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piece to Peace
件名 | : あっ、ちょっ、まっ。 |
投稿日 | : 2021/06/06 16:17 |
投稿者 | : のの |
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caluさんYeahー!
とにかく更新してくれて、うれしい。
piece to Peaceも7年以上たつんですなあ。
長くかかっても終わらせようと前に進んでくれて嬉しいです。
まったく人のこと言えないですけど、僕もちょこちょこ進めていくつもりです。
とにかく更新してくれて、うれしい。
piece to Peaceも7年以上たつんですなあ。
長くかかっても終わらせようと前に進んでくれて嬉しいです。
まったく人のこと言えないですけど、僕もちょこちょこ進めていくつもりです。
件名 | : Re: piece to Peace |
投稿日 | : 2021/06/06 12:19 |
投稿者 | : calu |
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▲▽▲▽ piece to Peace ◆◇◆◇
声を押し殺しレイは泣いている。とめどなく溢れる涙がぽろぽろと頬を伝う。
これまで経験したことの無い感情に襲われている。押し潰されそうなまでに胸が苦しい。
本当に短かったけれどシンジと過ごした束の間の時間。それを思い起こすと暖かいもので
胸が満たされた気がした。そして今、別離の刻をむかえ、かつて無い程にその胸は悲鳴をあげているのだ。
レイは別離ごとに苦しくなる自分自身が理解できなかった。
行かなくてはならない。先に進まなくてはならない。今度こそ目前のこの少年に望む世界を取り戻してもらう為に。
あなたの望んだ世界で、満たされた時を紡いでもらうの。あなたの幸せ、それがわたしの願い。宿願だから。
あなたが求める「綾波レイ」だったらそう願う、と思う。だからそうするの。
そのためにこの命は使う。それがわたしの願いだから。だから大丈夫。……大丈夫なの。
だから、レアセールのトビラを開いたわたしは…次の世界でふたたび巡り合う「あなた」に、わたしは……。
この世界での出来事も、一緒に過ごした時間も、何もかも巻き戻された、わたしは……。
「………」
とうとう足を止めてしまったレイ。俯き静かに背を震わせている。
「…代わりなんて…いないよ」
「……」
「…綾波は綾波しかいない……綾波じゃないとダメなんだ」
「…いかり…くん」
レイを抱きしめその髪を優しく撫でるシンジ。今この腕の中にいる少女と離れることなど出来ない。
できる筈もなかった。いま自分にできることはただ一つ。自分が今の気持ちに正直になること。
自分自身で進むべき道を決めること。後悔しないように。決して後悔しないように。そう、十四年前の
あの日のような後悔は二度としたくはない。
今いちどレイの眸を覗きこんだシンジ。レイの涙に濡れた眸はぎりぎりの狭間で揺れている。
「僕もいっしょに行くよ」
「いかり…くん?」
「全てを理解できた訳じゃないけど、綾波と一緒に行きたい。…カヲル君とは槍と第13号機を使って
世界を修復するって約束したけど…このまま綾波を一人で別の世界に行かせることなんて出来ないよ。
ここでお別れなんて絶対に嫌だよ。…僕もレアセールとやらをくぐって綾波を助けたい。一緒に僕たちが
望む世界を取り戻したいんだ」
「碇くん、それはダメ。とても危険」
「どうしてさ!? 綾波の話からすると、僕がそこをくぐった時に僕の複製がこの世界に送り出されるん
じゃないのか?」
「それは、そう。…でもレアセールをくぐる事が出来るのは、そこまで歩んできた道に悔恨の想いを抱いて
いるヒトだけ。あの時上手くできていたら…もう一度やり直すことが出来るのだったら…、そんな気持ちを
持っているヒトだけなの。レアセールはそんな想いの累積が創り上げた伝説のトビラだと言われているわ」
「……」
「碇くんは渚くんの計画に希望を見出し、未来を描いているわ。そんな碇くんにはレアセールをくぐる事は
できないの。例えくぐれたとしても、時空に欺瞞と捉えられどんな作用が起こるか解らない。
碇くんをそんな危険な目に遭わせる訳にはいかないわ」
首を横にふったシンジ。十四年前のあの日、既に後悔はし尽くしている。
「構わない。このタイミングで綾波から真実を聞き出したのも僕。そしてそのトビラをくぐると決めたのも
僕なんだ。何が待ち受けていようが僕は受け入れるよ。…だから、だから綾波と一緒に行きたい」
「…いかり、くん」
「…綾波」
地底を巡る風がレイの髪を梳いた。
大地を揺らしていた鳴動はいつしか息をひそめ、あたり一面は静寂に包みこまれてる。
しばらくしてレイは小さく頷いた。
「…でも、どんな事があっても、あなたはわたしが守るから」
「ぼくが綾波を守るよ。ずっと守っていくよ」
ふたたび涙で頬を濡らしはじめたレイに、真新しいショパンの楽譜を掲げたシンジ。
泣きやんだレイを促すように、その手を差し伸べる。
しっかりと手を握りあったふたりは、広大な空間の深部へと歩を進めていった。
一歩また一歩と。
ふと、何かしら囁きにも似た音がレイの耳をくすぐった。
振り返った先には、いつシンジのポケットからこぼれおちたのか、S-DATが鈍色の光沢を放ちながら
ふたりの背を見送っている。しかしレイはそれをふたたび手に取ろうとはしなかった。しばらく留めていた
視線を切り前方に向き直る。もう振り返ったりはしない。シンジとともに一歩一歩噛み締めるようにレイは
歩を進めた。やがてふたりの前方に地底湖がその姿を現した。白っぽく光る湖岸からは湖の中に乳白色の
トビラが淡く輝いているのが見て取れた。
しっかりと手を繋ぎあった二人は、湖に続く小径を前に静かに顔を見合わせた。
レイに向けられたシンジの眼差しはどこまでも穏やかで優しい。
「行こうよ、綾波」
「うん」
今まさにはち切れんばかりに膨れ上がるレイの胸の内。
ただのイレモノだったわたし。
偽りの魂によってもたらされたこの胸の内に棲むココロというもの。
トビラの向こうの世界での行く末に想いを馳せたとき、幾層かのイメージがレイの脳裏にその姿を現し、ふたたび涙がレイの頬を濡らしはじめた。
碇くん
綾波、どうしたの?
やっと…やっと見つけたの
何を?
広大な空間の中で再び尾を曳き出した鳴動は、
千夜一夜を紡ぐ旋律となり、
ふたりにとっての夜想曲になった。
乳白色の光に満ち満ちたトビラを前にその影を淡くしていく二人のシルエット。
寄り添う二人の影はやがてひとつになった。
そして、二人の希望へのトビラをゆっくりと開いていった。
fin
声を押し殺しレイは泣いている。とめどなく溢れる涙がぽろぽろと頬を伝う。
これまで経験したことの無い感情に襲われている。押し潰されそうなまでに胸が苦しい。
本当に短かったけれどシンジと過ごした束の間の時間。それを思い起こすと暖かいもので
胸が満たされた気がした。そして今、別離の刻をむかえ、かつて無い程にその胸は悲鳴をあげているのだ。
レイは別離ごとに苦しくなる自分自身が理解できなかった。
行かなくてはならない。先に進まなくてはならない。今度こそ目前のこの少年に望む世界を取り戻してもらう為に。
あなたの望んだ世界で、満たされた時を紡いでもらうの。あなたの幸せ、それがわたしの願い。宿願だから。
あなたが求める「綾波レイ」だったらそう願う、と思う。だからそうするの。
そのためにこの命は使う。それがわたしの願いだから。だから大丈夫。……大丈夫なの。
だから、レアセールのトビラを開いたわたしは…次の世界でふたたび巡り合う「あなた」に、わたしは……。
この世界での出来事も、一緒に過ごした時間も、何もかも巻き戻された、わたしは……。
「………」
とうとう足を止めてしまったレイ。俯き静かに背を震わせている。
「…代わりなんて…いないよ」
「……」
「…綾波は綾波しかいない……綾波じゃないとダメなんだ」
「…いかり…くん」
レイを抱きしめその髪を優しく撫でるシンジ。今この腕の中にいる少女と離れることなど出来ない。
できる筈もなかった。いま自分にできることはただ一つ。自分が今の気持ちに正直になること。
自分自身で進むべき道を決めること。後悔しないように。決して後悔しないように。そう、十四年前の
あの日のような後悔は二度としたくはない。
今いちどレイの眸を覗きこんだシンジ。レイの涙に濡れた眸はぎりぎりの狭間で揺れている。
「僕もいっしょに行くよ」
「いかり…くん?」
「全てを理解できた訳じゃないけど、綾波と一緒に行きたい。…カヲル君とは槍と第13号機を使って
世界を修復するって約束したけど…このまま綾波を一人で別の世界に行かせることなんて出来ないよ。
ここでお別れなんて絶対に嫌だよ。…僕もレアセールとやらをくぐって綾波を助けたい。一緒に僕たちが
望む世界を取り戻したいんだ」
「碇くん、それはダメ。とても危険」
「どうしてさ!? 綾波の話からすると、僕がそこをくぐった時に僕の複製がこの世界に送り出されるん
じゃないのか?」
「それは、そう。…でもレアセールをくぐる事が出来るのは、そこまで歩んできた道に悔恨の想いを抱いて
いるヒトだけ。あの時上手くできていたら…もう一度やり直すことが出来るのだったら…、そんな気持ちを
持っているヒトだけなの。レアセールはそんな想いの累積が創り上げた伝説のトビラだと言われているわ」
「……」
「碇くんは渚くんの計画に希望を見出し、未来を描いているわ。そんな碇くんにはレアセールをくぐる事は
できないの。例えくぐれたとしても、時空に欺瞞と捉えられどんな作用が起こるか解らない。
碇くんをそんな危険な目に遭わせる訳にはいかないわ」
首を横にふったシンジ。十四年前のあの日、既に後悔はし尽くしている。
「構わない。このタイミングで綾波から真実を聞き出したのも僕。そしてそのトビラをくぐると決めたのも
僕なんだ。何が待ち受けていようが僕は受け入れるよ。…だから、だから綾波と一緒に行きたい」
「…いかり、くん」
「…綾波」
地底を巡る風がレイの髪を梳いた。
大地を揺らしていた鳴動はいつしか息をひそめ、あたり一面は静寂に包みこまれてる。
しばらくしてレイは小さく頷いた。
「…でも、どんな事があっても、あなたはわたしが守るから」
「ぼくが綾波を守るよ。ずっと守っていくよ」
ふたたび涙で頬を濡らしはじめたレイに、真新しいショパンの楽譜を掲げたシンジ。
泣きやんだレイを促すように、その手を差し伸べる。
しっかりと手を握りあったふたりは、広大な空間の深部へと歩を進めていった。
一歩また一歩と。
ふと、何かしら囁きにも似た音がレイの耳をくすぐった。
振り返った先には、いつシンジのポケットからこぼれおちたのか、S-DATが鈍色の光沢を放ちながら
ふたりの背を見送っている。しかしレイはそれをふたたび手に取ろうとはしなかった。しばらく留めていた
視線を切り前方に向き直る。もう振り返ったりはしない。シンジとともに一歩一歩噛み締めるようにレイは
歩を進めた。やがてふたりの前方に地底湖がその姿を現した。白っぽく光る湖岸からは湖の中に乳白色の
トビラが淡く輝いているのが見て取れた。
しっかりと手を繋ぎあった二人は、湖に続く小径を前に静かに顔を見合わせた。
レイに向けられたシンジの眼差しはどこまでも穏やかで優しい。
「行こうよ、綾波」
「うん」
今まさにはち切れんばかりに膨れ上がるレイの胸の内。
ただのイレモノだったわたし。
偽りの魂によってもたらされたこの胸の内に棲むココロというもの。
トビラの向こうの世界での行く末に想いを馳せたとき、幾層かのイメージがレイの脳裏にその姿を現し、ふたたび涙がレイの頬を濡らしはじめた。
碇くん
綾波、どうしたの?
やっと…やっと見つけたの
何を?
広大な空間の中で再び尾を曳き出した鳴動は、
千夜一夜を紡ぐ旋律となり、
ふたりにとっての夜想曲になった。
乳白色の光に満ち満ちたトビラを前にその影を淡くしていく二人のシルエット。
寄り添う二人の影はやがてひとつになった。
そして、二人の希望へのトビラをゆっくりと開いていった。
fin
件名 | : Re: piece to Peace |
投稿日 | : 2021/06/06 12:17 |
投稿者 | : calu |
参照先 | : |
■□■□ piece to Peace ▲▽▲▽
「…いや……いやぁ」
ミキの名を呼ぶレイの声が爆音の残響にかき消される。
「…長門三佐…」
天地が割れるまでの爆音の残響は広大な空間に吸い込まれ、やがてあたり一体は静寂に包まれた。
いまだ思うように動かない身体をやっとの思いで岩場の上へと這いあがらせたレイ。そこに倒れ臥す
ミキを視界に捉えると瞠目した。
「…長門三佐!」
覚束ない足取りで駆け寄りミキをその胸に抱いた。
声のかぎりをあげてミキの名を呼ぶ。何度も何度も繰り返し繰り返し。
「長門三佐!?」
レイの腕の中で微かに身体が震えたような気がした。ややあって、う…んと眉根を寄せた後、
ミキは眩しそうに瞳を開いた。
「……あ、れレイちゃん? だダメよ。早く、レアセ―」
「長門三佐…怪我、怪我は?」
「…あたしは大丈夫。でも…何? 撃った瞬間…何かがどかーん、て」
戦闘のあった現場は夥しい硝煙に包まれている。敵戦闘員が集結していた付近の損傷は激しく、深く抉られた
通路はもはや原型をとどめていなかった。其処彼処にはまだ小さな火がくすぶっている。
「おーい」
その時どこからともなく牧歌的な呼び声が響いた。よろめきつつも機械のような動作でハンドガンを構え直すミキ。
撃つな撃つなと濛々たる硝煙を割ってスキンヘッドが現れた。
「高雄一尉!?」
「おうよ、俺だよ!」
で、でたあーとミキがドン引くとレイは目をぱちくりさせた。
「バカ、生きてるよ。ちゃんと足も付いてんだろ、ったく」とぱんぱん埃をはたきながらのっしのっしと歩いてきた。
「…高雄さん、良かった。あたし、てっきりやられちゃったのかと…」
「…ああ、まったくもって危なかったよ。俺も入口んとこで踏ん張ってたんだけどよぉ。すげえ弾幕張られたとこに
RPGが見えたんでな、ダッシュで後退した途端に成形炸薬弾ぶちこんできやがったんで、なりふり構わずお堀んなかに
飛び込んだわけさ。糞みたいなLCLん中で命拾いしたって勘定さ…ああまだ臭え…トホホ…」
「それじゃあ、敵は…」
「連中は俺が吹っ飛ばされたって思っただろうからな。LCLから這い上がった俺が、今後は後ろから連中が残してった
RPGを担いでひたひた追っかけてったわけさ」
「…そう、だったの…良かった」
「全くさ、なんてったって連中に追いついたらよ、長門一人で会敵してんだからよぉ。敵のレーザーサイト受けまくってんだから、
慌ててぶっ放したのさ。どうでぇ、組んでたんが俺で良かったろ!?」
「うーん、杉さんならもっと良かったかなぁ」
「ちぇっ、相棒殿は今頃シンジ君とこだろ…と、そろそろ起動の時間だな。第13号機のよ」
いっそう重くなった鳴動が思い出したようにとぐろを巻き広大な空間を震わせ始めた。
「レイちゃん」
レイは小さく頷くとぎこちなくミキの背に手を回しその胸に頬を当てた。
「…いってくるわ」
「レイちゃんの希望が叶うこと、祈ってる」
レイを激励するひときわ大きな高雄の声が木霊した。
ふたりが見守る中、地底湖へとゆっくり足を進めるレイ。
岸から湖の中に延びる階段を一歩、また一歩としっかり歩を進める。
どこから差し込んでいるのか湖上からの光彩を織り交ぜLCLが煌めいている。
ややあってその姿を露わにしたレアセールのトビラは朧な光に包まれていた。
限られた命。偽りの魂を持つただの複製品だった私。
碇司令の命令をただ待つだけの存在だった私。
その命令に殉じ無に帰ることだけが望みだった私。
そして、この世界で碇くんを絶望させるだけの存在だった私。
排除されるべき宿命だったゼーレの子供たち。
その最期の生き残りとして今その役割を終えようとしていた私たち。
そして古から定められし約定が発動したかのように、かつてゼーレ直轄下の司令だった
渚カヲルにより下された命令。
それは、この世界で何もかも喪いその存在を消去するだけだったレイにとって新たな道標になった。
(…わたしに与えられた新たな命令)
第3新東京市のある、みんながいるかつての世界…そして綾波レイのいる世界。
(…それを碇くんに取り戻してもらうこと)
渚カヲルの命令は、この世界で自分が失敗したときに、レアセールの先の世界で
碇シンジが望む世界を取り戻すことができるように彼を導くこと。
(…それは、ない…渚君が失敗することは無いもの)
(…)
(…)
(……)
(………碇くん)
温かな陽だまりのようなシンジのイメージがレイの中いっぱいに膨らんだ。
さまざまなヒトとの関わり合いの中で育まれ、日に日にレイの胸の中で色づきを見せてきたもの。
まるで命の息吹を与えられたかのように。
レイ自らが持つ本能としての無への回帰。それと正対するもの、その萌芽を理解するまでには
今はまだ至ってはいない。
(…)
(…)
(……)
(………これは何?)
(…)
(…)
(……)
(………分からない)
(……)
(………でも…とても温かな気がする)
(……)
(……わたし)
(……この気持ち…嫌じゃない)
幽けき光に包まれたトビラに手をかけた時、レイに中に様々な想いが流れ込んできた気がした。
渚カヲルが世界の底でその漆黒のピアノから希望の旋律を生み出している。
千代田ユキは幼いレイを壊れ物のように抱きしめその体温を分け与えていた。
長門ミキはどこまでも慈悲深く、高雄とともにレイにとっての永遠のガーディアンだった。
そしてその向こうでは加賀と衣笠が優しく微笑んでいた。
そうなのだ。皆がその先の世界へとレイの背を押しているのだ。
今レイは明確にその意味を理解した。
トビラの先の世界。未だ見ぬミライというものに初めて想いを馳せた時、レイは頬に温かなものを感じた。
(……)
(………これが…涙?)
(…)
(……わたし)
春の柔らかな日差しにも似た光がレイを包み込んでいた。
しっかりとその胸に夜想曲を抱いた一人の少女。
白亜のトビラをゆっくり開くと、その向こうへとその背を消していった。
fin
件名 | : Re: piece to Peace |
投稿日 | : 2021/06/06 12:14 |
投稿者 | : calu |
参照先 | : |
tambさん
色々と有難うございました。
牛歩のごとくの前進ですが前に進ませていただきます(笑)。
7年以上もかかるとは思いませんでした(爆)。
史燕さん
読んでいただき有難うございました。
わたしもようやく前に進めそうです。
色々と有難うございました。
牛歩のごとくの前進ですが前に進ませていただきます(笑)。
7年以上もかかるとは思いませんでした(爆)。
史燕さん
読んでいただき有難うございました。
わたしもようやく前に進めそうです。
件名 | : Re: piece to Peace |
投稿日 | : 2021/06/05 22:58 |
投稿者 | : 史燕 |
参照先 | : |
執筆お疲れ様です。
続編、お待ちしておりました。
が、ここで引きとは、まるで生殺しですよ、caluさん。
レアセールによる逆行を促す綾波。気分はシンジ君と同じで「待ってよ」状態です。
造られた命という綾波レイの存在そのものに関する命題が突きつけられていて、「…だから、大丈夫…」という言葉が、胸に突き刺さります。
>「…だったらさ…どうして泣いてるんだよ…」
彼女の感情の発露だと思うのですが、とてもとても気になります。
続編、お待ちしておりました。
が、ここで引きとは、まるで生殺しですよ、caluさん。
レアセールによる逆行を促す綾波。気分はシンジ君と同じで「待ってよ」状態です。
造られた命という綾波レイの存在そのものに関する命題が突きつけられていて、「…だから、大丈夫…」という言葉が、胸に突き刺さります。
>「…だったらさ…どうして泣いてるんだよ…」
彼女の感情の発露だと思うのですが、とてもとても気になります。
件名 | : Re: piece to Peace |
投稿日 | : 2021/06/05 16:55 |
投稿者 | : calu |
参照先 | : |
▲▽▲▽ ▲▽▲▽
緋色の眸から、つと流れる一筋の涙。
続く言葉をシンジは待つしかなかった。シンジによって投げ掛けられた疑問に対しレイからもたらされた言葉。
それは到底シンジに理解できるものではなかった。言葉の穂をなかなか継げないレイは、或いは何かに迷っているようにも見えた。
そう、まるで禁断の領域に足を踏みいれることを躊躇っているような。
「…あ、綾波、どういうことなんだ? ぼ僕には何のことだか―」
広大な空間が獣のような鳴動を従い大きく震えた。天蓋を奔る遠雷にも似た衝撃音に、大地が割れんばかりに軋みあい、
LCLが鈍い波を立てた。
「…碇くん、時間だわ」
「待ってよ、綾波。こんなんで…こんな状況で僕一人で行けないよ!」
「…ごめんなさい。碇くんをひとりこの先に進ませることになってしまって……。この世界でもダメだった…
全てはわたしのせい。でも…」
とうとう崩れ落ちるように頭を抱え座りこんでしまったシンジ。別れの時がやってきたのだ。眼前で涙を流
しながら佇む少女は、その独白のなかでシンジが探し求める少女とは違うのだと言い放った。その中で語
られた真実は、シンジにとっては俄かには信じがたく、また受け入れ難いものだった。だが、その真実を
聞かされて尚、この少女を求めるこの気持ちは何なのだろう。離れたくない。ぼくの傍にいて欲しい
と思うこの気持ちは何なのだろう?
ふわりと柔かな感触がシンジを包みこむ。同時に感じたレイの髪がシンジの頬をくすぐる。
「…碇くん。また会えるわ。その時、碇くんはわたしという個体のこと解らないかも知れないけれど、またきっと会える」
「…あ綾波ぃ」
「…ありがとう、碇くん。これまで優しくしてくれて。造りものの魂を持つわたし。それでも今わたしの胸の中は
とても満たされているわ。だから一人で行ける」
「い、いやだ。綾波。どどこに行くんだよ」
「この世界よりも過去の時を刻む別の世界に。レアセールをくぐって時間を取り戻すの。再びやり直す為に」
「え……過去!? そ、そんな…そのレアセールってなんなんだよ!?」
「…時空の結節点へと繋がるトビラ。時が満ち分岐点となるマイルストーンを迎えたときに出現するといわれる伝説のトビラ」
「…ま、まさか、綾波。さっき言ってた意味って…」
「…そう、この時間を碇くんと過ごしたのはこれが初めてではないの。数えきれない日々を、その世界の碇くんと一緒に過ごしてきたの。
……幾度も時空の狭間を駆け抜け、気の遠くなりそうな日々を旅してきたの」
「…そ、そんな事、理解できないよ! …いきなり言われたって、理解できる筈ないじゃないか!」
「…さようなら、碇くん。わたしは行くわ。今度こそ碇くんが望む世界を、そして…彼女、『綾波レイ』を取り戻すことができるように
…力を尽くすわ。この命はその為に使う。『綾波レイ』ならそうすると思う、だから…」
「……」
蹲ったまま両手で頭を抱えるシンジからそっと身体を離したレイは、鳴動の鳴りやまない広大な空間の深部へと歩き始めた。
その胸にPCと焼け焦げた楽譜を愛おしそうに抱きながら。
「…綾波ぃ! ま、待ってよ!」
必死に駆けだしたシンジは、後ろからレイをかき抱いた。
「…ほ本当に行ってしまうのか? い、いやだ、綾波」
「…わたしがレアセールを抜けた瞬間に…時空がこの世界の整合性を保つために機能する…」
「………」
「…そして、代わりのアヤナミレイが現れると思う。だから大丈夫…」
「…綾波」
「…ソレはわたしと同じ複製。…彼女がエヴァに乗って碇くんの傍にいるから…」
「…綾波は、それでもいいのか?」
「…だから、大丈夫…」
「…本当に…それでもいいのか?」
小さく頷いてレイは応えた。
「…だったらさ…どうして泣いてるんだよ…」
緋色の眸から、つと流れる一筋の涙。
続く言葉をシンジは待つしかなかった。シンジによって投げ掛けられた疑問に対しレイからもたらされた言葉。
それは到底シンジに理解できるものではなかった。言葉の穂をなかなか継げないレイは、或いは何かに迷っているようにも見えた。
そう、まるで禁断の領域に足を踏みいれることを躊躇っているような。
「…あ、綾波、どういうことなんだ? ぼ僕には何のことだか―」
広大な空間が獣のような鳴動を従い大きく震えた。天蓋を奔る遠雷にも似た衝撃音に、大地が割れんばかりに軋みあい、
LCLが鈍い波を立てた。
「…碇くん、時間だわ」
「待ってよ、綾波。こんなんで…こんな状況で僕一人で行けないよ!」
「…ごめんなさい。碇くんをひとりこの先に進ませることになってしまって……。この世界でもダメだった…
全てはわたしのせい。でも…」
とうとう崩れ落ちるように頭を抱え座りこんでしまったシンジ。別れの時がやってきたのだ。眼前で涙を流
しながら佇む少女は、その独白のなかでシンジが探し求める少女とは違うのだと言い放った。その中で語
られた真実は、シンジにとっては俄かには信じがたく、また受け入れ難いものだった。だが、その真実を
聞かされて尚、この少女を求めるこの気持ちは何なのだろう。離れたくない。ぼくの傍にいて欲しい
と思うこの気持ちは何なのだろう?
ふわりと柔かな感触がシンジを包みこむ。同時に感じたレイの髪がシンジの頬をくすぐる。
「…碇くん。また会えるわ。その時、碇くんはわたしという個体のこと解らないかも知れないけれど、またきっと会える」
「…あ綾波ぃ」
「…ありがとう、碇くん。これまで優しくしてくれて。造りものの魂を持つわたし。それでも今わたしの胸の中は
とても満たされているわ。だから一人で行ける」
「い、いやだ。綾波。どどこに行くんだよ」
「この世界よりも過去の時を刻む別の世界に。レアセールをくぐって時間を取り戻すの。再びやり直す為に」
「え……過去!? そ、そんな…そのレアセールってなんなんだよ!?」
「…時空の結節点へと繋がるトビラ。時が満ち分岐点となるマイルストーンを迎えたときに出現するといわれる伝説のトビラ」
「…ま、まさか、綾波。さっき言ってた意味って…」
「…そう、この時間を碇くんと過ごしたのはこれが初めてではないの。数えきれない日々を、その世界の碇くんと一緒に過ごしてきたの。
……幾度も時空の狭間を駆け抜け、気の遠くなりそうな日々を旅してきたの」
「…そ、そんな事、理解できないよ! …いきなり言われたって、理解できる筈ないじゃないか!」
「…さようなら、碇くん。わたしは行くわ。今度こそ碇くんが望む世界を、そして…彼女、『綾波レイ』を取り戻すことができるように
…力を尽くすわ。この命はその為に使う。『綾波レイ』ならそうすると思う、だから…」
「……」
蹲ったまま両手で頭を抱えるシンジからそっと身体を離したレイは、鳴動の鳴りやまない広大な空間の深部へと歩き始めた。
その胸にPCと焼け焦げた楽譜を愛おしそうに抱きながら。
「…綾波ぃ! ま、待ってよ!」
必死に駆けだしたシンジは、後ろからレイをかき抱いた。
「…ほ本当に行ってしまうのか? い、いやだ、綾波」
「…わたしがレアセールを抜けた瞬間に…時空がこの世界の整合性を保つために機能する…」
「………」
「…そして、代わりのアヤナミレイが現れると思う。だから大丈夫…」
「…綾波」
「…ソレはわたしと同じ複製。…彼女がエヴァに乗って碇くんの傍にいるから…」
「…綾波は、それでもいいのか?」
「…だから、大丈夫…」
「…本当に…それでもいいのか?」
小さく頷いてレイは応えた。
「…だったらさ…どうして泣いてるんだよ…」
件名 | : Re: piece to Peace |
投稿日 | : 2021/05/11 02:20 |
投稿者 | : tamb |
参照先 | : |
速読モードだけど読み返した。プロットは完成しているはずで(半ば勢いだけでここまで書けるはずは、いくらなんでもない)、だとすれば佳境だと思われる。
というわけで催促上げ。
「彷徨う虹」もお忘れなく(笑)。
掲示板に散逸してる外伝みたいなのも、いずれまとめないといかんなー。
と思って「サイト開設十周年カウントダウン企画」なんてのをつらつら読み返していたら読み耽ってしまいこんな時間にw
みんなちゃんと書いてる。すごい。いい話がいっぱい。ネタっぽいのもあるけど(私を中心に)。私のコメントが偉そうでむかつく。Seven Sistersさんやクロミツさんもいる。忘れてた。
これもそのうちまとめないとなー。もったいない。
というわけで催促上げ。
「彷徨う虹」もお忘れなく(笑)。
掲示板に散逸してる外伝みたいなのも、いずれまとめないといかんなー。
と思って「サイト開設十周年カウントダウン企画」なんてのをつらつら読み返していたら読み耽ってしまいこんな時間にw
みんなちゃんと書いてる。すごい。いい話がいっぱい。ネタっぽいのもあるけど(私を中心に)。私のコメントが偉そうでむかつく。Seven Sistersさんやクロミツさんもいる。忘れてた。
これもそのうちまとめないとなー。もったいない。
件名 | : Re: piece to Peace |
投稿日 | : 2021/05/08 01:16 |
投稿者 | : tamb |
参照先 | : |
目覚めたわたしに光は届かない。
わたしを待っているものは頭のなかの疼痛。
疲弊し切った胡乱な意識の底に打ち込まれた余韻のような鈍い痛み。
その根本を弄って、わたしはかすかな記憶の糸をたぐる。
色んな思考が交わっていたような気がする。
わたしは何かを見つけ、それを掴もうとして。…掴もうとして。
でもその瞬間、何かに追い立てられるように、覚醒が訪れる。
そして、いつものプロセスをただなぞっている自分にいつしか気付いている。
目覚めはわたしから全てを剥ぎ取り、手順に沿ってわたしを構成する。
そして残されるものは、空虚。遡及すべき記憶は残滓さえ見当たらない。
一切を切り取られた虚ろな思考だけが、わたしを支配している。
それが、わたしと言われるモノ。
簡易ベッドを澱みない動作で抜けだしたわたしは、いつもの手順でいつもの衣装を身に着ける。
小さなシンクで洗面を済ませると、ふたたび簡易ベッドに腰を下ろした。
いつもと変わらない午前7時の朝。
あとは所定の場所に行き、そこで発せられるであろう命令を待つだけだ。
時計の秒針の音だけが浮遊する空間に、遠くで響くピアノといわれる楽器の音が色をつけ始めた。
それに気付いたのは最近のこと。
ふたたび腰を上げたわたしは、おもむろにサインペンを手に取った。
壁に掛ったカレンダーの今日の日付を×印で塗りつぶすために。