シンジとアスカの休日

EVA外伝第参話 その2

「馬鹿シンジ!起きろ!!」
「うわ!?…あ、アスカ?何でここに?」
「何、私が来たのが気に入らないの?」
「そういうわけじゃないけど…」

実際はいい気持ちで寝ていたのを起こされたので相当機嫌が悪いシンジだが、それを面と向かってアスカに言う度胸などは無い。

「今日は買い物に行くわよ。無論、一緒に行くわよね?」
「荷物持ちぐらいならやるよ。でも、一緒に選んだりっていうのは出来ないからね?」
「当たり前でしょ!馬鹿シンジは荷物持ちで十分よ。さっさと支度しなさい!」

それだけ言うとアスカはシンジの部屋を出た。

(何よ馬鹿シンジ!折角デートに誘ってあげてるのに!!)

いまだ素直になることが出来ないアスカにとって、シンジの鈍感さは相当わずらわしく思えるらしい。

「用意出来たよ」
「遅い!時間無いんだからさっさと行くわよ!」
「はいはい」

(これでも急いだのに…ああやって頭ごなしに言われるとやる気無くなるよ……僕のことちっとも認めてくれないし。僕だってアスカの奴隷じゃないのに)

アスカの素直でないところがシンジには全て欠点として映ってしまうようだった。
そして5時間後…

「まだ買うの?勘弁してよ……」
「荷物持ちは黙って付いてくればいいの!」
「そんなこと言ったって…」
「だらしないわね〜、仕方ない。少し休みましょう」

(何で素直になれないんだろう?ファーストだってマナだっているのに…チャンスはそんなにあるわけじゃないのに…)

自らに素直になれないアスカ。原因は自分にあると痛いほど分かっていたが、高すぎるプライドが自らを縛る鎖となっていた。

「アスカ、どうしたの?」
「え、私何か変なこと言ってた?」
「いや、珍しくぼ〜っとしてたからどうしたのかなって」
「悪かった…いえ、何でもないわ」

(これがいけないのよね。シンジももう少し私の気持ち考えて欲しいわ…)
(絶対怒られると思ったんだけど…どうしたんだろ?元気ないのかな)

「ふぅ……腕が棒になったよ」
「ありがとね。助かったわ」

(……絶対変だ。いきなり優しくなった。こんなのアスカじゃないよ)

「この後どうするの?まだ買う物あるの?」
「う〜ん…まだ買いたい物あるけど…いいわ。シンジ疲れてるみたいだし」
「僕はまだ大丈夫だよ。買いたい物があるなら買っちゃったほうがいいよ」
「無理しなくていいわよ。疲れてるんでしょ?」
「それはそうだけど……アスカらしくないよ」

いつもとあまりにも違うアスカに気持ち悪くなったシンジは遂に思っていたことを言った。

「私らしくない?」
「わがまま言って、自分の思うとおりのことやって他人の心配しないで…それが普段のアスカだよ」
「…人の気持ちも知らないで!勝手なことばっかり言うな!」
「ど、どうしたのさ。人の気持ちなんて言ってくれなきゃ分からないよ」
「私は!あんたのことが好きなのに!!あんたはそれも知らないで…気付いて欲しかったのよ!少しは気にして欲しかったのよ!!」

アスカは思っていたことを一息に言った。それを聞いたシンジは呆然とし、口をパクパクさせていた。
シンジにとってのアスカは異性を意識しない友達、であり恋愛対象として見ていなかったというのが本心である。

「え、えっと……」
「無理に返事しなくてもいいわよ。ちゃんと考えてから返事して」
「う、うん」
「よいしょっと……じゃあね、シンジ。また明日」

アスカはそう言うとシンジを置いてその場を去っていった。

(どうしよう…どうしよう。アスカに告白されるなんて思ってもみなかった…)

シンジにとっては一生に一度あるかないかの決断を迫られる事態となった。
シンジはどのような決断を下すのであろうか?

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