思春期だね碇君!!

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031010



・・・・虎は目覚めた・・・・
(注1)




・・・・その身を縛る一切のくびきより解き放たれたのだ・・・・
・・・・もう誰にも止めることは出来ない・・・・
(注2)







注1 漫画「B.B.」参照
注2 作者にも(笑)

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031013

 「ハイ紹介します!転校生の綾波さんです。綾波さん自己紹介して」
 「綾波、レイです。よろしく・・・」
 あまりに素っ気無い挨拶にミサトはどう突っ込めばいいのか分からなくなるが、それでも何とかレイに話しかける。
 「綾波さん、それだけ?」
 しかし、レイは反応を示さない。ミサトはそんなレイに対して声をかけるのを諦めてしまう。そして自分から遠ざけるようにレイの席を決めようとしたが、クラスの中を見回すとシンジがレイを見つめているのに気付いた。
 「じゃあ綾波さんの席は綾波さんを熱い眼差しで見つめてるシンちゃんの隣ねっ!」
 そう、シンジはさっきからずっとレイを見つめながら妄想の世界に頭までどっぷり浸っていた。その姿はあからさまにシンジがレイを好きだと物語っていた。一目見ればどんな人でもシンジがレイを好きになったとわかる。例え、鈍感ランキング世界チャンピオンですらもわかるであろう位、わかりやすかった。
 古典的な漫画のような表現で申し訳ないが、頭からはハートマークが無数に湧き上がり、その上では天使が二人ラッパを吹き鳴らし、シンジの眼は両方ともハートマーク、心臓もハートマークになり左胸から飛び出しドクンドクンと大きく脈打っていた。

 それを見たクラスメート一同の心が一つになる。







わかりやすっ!!







 しかし、レイはそんなシンジを観ずにミサトに話しかける。
 「『シンちゃん』って誰ですか?」
 ここでクラス全員の心が再び一つになる。










わからないのっ???






 いくら何でもあそこまでわかりやすければ誰でもわかるだろうっ!!と心の中で突っ込む一同。
 ご尤もな意見だが、あくまでそれはシンジを見れば、の話であってシンジの存在なんかアウトオブウ眼中のレイにはわかる筈もない。因みにシンジの隣の席だが、このクラスでは1列ごとに男子、女子となっている為当然隣には女子がいる筈なのだが、誰もがシンジと関わり合いになることを恐れ入学以来ずっと空席であった。勿論シンジの右隣にはSALこと惣流・アスカ・ラングレーが鎮座しておりはべりそうろう。(注1)




注1 クラスは大体30人強である。
教卓↑
女子カヲル女子男子
空席シンジアスカ男子
女子ケンスケヒカリトウジ

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031020

 「君の席はここだよ。でこいつが"シンちゃん"こと碇シンジ」
 ご丁寧にレイに説明してくれるのはこんな状況でもちゃっかりビデオを回すケンスケだった。無論それは親切心からではなく、ケンスケの商売の商品となるダイヤモンドに対する好印象作りのための布石、つまり下心からであった。
 相変らず黙ったまま歩いてくるレイがシンジの隣で歩みを止めたその瞬間、シンジはレイに話しかけた。

 「あ、あの、綾波さん、初めまして、ぼ、僕は碇シンジ。よ、よよ、よろしくね」

 緊張のあまり顔は真っ赤で頭から湯気が出そうだ。しかも出てくる言葉はドモリマクリであからさまに挙動不審で怪しい人物だ。
 そんなシンジをほんの一瞬だけ、眼だけをわずかに動かして見るレイ。そして誰にもわからないくらいにわずかに、眉が動く。それも一瞬どころか刹那の時間のみ・・・。
 後は無言無表情で席に座り、前を見るだけであった。

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031021

 当然、そんなレイの態度にアスカが黙っていられる訳もなく即座に突っかかる。人目があるため、あくまで穏やかに、そして優しくではあるが。
 「綾波さん、どんな事情があるにせよ、人が挨拶してるのに無視はないんじゃないの?」

 正論である。しかし、レイはそれに対しても無視。というより聞こえていないかのようだ。普通、音が聞こえれば人間の身体は程度の差はあれ無意識のうちに反応するものであるが、レイのそれはは誰がどう見ても完全な無反応であった。
 それを見た5人(シンジ、カヲル、ヒカリ、トウジ、ケンスケ)は恐怖に慄く。「無視される」・・・それは自尊心の強いアスカの最も嫌うことの一つだった。つまり、アスカが怒りでバーサークしてSALが出ると思ったのである。
 しかし、アスカはSALにならなかった。無視されても、なおも優しく、更に大きく張りのある声でレイに話しかけたのである。尤も、心中では怒りの炎が嵐となって吹き荒れていたが・・・。今度は無視できないようにレイの真正面に立ち、レイの顔を覗き込むような姿勢をとった。これで話しかけられて無視できる人間は中々いないだろうと思う。

 「綾波さん?聞こえてるの?」

 やっぱり、レイは無反応だった。アオウトオブ眼中である。
 その紅い瞳には何が映っているのだろうか?シンジは自分の胸が激しく疼くのを感じた。
 それは好きな人を知りたいという好奇心、自分だけを見ていて欲しいという独占欲など様々なものが入り混じった感情の高まりだったが、シンジにとっては初めての感情であり、この胸のモヤモヤが何かはわからなかった。わからないまま行動していた。
 即ち、アスカに対してレイのこの誰がどう見ても一般常識としてあるまじき行為をフォローしたのである。

 「アスカ、止めなよ」
 「何言ってるのシンジ?私は何も間違ったことは言ってないわよ」

 低く、静かに、上手くクラスメートに隠しながら怒気を放つアスカ。
 しかし、いつもならアスカに意見することすらない、あのシンジが今日は怯まない。殆どのクラスメートは気付かなかったが、はっきり言って異常事態である。

 普通この時点で事なかれ主義の教師だったら授業があるとか適当に理由をつけて止めに入っていたであろう。だが、葛城ミサトはそんなせこい真似はしなかった。人がわかりあうには心と心を見せ合うのが必要であるというのが彼女の持論であった。そして、それは時には激しくぶつかり合うこともあるだろう。思春期の、言い換えればくだらない見せ掛けの理由だけで納得した気になっている大人とは違う純粋な心を持っている年代の少年少女なのだから・・・。例え、それが結果的に人を傷付けることになったとしても。人は生きていくうえで本当に自分の人生を自分の足で歩みたかったら傷つくことも、また逆に人を傷付けてしまうこともは避けられないのである、ミサトは自分の経験から教師をする上でそう考えていた。

 それはさておき、シンジVSアスカである。初の組み合わせということもあり皆興味シンシンである。
 「ほら、綾波さんは転校してきたばかりで緊張してるんだよ」
 「だから、こっちから話しかけたんでしょ?」
 にべもなく切り捨てるアスカ。
 「それが逆効果でますます緊張させちゃったんだと思うよ。ほら、いきなり女の子に男子が話しかけちゃったからね」
 「シンジを無視したのはわかったわ。確かにいきなり男子に話掛けられたら緊張して黙っちゃうかもね」
 流石に少し納得したように冷静になり、態度も和らぐ。
 「そうだろ?」
 「でも何で私まで無視するのかしら?しかも2回も。私は女よ?」
 安心させておいて更に攻撃する策士アスカ。高校卒業資格取得は伊達ではない。  「だから、僕が話しかけて緊張してるところにアスカが話しかけたから緊張が混乱に変わっちゃったんだよ」

 それでも必死で解説するシンジ。確かに思春期の女の子と言うことを考慮すれば返事がないのもあながちありえない話ではないが、無反応というのは逆にないだろう。恥ずかしいなら恥ずかしいで何らかのリアクションがある筈である。それについてはシンジも何も言えなかった。恐らく、誰にも説明出来ないだろう。好意的な見方で説明しようとしたら。
 そのことに当然気づいている筈のアスカは何故か大人しく引き下がった。


 そして、その日はケンスケの運営するHPの女子ランキングに綾波レイの名前が記された以外はそのまま何事もなく終わったのである。勿論、アスカを遥かに上回る断トツのランキング1位として。それは事情を知らない他クラスの男子による人気だったが、おかげでこの日ケンスケのアルバイトは空前の売り上げを記録した。しかもそれは、まだまだ無尽蔵に産出されるであろう、ダイアの鉱脈であった。

 こうして、2年A組は超特大の爆弾を更に一つ抱えるはめになったのである。(注1)(注2)



注1 推定破壊力N2爆雷1000発分。しかも現段階において、である。
注2 言うまでもなく、シンジたちも爆弾扱いである。これらの爆弾が一度に爆発したら連鎖反応によってビッグバンが起こるとマナたちに信じられている。

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031022


 シンジは放課後になると即座にケンスケを捕まえてなにやら密談していた。邪悪な笑みを浮かべるケンスケ。どうやら取引は成立したようである。
 そして、1人家へと帰るシンジの後を一定間隔を保ちながら歩く影があった。

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031023

 次の日の朝

 「おっはようございまーす!!」
 と元気良く碇家にやってきたアスカが見たものは怪しい笑いを浮かべて放心したまま朝食を食べるシンジの姿であった。
 当然アスカは気に食わない。しかし、流石にSALといえどシンジの両親の前でシンジを殴り飛ばすわけにもいかず、愛想笑いを浮かべつつユイに話しかける。(注1)

 「シンジ、どうしちゃったんですか?」
 「そうなのよ〜何があったのか知らないけど昨日からずっとこうで・・・。アスカちゃん何か知らない?」
 「さあ?昨日は・・・・・あっ転校生!!!」

 無論、アスカもシンジと付き合いが長い分昨日転校生が来てからシンジの態度がおかしかったくらいわかっていたのだが、昨日はここまであからさまにはおかしくなかったのである。兆候があったとはいえ一晩で変わり果てたと言っても過言ではない変化であった。何しろあのシンジが二日続けて朝起きていたのである。しかも今日は朝食まで食べている。これだけでも充分学校中を騒がすスクープとなるだろう。
 折角なので少し説明しておくが、ケンスケの作成するランキングには男子版もあり、意外にもシンジの名前が存在していた。流石にトップ10には入っていなかったが隠れた人気といったところか・・・。更に言えば、それがまたアスカの機嫌を悪くさせる一因にもなっていたのだが。

 「転校生?」
 「はい、昨日変わったことと言えば、転校生が来たことぐらいしか・・」
 「可愛いの?」
 「ええ、でも一言も喋らないんですよ。私やシンジが話しかけても無反応で」
 「成る程〜まあここは様子を見ましょう。朝起きれるようになったことだし今のところ問題はないわけだし」
 「それはそうですけど・・・」

 アスカは不満そうだがユイには逆らえない。アスカにもわかっていた。いつかはシンジも手のかかる弟ではなく1人の男となって自分から離れてゆくことを・・・。しかしアスカはそれを許容できなかった。

 「まっ、いいからいいから学校行ってらっしゃいな」
 笑顔でアスカとシンジを追い出す送り出すユイ。

 因みにこの会話の間の男性陣はと言うと、

 シンジ・・・怪しい笑いを浮かべひたすら朝食を食べる。それにはゲンドウの分も含まれているようだ。
 ゲンドウ・・・寂しそうにユイを見ながら「私の朝食・・・」と呟く。


 学校への道すがら、シンジに話しかけるアスカ。しかし、シンジは反応しない。
 しかも、あろうことか業を煮やしたアスカが勢いあまって放った「ASUKA STRIKE1」を喰らっても平然としたまま学校へと歩いて行くのである。
 アスカはその場に1人残され呆然としていた・・・
 さもありなん!今まで幾多の猛者を一撃の下に葬り去ってきた技「ASUKA STRIKE1」を喰らって平然としている人物がいようとはっ!!おまけにそれは"あの"シンジなのである!!アスカのショックは量り知れなかった・・・。



 だが、学校にはそれを遥かに上回る驚愕の事態が皆を待ち受けていたのであった・・・・・・・・




注1 いや、アスカがシンジを殴っているのはバレているが、それでも目の前で堂々と殴るのは流石に気がひけるという最後の理性と言ったところか。

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031026

 学校に辿り着いたシンジとアスカを出迎えたいつものメンバーはカヲル1人だった。

 アスカ達もかなり早く来ているので、トウジやケンスケ、隣のクラス連中が来ていないのは別段変ではないのだが・・・いつもならもう1人ヒカリがいる筈だった・・・・・・
 ヒカリはクラスで1,2を争うほどに学校に来るのが早い。全校でもトップ10に入るくらいだ。まあ朝錬のある運動部は除外するが、一般の生徒の中ではかなり早くから来て、だらしのないミサトの代わりに諸々の雑用をこなしている。最近では他の教師も、ミサトを無視して副担任である日向か、ヒカリに連絡事項を伝えるようになっているほどだ。
 そのヒカリが来ていないのである。その代わりに転校生の綾波レイが、静かに席に座って文庫本を読んでいる。無論ヒカリとて遅れることはあるだろう。母の居ない家庭において父と姉と妹の世話を、つまり家事一般を一身に担っているのである。それは普通の中学生から考えればかなり大変なことであり、少し何かあれば遅れてしまってもおかしくはないだろう。実際まだまだ遅刻には程遠い時間帯なのだし・・・・・・

 しかし、アスカは親友であるヒカリから何も聞いていない。
 それだけでおかしいと感じた。風邪でもひいたのか?或いは事故にでもあったのかと顔には出さずに心配していた。主のいない席を見つめわずかにうつむく。シンジは相変らずニヘラ〜と笑いを浮かべたままでまったく気付いていなかったが・・・・・。

 「惣流君、洞木君のことなら心配ないと思うよ。君たちが来るのが早過ぎただけさ」
 誰も気付かないアスカの心中に即座に気付き小声で話しかけるカヲル。人気ランキング1位は容姿だけでなく、このような気配りの出来る性格も大きな要因だ。

 「そうね」

 顔を上げ笑顔で応じる。自分は考え過ぎなのだ、と自分に言い聞かせる。

 その頃シンジはレイに挨拶をしていたが、レイはわずかにその紅い瞳を動かしシンジを確認するとそれだけでまた文庫本に集中する。シンジのことは完全無視だ。

 それを見たカヲルは苦笑する。

 「おかしいな、さっき僕が挨拶したときは確かに素っ気無かったけど挨拶返してくれたんだけど・・・」
 「シンジが嫌われてるのか、アンタが好かれてるのか・・・どっちかしらね?」
 邪悪な笑みを浮かべカヲルの紅い瞳を見るアスカ。

 「他の女子生徒にも挨拶はし返してたみたいだけど?」
 カヲルは少し慌てて自分の言葉を補足する。アスカはSALであってもカヲルはただの人間だ。シンジほどの耐久力もない。「ASUKA STRIKE」を喰らったら確実に病院行きだろう。

 「じゃあシンジが嫌われてるのね。理由はわからないけど」
 あっさりと結論を出すアスカ。情報が少なさ過ぎる為、真実はどうなのかわからないがこれだけ見ればシンジが嫌われていると判断するのが多数だろう。残りも判断保留というところで、逆にレイがシンジを好きだから無視していると判断するものは・・・・・・・いるのだろうか?
 カヲルはレイがシンジを嫌っているとして、その理由が皆目見当もつかなかった為、判断保留派に回った。アスカの機嫌を損ねる為言葉には出さなかったが、その紅い瞳の奥でレイとシンジの関係について考えていた。

 そうこうしている内にトウジ、ケンスケが現れ、マナを始めとするB組のメンツもやってくる。また転校生を一目見ようと学校中の生徒が押し寄せてくる。


 しかし、ヒカリはまだ来ない・・・・・・・・・・・・・・

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 単なる電波SSとして始まった「思春期」ですが・・・何故か意図したものと全然違う方向に(爆)やはり電波の入り具合で変化してしまいます(笑)

 ついでなのでちょっと登場人物を整理しましょうか

シンジ ・・・主人公。まだまだ秘密が一杯。
レイ  ・・・ヒロイン。秘密、秘密のかたまり。出番が少ない(笑)
アスカ ・・・SAL兼、幼馴染。だから、ちゃんと彼氏がいるんだって(笑)
カヲル ・・・A組生徒。
ケンスケ・・・A組生徒。作者のオモチャ。
トウジ ・・・A組生徒。
ヒカリ ・・・A組生徒。委員長。トウジのことが好き。
マナ  ・・・B組生徒。自称「鋼鉄のガールフレンド」なんのことやらさっぱりわからん。
マユミ、ムサシ、ケイタ・・・B組生徒。脇役。
ミサト・・・A組担任
マコト・・・A組副担任
リツコ・・・B組担任
マヤ ・・・B組副担任


さてさて、次回からは2章ということで新しいファイルになりまする。
今後とも宜しくお願いいたします。


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