あ?シンジ君?
 うん、そうそう。ユキヒコだけど。
 この前の宿題のときはどうもアンガト。
 いや、今日は宿題じゃなくて、姉さんが用があるっていうから。
 姉さん? 姉さん、NERVの技術一課で働いてるんだけど。
 うん、じゃ、代わるから。

 あ、シンジ君?
 初めまして、技術一課のカスミです。
 やだ、カスミで良いわよ。
 そう、明日、シンクロテストとか別にない……よね?
 もしよかったら、4時に三研――第三研究室まで来てもらえない?
 ちょっと聞きたいこととかあるし。
 あ、いい?アリガト。
 後、レイちゃんとヒカリちゃんも呼んでおいてもらえる?
 うん、よろしく。
 じゃ、お休みなさいね♪


Together

第四話 ─ Bパート「漆黒の時の中で」

 シンジの歩く横にレイが寄り添うようにして歩いている。
 その反対側には、少し離れてヒカリが歩いている。
 最近はレイが寄り添うのにも慣れた、というか免疫ができてしまったシンジだったが、今日は別の意味でレイどころではなかった。

「暑い。」

 放っておいても口をついて出てきそうなほどに暑い。
 こうなると、NERVまで呼んだカスミのことすら恨めしくなってくる。

≪カスミさん……今頃クーラーの効いた涼しい部屋で冷たい麦茶なんか飲んでるんだろうな……
 リツコさんもきっとそうだろうな…
 ミサトさん、寝てるんだろうなぁ……
 父さんもきっと冷房の効いた涼しい司令室で、『問題ない』とか呟いてるだろうし…≫

 ただでさえ愚痴っぽいシンジなだけに、誰彼構わず文句が浮かんでくる。
 しかしどれだけ文句を言っても涼しくなるわけはない。
 シンジは心の中で愚痴をこぼすのはやめたが、そうすると今度は大きなため息がでた。

「碇君……大丈夫?」
「大丈夫だよ、綾波。
 にしても暑いなぁ………」
「今日の予想最高気温は39度、現在の気温は推定…35度。」
「あ、綾波……?」

 『推定』の出所が気になって仕方のないシンジだった。

「ここ…だね、第三研究室。」
「失礼します……」
「あ、シンジ君、レイちゃん、ヒカリちゃん、こんにちは〜
 暑い中わざわざゴメンね?」
「いえいえ、別に。」
「それで、早速なんだけど…」

 カスミが手元の書類を取ろうとしたその時。
 突然電気が落ちる。

「え?」

 暗闇の中で、皆一瞬、パニックに陥る。
 しばらくして一番早く立ち直ったのは意外にヒカリだった。

「停電……ですか?」
「そ、そうみたいね……」
≪予定より早いわよ?≫

 とりあえずカスミはどこからともなくろうそくを取り出したが、火を付けた次の瞬間固まった。

「あ……綾波……ちょっと僕にくっつきすぎだと思うけど……?」
「問題無いわ。」
「フケツ〜〜〜〜〜!」
「ちょ、ちょっと……」

 これ幸いとシンジに思いっきりくっついていたレイ。
 実際はこのようなことなど日常茶飯事だが、見慣れていないカスミと潔癖性のヒカリは再びパニックに陥る。
 シンジに彼女らを止めることなどできず、レイは何故彼女らが騒いでいるのかさっぱり分からずそのまま寄り添っていた。

 そのとき、カスミの携帯がけたたましい音を立てる。
 一転してカスミの表情が締まる。

「待って。」

 カスミの表情は、話の中身に入るにつれどんどん険しくなっていく。
 それは普段の彼女のものではなかった。

「分かったわ。
 チルドレンを動かして良いのね。
 OK。」

 電話を切ったカスミはシンジ達の方へ向き直った。

「いい?
 今、使徒がこっち──第三新東京市に向かっているの。
 今すぐ発令所に行って、司令にでもそれを伝えて。」

 カスミの言っている意味が分からず、三人は一瞬硬直するが、次の瞬間には動き出していた。

「分かりました。」


「ねえ、綾波?」
「なに?」
「僕たちが発令所に行っても、停電していたら使徒が来てるかなんて事分からないんじゃない?」
「…………何とかなるわ。」

 チルドレンとは言ってもシンジはまだNERV本部に慣れていなく、ヒカリに至ってはまだ発令所がどこなのかすら分かっていない始末。
 結局、先導は自然とレイになった。
 と、ふとレイが立ち止まる。

「綾波?」
「…………扉。」

 目の前にあったのは扉。しかも電動である。

「どうするの?碇君、綾波さん。」
「どうするったって……」
「下がって。」

 驚いたことにレイは自然な仕草で鞄の中から拳銃を取り出すと発砲し、正確に鍵に穴を空けた。

「綾波……さん?
 いつもそれ……持ち歩いているの?」
「必要だから。」

 さも当然、という顔でうなずくレイに、シンジは頭を抱えた。


 そうしてシンジ達が発令所に向かうちょっと前。

「まぁ〜ぎぃ〜し〜す〜て〜む〜のぉ〜いぃじ〜をぉ〜い〜そぉ〜げぇ〜〜。」
「りょぉ〜かいしましたぁ〜〜。」

 広い発令所はコミュニケーションの術を失い、大声を上げながら復旧作業にいそしんでいた。

「せんぱぁぁぁい、かいろせつぞくできましたぁぁぁ。」
「わかったわぁぁぁ。」

 返事をするリツコの顔から、汗がしたたる。

≪それにしても……さすがは司令と副司令ね。
 このぐらいの暑さじゃ平気とは…≫

 そのゲンドウと冬月は冷水の入ったバケツに足をつっこんで涼んでいた。

「ぬるいな。」
「ああ。」


「MAGI、維持モードへの切り替え完了ですぅ〜〜。」

 どこからともなく出てきた某野球チームのメガホンを使ってマヤが叫ぶ。
 と、ようやくモードを切り替えたばかりのMAGIが警告を発し始めた。

「国連軍よりエヴァンゲリオン発進要請、名目は──使徒!?」

 知らず知らずのうちに大きな声を上げていたマヤは周囲の注目を引いてしまったが、そのままメガホンをとった。

「碇司令ぃ、現在、使徒が接近している模様ですぅ。
 国連軍よりエヴァの発進要請が来ていますぅ。」
「了解したぁ〜
 これより第一種戦闘配置ぃ〜
 整備班はケージに集合ぅ〜
 エヴァの発進準備を行うぅ〜。」

 それだけ言うと、ゲンドウも席を立った。
 おもしろそうに冬月が声をかける。

「パイロットはまだ来ていないぞ?」
「そのうち来ますよ、先生。」

 彼が人を信じる姿を見るのは久しぶり──いや、初めてだったかもしれない。


「っ!?」

 発令所まで目前に迫ったところでシンジ達を揺れが襲う。

「使徒……だよね。」

 シンジの言葉を待つまでもなく、揺れを感じた時点でレイは目標を変えた。

「行きましょう、ケージへ。」
「エヴァの発進用意ができているかどうか分からないのに?」
「信じましょう、司令達を。」


「発進準備、おおかた整いました。
 後はエントリープラグの挿入だけですが、何分パイロットが…」
「やれるところまでやろう。」

 そのころのケージでは、エヴァ3機が整備班とゲンドウの手によって、手動で発進準備を進めていた。
 わずかなガスタービンによる動力の他は、すべて彼らの手作業によって。

 ふとそこで、ドアが開く音がして彼らは手を止める。
 そして彼らは歓喜した。
チルドレン
 待ち望んだ 救世主 ──エヴァ起動の最後にして最重要のキーがまさしく到着した。
 手際よく発進準備が進められていく。
 シンジの初号機、レイの零号機改、ヒカリの弐号機。
 それぞれが拘束ボルトを引きちぎり、そして外へと向けて歩き始めた。


To be continued


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あとがき

お久しぶりです。ミレアです。
途中まで書いて3ヶ月半放置の作品を再考する作業はしんどかったです(汗

今回は、細かい部分でも珍しくアニメ版を生かして書いているつもりです。

謎に満ちたカスミの正体は!気になる使徒戦は!
次の決戦編(仮)でお会いしましょう。

ミレア




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