見せてあげるから」
ミサトからの通信に自信満々に応えるアスカ
「そう?お願いね、アスカ」
そんなアスカの応えに信頼で以って返すミサト
カヲルはそれらの遣り取りを聞きながら、これからの戦いに思いを馳せる
アスカが言うほどには簡単ではないだろうと確信しつつ
遠くの空で反射光が煌く
それが合図であるかのようにアスカの頭にOHSが降りてくる
スコープ越しでもまだ小さくにしか見えない距離
それでもアスカは緊張感を覚え、L.C.Lの中だと言うのに手に汗が滲んでいる感じを味わっていた
そんなアスカに、突然カヲルが抱き付く
「きゃあ〜〜〜!!!!」
悲鳴をあげてカヲルに裏拳を御見舞いするアスカ
「どうしたの!?アスカ!」
アスカの悲鳴にミサトから通信が入る
シンジ達のウィンドウも開いている
アスカは真っ赤になって
「この馬鹿がいきなり抱き付いてきたのよ!本当に男ってスケベばっかりなんだから・・・・・」
カヲルを指差しながら吼える
そこに
「・・・・・碇君はスケベじゃない・・・・・」
何処か論点のズレたレイの言葉が聞こえてくる
毒気を抜かれるアスカ
「ああ、はいはい」
なげやりな言葉でレイに返すと、カヲルを睨み
「今度やったら殺す!」
そう凄む
アスカの言葉に、殴られた頬に手を当てつつ
「胆に命じておくよ」
そう言って、いつものアルカイックスマイルを見せるカヲル
アスカがそれ以上何も言わないのは、緊張感が取れている事に気づいているから
そして、その為のカヲルの行動であると理解しているから
それはミサト達も分かっていた
だからこそ、注意せずに流したのだ
しかし、そこに更なる爆弾が落とされる
「僕としても、抱き付くならシンジ君の方が良いからね」
その言葉に一瞬にして般若の形相になって振り返り、カヲルの首を締めようとするアスカ
だが、アスカは寒気を感じて横に逃げる
先程まで弐号機が立っていた、コアがあったであろう場所にロンギヌスの槍の切っ先が
「な、何考えてンのよ!レイ」
当然、アスカは怒ってレイに食って掛かる
「・・・・・碇君は私が護る。そう・・・・・あなたも敵なのね・・・・・。フィフス・・・・・」
レイの余りの言葉に全員の頭の中が一瞬真っ白になる
「シ、シンジ!そこのバカレイ、アンタ何とかしなさいよ!」
慌てたアスカは矛先をシンジに変える
今、レイに何を言っても無駄と感じたのだろうか?
「な、何とかしろって言われても・・・・・」
思わぬ内輪揉めに戸惑うシンジだが、皆の縋るような視線に
「綾波、落ちついて・・・・・。カヲル君は敵じゃないよ。僕は大丈夫だから」
後ろに乗り出す様な格好でレイを抱き締めて宥めるシンジ
そのシンジの暖かさに、レイは大人しくなる
シンジの暖かさに包まれると、如何しても幸せな気分になって力が抜けてしまう
それで良いのだと受け入れている自分に少し驚くレイ
レイは、この温もりは誰にも渡さないと思いながら、頭をシンジの胸に預け、しばしの幸福感に浸っている事にした
子供達がジャレあっている間にも仕事をこなしていた大人達
そろそろ、作戦を開始するのに良い頃合となった為、ミサトが子供達に声を掛ける
「アンタ達、ジャレあうのも良いけどお客さんいらしたわよん。お出迎えの準備宜しく」
ミサトの言葉に慌てて迎撃態勢に入る子供達
再びアスカの上に降りてきたOHSから見る敵は先程よりかなりはっきりと分かるようになっていた
アスカは舌なめずりすると、一番最初に飛んでくるウィングキャリアーに固定されたエヴァのコアにポジトロンライフルの照準が合うのを待つ
磁場や重力、移動速度など様々な要因を計算に入れての照準が合った瞬間
アスカはライフルの引鉄を引いた
青白く光る尾を曳きつつ、コア目掛けて伸びる陽電子の軌跡
それは吸い込まれるようにA・Tフィールドを突き抜け、最初のエヴァのコアを貫く
大きく紅い炎の華を咲かせるエヴァ
それでも、煙という葉の陰から次々と現れる量産型エヴァを乗せたウィングキャリアー
アスカはすぐさま次弾を装填すると、次の獲物に照準を合わせる
シンジ達はそんなアスカを援護する為バズーカ砲を撃つ
簡単にA・Tフィールドに阻まれるバズーカの弾丸
だがそれが目晦ましとなり、次に量産型エヴァが煙から現れた瞬間、次の獲物が充電を終えた陽電子によりA・Tフィールドを張る前に貫かれる
ゆっくり旋回しながら舞い降りてくるエヴァ
シンジは地上戦に備えて、ロンギヌスの槍に持ち替える
アスカがもう一撃くわえようとした時、量産型エヴァは羽を畳んで急降下を始めた
目標は弐号機らしく、残った全ての量産型エヴァが弐号機に襲いかかる
アスカはポジトロンライフルを投げ捨てると、身を投げる様にその場から離れる
強大な音、振動と共に立ち昇る砂煙
ゆっくりと晴れて行く砂煙の向こうに量産型エヴァが姿を現した
量産型エヴァに突っ込む初号機
その前に三機のエヴァが立ち塞がり
残りは弐号機に向かう
初号機はロンギヌスの槍を翳して、量産型エヴァを振り払い
弐号機はソニックグレイブで応戦する
不利な状況の中戦い続ける子供達
大人達はそんな子供達をモニター越しに見ながら、安全な所から指示を出すことしか出来ない事に歯噛みする
「キャ〜〜〜ッ!!」
そんな中に木霊する、アスカの悲鳴
モニターには敵の刃に捕らえられた弐号機と、切断されたアンビリカルケーブルが映っている
「神経接続、切断して!早く!」
素早くミサトの指示が飛ぶ
それでも蹲っている弐号機に群がる量産型エヴァ達
「アスカ〜〜〜!!!」
発令所内にミサトの叫びが響き渡る
その声に応えるように、量産型エヴァは弾かれ、その下から満身創痍の弐号機が姿を現す
「葛城三佐、聞こえますか?アスカちゃんは気絶しています。これから僕が弐号機を操縦します。僕に全て回して貰えますか?」
カヲルの言葉にミサトはすぐに判断すると、指示を出す
「コントロールを全て渚君に回して」
オペレーターが直ちにその指示に従い、全てのコントロールがカヲルに移される
カヲルが目を閉じると、結界になるほどのA・Tフィールドが弐号機を包み込む
弐号機を攻めあぐねる量産型エヴァの武器が、姿を変える
それは、捩れた二股の槍の形になる
そう、ロンギヌスの槍の形に
侵蝕されるカヲルのA・Tフィールド
量産型が持つロンギヌスの槍のコピーがA・Tフィールドを貫いたと思った瞬間、引き込まれるように結界の中に入り込む量産型エヴァ
三機のエヴァを相手に善戦していたシンジは、その光景に隙を作ってしまう
三方向から串刺しにされる初号機
だが、串刺しにされたかに見えた初号機の手前で量産型の持つ刃が止まっている
一瞬にして膨れ上がる初号機のA・Tフィールド
弾かれる、量産型エヴァ
倒れた一機のコアに初号機はロンギヌスの槍を突き立てる
爆発をA・Tフィールドで包む事で抑える初号機
そのまま勢いに乗って残り二機に向かう
「よくも、よくも、よくも〜〜!!!」
初号機の中で叫ぶシンジ
そんなシンジにレイは嫉妬と共に不安を抱く
シンジはアスカが好きなのでは無いかと
問い詰めたい気持ちに駆られるレイ
だが、今は戦闘中なのだと、自分の気持ちを抑え
シンジが我を忘れて、無謀な行動にでない事を祈りながら、ナビゲーターとしての役割を果たしていく
二機を倒し終えた初号機は弐号機を救出する為、振り返る
そこにはまだ、結界レベルを維持したまま張られているA・Tフィールドが
そして
「なめんじゃないわよ〜〜〜!!!」
通信機越しにアスカの声が響いたかと思うと
A・Tフィールドの中から量産型エヴァが弾き出されてくると共に、結界が消滅する
そこには、満身創痍ながらも無事な弐号機の姿があった
「ママが、ママが傍に居てくれたんだから」
そう言いながら、その場に跪く弐号機
初号機はそんな弐号機の傍に駆け寄ると、残りのエヴァと対峙する
だが、量産型は奇妙な行動を見せ始める
それまで畳んでいた翼を広げると、空に舞いあがる
空中で突然戦い始める量産機達
勝った方が負けた方を吸収する
それが、最後の一機になるまで続き
降りてきた時には巨大化していた
初号機に向かって伸びてくる量産機の腕
初号機は弐号機を抱えると、その場から逃げる
そこに、ゲンドウから通信が入る
「シンジ、敵の狙いは初号機だろう。量産型の機体は恐らくリリスの細胞を使って創られている筈だ。その体に初号機を取り込む事で、無理にサードインパクトを起こそうとしているのだ」
「そんな事言われても・・・・・。じゃあ、どうしたら良いのさ?弐号機を抱えたままじゃ、戦えないよ?」
ゲンドウからの通信に、シンジは疑問をぶつける
「弐号機はこちらで回収する。済まないが、近くの回収ルートまで運んでくれ。それより問題は、戦闘方法だ。取り込まれる前に倒したい所だが、巨大化と共に、コアを内部に隠してしまった以上、コアがあるであろう場所に突っ込むしかない。だが、それは一歩間違えばサードインパクトの引鉄にもなってしまう」
シンジの疑問に答えるゲンドウ
シンジは量産型から十分距離を取った所で弐号機を下ろす
少しの間考え込んでいるようだったが
「綾波、降りてくれる」
レイにそう言った
「・・・・・嫌」
即答でレイは応える
「あなたは、私に命を大事にしろと言ったわ。それは、あなたにも言える事。そして、私の願いはあなたの傍にいること、あなたを護ること。だから嫌。私も一緒に最後まで戦うわ。それに、もしサードインパクトが起きてしまったら、降りても一緒だもの」
レイの言葉に少し驚くシンジ
ここまではっきりと自分の意思をレイが語るのは初めてのことだった
それが嬉しく思える
そして、その心が嬉しいから
「・・・・・そうだね。・・・・・じゃあ、綾波、行くよ」
シンジがレイに声を掛ける
「はい」
今度も即答で答えるレイ
「母さん!僕達に力を」
シンジとレイが目を瞑ると、シンクロ率が急上昇を始める
慌しくなる発令所にシンジは通信を入れ、笑顔で
「大丈夫ですから。行って来ます」
そう告げる
その初号機の背には六対十二枚のA・Tフィールドで出来た羽が
そして、初号機は翼を羽ばたかせ、量産機に突撃していった
初号機の前に量産機が張った結界レベルのA・Tフィールドが広がる
それに槍を突き立てるシンジ
じわじわと槍は侵蝕を始める
槍は完全にA・Tフィールドを突き破ると初号機毎、量産機に突き刺さる
上空で起きた爆発は、地下にあるネルフ本部にも振動が届くほど巨大であった
後書き(と言う名の言い訳(笑))
更に延びてしまったことを深くお詫び申し上げます
いや、公私共に忙しくて
特に私生活ではゲームが(マテ
少しづつ書いていくと、世界が広がる広がる
何時の間にやらこんなに長くなってしまいました
と、言う事で分けます
次こそ本当に最終話(になれば良いな)です
それでは