思春期だね碇君!!

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031111



 いつまでも手をつないでいけると思っていた
 何があっても離れることはないと思っていた

 どんなときでも、君だけはいてくれると信じていた
 いつだって、抱きしめてくれると信じていた

 声が、聞こえますか?
 想いは、届いていますか?



 ・・・・・・・・・逢いたいよ



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031113

 夕方、ユイは愛するゲンドウとシンジの為に心底幸せそうに歌いながら料理をしていた。そこへ誰かが帰ってきたらしく玄関で音がする。恐らくシンジだろうとユイは思う。ゲンドウは7時を過ぎなければ帰ってこないだろう。
 (今日はいつもより遅いのね。学校が始まったばかりだからお友達と色々話すことがあったのね)
 とユイは息子の交友関係を思い浮かべ微笑む。普段シンジは帰宅部な為、帰って来るのは大抵は大学の研究所に勤めているユイよりも早い。といってもトウジやケンスケらに誘われて寄り道をすることはよくある事なので、遅くなることに関してはユイは気にしていなかった。
 果たして、リビングに姿を現したのはシンジだったがユイは軽い違和感を覚える。今までシンジが無言で、ただいまの一つも言わずに帰ってくることはなかった。そこら辺の躾はしっかりとしてきたつもりである。

 「あらシンジ帰ったの?」

 「帰ってきたなら挨拶くらいしなさい」と続けて言おうとしたユイはシンジの顔を見て、途中で言葉が消えてしまった。それくらいシンジの表情は危なかった。昼休みに自分に向けられたレイの声を聞いてからずっとこうなのだが、ユイにしてみればそんなことは知る由もないのでただ恐いだけだ。
 シンジはそのままフラフラと自分の部屋へと入ってゆく、ユイはショックで固まったままその場に立ち尽くすだけだった。

 そして、夕食後、アスカもやってきて緊急会議が開かれる。

 「昨日も何かボーっとしてたけど・・・今日のはそんなレベルじゃないわ」
 「うむ、アスカ君何か心当たりはないかね?」

 流石のゲンドウもシンジを見て引いてしまったらしく、「問題ない」とは言わなかった。まあ、レイを除けば誰も今のシンジを見て問題ないとは言わないだろう。

 「シンジ、今日のお昼に転校生に箸を貸したんですよ。それからです」
 「転校生、そういえば昨日も」
 「ええ、綾波レイって言うんですけどとっても無愛想で無表情で無口で何考えてるのか全然わからないんですよ。シンジも何が良くてあんなのに惚れたんだか・・・」

 ユイに向かってレイの事、シンジがレイに一目惚れしたこと、今日の昼休みのことなどを説明するとアスカはシンジの部屋の方へ顔を向け大げさに溜息をつく。自分はしっかり彼氏がいるのに、シンジに好きな人が出来るとどこか寂しいような、物足りないような何とも言えないもどかしさを感じる。それがなんなのかも、何故なのかもさっぱりわからなかった。単に認めたくなかっただけなのかもしれない、シンジが自分の傍から離れてゆくことを。アスカは自分でも気付いていなかったが、無意識に誰よりもシンジを信用して頼っていた。たとえ、今の恋人と別れようとも、季節が移り変わり、新しい環境に身をおくことになったとしてもシンジだけは自分の傍にいてくれると思っていた。しかし、現実にはそんなことはありえない、アスカにもわかっていた。だからこそ認めたくなかったのかもしれない。
 ユイはそんなアスカを優しく見つめるだけだ。アスカは自分の足で大人になるための道を歩いている。その邪魔をしたくないから見守る優しくもあり厳しくもある育て方だがユイはアスカのことをシンジ同様、自分の娘のように愛していた。そしてアスカの言葉でシンジ事情を理解し納得すると、いつも通りのユイに戻ってアスカに語りかける。

 「成る程ね、シンジは恋をしたのね。それならいいわ放っておきましょう?」
 「ええっ?でもっ」
 「大丈夫よ。それにしてもシンジが女の子を好きになるなんてねぇ、フフ、ねえゲンドウさん」
 「そうだな、ユイ。月日が経つのは早いものだ」

 アスカは二人を見るとそれ以上何を言っても無駄なことを悟る。ユイとゲンドウがこうなったらもう何を言っても無駄である事は永年の付き合いで充分すぎるくらい理解している。もう一度シンジの部屋の方を向くと今度は小さな小さな溜息をつくと家へと帰っていった。
 残された、ユイとゲンドウはアルバムを引っ張り出してシンジの幼い頃の話を始める。


 後にアスカはここで帰ってしまったことを後悔するのだった・・・・

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031119

 「オハヨーございまーす!!」

 新学期が始まって3日目。今日も今日とてアスカはシンジを起こしにやって来る。それはアスカにとって習慣であり毎朝の日課であった。今は学校がある日だけだが、一昔前は日曜日まで起こしに来て、そのまま日が暮れるまで二人きりで遊んだものだった。
 いつからだろう? 日曜日に起こしに来なくなったり、周囲の目を気にし始めて一緒に行動しなくなったりするようになったのは。もう思い出せなかった。

 シンジは当然のようにリビングで朝食を食べていた。どんなにユイや自分が毎朝もっと早く起きるように口を酸っぱくして言い続けても無駄だったのに・・・・・

 「おはようアスカ。ちょっと待ってて」

 普通だった。普通過ぎて恐いくらいだった。取り敢えず深く考えても仕方ないと諦めシンジを急かして学校へと急ぐことにした。シンジもそうだがヒカリも気にかかる、なんと言っても親友なのだから。

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031123

 何事もなく学校に着くが、教室にヒカリの姿はなかった。因みに新学期から3日間、シンジがこんな早い時間に学校に来るのは新記録である。入学以来(かつての)女子人気ランキング総合1位の"女王"アスカと二人して毎朝遅刻ギリギリで現れるシンジの姿は、当然のことながら全校に知れ渡り知名度は高かったので、この異変も瞬く間に全校生徒の知るところとなり、天変地異の前触れかと慄くものもいれば、いつまで続くかトトカルチョを開催する者もいた。(注1)

 さて、我らが"2−Aの母"洞木ヒカリ嬢だが、今日も未だ登校していない様子だった。アスカは誰にも気付かれないように、黙ってシンジの隣の席に座るレイを苦々しげな表情で見つめていた。それというのも、毎朝教室に入るとシンジとアスカは皆に挨拶をする。当然、レイにもだ。しかし、相変らずレイは無反応だった。文庫本から目を離そうとしないレイに、アスカはムっとして余程文句を言ってやろうかと思ったが、ユイとの会話を思い出し、放置することに決めた。シンジはというと、全く気にした様子もない。少なくとも表面上は。
 と、ここまでは平穏な朝だった。2−Aの一般生徒はこのまま何事もなく1日が始まり、1日が終わることを祈っていたが、そんなささやかな願いは無残にも踏みにじられる。
 

2日連続遅刻ギリギリのヒカリの登場によって・・・






注1 噂を広げているのも、胴元をやっているのも勿論彼(笑)

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031127

 A組生徒は、ヒカリ以外は全員登校し、例によってマナがB組に引き戻されてからミサトを待っていると、教室の後ろのドアがガラガラと音をたててゆっくりと開けられた。一部の生徒を除いたクラス一同がとてつもなく嫌な予感と想像をもって振り返りドアの方へと視線を向けると、果たしてそこには"ヒカリとおぼしき"女子がいた。
 普通に考えれば教室に空席はヒカリの席以外ないのだから、この授業が始まる遅刻寸前の時間帯に現れるのは最早ヒカリ以外にはいない筈である。にも関わらず、まず殆どの男子はそれが誰だかわからなかったし、女子もそれがヒカリなのかどうか確信をもてなかった。それくらい、ヒカリは変わっていた。いや、変わり果てていたと言ってもいいだろう。今までのヒカリとは158度くらい方向性を変えて、正に変身という言葉が相応しい感じで現れたのである。新学期が始まりレイが転校してきてから急速な速度を以って変わり続けるヒカリだが、一体ヒカリに何があったのだろうか? 無論それがトウジの言葉が原因だとは誰も想像もつかない。いや、一部アスカなどヒカリに近い存在は昨日までの言動は理解出来た。
 しかし、今日のこの、変身ぶりはアスカですら理解しがたいものがあった・・・・。

 

「何や委員長、随分イメチェンしたのう?」



 

爆雷投下



 クラス一同は心を一つにする(注1)





 やっぱり委員長なの(か)!!??




 

 そう、それはやっぱりヒカリ以外にはありえなかった。それにしても鈍感男トウジが良く気付いたものだ。惜しみない賞賛の拍手を送りたいものだが、後日ケンスケが理由を聞いたところ、
 「委員長以外全員来とったやないか」
とのこと。微妙な返答だ。ケンスケは引きつった笑いを浮かべつつ話題を変えるのだった。

 話を元に戻そう。注目の的であるヒカリだが、一体どう変わったか説明しよう!
 まあ一言で言えば、大人っぽくなったのであるが・・・耳にはピアス、唇にはリップ、その他アクセアサリーがジャラジャラ、典型的なギャル系ファッション(注2)の今時のオシャレな高校生(注2)といった感じだ。勿論、制服も改造されていて、特にスカートの丈が随分と短くなっていた。まあ、それだけなら、見れば誰でもヒカリとすぐわかる筈。ポイントはメイクだ。見まごうばかりに素晴らしいテクニックで大人向けのメイクを施されていたのである。それは女子の目から見れば明らかにプロのメイクだった。無論、大人っぽくなったと言っても元がヒカリであるからして限界がある。それでも充分高校生として通じるものがあった。ヒカリはそこはかとなく妖艶さが漂い、その憂いを含む瞳には見る者の心を溶かす魔力が備わり、瑞々しいピンクの唇を見ればフラフラと血迷うこと間違いなしの色気全開少女と成り果てていた。
 But、当然、当たり前のことながら、お約束ではあるがトウジには効果がなかった。もっともそのことにヒカリが気付き阿修羅となるのは昼休みのことだった。現在はトウジが誉めてくれた(?)ことに素直に喜び頬をうっすらと紅く染めて、黙って席に着くだけだった。
 アスカはそんなヒカリを心配し、ケンスケは喜び撮影にいそしむのであった。





注1 毎度毎度、クラス一同が心を一つにしますが、勿論それは名もなき一般生徒のことです。シンジ、レイ、アスカ、カヲル、トウジ、ケンスケ、ヒカリは大体除外されます(爆)
注2 作者はファッションもそうですが、今時とか流行とかそういったものに縁がありません!!(ドキッパリ)だから適当です。それにしても2015年の高校生はどうなっているのやら・・・・

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040108

 午前中の授業が終わり、昼休みとなる。生徒にとって貴重な憩いの時間だ。
 特に、2−Aの生徒にとっては。
 今日のヒカリはファッションを除けば、別段いつもの"普通"のヒカリだった。しかし、昨日、一昨日とヒカリの阿修羅振りを目の当たりにしてきた一同は地雷を踏むことを恐れ、極度のプレッシャーと戦いながら息を潜めて午前中を過ごしたのである。そして、昨日と同じくヒカリたちはお弁当を食べに屋上へ行き、2−A生徒たちは寿命を削り取るような強大なプレッシャーから解放され、漸く心を落ち着かせることが出来るのだった。


 屋上

 「ハイ、鈴原お弁当」
 「おお!すまんのう〜委員長」
 「あんた、『すまんのう〜』、じゃ、なくて『ありがとう』、でしょ?」
 親友のヒカリのことを想うとついつい口を挟んでしまうアスカだった。本当なら放っておくべきなのだろうが、ヒカリと鈴原ではどれだけ待っても進展しない可能性もある。いや、進展しない可能性のほうが高い気がする。そう思うと、元々がせっかちで何事にもストレートな性分であるアスカには黙っていられないのだ。もし、このままヒカリの気持ちに鈴原が気付かずに中学生活が終わってしまったら? と考えるとどうにもイライラしてくる。アスカだけはヒカリがどれだけ健気にトウジのことを想ってきたのかを知っている。ずっと昔からだ。近寄ろうとしても中々近寄れないで、影で一人心を震わすヒカリを見てきた。だからこそヒカリ以上にトウジの態度が気になるのだ。
 「アホ!この言葉に感謝の気持ちが篭っとるんじゃ」
 「どうだか」
 「なんやと〜」
 「男だったら感謝の言葉くらいハッキリ、堂々と口にしなさいよ!」
 「ぐっ」
 「あんたね〜お弁当だってただじゃないのよ。浮いた昼食代でヒカリにお礼をするとか、」
 その瞬間、アスカはトウジの隣に座るヒカリから殺気の篭った視線を感じて背筋が冷たくなるのを感じた。ヒカリの目は『仲、いいのね、アスカ』と言っている。これ以上鈴原と喋ってはいけない、と本能的に察知したアスカは唐突に話題を変えてシンジに話しかける。
 「とっ、ところでシンジ、あんた最近いやに早起きね」
 「うん、1秒でも早く学校に来たいから」
 「おやシンジ君、正確には学校に来たいんじゃなくて、綾波君に逢いたいからじゃないのかい?」
 「やっやだな〜カヲル君からかわないでよ〜」
 顔を真っ赤にしながら言っても説得力はないと思うが、シンジの隣に座るレイは我関せずで全く会話を聞いていないようだった。

 しかし、ここから会話が流れ、ヒカリを阿修羅にしようとはお釈迦様でも思うまい。ましてやアスカに、いやそこに居た全ての者にわかる筈もなかった。

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040122

 「それにしてもトウジ、委員長のお弁当って美味しそうだね」
 「おお!ごっつ旨いで〜」
 (イヤン!鈴原ったら〜。鈴原が望むなら一生鈴原のご飯は私が作ってあ・げ・る! なんてキャー恥ずかしいーーーー)
 頬を真っ赤に染め至福の表情を浮かべるヒカリだが、シンジの方を向いているトウジには無論わからなかった。
 「今日は体育があったからな〜やっぱり空腹は最高の調味料やな!」(注1)
 (・・・・・え?・・・・・・)
 笑顔のまま停止するヒカリ、当然だがトウジは全く気付いていない。
 (今、何か聞こえた、かしら?)
 ガッハッハ、ガッハッハと笑いながら更に墓穴を掘り続けるトウジ
 「シンジもいっぺん作ってもらうとええで!」
 (・・・・・どういう、こと・・・?)
 「い、いや、遠慮しておくよ。ハハ・・・ハ」
 (バカシンジ!しっかりフォローしなさいよね!!)
 (シンジ君・・・・)
 (シンジ、この危機的状況をわかってないのか!?)
 そう、まさに事態は一触即発なのだ。シンジも当然気付いている。いくら鈍かろうと、トウジと喋っているということはトウジの方を向いているということだ。つまり、自然とトウジの隣に居るヒカリの姿も目に入るわけである。気のせいか、ヒカリの背中から手が4本ほど伸びているように見える。
 しかし、いくら状況を理解できたところでシンジは所詮シンジ、何も出来るわけはない、そこで必然的にアスカの出番となるのだった。
 「あんたね〜何よその態度、今からヒカリの旦那のつもりなの〜?」
 出来るだけ、明るくからかいの響きを含ませる。「旦那」というキーワードにヒカリが反応してくれればいいのだが・・・・・・
 (旦那・・・・旦那・・・奥さんは私・・・・キャーーーイヤーーン、不潔よ〜〜〜でも、愛し合う二人なら不潔じゃないわ!寧ろ神聖で美しい事なのよ〜〜鈴原〜〜!!)
 しっかり反応していたようだ。背中にうっすら見えていた腕も消え去り、またもや頬を薔薇色に染め、更に目の周りに星を瞬かせあっちの世界に逝ってしまっている。
 だがそれを見たアスカが安心する間もなく墓穴掘りを再開するトウジ。
 「な、何を言っとるんや!!何でわしがイインチョの旦那なんや!?」
 「だって、トウジ、委員長の手作り弁当じゃん」
 何とかフォローしようと思うシンジだが、カヲル・ケンスケから見れば油を撒き散らしているようにしか見えない。
 「転校生かてそうやないか!・・・しっかし、転校生ももちっと旨そうに食えへんのかいな?」
 「トウジ、『転校生』じゃなくて綾波だよ」
 多少真面目な目つきになり注意するシンジ。それを聞いたトウジもすぐに改める。ここら辺の潔さというか、男らしく素直に自分の非を認め謝るところがヒカリの好感度大なのであったが、それがまた墓穴を大きく深く掘り進めることになる。
 「ああ、そやなちゃんと名前があるのに『転校生』は失礼やな。すまんな綾波」
 「別に、いい」
 (え?)
 (どういうこと?)
 (今、何か言ったわよね?)
 たった一言喋るだけで周囲に驚きを与えるレイであった。そして結果的にこれが更にヒカリを刺激し、悲惨な結果を招くことになるのだが、勿論そんなことはわかる筈もなく会話は続けられてゆく。
 「ま、まあ、それより折角そないに別嬪な顔しとんのやから、飯くらいもっと旨そうに食ったらどないや」
 「ごめんなさい・・・私こういうときどうすれば良いのかわからないの・・・・」
 「そういう時は笑うもんや」
 「そう、笑うのね」

 そう言って笑うレイに一同は息をするのも忘れ見とれるだけだった。まさしく美の極致、どんな偉大な天才であれこの笑顔を絵にすることも彫刻にすることも写真に閉じ込めることも不可能であろう。ギリシア神話の女神たちも嫉妬すら出来ずにただ見とれることしか出来まい。それくらいにレイの笑顔は美しく、柔らかく幻想的な雰囲気を醸し出していた。これを生で見た男性は全てレイに恋をして一生眠れぬ夜を過ごすことになり、女性はショックのあまり引き篭もってしまうだろう。
 もっとも、ここに居る面々は特殊な人間ばかりなのでその点では問題なかったが、別の、もっと大きい問題が勃発してしまった。

 即ち、いまや完全に阿修羅となったヒカリであった。

 というかさっきからギリギリのところで回避していたが今度こそは回避しようがないと、アスカ、ケンスケ、カヲルの3人は諦め、覚悟を決めることしか出来なかった。しかも今回は間違いなく今まで一番の暴走振りを見せるだろう事が考えずとも本能で理解することが出来た。それはさながらあまりの水量に決壊する黒部ダムのようだった。(注2)
 かように恋する少女の揺れる想いを弄んだ罪は重いのである。あまりの自重にブラックホールが出来てしまうくらい重いのである。
 しかも、よくみれば殺意の波動に目覚めたシンジが。
 もうどうなるのか誰にもわからなかった・・・・・(注3)





注1 3時間目に体育がありました。
注2 黒部ダムについてはプロジェクトXを観て下さい。
注3 作者にもわかりません(爆)。

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040201

 ヒカリが阿修羅となり、シンジが殺意の波動に目覚めた。
 そして今まさにその二人が爆発せんとするその瞬間に決死の覚悟を決めた若者がいた。
 相田ケンスケ、13歳、永遠の彼女募集中その人である。(注1)
 アスカ、カヲル、ケンスケのフラットスリーはアイコンタクトを交わし、二人の圧力に負けたケンスケが人身御供となる覚悟を決めさせられたのである。さながらその表情は特攻隊員の如く決意に溢れ凛々しく見えた。
 「綾波が喋るのも珍しいけど、笑ったのは初めてだな」
 シンジの注意をレイに向け、ヒカリに委員長としての使命を思い出してもらおうという作戦である。覚悟を決めた割には頭脳的な作戦、流石は相田ケンスケといったところか。だが悲しいことに、彼が救いの手を差し伸べた友人鈴原トウジは未だに危機迫るこの状況に気付いていなかった。というか、未だにレイの顔を見つめているままだった。
 それでも、シンジ、ヒカリの二人には効果があったらしく、殺意が消えている。もっともヒカリの背中からは阿修羅の腕が消えてはいないのだが。
 一方、レイはというと、またいつもの無表情に戻りヒカリ謹製の手作り弁当を食べていた。一体、何を考えているのか謎である。




注1
今回はケンスケに彼女作る予定だったのですが、所詮予定は未定。ここからどうやればケンスケに彼女が出来るのやら・・・・やっぱり諦めてもらうしかないよね!?

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