Re: piece to Peace ( No.32 ) |
- 日時: 2013/12/02 02:55
- 名前: tamb
- 加賀、衣笠の両名が誰なのかを詮索したくなるが、それは無粋というものか。
ミキちゃんは元気なのだろうか。 そしてでーちゃんの生存を確認。 虚構と現実が交錯する。
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Re: piece to Peace ( No.33 ) |
- 日時: 2013/12/21 18:40
- 名前: 史燕
- レイとシンジの距離は少しずつ近づいてるみたいですね。
続きが楽しみです。
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Re: piece to Peace ( No.34 ) |
- 日時: 2013/12/28 14:32
- 名前: calu
- tambさん
ありがとうございます。 年末モードにて更新も停滞気味ですが、 引き続きマイペースでいきます…。 >虚構と現実が交錯する。 つられてD・Tさんも登場!? などと 妄想だけは膨らんでいくのですが(長門行きます!)
史燕さん ありがとうございます。 >レイとシンジの距離は少しずつ近づいてるみたいですね。 個人的にはちゃっちゃとくっつけたい、のですが、妄想 が許してくれません…。不足する糖分は史燕さんやくろねこ さんの作品でチャージさせていただきます!
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Re: piece to Peace ( No.35 ) |
- 日時: 2013/12/28 14:37
- 名前: calu
- ▲▽▲▽ ▲▽▲▽
「…あ、碇くん」 「あ、綾波。…だ大丈夫、怖くないからね」 「……碇くん…イヤ」 「だ、大丈夫だからさ…もう少し力を抜いて…」 「………あ、ダメ」 「…で、でも」 「………」 「……」 「…」
「お前さんたち…何やってんだい?」
殆ど意味不明な奇声をあげ、シンジは大きく跳んだ。背後から唐突にかけられた声に条件反射的 に振り返った先に、途轍もなく恐ろしい顔が晒された生首が如く闇夜に浮かび上がっていたからだ。
「で、出たー!」 「なんでえなんでえ、出たは無えだろう。お化けじゃあるめえし」 「…え、た高雄さん?」 「おうよ。俺だよ。何をそんなに驚いてんだよ?」 「その、あまりにも顔が怖か―いや、突然声をかけられたから」 「なんかモチベーション下がるよなー。わざわざお前さんたちの後を追って届けに来たのによぉ」
え? と顔をあげたシンジの鼻先に、ホラよと差し出されたのは一本のポン酢。実のところ、先 ほどから其処彼処を探しまくっていたのだが、どうしても見つからず本格的に焦りはじめていたと ころだ。ポン酢抜きの水炊きなど考えられないのだ。
「そうだったんだ…持って帰るのを忘れちゃったんだ」 「だろうな。レジんところにポツンと残されていたからな…でもな、コレが無きゃ水炊きなんて出 来っこねえだろ? ほんでもってレイちゃんとこにはシューターなんて気の利いたもん通ってねえ しよぉ、店のシャッター慌てて閉めて持ってきたのによぉ。虎の子みたく旭ポン酢抱えて来た俺に 開口一番、出たー、なんだもんなぁ…」 「ごゴメンナサイ…少し立て込んでて…高雄さんが来たのに、その、全然気付かなくて」 「なんだぁ? 立て込んでたぁ?」 「…いえ、綾波がお豆腐を取ろうとしたんだけど…お箸で上手く掬えなかったんで…僕はただ、そ の…手伝おうと」 「ほお、それでそんなにレイちゃんに密着して、手取り足取り腰取り胸――」
ちち違うんですっ、これには訳が、と言い繕おうとするシンジはシドロモドロだ。一体どんな訳 があるというのだ。 そんなシンジを一笑に付したスキンヘッドは、まあそんなこたぁどうでもいいけどよ、そんな時 はコレだ、と陶器製の大きなスプーンのようなものをシンジに差し出した。
「こ、これは?」 「まあ、湯豆腐用のレンゲ、みたいなモンかな? 多少ご都合主義的ではあるがな、まあ使ってみな」
高雄から受け取ったレンゲをチェックしてみると、大ぶりの皿の部分に幾つかの穴が開いている。 これなら豆腐だけを上手く掬えそうだ。早速、シンジはレイが所在無げに宙に漂わせている箸とレ ンゲを交換してやった。レイは、その白いレンゲと暫くの間にらめっこした後、徐にそれを豆腐に 近付ける。
「…掬えたわ」
ヨシッ、と開閉していた左手を握りしめたシンジは、レイとのスキンシップ―もといレイの食事 のお手伝いに意識を囚われ青葱を刻むのを忘れていた事実に天を仰いだ。それでも、こいつはオマ ケだ、と精妙なタイミングで高雄から差し出された七味に大いに救済されることとなる。 次から次へとマジシャンのように色々なものを出してくる魁偉の男。シンジはネルフ購買部にあ ってコンシェルジュと呼ばれる男の真髄を垣間見た気がした。
「それじゃ俺は帰るぜ、邪魔したな」 「…あ、あの」
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Re: piece to Peace ( No.36 ) |
- 日時: 2013/12/29 20:55
- 名前: tamb
- あんまり話が展開してない。というか、冒頭部分が書きたかったんだな?(笑)
いや、何ら問題ないです。
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Re: piece to Peace ( No.37 ) |
- 日時: 2013/12/29 22:38
- 名前: 史燕
- 冒頭部分で「へっ!?」となって見事につられました。
実は一番高雄さんに感情移入して楽しんでます。
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Re: piece to Peace ( No.38 ) |
- 日時: 2013/12/31 01:09
- 名前: calu
tambさん >あんまり話が展開してない。というか、冒頭部分が書きたかったんだな?(笑) 実は、妄想が勝手に(笑) 失礼しましたーm(_ _)m
史燕さん >実は一番高雄さんに感情移入して楽しんでます。 有難うございます。実はこの高雄さんは購買部主任という設定で、サイト開設十周年 カウントダウン企画・一月スレに投下した拙作中にも出てきております。本当は別連載 の「彷徨う虹」で登場させる予定でしたが、Q準拠の本作でやっと登場させる事が出来ました。
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Re: piece to Peace ( No.39 ) |
- 日時: 2013/12/31 01:11
- 名前: calu
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「敵!?」
回廊を振り返ったレイがその先を見据えたのは僅かに数秒間のこと。携帯端末に応答するまでも無か った。端末の電源を切った後にペン型の発信機を作動させたレイは、加賀と衣笠が警備フォーメーション につく正面ロビーへと駆けだした。陽光に白濁する回廊を激しく打つレイのブーツの音に断続的に唸り をあげる機銃掃射の発射音が重なる。無数ともいえる鈍い着弾音に悲鳴にも似た硝子の粉砕音が続 くと、長く尾を曳く跳弾音が不吉に大気を裂いた。
「!」
白亜の回廊からロビーへと身を躍らせたレイは、目にも留まらぬ俊敏な動作で身を柱の陰に寄せ、 スタンディングポジションを展開する。SCAR-Hのコッキングレバーを作動させるとロビー全体に視線 を走らせ、そしてその変貌に瞠目した。 「加賀一尉! 衣笠一尉!」
レイの声に呼応するように半ば粉砕された正面ロビーのガラスが瓦解すると、その向こう側でぎり ぎりまで低くしたニーリングポジションでアサルトライフルを構える衣笠の背が姿を現した。その左腕 の上腕部から滲む血が暗い隊員服の表面をてらてらと艶めかしく光らせている。
「衣笠一尉!」 「リーダー」
先ほどまでとは異なる地底から湧いてきたような低い声の主は初老の総務局員だった。レイが身を 隠す柱の数メートル前方の柱の陰でアサルトライフルを構えている。
「加賀一尉!」 「衣笠一尉が狙撃されました。初弾は正面玄関前を警護していた衣笠一尉の左上腕部に着弾。有視 界圏内である丘陵地までのほぼ500m以内には敵の姿は確認出来ませんでしたので、7.62mmNATO弾 を使った遠距離狙撃だと考えます。もっとも次弾で私を撃ち損じて以降、セミオートで派手に撃ちこまれて ロビー内はこの有様ですが」 「衣笠一尉、の怪我の状態は?」 「フルメタルジャケット弾でした。抜けているので大丈夫です。腕を持っていかれたわけではありません。 まだやれます」
レイに状況を細かく説明しながらも、険しくなった加賀の目は正面玄関から小路が伸びる丘陵地や その周辺を抜け目なく確認している。さらに断続的に撃ちこまれた銃弾が、加賀が身を寄せる柱に 火花を散らし、レイのすぐ傍にある外来用ソファーに着弾した。ロビー前の植栽ブロックに身を潜め る衣笠がアサルトライフルで応射する。
「衣笠一尉の手当てが必要だわ」 「リーダー、今動けば危険です。じきに連中が姿を見せます。それまでは――」
加賀が言葉を詰まらせたのは、丘の上に姿を現した敵を見たからに他ならない。今、風に吹かれ て緑鮮やかな彩色を揺れ動かす芝の上に悠然とその姿を晒しているのは装輪装甲車ストライカー だった。次いで近接戦闘要員らしき歩兵が蜘蛛の子のように散開した。
「SBCT機械化歩兵部隊!? 連中、本当にヴィレなのか? …第3の少年の奪取が目的じゃあ」 「加賀一尉、わたしが衣笠一尉を」
いいえ、と頭を振った加賀はふいにその表情を緩めた。
「リーダーは、警護対象者の病室に、お願いします」 「え?」 「ここは衣笠と私とで何とか持ちこたえますので」 「それはダメ。二人で戦える相手では」 「リーダー、側面から接近した敵が病室に続く回廊を破って侵入してくることも十分考えられます」 「その通りだと思う…でも」 「リーダー、あなたの役割は、初号機パイロットを守る。違いますか?」 「……」 「なあに、簡単にはやられませんよ。警護対象者は勿論、リーダー、そしてこの状況の中で人を生 かす為に闘っている千代田婦長の為にも、です」 「解ったわ……警護対象者の病室に向かいます。でも…」 「はい?」 「…ふたりとも死なないで。お願い、だから」 「心配には及びません。じきに渚カヲルの部隊も到着します。さあ、今です、リーダー。我々が援護 するので、お行きください! 初号機パイロットのもとに!」
レイが前方に顔を向けると、植栽のブロックに背を預けていた衣笠がやや姿勢を正して敬礼して いた。返礼したレイは、緋色の眸にその若者の眩げな笑顔を刹那映した後、やおら回廊へと駆け 出した。
より激しくなった敵からの機銃掃射による銃弾が降りしだく中、加賀と眼で合図を交わした衣笠は 傍にあるリュックを手繰り寄せると、中から弾倉帯にも似たベルトを取り出し素早く腰部に装着した。
「衣笠、傷はどうだ、痛むか?」 「大丈夫です。かすり傷です、こんなの」 「そうか、撃たれた上に悪いが装甲車を頼む。あとは俺が引き受けた。渚君が到着するまでは、 何とか持ちこたえる」 「解ってますよ…これまで息を潜めてきた我々の出番がやっと来たんです。…いやあ、それにしても 考えてたよりハードだ。香取さんもオリジナルのガードは大変だって言ってたけど…」 「何だぁ、何か言ったか?」 「いいえ、何でもありません」
ひとつ息を吐くと、衣笠は慇懃な所作で帽子をかぶり直した。
「…リーダー、短い間でしたが」
そして、シンジの病室につづく回廊に向けて今いちど敬礼した。
「元、諜報二課ガード作業チーム長門班 衣笠徹、行きます!」
60キロものC-4が装着された弾倉ベルトをものともせず、豹のような身のこなしで植栽ブロック を飛び越した衣笠は、飛び交う銃弾の下を人間業とは思えない俊敏さで駆け抜け、SUVの陰に 停められたオフロードバイクに飛びついた。
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Re: piece to Peace ( No.40 ) |
- 日時: 2014/01/05 23:27
- 名前: calu
- ▲▽▲▽ ▲▽▲▽
久しぶりに口にする温かい食べ物だった。決して手を掛けた料理では無かったのだけれど、それ でもいまだ14年の眠りから覚めやらぬ堅く氷結した心の一部が徐々に溶けだしていく、そんな感覚 を覚える。こんなふうにして食事をするのはいつ以来のことだろう……そう、コンフォート、ミサト さんのマンションにアスカと居候してて、ジャンケンに弱い僕がいつも料理当番を担当してたっけ。 そのうちアスカまで料理を作りはじめて…綾波なんて、僕と父さんの為に食事会まで企画してくれて ……僕は、綾波の作る料理が心配で、それでいて楽しみで…そう、とても楽しみにしてたんだ。 そうなんだ、綾波は、温かい食べものが人の心を温かくするのを知っている、そんな女の子なんだ。 そうなんだ…だから…。
ポン酢を入れた小皿から思い詰めた顔をあげたシンジ。鍋から湧き立つ湯気越しに真正面から視界 に飛び込んできた滑らかな岩肌にも似たスキンヘッドに、ディラックの海で平和に揺られていたシンジの 魂は現実に引き戻された。
そうなんだ。今のこの状況は、わざわざポン酢を届けてくれた高雄の帰り際に僕が声を掛けたから。 良ければ一緒に、なんて僕が言っちゃったもんだから、おぅそうかい、それじゃあ御相伴にあずかろう かなってなっちゃったわけで…。何を隠そう…綾波とツーショットで食事する機会をつぶしちゃったのは、 誰あろう僕自身、なんだ。 シンジは改めて、目の前でどっかと腰をおろし、一升瓶を抱えるようにぐい飲みをあおる高雄を凝 視した。それにしても…、
(…よく飲むなぁ) (…この体なんで、食べる方は想像ついてたんだけど) (…浴びるように飲んでんのは日本酒なのかなぁ。…ミサトさんもよく飲んでたけど) (…でも、お酒を持ってたってことは、最初っからここで食べてく積りだったってことか)
自分を凝視するシンジに気付いたのか、いつしか高雄が不審げな表情でシンジを見つめている。 眉を顰めた表情はてらてら光るスキンヘッドとの相乗効果も手伝い相当に恐ろしく、諜報部の怖い オジサン達とも十分張りあうことのできるレベルである。 その天衣無縫のスキンヘッドが、ふと表情を緩めニカッと脂の乗った中年独特の笑みを浮かべた。
「なんでえなんでえ、飲みてえんなら言ってくれりゃあいいのに、シンジ君よぉ」 「へ…いや、僕はその、お酒は全然ダメなんで」 「なんでえ、面白くねえの。折角ミサトも気に入ってた獺祭なのによ」 「…す、すいません」 「いいよいいよ。酒ってのは無理強いされるもんじゃあねぇ。楽しく飲まねえと。なぁ、レイちゃんよ」 「…?…」 「一杯どうだい? いつもあの髭の暗い司令やらエルダー副司令と一緒じゃ大変だろう。ストレス 溜まっちゃうよなー。これグーと空けてスカーと全部忘れりゃ――」 「だだダメですよ、高雄さん! 綾波にお酒なんて飲ませちゃ!」 「ちぇっ、松の内だってのに堅えんだもんなー。ま、カノジョなんだもんな。心配すんのも無理はねえ」
い、いやだから、カノジョってのは、その、と口籠るシンジは出鱈目にバケツの氷水をかき混ぜ ながらもペットボトルを取り出し、紙コップと一緒にレイに差し出した。が、首まで赤くなった顔では レイを直視できない。
「…?…」 「あ綾波、これ飲んでよ。お水だからさ、安心していいからね」 「うん」 「あと、このあたりのお野菜ももう食べれるからね」 「うん」 「綾波、どうかな? …その、口に合う、かな?」 「うん…おいしい、碇くん」
初めての鍋料理を前にして戸惑いがちのレイに甲斐甲斐しく世話を焼くシンジ。そんな様子を 高雄は平和そうな笑みを浮かべながら見つめている。
「…やっぱ似合ってるよ、お前さんたち」 「な、た高雄さん、ままた―」 「何、信号機みたくいちいち反応してんだよ? それより悪いけどよ、バケツん中でとっておきの 酒を冷やしてんだけど、取ってくれんか?」 「あ、はい。お酒、ですか?」 「おう、正月用に取っておいた大吟醸だからな。ちゃんと冷やしとかねえとな」
既に五合ほど酒が入っている高雄は上機嫌この上なし。ここにきてシンジという肴を前に、眷顧 の美酒をもって更なる酩酊にその身を委ねるつもりか。だがしかし、シンジにだってミサトから学習 した過去の経験則が頭の片隅に残っているのだ。殆ど条件反射のように、シンジはバケツの氷水 をかき混ぜながら以後の対処法に想いを馳せた。
「これ…ですか、高雄さん?」 「ん? おおソレだソレ」
シンジからペットボトルを受け取るや、高雄は歓喜の声をあげた後、ぐい飲みに慎重に注いで キューと一気にあおる。シンジには理解できないが、この瞬間が酒飲みにとっては堪らない瞬間で あるというのは、これまたミサトから客観的に学習したこと。が、しかし何故か高雄の顔一面に貼り 付いていた恍惚の表情は、雲高き秋空が如く突如としてその様相を変えた。眼はくわと見開かれ、 狭隘な室内に灯るランプの光に照らされたスキンヘッドの紅潮が臨界点に達したかに見えた瞬間、 熊のような筐体から喜悦とは程遠い奇声が絞られた。
「……シンジ君よ……こりゃ、酢だ」 「えうっ? お、お酢、ですか?」 「チ、チクショオ…な、なんで酢がこんなとこに有りやがんだ…悪いけどよ、別のがバケツに残って ねえか?」 「ちょ、ちょっと待ってください……いや、見当たりません、けど」 「そんな筈無えんだけどなー。くそっ、どこに行っちまったんだ、俺の大吟醸はよぉ」
そんな二人のやり取りを横目に、レイが一気に空けたコップをテーブルに置いた音がタムと響いた。 初めていただくポン酢に喉が渇いていたのだ。 レイはシンジから与えられたペットボトルから二杯目を紙コップになみなみと注ぐと、こくこくと可愛 いい喉を鳴らしながら一気に飲み干した。
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Re: piece to Peace ( No.41 ) |
- 日時: 2014/01/06 02:07
- 名前: 史燕
- 続編投下お疲れ様です。
>いい喉を鳴らしながら一気に飲み干した。 あれ、ちゃんとシンちゃんが渡しましたよね……
続きがいろんな意味で気になります。 (だいじょうぶかなあ、主にシンちゃんのメンタルが)
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