これが……絆?

そう、絆。

碇君……

そう、あなたは、「心」を持っている。

心……?
必要……無い物?

いえ。違うわ。
心は、ヒトなら誰もが持っている……

私は、ヒトじゃないわ。
違う。
あなたは……ヒトよ。

私が……?


Together

第壱話 ― Aパート アスカ、来日

 レイは学校で授業という物をほとんど聞いていない。
 中学生程度の知識なら聞くまでもない、といったところか。
 レイは幼い頃からNERVの中で生きていたので、基礎知識、学力等は優に大学生並みはある。
 それでも今まではぼぅっと見つめるぐらいはしていたのだが、最近は黒板の方を見てすらいない。
 ずぅっと、シンジの方を見ている。
 ふと、レイの視線を感じたのか、ほんのちょっと微笑むシンジ。

≪碇君…笑った……≫

 自然と微笑みが浮かぶレイ。
 ほんのちょっとだけの微笑み、それこそシンジにしか分からないような笑みだったが。

 放課後。
 NERV本部へと向かうレイとシンジ。
 いつものようにエレベーターに乗る。
 二人っきり、である。
 今まではお互いに別に気にしてはいなかったのだが、この前のことがあってから、シンジはどうも落ち着かない。
 手を握ったり開いたり、言葉にならないようなことをブツブツとつぶやいたり、である。

……

 シンジにとって気まずい沈黙が続く。
 と、エレベーターが本部への到着を告げる。
 そこにいたミサトとリツコ。
 ミサトが説明を始める。

「シンちゃんとレイ、よく聞いて。
 今度、あらたにエヴァンゲリオン弐号機が搬入されます。
 もちろん、パイロットもね。」

 そういうと、ミサトは手元の端末のスイッチを入れた。
 とたんに、目の前の壁に映像が映し出される。

―― 一週間前 ――

『テンペスト沈黙! 目標、未だ確認できません!』
『奴め…化け物か!?』

 国連太平洋艦隊が誇る新型艦が、次々と使徒によって撃破されていく。
 そのとき。
 沈没したテンペストがあった方から、白い布をまとった赤い巨人が飛び出す。
 左肩からプログレッシブナイフを取り出して構えると、
 信じられないほどのスピードで使徒に接近し、
 使徒を切り裂く。


「この後、戦艦二隻によるゼロ距離射撃。
 太平洋艦隊の力を借りたとはいえ、内蔵電源の切れる前に36秒で殲滅するとはね。」
「うわさ以上ね、セカンドチルドレンの実力は。」
「危機回避能力、操縦能力、ともに完璧だわ。」
「スゴイ。どうしてこんな動きができるんだ……」

 シンジは感嘆のような視線で見ている。
 と、ミサトがリツコに訊く。

「ねぇ、第六使徒、なぜ太平洋に?」
「分からないわ。
 輸送中の弐号機を狙った――とも考えられるわ。」

「あの、弐号機のパイロット、セカンドチルドレンって、どんな人ですか?」

 シンジが訊ねる。

「気になる?」
「そりゃ、これから同じ仲間として戦って行くわけだし…」
「ふふふ…惣流・アスカ・ラングレー。
 日本人とドイツ人のクォーターハーフで、とても聡明な子よ。
 十四歳でもう大学出てるしね。」
「だ、大学ぅぅぅ〜〜?」

 疑わしげな目のシンジ。さらにミサトが追い打ちを掛ける。

「ま、あんたたちの中じゃ、一番マトモかもね〜〜」
「どういう意味ですか、それ…」

 これ以上ない、というぐらい冷たい目で見るシンジとレイ。
 そこに、突然の電話。

「はい。技術一課の赤木です。」
『あ、リッちゃんか、久しぶり。
 NERVドイツ支部の加持だ。』
「あ〜ら、久しぶりねぇ。」
『今、急いでるんだ。急いで葛城に第壱病院まで来てもらえないか。』
「どうかしたの?」

 声の主の焦りが移ったのか、リツコも少し焦る。

『ア……いや、機密レベルBだ。ここでは言えない。
 とにかく、葛城を第壱病院まで呼んでくれ。以上だ。』

 それだけいうと、電話は突然切れた。

「どうしたの? リツコ?」
「セカンドチルドレン保護担当者からお呼びよ。
 今すぐ第壱病院まで来い、ということよ。」
「分かったわ。」
「リツコ、シンちゃんとレイをお願い!」

 それだけいうと、ミサトは一気に駆け出す。

 リツコは浮かせた腰を再び下ろして、ため息を一つついた。

「シンジ君、レイ、今日は帰りなさい。」
「はい…」

 帰りのエレベーターの中。当然だが、中は二人きり、である。

「綾波は知ってたの? 他の国でもエヴァを作ってたって…」
「ええ。」

 相変わらず無表情のようにも見える。
 でも、そうではない。今までは、何者も近寄りがたいような雰囲気があったが、今はそうでない。
 それこそ、ずっと傍にいないと分からないのだが、その近寄りがたいような雰囲気はほんの少しだが薄くなってきている。

「ふ〜ん、そうなんだ。」

 ピンポーン

 エレベーターが地上への到着を告げる。

「じゃ、さよなら…」
「また明日…」

 レイは『さよなら』を使わなくなったのだが、その理由になった張本人は気づいていない。


―― 第壱病院 ――

 ミサトが愛車を駆って「平地で絶叫マシーンが体感できる」とシンジに恐れられる運転で第壱病院に到着したのは、電話の4分後だった。

「やっとついたわね。
 あれ? そういえば、誰が迎えに来てるんだろ。リツコに聞くの忘れちゃったわ〜〜」

 そういうと、車のトランクに入れてあったクーラーバッグからビールを一本取り出して、

「ぐびっ、ぐびっ、ぐびっ…
 ぷはぁ〜〜。こういうときはビールに限るわね〜」
「『こういうとき』じゃなくて、いつでもビールだろーが。」

 後ろから声を掛けられて、びくっとするミサト。
 そこにいたのは、無精髭を生やした若い男。

「久しぶりだな、葛城。」
「な、な、なんであんたがここにいんのよぉぉぉぉ!?」
「なんだもかんだもないだろう。
 俺がアスカの監察係さ。
 急いで、こっちに。」

 少しだけ真顔になる加持。
 それに黙ってついていくミサト。
 しばらく歩くと、集中治療室の前で加持は歩みを止めた。
 嫌な予感のするミサト。

「まさか……」
「そう、そのまさかだ。」

 加持は取り出した報告書を読み始めた。

「セカンドチルドレン、惣流・アスカ・ラングレー。
 本日14:00、街頭で自由行動中のところ交通事故に遭う。
 加害者については特別不審点はないため警視庁に引き渡し。
 セカンドチルドレンの容態は脾臓破裂、意識不明の重体。
 医師所見によると快復するかどうかは不明。」

 そこまでいうと加持はいったん言葉を止めた。

「俺の監督不行き届きだ。すまない。」

 土下座する加持。
 ミサトはそんな加持の胸倉を掴み上げ、頬に鮮やかなビンタを叩き込んだ。

「何勘違いしてるの?
 自由行動中のアスカの監察はあんたの仕事じゃなく、諜報課の仕事よ。
 あんたは悪くない。そこをちゃんと覚えときなさい!」

 そういうミサトを見て、立ち上がった加持は少し表情を緩めていう。

「おまえ、そういう所は変わってないなぁ。」
「大きなお世話よ!」

 自然とミサトも少し頬が緩む。
 ただ、次の瞬間にはまたその表情は強ばっていたが。

「でも、実際セカンドを失ったのは大きいわね。」

≪フォースでも…探すかしら…>

 ミサトは内心とんでもないことを考えていた。


 その後ミサトに待っていたのは、さらに厳しい試練だった。
 リツコと司令にアスカの件を報告することである。
 その日のミサトの日記に、『こんなんなら使徒と戦う方がまだましよ』と書いてことからも、その辛さがはかりしれるのではないだろうか。
 また、技術一課の某二尉が、リツコの『なんでそぉなるのぉぉぉ!?』という怒鳴り声を聞いたと、証言している。


To be continued


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あとがき

 どうも、柳井です。
 我ながらスゴイ展開w
 あ、アスカリアン(謎)の方々、手に持ったプログナイフをおろしてください!(焦
 ちゃんと今後はアスカちゃんも登場しますから(たぶん)。

 思ったより早く初稿が上がったw




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