知られざる真実

EVA外伝第壱話


レイ、アスカ、シンジは、何故かネルフの呼び出しを受けていて、電車内にいた。

「何で私たちが呼び出し受けなきゃいけないのよ。もう使徒はいないし、私たちがネルフに行く理由なんてないじゃないの」
「……」
「……」
「ちょっとシンジ!1人で歌なんか聴いてないで人の話し聞きなさいよ!それにファースト!あんたも何とか言ったらどうなの!?」

アスカはシンジのイヤホンを無理やり外した。

「いててて!外すから引っ張らないでよ!!」
「分かれば良いのよ、分かれば」
「セカンド、碇くんをいじめないで。今のは100%貴方が悪いわ」
「何ですってー!!」
「着いたわよ。行きましょ」

3人は、ネルフの司令塔に向かった。そこに行くと既にリツコが居た。ついでにミサトも…多分サボりであろう。

「あら、3人とも早かったじゃない」
「リツコさん。何で僕たち呼ばれたんですか?」
「実はレイの事でね…」

その言葉を聞いて、レイとシンジはピクっと反応した。しかし、アスカには何の事かさっぱり分からなかった。

「それってどういう事?」
「今見せるわ…レイ」
「はい……」
「何よ。何にも変わらないじゃない」
「レイの前を良く見て」

アスカがよく見ると、そこには見覚えのある赤い壁が形成されていた。

「何これ…まさかA、T、フィールド?」
「そのとうりよ」
「何よこれ…そういえば最後の使徒も人間の形をしていったて言うじゃない、説明して」
「レイは分類学上は、ホモ・サピエンスではないということよ。レイは、リリンとユイさんのクローンなのよ」
「嘘…」

アスカの探るような視線に、目をそらしてしまうレイ。

「そして、レイはユイさんが戻ってきた時の為の器だったの。あなたたちがエヴァとシンクロする事が出来たのは、エヴァのコアの中にはあなたたちのお母さんの魂が封じ込められていたから」
「そんな…」

(今まで気づかなかったなんてごめんね、ママ。ずっとわたしと一緒に居てくれたのにね)

「最後の使徒は、貴方が心を開かなかったせいで心を閉ざしていた弐号機を使って、ターミナルドグマに侵入、その後……」
「僕が殺したんだ」
「シンジが…?」

(良くそんなこと言う気になったわね……それも自分から…)
(僕が犯した罪は一生消えない。けど、それを忘れないことで償うことは出来る)

「それにしても、そいつあたしの弐号機を使ったの?許せないわ」
「大体はそんなところよ」
「そんなところって簡単に言わないでよ」
「だから、レイの事をあなたたち2人にお願いしたいの」
「いいわよ。ここまで聞いたら放って置けないもんね」
「セカンド…ありがとう」

レイは心からそのことが嬉しかったらしく、涙を流していた。

「ちょっと、泣かないでよ。当たり前のことなんだから」
「うん…」

アスカはレイが泣いたのに内心驚いていたが、それを表に出すことは無かった。そうすれば、レイが傷つくことを知っていたから。昔のアスカでは到底できないことである。

「用事はそれだけでしょ?私たちはもう帰るわよ」
「あ、ちょっと待って」
「何?」
「今日ここで聞いた事は…」
「分かってるわよ。極秘でしょ」
「そうよ。よく分かってるじゃない」
「理性的で聡明な私にはそんな事言われなくても分かるわ」
「理性的?アスカが」
「なによ!その言い方!」
「そういうところが理性的じゃないと思うんだけど…」
「ぐっ…」
「帰りましょ。碇君」
「あ、待ってよ。綾波」
「ちょっとシンジ!待ちなさい!」

「ふふ、元気な子達ね」
「でもあの調子なら平気そうね」
「そうね。アスカがあんなにあっさり受け入れるとは思ってなかったけど」

(私たちは結局無力なままだけどね…)

大人たちは無力な自分たちを呪った。以前エヴァに乗せていたときからずっとある罪悪感。それが無くなるのはいつの日であろうか。

「レイ、事情は分かったけどシンジは渡さないわよ」
「こちらこそ」
「2人とも何話してるの?」
「な、何でもないわよ!」
「ふ〜ん…あ、僕こっちだから。じゃあ、また明日」
「「ばいばい、また明日」」

1人になると、シンジは考え事を始めた。

(綾波が人間じゃないって分かった時、アスカあんまり驚かなかったな。僕が知った時なんかおろおろしちゃって綾波のほうが僕を心配する有様だったもんな。強いよな、アスカも綾波も…僕も強くならなくっちゃ)

「ただいまー」
「あら、お帰りシンちゃん。早かったのね」
「うん。検査とかは特になかったからね」
「へぇー。じゃなにがあったの?」
「それは…」

シンジはユイに話すのをためらった。もしユイが事情を知らないのだったら、ユイを傷つけることになると分かっていたからだ。自分の息子が、人ではないにしても限りなく人に近く、しかも親友を殺したなんて聞いたら、どんな親でも心配するだろう。

「言いたくない事なら無理して言わなくてもいいのよ」
「ごめん」
「シンちゃんが謝ることなんて何もないのよ」
「ありがとう、母さん。僕疲れたからもう寝るね」

シンジはぼんやりとレイのことを考えていた。

(綾波は、僕らと違うんだって知ってたけど、改めていわれるとやっぱりショックだな。綾波との溝がますます深まった気がする。どうしてこんなに綾波のこと意識するんだろう。僕、綾波の事好きなのかな…やめよう、こんな事考えるの。考えたって分かるわけ無いや)

そんなことを考えながら、シンジは深い眠りに落ちていった。その中でシンジは夢を見ていた。カヲルの夢を…

シンジは夢の中でカヲルを握り締めていた。

(またこの夢だ!)

カヲルはふっとシンジに微笑みかけた。

(ちくしょう、ちくしょう、やめろー!!)

しかし、初号機はカヲルを握りつぶした。その骨がきしむ音、血の生温かさ、肉をつぶす感触…

「うわあああああーーーーー!!!」

(ちくしょう、僕はまたカヲル君を…)

「ごめんよ、シンジ君。でもこうしないと君は僕を忘れてしまう。君に辛い思いをさせても、僕は君の中に残っていたいんだ」

シンジはそこで目が覚めた。

「はあっ、はあっ」

シンジは汗をびっしょりかいており、息も荒かった。

(シャワーでも浴びるか)

そんなシンジの様子をユイが心配そうに見ていた。

(シンちゃん、またカヲル君の夢を見てたのね。可哀想に)

初号機の中にいたユイはカヲルのことを正確に記憶していた。そんなシンジを見ながらユイも寝床に入った。シンジもシャワーを浴び終えると、再び床に就いた。

(そういえば、綾波もカヲル君と同じ存在なんだよな。カヲル君を殺してしまった僕に人を好きになる資格なんてあるのかな)

そんなことを考えながらシンジは再び眠りに付いた。人を好きになる資格が自分には無いと思っているシンジに、猛烈にアタックしていく3人…シンジはこの3人のアタックに耐えられるのだろうか?

感想を是非霧さんにどうぞ。
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