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親父補完委員会((笑))【ゲンドウ
日時: 2011/10/25 23:53
名前: 何処

【ゲンドウ・心の向こう側−残渣−】


夢を見た。


懐かしい夢だった。


夢と言うより思い出か。

…否、夢物語の様な思い出だから夢かも知れない。

あれは何度目の事だったか、私が妻と映画館へ行った時の夢だ。

夢の中私は妻と映画を見ている。
妻と二人、ポップコーン片手に益躰も無い…いや、他愛ないストーリーを眺める。

隣には空虚な在り来たりの子供騙しを楽しむ妻。幸せに満ち日々の暮らしに充足した日常に育った女…

私は何故ここに…この女の隣に居るのだろう。

…自ら望んだ筈の存在になり居場所を得ながら、苛立ちを抑えられずに居心地の悪い椅子の上に身動ぎして一人背を伸ばす。

ふと掌を眺める。

何時でもこの掌が私を現実へ…過去へと引き戻す。
…あの地獄こそが私の現実だったから。

治療の甲斐無く倒れ行く飢えた難民、痩せ衰えこの手の内で息絶える子供、意味無く撃たれる市民、僅かな水と食糧の為身を売り盗み奪い殺し合う民衆、それを助長する狂信者共…

只一欠片の食糧が、只一錠の薬品が、只一本の注射が無いだけで目の前の死を避けられぬ人々を一体何人看取ったのだろう。

僅かな食糧の為子を売る親、援助物資を横流しする役人、薬品の注文書を書き換える上司、援助額を水増しする政府、支援の成果を吹聴する団体、これを機会に領土を狙う隣国、子供達を兵士に徴収する軍隊、利権に群がる企業…人間不信にもなろう。

…だが、私は彼等を笑えまい。自らの幸せこそが一番だと知った今となれば。

この手に残る死の感触を、私は忘れる事無く生きて来た…ユイの手を取るまで。
…良いのだろうか、このまま流されて…
今の私は…


気が付けば既に映画は終わっていた。
立ち去る人々を見送りながら私は座り心地の悪い椅子に沈んだまま。
その時、妻が私の耳許に囁いた。

妻は告げた…彼女が母になる事を。

その瞬間、私の掌は過去を取り落とした。

気が付けば、周囲の目も忘れ私の手は今を…妻ともう一人…二人かもしれないが…抱き上げていた。


▲▽▲



「夢か…」

仮眠室のベッドに靴も脱がず倒れこんだ姿のまま、一人呟く。
私を眠りから引き戻した原因…枕元の携帯端末機が呼んでいる…

身を起こし眼鏡を掛け携帯端末を開く

「…私だ。」

『お早うございます司令、現在06:07です、申し訳ございません指定時間より二分遅くなりました。』

「…構わん。誤差範囲内だ。本日のスケジュールは予定通りだな?」

「は。メインの零号機起動試験は1045予定変わらず。レイの体調も万全です。」

「…ご苦労…1015にはそちらに向かう、準備を頼む。」

「は。」


…一瞬、ユイと赤木君がだぶって見えた。

端末を切り、頭を振りながらシャワーを浴びる為浴室へ向かう。

「…男ならシンジ、女ならレイ…か…」

無意識に私は呟いていた。
…つい力が入った様だ。浴室の扉が音を立てた


△▼△


「レイ!?」

気が付いた時にはもう射出されたエントリープラグへ走り出していた。

非常口開閉ハンドルに手を伸ばす…余りの熱さに手を放しかけ、再びハンドルを握る。

掌が、焼ける。

苦痛が、襲う。


やっと開けたプラグの中…レイは生きていた。

一瞬、掌の痛みを、思い出を忘れた。



…眼鏡を無くした事に気付いたのは暫く後だった。



初音ミク 【VOiCE】

http://www.youtube.com/watch?v=yvTZnxm7u-I&sns=em

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メンテ

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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.18 )
日時: 2013/03/10 21:47
名前: 何処

「『帰れ』…か…」

零れた台詞を聞く者は私きり。
真夜中の研究室に唯独り、椅子の背当てに身を凭れ掛け、書類片手に私は呟く。

エントリープラグから緊急回収した少年のカルテを机上に放り投げ、天井を見上げ紫煙を吐き出しながら私は碇司令の台詞を口に出し反芻していた。

「…辛いわよね…あの子…」


【−黎明−】


使徒殲滅後回収された初号機のエントリープラグから救助された少年は失神していたものの特に外傷も無く、その生命維持機能に問題は発生していなかった。

…最も脳にあれだけの負担がかかったのだ、後遺症−幻覚幻痛やパニック症候群−がいつフィードバック発生してもおかしくは無い。
それにも増して問題なのは肉体的な事…免疫症候群だ。

あの緊急事態に複合ワクチン投与と簡易消毒のみ…プラグスーツすら無しでアレルギーチェックも特殊減菌処置も滅菌消毒工程も無しで彼をエントリープラグに文字通り放り込んだのだ。
いくらLCL濾過循環系が完調でLCL自体に抗菌剤や抗生物質が添付されているにしても感染症リスクはかなり高い。
そんな訳で彼は現在戦闘後遺症と感染症発病の恐れから入院期間を延長させられ現在も容態監視中。

「…それにしてもレイを乗せろだなんて…」

…息子を呼びつけていきなり初号機に乗せようとした精神もそうだが、それが拒否されれば即座に重症患者のレイを平気で初号機に乗せようとするあの人は一体何を…

…決まっている。考えるまでも無い。

『使徒に勝つ事』

それ以外何も考えていない。

『…イ、予備が使えな…った……う一度だ…』

あの時スピーカーから漏れた台詞、確かにあの人の声は実の息子を“予備”と言い切った。
あの人には息子でさえ対使徒戦の道具なのだろう。

「…“予備”か…。」

…私もある意味彼と同じなのかも知れない…マギの為の、母の代換品…そして…

そこまで考えた時、身に感じた悪寒に身震いし煙草を灰皿に押し付け火種を消す。

頭に浮かんだ台詞の続きをそれ以上考えまいとして、ふと思い浮かべた繊細そうな少年の表情。
零号機起動実験中に起きたあの事故さえ無ければ彼はこの第三新東京に来る事も無く、養父だか養母だかの元で暮らし続けていただろう。

…それが幸せかどうかは知らないが。

まぁ、手紙一つで直ぐに話が決まり何の荷物も持たされず唯その身一つで本人が来る…と言うより寄越される…辺りで大方の事情は察せられる。
だが、少なくとも呼びつけた父親に『帰れ』などと言われた挙げ句生死の境をさ迷う事にはならなかっただろう。
本人にとって見れば10年も離れていた父親の元に来る事自体大変な決断だったとは思う、此方に来る事を決める迄には其なりの葛藤も有った筈だ。
その挙げ句に『帰れ』では…

しかも彼はもうエヴァの軛から逃れる事は出来ない。
エヴァの適格者が三人しか見付からぬ現在、彼以上の能力を持つ他の適格者…チルドレンが見付からぬ限り、彼はエヴァに乗り使徒と闘い続けるしか無いのだ。
溜め息を吐いて手の吸殻を灰皿に捩じ込み、卓上の書類の山脈からホチキス止めされた一部を取る。
既読の書類…今回の件での一連の経緯を記した全体報告書だ。
表紙を眺め、書いてあった内容の記憶を脳内反芻する。

要約すれば、少年は訳も判らず半ば強制的に呼び出され、来る途中対使徒戦に巻き込まれそうな所を間一髪で助かり、更にN2地雷の爆破に巻き込まれ、そんな目に遭いながらも何とか父親の元へと来てみれば今度はロクな説明も無くいきなりエヴァに放り込まれ即対使徒戦投入、敗北一歩出前に追い込まれ奇跡の暴走に戦況を逆転しながら使徒の自爆に巻き込まれ…

記述内容は事実のみを記してある筈だが、余りの内容に何かの冗談かと思わず読み直してしまった。
だが、何度読み返しても報告書には確かにそう書いてある。

つまり信じがたい事に此等が全て本当に少年の身に、それも24時間内に振り掛かった出来事だと言うのだから最早驚きを通り越して呆れるしかない。

「良くもまぁ…厄日と天中殺と大殺界がスクラム組んで押し寄せた感じかしら…」

それにしても…わずか1日でこれだけの災厄を受けるのも驚愕だが、それを全て避けて生き延びたのだからこの少年も大した運の持ち主だ。
どれも一歩どころかスレスレの所で死を避けている、余程運が良くなければ…

…いいえ、本当に運が良ければそもそも呼ばれても応じなかったでしょうね…
彼の場合、幸運と言うより悪運かも知れないわ。

「…しかし本当、良くもまあこれだけの…」

改めてレポートの表紙を眺め、再び嘆息をつく。
文字通り間一髪で危うい所を辛くも生き延び、更にエヴァでの対使徒戦からも生還し現在入院中の14歳少年。
彼の心中を慮ん測り私は溜め息をついた。

「…当分同居は無理よね…」

いっそ私が…


…馬鹿か私は。


今そんな余裕は無い。それに…

ふと母との同居生活を思い出す。
あのすれ違い生活を今更繰り返す気は更々無い。

頭を振り感傷と余計な考えを一緒に振り払って私は再び仕事に没入せんと書類に手を伸ばした。


―――


「碇、お前息子の見舞いには未だ行ってないのか?」

「必要無い。生命の危険も無く予後観察の為仮入院しているだけだ。」

「しかしだな…」

「見舞いに行っても現状何もする事が無い、ならば時間の無駄だ。」

「全く不器用な奴め…それはそうと碇、頼まれておったお前の息子の転入手続き終わったぞ。」

「そうか。」

「だがな、入所施設の空きが無かった。民間の賃貸物件も当たってみたがやはり未成年の独り暮らしでは何処も難しくてな、取り敢えずネルフ独身寮の空き部屋を手配した。」

「判断は任せる。パイロットとして適時召集が掛けられるなら何処でも構わん。」

「やはり同居はせんのだな?」

「ああ。道楽で息子を呼んだ訳では無い、パイロット適格者があれだったから召集しただけだ。一緒に暮らす必要は無い。」

「ふむ。だが碇、お前の息子が同居を望んだ場合、法制度上は断れんぞ。その時は同居で良いな?」

「十年も別々の生活をしていて今更同居などあれも望むまい。それに奴も男だ、独り暮らしの方が気楽だろう。」

「うむ…お互い離れて暮らすのが自然か。そうかも知れんな…ああ、それと碇、作戦部長より提案のあった使徒迎撃作戦計画書の見直し案なんだが…」


―――


「引き取るですってぇ!?」

自分の発した叫びに近い大声で一斉に振り向くスタッフ達の視線も私を止める事は出来なかった。

「貴女一体何を考えてるの!?」

『だ〜い丈夫よぉん、手ぇ出したりなんかしないからぁ』

「当たり前でしょ!!」

忘れていた…何でこんな事を忘れていたのだろう。
この世には“葛城ミサト”という存在が居るという事実を。

昔からミサトの無鉄砲さは知っていた筈なのに。
ミサトはこう言う女だと解っていたじゃないの

でも…

何故か私は声を荒げ額に青筋を立てて受話器の向こう側と遣り取り−会話と言うか小言…否、説教?−をしながらも、心のどこかで感じた安堵を認めていた。

そうね…お互い、独りよりはいいかもね…

きつい口調を続けながら、私は自覚した口元の綻びを止め…いいえ、止める気も無かったわね。
結局、受話器を置くまで私の口元は綻んだままだった。


WAVE -GUMIcover-
http://www.youtube.com/watch?v=IBLYJZs6h7Q&sns=em


ミサトとの暫しの遣り取り後、通話を切った私はスタッフ達の好奇の視線を断つべく少々ヒステリックな口調で告げる。

「どうしたの!皆手が止まってるわよ!」

スタッフ達が慌てて仕事のふりをしだす姿に鼻を鳴らし、私はデスクに腰を…

ん?

通話を切った後、心に引っ掛かる謎の不安感。

何かを忘れて…それも大きな何かを…

不安が焦燥に変わる。

何かしら…





あ!


…思い出した…


ミサトの料理の技量は確か…

…学生時代より進歩している事を願おう…
しかしまぁ…

「つくづく不憫な子…」

少年…碇シンジ君の身を案じながら私は彼の不幸さ…薄幸さに改めて同情した。
ため息と共に思わず口を突いた台詞は…


「シンジ君…強く生きてね…」


決めた。折を見て一度は二人の様子を見に行こう。

ミサトとシンジ君の同居の知らせは、そんな事を私に決意させるには充分だった。



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メンテ
Re: 親父補完委員会((笑))【ゲンドウ ( No.19 )
日時: 2013/03/14 02:50
名前: tamb

 長く離れていた父に呼び出され、わけのわからぬモノに乗ってわけのわからぬモノと戦えと
言われるという状況はあまりにも異常で、もはや自分だったらどうするかという想像の範疇を
超えている。もし自分が乗らなければ、そこに連れてこられた少女が乗ることになって、その
子が異常に可愛くて自分の好みだったとしても。
 説明不足はエヴァのお家芸、というかこのケースだとその時間はなかったとして、ただ乗っ
て座っていればいいということであれば、使徒に対抗する手段がエヴァしかなかったとして、
初号機が負ければ乗ろうが乗るまいが死ぬことに変わりはない。となれば、シンジが乗るかそ
のレイが乗るか、どちらが勝つ確率が高いかという問題になる。最初にシンジが要請を受けた
ことを考えれば、ネルフサイドはシンジに勝機があると考えていたことになる。ならば乗った
方が生存確率は高いと判断できる。相打ちということはあるかもしれんけど。
 いずれにせよ、使徒に勝たなければ未来はないということなのであれば、自分の子供だから
どうということは言っていられないかもしれない。ただ、自分の子供だからどうと思うという
ことが勝率に影響する可能性はある。

 いずれにしても、使徒に負けたらどうなるのか、ということが明確でないのが問題なんだよ
な。単に人類皆殺しっていう想定なんだろうか。死海文書的には。
メンテ
Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.20 )
日時: 2013/08/24 22:33
名前: 何処

使徒迎撃用決戦特化型要塞都市・第三新東京、現代に蘇った城塞都市。

一見何の変轍も無い街並みだが、この街は状況に応じその形を変える。
忍者屋敷と称される数多の仕掛が作動する様はまるで手品。
間近で見れば圧巻の一言。しかしそれはあくまでも間近で見た場合だ。

遠景から眺めればどこか現実味に薄く、その光景はさながら映画のセットかCG加工画像。
高層ビル群はその全てが地下への退避機能を持ち、中でも商用ビルはそれ自体がシェルターの役割を果たす。
それ以外にもABC対応完全密閉式の緊急退避シェルターは無数に点在、最も大きなタイプは千人を収容し1週間の避難生活が可能である。

要所には特殊装甲を施された遮蔽防護ビル、武装を有した…否、ビルの偽装を施された各種砲台、エヴァンゲリオン専用武装保管庫と充電器具設置拠点がその解放の時を言葉も無く唯待ち侘びている。

無論それだけではない。偽装各種センサー群、エヴァンゲリオン緊急射出口、非常事態に備えた応急滑走路兼緊急通路形成用可変装甲防護壁路面が至る所に張り巡らされ、エヴァによる都市中央から外縁部までの縱深防御活動を可能としている。
加えて要塞都市近隣山中には山に偽装した要塞群とジオフロント発掘に合わせ極秘裏に掘削された超巨大空間が複数あり、そこではこの要塞都市維持の要と言える発電所が稼働中だ。
又同時にそこは都市修繕用特殊重機群、備蓄資材等を納めた巨大ストックヤードをも兼ね、工作部隊が即時対応体制で常時待機中。
眠れる牙達はその機能を解放する時を只沈黙して待っている…

そして、彼等は目覚めた。



【−雌伏《前編》−】
《ジッタードール》 Lily
http://www.youtube.com/watch?v=7F6aPSHZCIo&sns=em



「お待たせ、使徒の能力シミュレートの結果よ。」

「ありがと。パレットガンも漸く完成したし、これで一応真っ当な作戦計画が立てられるわぁ…」

「あら、随分頼もしいわね。」

「言うだけならタダよ。ま、現状で挙げられるプランなんて中距離戦闘で牽制後の格闘戦って流れ位しか無いけどね。」

「呆れた、作戦部長自らそんな無責任な台詞吐いて良いの?」

「現実だから仕方無いわー。で、これの概要取り敢えず口頭で説明してくれる?」

「そうね、今回シミュレートパートでは取り敢えず今回の戦闘から割り出した使徒の能力を基準に敵を設定したわ。」

「でしょうねー。まぁ、次回も同じ様な敵が現れるとはちょっち考え辛いけど。」

「ええ、次の使徒の能力が未知である以上これはあくまでも目安よ。けれど例え大まかでもそれを踏まえた計画下での迎撃ならば、推測計画でいきなり戦った前回よりは大分対応が違うのではない?」

「確かに。色んな意味で後手を踏まず対応するには計画は必要だし、それに多少とは言え対抗手段が有るだけ今回よりは未だマシかもね〜。でも使徒の能力には本当呆れるわ。至近距離からの戦車砲弾直撃でも殆ど効果無いんですもの。」

「本当、私達の予想を遥かに越えるわ、これでは高い予算を注ぎ込んだあれだけの兵装が殆ど無駄よ。」

「全く効かないって訳じゃ無いなら手段が有るだけ無いよりはマシよ。しっかし…キっツいわねー、リツコぉこのデータマジな訳ぇ?」

「嘘ついてどうするのよ。ミサトも映像は見たでしょ?」

「見たから信じたく無くて言ってるの。大体ICBM転用のバンカーバスター片手で潰すなんて冗談通り越してもう笑い話よ。」

「加えて言うなら貴女もご覧の通りN2地雷の直撃でもATフィールドの完全突破は無理だったわ…やはり通常兵器で使徒相手に効果を出すには想定通りエヴァのATフィールド中和能力頼りね。」

「でもN2でなら一応ダメージは与えられたわ…選択肢に制約が無いならいっそ面倒な事省いて回復の隙を与えずN2の連打噛まして一気に決着付けたい所よね〜。」

「それ新手の焦土作戦?使徒倒す前に世界滅ぼしてどうするのよ…気持ちは解るけど。そもそもあの防御力と自己進化能力相手に手持ちのN2全部使っても殲滅出来るかどうかすら怪しいわ。」

「うえぇ、始末に負えないわね全くぅ…はぁ、やっぱ白兵戦しか無い訳かぁ。巨大人型兵器を繰り出してやる事が取っ組み合い掴み合い殴り合いな乱闘騒ぎとはねぇ…頭痛いわーアニメじゃあるまいしどこの特撮怪獣プロレスよ一体。」

「他に方法が無いんだから仕方無いでしょ。現時点での装備はこれが精一杯なんだから贅沢言わないで。でもエヴァが近接戦闘に縺れ込めれば使徒のATフィールドは無効化出来る、そうなれば既存戦力でも多少の効果は見込めるわね。」

「…どの程度?」

「今回の使徒の自己進化能力による回復速度からすれば…ま、牽制程度の威力は期待出来そうよ」

「うえー、自分で言ってて何だけど本っ当無いよりマシな程度なのねぇ…で、マギによる対使徒戦シミュレートの結果はどうだった?」

「ミサトと一緒よ。都市直上での白兵戦−マギは三基全てそう結論付けたわ。」

「あーやっぱそれしか無いかぁ。暴走なんてイレギュラー無視して真っ当にやり合うなら地の理を活かす事ぐらいしか勝ち目は無いって事よねー。」

「“手段が有るだけ今回よりはマシ”なんでしょ?」

「言わないでよリツコぉ…さぁて、次はエヴァの戦術立案か。取り敢えず白兵戦理論に集団戦闘方法、各種非正規戦・非対称戦術理論を基礎にしてぇっと、それに市街戦方法論と屋外戦闘教則に逮捕術とインドア戦ノウハウ辺りかしらぁ?他には狩猟技術に各種格闘技っと、兎に角使えそうな物は片っ端から検討しないといけないわね。」

「確かに。尋常な手じゃ勝ち目が薄いなら折角の資産を有効活用しない手は無いわ。」

「資産?」

「ええ、資産よ。私達人類の道具の使用に始まる闘争の歴史と言う資産。これは使徒に対しての数少ないアドバンテージよ。」

「闘争の歴史が資産か…皮肉なものね。」

「全くね、無様にも私達は同族相争うなんて知性の欠片すら無い哀れな喜悲劇すら利用しなければならない…とんだ喜劇だわ。」

「残念ながら現実は厳しいのよ、選り好みや好き嫌いは言ってられないわ。人は木石の如く風雪に晒されて沈黙は出来ない、ならば声を上げ手と足と頭を使うしか無いでしょ。」

「あら?石だってタイムスケールが違い過ぎて人類が観測出来ないだけで実は生命体かも知れないわよ?」

「〜リツコ〜揚げ足取らないでよぉ〜」

「事実よ。植物だって実は特定環境下ではあらゆる手段を使って生き残りを模索しているわ。妨害乗っ取り略奪寄生侵食擬態、果ては罠に毒殺絞殺・凡そ人間の考える範囲を越え彼等は生きている。」

「フムン、過当競争下での自己保存能力の発露って奴ね。」

「ええ、ましてや動物となれば個体生命維持の為ならそれこそ何でもするわ…例えそれが自滅行為でもね。」

「ドードー鳥の様に闘争を忘れた生物は環境の変化に対応出来ず淘汰されるのが自然の理…か…」

「ま、最もサーベルタイガーみたいに闘争に特化した極端な進化でも時代に適応出来なくなって自滅したわ。環境順応も過ぎれば毒ね、最低限のフレキシビリティは確保しておかないと。」

「全くね。…とは言え現状で手持ちのカードは少ないわ。フレキシビリティを生かそうにもレイが完全回復するまではパイロットはシンジ君独り…前回みたいな無理はさせられない。」

「ええ。幸いな事に初号機の破損も未だ修理の効く範囲内、後一週間で再稼働出来るわ。とは言え…」

「一週間…大人しく待っててくれれば良いけど。」

「そうね、一週間以内に使徒が出現する可能性は否定出来ないわ。」

「最悪の場合も想定しなきゃね…」

「ええ、今回は運良く勝てたけどそうそう簡単に勝たせてはくれないでしょうし…。」

「…零号機も駆り出す必要、有るかもね。」

「…一応仮復旧は済んでいるわ。レイの体調も今は安定している…けれどあくまでも“一応”よ。それも“シンクロにレイが成功すれば”の話。シンジ君に零号機が適合するか試す余裕は未だ無いわ。」

「…破損機体に稼働可能か不明な機体、素人と怪我人頼りのタイトロープか…」


―――


「碇、作戦部の提出した対使徒作戦計画だが…」

「ああ、目は通した。作戦部長は優秀だ、この短期間で良くここまで纏めたものだ。」

「…エヴァンゲリオン有人化は成功だったな。シナリオの旧解釈通りならジオフロントで覚醒した初号機が殲滅する筈だった…危うい賭ではあったが。」

「そしてその賭に我々は勝った…人類の手で僅かながらシナリオは書き換えられた。そしてこれは我々の計画の第一歩だ」

「うむ。どうする碇?彼女も赤木君の様に二次要員として…」

「駄目だ。知ったが故に出来ぬ事も存在する。知らぬからこそ出来る事、それの遂行が現在彼女の主任務である以上彼女には第三者でいて貰う。」

「うむ、我々の計画はあくまでも秘密裏に進行させねばならんからな、しかし…優秀なだけに惜しい、能力を生かすには今の彼女の立場は制約が有りすぎる。」

「だがだからと言ってシナリオを逸脱されても困る。かと言ってアドリブも効かない三流でも役に立たない。ましてやシナリオすら遂行出来ない様な無能は不要だ、優秀かつ任務に忠実、シナリオを逸脱する恐れも少ない…ネルフに必要な人材だよ彼女は。」

「その優秀な人材にこのネルフと言う組織自体が結末の知れたシナリオルートをなぞるだけの存在だと知れればさぞ…」

「それだけの役割なら作戦部長なぞと言う役職自体不要だよ冬月。確かに各使徒のシナリオにおいて使徒そのものの結末は確定している、だがその過程を変え最小限の被害に止める事は可能だ。」

「人類の未来は自らの手で切り開き掴み取らねば意味が無い…か。その為のチルドレン…だったな。」

「チルドレン“も”だ。エヴァンゲリオン、第三新東京市、ネルフ、そして彼女を含むスタッフ達全員…全てが人類の持つ可能性の一つだ。」

「うむ。だが碇、シナリオへの直接介入は老人達が喧しいぞ?」

「計画は順調、タイムスケジュールは守られ結末もシナリオ通り、被害は軽減…彼等は何も言えんさ。」

「確かに。だがな、ストーリー改変やシナリオの一部変更、エピソード追加と削除…老人達は兎も角どれも次期使徒の進化への影響は避けられん。場合によっては裏死海文書の記述解釈に矛盾が…まさか碇!?」

「ああ、解釈を変更すれば問題無い。それに使徒の進化はエヴァの覚醒を近付ける。量産型に添付予定の疑似覚醒モードなど比では無い、使徒は真のエヴァ…覚醒した初号機には決して勝てない。」

「確かにその通りだな。そもそもエヴァ本来の使命は受精卵子に集う精子の排除…つまり使徒を倒す為の物。それに考えてみればセカンドインパクトの時点で既にシナリオは老人達に書き換えられていたか。」

「ああ、アダムの初期化、その時点で既に彼等の手でシナリオの改変は成されている。セカンドインパクトに始まり、アダムに共鳴し旧東京に現出したリリスの封印、休眠中の使徒の捕獲、斯くしてシナリオは改変された。しかしネブカトネザルの鍵は喪われ塔を経た神への道は閉ざされたまま、ソロモンの轍を踏むにも我々に残された時間は少ない。」

「槍とアダム…そしてリリス…斯くして再臨劇は繰り返されるか。いよいよだな碇。」

「ああ…全てはこれからだ…」




波音リツカバー
http://www.youtube.com/watch?v=2qBCRUNYtN8&sns=em
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メンテ
Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.21 )
日時: 2013/08/31 15:12
名前: 何処

「……斯くして再臨劇は繰り返されるか。いよいよだな碇。」

「ああ…全てはこれからだ…」



【−雌伏《後篇》−】
《ジッタードール》重音テト・波音リツカバー
http://www.youtube.com/watch?v=QGWFeho3f8o&sns=em



暫しのやり取りの後冬月が退出し、私以外他に誰も居ない司令室。
腕時計の秒針が刻む音まで聞こえそうな静寂に一人自嘲を噛み殺しながら只椅子に座り続けている。

…既に決まっている…

低く笑い声が零れた。
御目出度い事に冬月は拓言を信じている。
否、信じたからこそ彼はゲヒルンの一員となり、ネルフの副司令を任せられている。

…私と共にその拓言を書き換える事を企みながら。

書き換える事が出来るならば、それは予言では無い。
確率論が通用するならば、それは予想でしか無い。
解釈で差違の生まれる誤差を含む方程式は無い
未確定の推論は理論で無く理屈でしかない。

…未来は確定していない。

…そんな事は言うまでも無く冬月本人が良く理解している筈だ。
只、冬月は達観しているのだろう。

今は唯信じるのみ…と。

その強さに敬服する。
予言でも方程式でも無い、只の結果論でしか無い代物を唯盲信の末鵜呑みにした老人達と、その危うさを知りながらも可能性に全てを賭ける事の出来る冬月。

片や狂信の一途さで
片や信念の強靭さで

共に目指す形は違えど目指すモノに代わりは無い。
そう、使徒すらも…否、使徒の目指すモノを知ったが故に我々までソレを目指す事を強いられたと言うべきだろう。

則ち…世界、否・時空間そのものの再構築。

アダムより分化しリリスに不完全ながら受胎した人類は何れ世界を再構築する。使徒とはソレを阻止する為に現れた幾つかの可能性がアダムより創り出した云わば…

「使徒…即ち新宇宙の種か。」

ふと声に出た呟きを聞く者はいない。
部屋を支配する沈黙、私は目を閉じ再び思索を続ける。

人は限界に達しつつある。
人類の進歩と進化は袋小路に向かおうとしている。
しかし、人は進歩と進化の前にN2と言う第三の焔を手にしてしまった…無邪気にもそれが終演の狼煙と知らずに。
時計は動き始め刻むカウントを止める事はもう出来ない、斯くして終末のホルンは鳴り響き使徒は目覚める…
使徒による時空改変は世界から人を排除する、使徒を倒さねば人類に未来は無い。だが…

裏死海文書…先史文明の残した始祖民族の遺産。

擬似使徒を以て使徒撃退に成功しながら始祖民族の先史文明は滅亡し、その後継者たる我々人類は先代の滅びた原因を未だ突き止めぬまま再び使徒と対決せねばならない。
このままでは滅亡は避けられない、人類に残された可能性…それはリリスとの完全融合。
それを果たす時、宇宙は新たな事象宇宙へと更新される…

「だが今の人類が使徒の代わりにリリスを完全受精させる事は出来ない。何故なら…」

再び声に出る呟き

完全受精…それは種全て…全ての人類がリリスに融合する事を意味する。
則ちリリスの完全復活により空となったガフの部屋を再び満たす為、全人類の魂を以てリリスへの帰還を行わねばならないからだ。

だが

…人は、増え過ぎた。
…人は、穢れ過ぎた。
…人は、知恵を持ち過ぎた。

増え過ぎた人はエントロピーの破綻を招き、
穢れ過ぎた人は新時空を再び汚染し、
知恵を持ち過ぎた人は摂理に抗う。

その人類がこのままリリスと融合してもその結末は…
唯繰り返すのみ。

そう、その姿は閉じた世界を只廻る滑車の中の鼠。
世界は再び輪廻の環に囚われ、新世界でも絶望は繰り返され人類は再び虜囚として犀の河原で唯同じ事を繰り返す。

宿命と言うメビウスの輪から離脱し螺旋への進化を遂げる、その為には先導者が…完全なる人の存在が必要だ。

しかし

赤子に因る融合では、その子宮回帰本能が全てを初源へ還してしまう。
老人の融合はその諦念と執着が次世界の可能性を狭め固定化してしまう。
子供はその我執が、大人はその欲と分別が次世界に偏りを生む。
理性有る純粋なる存在、赤子に非ず子供に非ず大人に非ず老人に非ず…

私はこう考えた。

そんな者はいない
そんな存在は無い
無いなら



創れば良い。



私は悪魔に魂を売った。悪鬼羅刹と呼ばれても頷くしか無い。
私は人の身を以て科学の力で父母無き新たな人を創ったのだ…贄とせんが為に。
リリスの欠片に人の因子を植え付けた魂無き人形に人の記憶を添付し創造した原罪無き純粋な存在…ファーストチルドレン
この人工的処女受胎により創られた原罪亡き者をリリスへの贄とし禊を行い、彼の者を以ってエヴァを希望の使徒と為し目覚めたるリリスへの融合を果たさせる。
人を使徒と成す…其こそが真のエヴァンゲリオン再生建造目的。

始祖民族の遺産の一つ…擬似使徒・人造人間エヴァンゲリオン。
擬似とは言え一生命にして一種族たる使徒の魂は人々の魂の代わりにガフの部屋を満たし、リリスに還りし人々を再び新たな現世へ還す。則ち…人類の補完

そして贖罪の後、現世の次に再構築される宇宙はその原罪無き贄・先導者の願いし世界となる…。

人類補完計画

その為に私は人造人間達を有人制御に改装復活させた。
ユイはエヴァンゲリオンに人の心を与えようとし、自ら被験者となった。
キョウコは、新たな人類のプロトタイプとして遺伝子調整による完全人間を自らの子宮で育てた。
ナオコは、次世界の羅針盤を造り出した。

私は人外の外道となりながらレイ…ファーストチルドレンを創り出した。
ユイは初号機に人の魂を与えた…その存在と引き換えに。
キョウコはセカンドチルドレンを産み、ナオコはマギを建造し…それぞれがその映し身の如き存在とその身を引き換えるかのように死んでいった。

そして今

生きている者達は変わらず明日を夢見て足掻いている。

老人は裁きの後訪れる理想郷…完璧な世界を願い
冬月は新たな世界の観測者となる事を願い
私は…

だが、他に道は無いのだろうか?

「そうだ、それしか無い。三賢者マギ、聖母マリヤ、マクダナラのマリア、殉教者にして背教者ユダ、衛士ロンギヌス…役者は既に揃い、後はイサの誕生を待つのみ…」

自分に言い聞かせる様に呟く。
後はダミーシステムだ。
ダミープラグが完成すれば、更にリスクは減る。


立ち止まる事は出来ない

立ち竦む事は許されない

今は唯、前へ

閉じた目を開く。
未だ見ぬ明日の為、席を立ち部屋を出る。
背後でドアが閉まる瞬間、誰かの声が背を押した。

幻聴に惑わされる暇は無い、振り返らずに私はエレベーターに足を向けた。



―――



「さぁて、今日は久々の定時上がりねー―グフフッ。ええっとぉ帰りにスーパーで卵に牛肉と白滝にぃ、春菊とお葱にトイレットペーパーとペンペンのお魚とぉ…」

「ん?ミサト、今日はもう上がり?」

「んー?今日は定時。珍しく副司令からチェック入らなかったのよ〜♪」

「あら珍しい、じゃあ今夜は一寸寄ってかない?今日レディスデイでカクテル半額よ?」

「にひ〜、今夜はシンジ君がすき焼き作ってくれるって言うからぁパースぅ♪直帰よ直帰ぃ♪」

「呆れた、すき焼きに釣られるって…そもそも貴女が作ってあげて彼を釣る立場じゃないの?」

「いやそれがねリツコ、シンジ君ったら結構凝り性でぇ何冊もレシピ本買ってご飯作ってるのよぉ?味噌汁もちゃあんとお出汁取って作るし。」

「あら、男の子にしては珍しいわね?将来料理研究家になる気かしら。」

「…それがねー、レシピ通りだから美味しいんだけどねー…お肉の腱取ってなかったり野菜が切れて無くて繋がってたり芯残ってたり、どーぅも彼今まであ〜んまり料理ってした事無いみたい。」

「?あの年頃なら普通でしょう?料理した事無いから余計に凝ってるんじゃなくて?」

「いや、それがね…彼の預け先の家庭って留守がちだったらしくてね、食事は一人で菓子パンとかカップラーメンって時多かったみたい…」

「あら…」

「だからかしらね…彼、妙に家庭料理風な物作るのよ、煮物とか…」

「憧れかしらね…美味しい御飯って、彼が最後に食べたのいつだったのかしら…」

「…シンジ君ね、ご飯美味しいって誉めるとすっっっごい良い笑顔見せてくれるの…普段の様子と別人みたいな。」

「…」

「何だかさ、その笑顔見たら…この子も苦労してるなって…」

「4才から親と別れて暮らしていたのですものね…あ!いけない、そう言えばミサトに渡す物があったのよ。」

「へ?渡す物?」

「ええ、危うく渡し損う所だったわ。ええと…はい、これ貴女に司令から宿題。」

「し、宿題ぃ〜!?司令からぁ〜〜?」

「ええ。チルドレン生活管理日誌。管理監督者はパイロット保護育成の為日常の様子をレポートし、毎週提出せよ…ですって、碇司令直々に渡されたわ。」

「うげぇ…何面倒な事させんのよあの髭ぇ〜…」

「何言ってるの、相手は未成年だし当然でしょ?ましてや貴女も彼もネルフに所属しているんだから…最も、実は何だかんだ言いながら息子が心配なだけなのかもね。」

「…だと良いんだけどね…」



―――



『碇、君の提唱した人類補完計画、最初の関門は無事突破出来たようだな。先ずはおめでとうを言わせて貰う。』

「は、有難うございます。計画は順調に進行しており遅延は2%台に収まって現在進行中…議長、他の委員は?」

『彼等は呼んではおらん。今ここには碇、君と私の二人だけしかおらぬ。』

「…と言うと…」

『…“奴”が現れた…』

「…」



―――



「あ、お帰りなさいミサトさん。今日は早かったですね。」

「たっっだいまぁっシンジくぅん♪はぁい頼まれてたお豆腐と白滝にお葱と春菊ぅ!んでぇこっちがお肉と卵とお魚ぁ、トイレットペーパーは嵩張るんで未だ車の中だからちょっち取ってくるわねー♪」

「はい、じゃあ僕料理始めてますんで。」

「期待してるわょぉん♪じゃちょっち行って来るわねえ〜」

プシュン

「ええと…ゲ!ミサトさんこの肉ステーキ用!?…仕方ない、薄く切れば良いか…ってミサトさん、焼き豆腐っていったのに普通の豆腐だよ…」

ザブン!ガタン!ペタペタガチャン!ペタペタペタペタ…

「あ、ペンペン。もう直夕食だからビールは後にした方が良いよ。」

「クエ?クワヮヮ〜」

ガチャン、ガサゴソ…バタン。

トットットットッ…

「…自分で麦茶コップに注いで飲むペンギンなんて多分世界でここだけなんだろうなぁ…あ!これ白滝じゃ無くて糸蒟蒻!」

コッコッコ…カタン

「ケヒャ〜!クェックェッ!」





重音テトカバー DIVAーF エディット
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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲンドウ ( No.22 )
日時: 2013/09/11 00:32
名前: tamb

 難しい話です。タイトルと内容が乖離しているというか(笑)。すでに作者の想定を越え
ていると予想。『…“奴”が現れた…』なんて思わせぶりな引きがあったりして。このタ
イミングで出てくる「奴」って誰だろう。いずれにしても最初からよみなおさないといか
んな。時間作れるだろうか。

メンテ
Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.23 )
日時: 2013/11/04 18:02
名前: 何処

「転校…ですか?」


【−疑惑(前編)−】
《GLIDE》 Lily
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「ええ、無事初号機の修復も完了したし貴方の基礎データ収集も一通り終わった事だしね。それにシンジ君は未だ義務教育の最中でしょ?」

「え?ええ、そうですけど…良いんですか?」

「ん?何か心配?大丈夫よ、実戦時は兎も角普段は定期訓練とデータ収集に来て貰う程度だから通学して貰っても十分時間は有るわ。行動に制約は付くけど日常生活に支障を来す程では無いから安心して。」

「あ…そ、そうなんですか…僕はてっきり何かこう…」

「?何か?」

「え?あ、その…て、てっきり休学とかして毎日訓練とかエ…エヴァ?そ、そうエヴァンゲリオンに乗って練習とかするのかと…」

「軍隊じゃあるまいし。休学して貰っても普段は只待機してるだけになるわ、時間の無駄ね。それにネルフって実は其程予算潤沢って訳じゃ無いの、毎回訓練に実機を運用出来る程予算に余裕は無いのよ。」

「よ、予算って…そ、そんな事で大丈夫なんですか?」

「予算が無限で無い以上仕方無いわね。普段はシミュレーション訓練とシンクロ試験がメインになる筈よ、そう…週3回は来て貰う事になるわね。」

「週3回…ですか…」

「ええ、呼び出し時以外は普段通り過ごして良いわよ。必要な時は迎えが行くから。」

「普段…通り…」

「ああ、そう言えば貴方の通う学校、レイも通っているから。」

「レイ…ってあの…ひょっとして、あの…も、もう一人のパイロットの…」

「ええ、ファーストチルドレン綾波レイ・エヴァンゲリオン正規パイロット第一号。丁度シンジ君と同学年になるわ、未だ怪我は完治してないんでもし何かあったら宜しくお願いね。」

「あ…あの…ファ、ファーストチルドレンとか第一号って…」

「え?ああ、文字通りの意味よ。現在まで見つかったエヴァ搭乗適格者は三人、その中で最初に見出だされたのが彼女と言う事。」

「さ…三人!?たったの!?だってそんな…」

「エヴァは搭乗員を選ぶの。どんなに肉体能力や精神力、知能を有していても適性が無ければエヴァは指一本動かせないわ。そしてその適格基準はオーナイン…0,000000001%。つまり千億分の1。」

「!?せ…それだけ!?本当にそれだけしか無いんですか!?」

「そう、今現在判明しているエヴァンゲリオンとのシンクロ数値から解析したデータがそれを示しているの、信憑性は高いわ。そして貴方はその確率数値を越えた…つまりエヴァを実際に動かしたのよ。」

「僕が…」

「そうよ碇シンジ君。貴方は世界でも数少ないエヴァンゲリオン搭乗適格者、チルドレンの一人なの。」

「そ…そんな…」
(何で…僕が…)


―――


執務室で南極から回収予定の槍についての打合せを終え一段落着いた時、書類片手に冬月が口を開いた。

「碇、お前の息子、転校初日から殴られたそうだな。」

「…」

…その話か。
溜め息を圧し殺し冬月に視線を送る。

「やはり学校に通わせる必要は無かったのではないか?」

「チルドレンは道具では無い。それに社会から途絶した存在は社会に適合するのが難しくなる。」

信じてもいない台詞を語りながら手元の書類に目を遣る。
やはりと言うべきか、上辺だけの模範回答は予想通り冬月には通じなかった。

「ほう?やけに人道的だな、博愛精神に目覚めたか?」

私の台詞を鼻で笑い飛ばし冬月は話し続ける。

「まあいい。しかしな、レイと言いお前の息子と言い、保安部に強いる負担は大きいぞ?それに一般社会とネルフのギャップは下手をすれば解離性人格障害や躁鬱症を発症する恐れも」

「だからこそ学校の様な開かれながら閉じた世界…箱庭に意味が有る。社会との繋がりは人間の繋がりだ、多数の共通項を持つ同世代との繋がりは一般社会よりは未だ馴染みやすい。」

「その半ば閉じた世界だからこそ異端は排除されるぞ?」

「エヴァンゲリオン適格者が異端か。」

私の問いに冬月が答える

「異端でなければ犯罪者か英雄だな、子供の純粋さは自己投影の相手に実像なぞ求めん。」

「それは大人も同じだ、否、老いる事に酷くなる。夢想した犯罪者や英雄と言う存在の在り方を単純に、残酷に求める。そしてそこに現実が有ろうと無かろうと彼等には関係無い。」

「そうだ、彼等は夢想や妄想を対象に投げ付けるのだ…チルドレンと言う只の子供へな。で、その圧力をお前の息子は受け止められるか?」

「受け止めようが受け止められまいがここに居る以上はエヴァに乗らせる、選択肢は無い。」

我ながら無情な返答は冬月の勘に触ったようだ。

「…英雄に祭り上げられるのが解っている憐れな子供を只学校へ放り込むのは配慮が足りんと言っとるのだ。」

僅かにトーンの上がった口調に私は応えた。

「…それで潰れるならそれまでの人間だったと言う事だ。英雄なぞ所詮道化でしか無い。」

「確かに英雄と道化師は同じカードの裏表だ、英雄が嫌なら道化になるしか無かろう。だがな、未だ英雄なり道化師を演ずる事が出来るなら良い、しかしどちらも演じられぬならば悪役として孤立するしか無いのだぞ?」

「学校が嫌なら止めれば良い、それだけの話だ。」

「碇…」

冬月の視線が鋭くなる。

「何れにしろ人は一人では居られない。所詮他人同士、異なる価値観の存在を知り認め許容する事を学ばねば何処に行こうが一緒だ。そして学校はその異なる価値観の存在を学べる場所、そこに適応出来ぬのならばそれまでと言う事。」

「まぁ学校は良いとしよう、だがもしそれが高じて人間不信に陥ればエヴァの搭乗まで拒むかも知れん、その時はどうする?」

「構わん、此処に居て闘う意識を持たぬ存在は不要だ、只有害なだけの存在には出て行って貰った方が有難い。」

「実の息子に言う言葉とは思えんな…それに彼は貴重な適格者だぞ、それでもか?」

「必要ならレイを使う。」

「レイに拘り過ぎではないか?」

「それが当初の予定だ。それに適格者候補なら無数にいる、その為のマルドゥクだ。いざとなれば適当な者をパイロットに仕立てれば問題無い。」

「問題無いか…ふん、態々その為に後腐れの無い子供達をここ(第三新東京)へ集めたと取られてもやむを得ぬ言い種だな。」

全くだ。
内心で同意しながら手にしたままだった書類を卓上に置き、改めて冬月を見遣りながら私は再び同じ内容の台詞を繰り返す。

「元々初号機のパイロット予定者はレイだ。セカンドチルドレンもいる、それにあれはあくまで予備、エヴァに乗りたく無いなら出ていけば良い。」

「は、所詮ダミーの出来るまでの繋ぎか。大人の都合を押付けた挙げ句嫌なら辞めろ、とはな…子供には厳しかろう。」

「あれの理解なぞ求めん。奴が現れた以上既に時計の針は動き出したと見るべきだ、既に我々には時間が無いのだ。」

奴の事を口にした瞬間、冬月はネルフ副司令たる立場に戻ったようだ。

「…まぁ確かにそうだ、やはり計画は第一案を進めるか。」

「平行して第二・第三・第四も進める。本命は第一だがダミーの開発次第では第二以降に切り替えねばならない事態も予想される、選択肢を狭める冒険は出来ない。」

「うむ、となれば第一計画の為にも早くレイに“ヒト”への執着を持たせんとならんな。しかし人類の未来の為とは言え…」

「今更だ冬月。それに子供は何れ大人になる、親離れは早い内の方が良い。」

「…それは正論だがな。」

何か言いたそうな冬月に今の話題に終止符を打つべく言葉を紡ぐ。

「二人は学校に通わせる。シンジにせよレイにせよネルフのような特殊環境下の常識だけに染まらせる事は出来ない、偏った価値観を植え付け人間社会の拒絶を招きかねん。」

「…その台詞を皆が聞いたらどんな顔をするか楽しみだ。」

「勘違いするな冬月。チルドレンは“信管”だ、扱いを誤り世界を拒絶し子宮回帰願望を抱く存在になれば世界は再び同じ事を繰り返す。ネブカトネザルの鍵を持たせる為にも失敗は出来ない。」

「神への道…古代バビロニアの遺物に頼る現代人か、何とも情け無い話だ。」

「今だからこそ造れぬ物もある。それに例え廃墟と化した遺物でも使える物は使う、我々に選択肢は無い。」

「これ以上“赤きニガヨモギに穢されし世界”を拡げぬ為に…か。それはそうと碇、例のジオフロント省人化計画だが…」

話題は変わり私とネルフ副司令官は再び無味乾燥な実利的会話を交わし出した。


―――


夜の太平洋洋上に漂う一本の流木
その下に集う無数の魚。

不意に魚群が流木下から沸き立つ様に散り跳ねる。まるで逃げ出すかの様に…

その流木の下、繭の如く着いた物体が蒼く輝きながら泡立ち始め…


―――


静止衛星軌道上、無数の人工衛星の中の一つにそれは存在する。
八重の特殊硝子越しに液体窒素に浸されたその凍る瞳は太平洋洋上を何時もの様に観察していた。

何も無い筈の洋上、決して反応する筈の無いセンシングにその反応を捉え、内蔵された機器は設計通りの機能を発揮し、予めセットされたプログラムを電子回路上に走らせる。
アポジモーターが一瞬輝き、その本体を低軌道へ…重量の井戸へとゆっくりと落として行く。
そして内蔵された様々なセンサーがまるで生物の様に現れ眼下の惑星表面の一点を指し、その能力を解放しだす…

再びアポジモーターを輝かせ静止衛星軌道へ復帰しようとするその物体から一本のレーザー発振器が首を振り、地上へとその能力を解放したのはそれから105分後の事だった。


―――


○月○日2318、ネルフ本部は使徒出現の報を太平洋哨戒監視衛星β-05より受信、当直者は直ちに第二種警戒体制発令を政府に通達・S,A,B級職員に対し緊急招集を掛けた。




第三新東京市が戦場になるまで後11時間。




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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲンドウ ( No.24 )
日時: 2013/11/17 02:26
名前: tamb

 例えばアポジモーターとか重力井戸とかいうフレーズに萌えてしまう私はSF者、という
より最近はガンオタと思われてしまうのだろうか。まあいいけど。
 何はともあれ続き待ち。

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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.25 )
日時: 2014/01/13 20:38
名前: 何処

『‘……’』「‘…了…’」

「…っぱ…………って?」

「あ………じゃ…いかと…」

「……した?見付けたか?」

「ああ。海上にドローン発見…目標地点到達。予定高度まで300」

「了解。探索準備完了、いつでも良いぜ」

「予定高度到着、ソノブイ投射する。カウント、5・4・3・2・1、投射」

「投射確認…ソノブイ着水、推定境界層下まで70…50…30…予定深度到達、探査開始。」

「…しかしこんなガラクタ見つけるのに本部は随分手間取ったみたいじゃないか。」

「再建したBIGEYEは鯨の寝言だって聞けた筈なんだがな、こいつは無口なんだよビリー…」

「…」

「…」

「…」「…」

「「………」」

「…聴こえたか?」

「いや、未だだ…おかしい、静か過ぎる…まさか消えちまったのか?」

「あの図体がか?まさか」「静かに…」

「………」「………」

「「………」」

「…どうだ?」

「…静かだ…駄目か、パッシブには反応無し…仕方無い、アクティブを使うぞ、ピンを打つ。」

「了解……どうだ?」

「一寸待て……爆心近辺にエコー無し…」

「何?」

「間違い無い…反応無し。あの野郎N2直撃しても生きてやがったか!モビーディックめ何処に行きやがった!」

「‘マザーグースよりターキー、エネミーロスト、繰り返す、エネミーロスト、該当探索区域に反応無し、調査範囲を拡げ捜索を続行する、オーバー。’…捜索開始する、手負いなら未だ其処らにいるだろう。奴の目標は第三新東京だ、そこまでの予想ルートを辿るぞ」

「了解」



【−疑惑(中編ー1ー)−】



『‘ターキーより各機、状況知らせ。’』

「‘マザーグース、第2エリア哨戒終了、第5エリアへシフト’」
「‘グース1、第3エリア哨戒終了、第7エリアへシフト’」
「‘グース2、第4エリア哨戒終了、第6エリアへシフト’」

『‘了解’』

「…グース1、グース2共に未発見か…どうした?」

「見付けた…」

「ふぅ、ソノブイ7本目でビンゴか。割と早く発見出来たな、それにしても…」

「ああ、冗談キツいぜ。N2直撃でもピンピンしてやがる、現在8kntで移動中。」

「やれやれ…あれから未だ2時間だぜ?とんだ化け物だ。」

「全くだなチャック。回線を廻すぞ、覗き屋とアタッカーに通信だ、鴨共に餌の時間を教えてやれ。」

「ヤー、‘マザーグースよりターキー、グース1,グース2、エネミーのエコーキャッチ、方位6-3-5,深度300、速度8…気付かれたか!?エネミー増速!すげぇダッシュだ…方位変わらず速度12…いや18…24…30…40!’」

「40!?タイフーン級並だなこりゃ。」

『‘ターキー了解’』

「‘グース1了解、ASROCにデータ転送、120sec後投射’」
「‘グース2了解、同じく120sec後に投射’」

「こいつのサイズはタイフーンの倍だがな…F*#k!40出して無きゃ又見失うとこだぜ、全くアクティブ使っても捉え切れないなんて糞野郎が!」

「おいおいタイフーンの倍なんて図体でエコーはイルカ?何の冗談…?どうしたチャック?」

「シット!又増速しやがった!50で浮上中…‘グース1グース2攻撃中止!エネミー増速、ASROC振り切る勢いだ…こいつは又飛ぶぞ…’」

『‘コーション!コーション!ターキーよりアタッカー全機へ!緊急離脱!’』

「‘マザーグース了解’」「‘グース1了解’」「‘グース2了解’」

『‘本機も離脱する!高度2万まで上がる、以降は各機フリーハンド!’』

「‘了解’チャック、タンカーで給油中の騎兵隊を呼び出せ!」

「ヤー!‘マザーグースよりハンマー、ロングボウ届かず、そっちの仔牛共で一発喰らわせてやってくれ!’」

「‘ハンマー了解、第一群のSU隊8機と第二群のVTOL隊8機は腹一杯だ、直ちに向かわせる。到着予定は10分後だ、第三群は2機が未だタンカーにへばり付いてるんで後20分予定’」

「‘了解’後10分で騎兵隊前衛が到着だ、回線を返すぞ。しかしこりゃ…」

「ああ、手持ちの通常兵器じゃ歯が立たない。噂だがこいつの同類は前回の戦闘でSクラスのバンカーバスター直撃しても無傷だったらしい。ハープーンなぞ戦車に拳銃弾撃ち込むようなものだな。」

「Sクラス!?専用キャリヤー使うICBM転用のあれだろ?俺に言わせりゃハープーンなぞ拳銃弾と言うより投石だな。…エネミー浮上、現在50で移動中…」

「‘マザーグースよりハンマー、エネミー浮上、速度50進路変わらず’…全くだ、あれじゃ並の戦術N2では足止めにしかならねぇな。戦略級でもなきゃマトモにダメージ与えられねぇぞ。」

「戦略級!?そもそもUNF日本駐留軍にも戦略自衛隊にも地雷以外戦略級のN2は無いぞ。」

「ああ、ましてや戦略級航空爆弾なんて骨董品はキャリャー自体殆どモスボールか退役してるしな…今から機体再生して呼び出すって訳にもいかんし。」

「シベリヤの穴蔵か北京の博物館に行けば現役が寝てるんじゃなかったか?」

「ギガトン級熱核爆弾と一緒に借りろってか?」

「N2以上の威力っていえば水爆しか無いだろ?それともグアムの戦略空軍呼び出して倉庫の底漁らせてみるか?あそこのヤードならハワイに置けないヤバい代物がゴロゴロしてるぜ?」

「時間があればな。」

「時間か…グース1も2もハープーンは使い終わってるし…」

「こっちも腹の荷物が重過ぎて他は積んで無いしな。」

「やれやれ、打つ手無しか。もううちらには飛んでる相手にやる事無いしな、後はケツ捲って逃げるか。」

「…逃げるにしろ、腹の荷物は邪魔だな…」

「…だな…」

「…感状出るかな…」

「…始末書なら出るかもな。」

「だな…フリーハンド…か…」

「ああ…フリーハンド…だ…」

「「…」」

「…どうする?」

「…仕方無い、騎兵隊到着前に腹の荷物を放り出すぞ、空中目標相手じゃ駄目元だが足止めになれば御の字だ。」

「やれやれ、俺はいつからヘルダイバー乗りになったのやら…よし、起爆深度を40に設定した。」

「オーライ、超低空からスキップボミングで奴の鼻面に直撃させる、退避時間を稼ぐのにはそれしか無い。降下開始」

「了解」



《サイバーサンダーサイダー》
http://www.youtube.com/watch?v=9KZ09q3LPzw&sns=em

―――



(二級秘匿資料指定・機密保持期間一般公開不可、職員はA級職以上又は情報管理有資格者以外の閲覧禁止)

−第二次使徒迎撃戦戦闘報告書−

序章・経過報告

−今回の使徒迎撃戦における経緯概略を時間軸に沿い記述する−

○月○日2318、ネルフ本部において使徒反応発生の報を太平洋哨戒監視衛星β-05より受信、直ちに第二種警戒体制発令を政府に通達しS,A級職員緊急招集開始
翌○月×日0005までにS及びA級職員召集完了、0012緊急対策本部設置、作戦会議開始。

同0028、目標反応パターン青を確認、使徒と認定し目標呼称を第四使徒と命名(以下使徒と略称)

0031、使徒の進行予測出る、進行目標は第三新東京市・到達予定時刻0430〜0530と判明、政府へ防衛出動要請

0056、前回の戦闘報告及び現時点での戦力から推測した戦術シミュレーションの結果、ネルフは海上及び水際での迎撃による使徒撃破を不可能と判断。
検討の結果予想される使徒上陸に際し作戦方針を黎明時戦闘を避け一般兵力及びN2機雷による遅延戦闘の後、第三新東京市内でのエヴァンゲリオンによる昼間直上迎撃と決定。

0110、使徒防衛識別圏侵入・警戒体制を第一種に変更、国連軍及び自衛隊・戦略自衛隊へ作戦内容通達
0118、硫黄島より国連軍早期警戒機発進

0200、国連軍第三艦隊那覇より緊急出港
0210、洋上を低空進行中の使徒を早期警戒機レーダーが感知

0217、大型対潜哨戒機3機(内一機はN2爆雷2発装備)・給油機2機発進

0225、戦略自衛隊2個師団、自衛隊空挺第一旅団に政府より防衛出動命令、同時に戦時協定に基づき指揮権がネルフへ移行される。

0227、早期警戒機光学センサーにて極低高度飛行中の使徒を発見、偵察ドローン3機射出

0224、進行速度から推測される第三新東京沖使徒到達予想時刻を0508と確定

0244、第一波攻撃隊三個小隊発進
0319、第一波攻撃隊公海上にて使徒へ攻撃開始
0322、使徒海中へ離脱を謀る。大型対潜哨戒機隊攻撃開始
0324、大型対潜哨戒機、潜没し離脱を図る海中の使徒に対しN2爆雷1発を投下、同時に偵察ドローンを除く攻撃隊全機待避
0327、N2爆雷起爆を確認(偵察ドローン1機爆発衝撃波直撃により喪失)・第一波攻撃隊に帰還命令

0347、欧州宇宙開発機構海洋資源探査衛星が海中にて行動停止中の使徒を確認
0350、第二波のN2爆雷装備大型攻撃機、機器故障により発進中止
0355、予備機の準備整うも爆雷自体に故障発生。修理所要時間3時間と判明
国内に航空機投射型N2爆雷在庫無し・爆雷の修理と並行しUN軍サイパン基地より即応弾の緊急輸送を開始
0357、第二波攻撃隊発進


0408、自衛隊空挺旅団第三新東京到着・協定通り住民避難誘導計画に沿い使徒到着1時間前に全住民をシェルターへ待避させるべく市内所定位置へ配備開始
0421、第一波攻撃隊帰投

0435、自衛隊空挺旅団配備完了
0450、使徒予想進路上へ戦略自衛隊配備完了・N2地雷設置開始

0503、第二波攻撃隊及び大型攻撃機に空中給油開始
0522、大型対潜哨戒機使徒の活動再開を探知・第三波攻撃隊発進
0620、大型対潜哨戒機のDPSが海中移動中の使徒を探知・第二波攻撃命令発令
0630、使徒海面に浮上、大型対潜哨戒機使徒に対し攻撃を敢行、N2爆雷を投下するも使徒に爆雷を空中で迎撃破壊され攻撃失敗。第二波攻撃隊攻撃開始

0657、使徒領海内に侵入・日本政府との条約により国連軍によるN2攻撃不可となる。国連軍同時刻以降の防衛行動指揮をネルフに移管
0659、第2派攻撃隊攻撃終了・帰投開始

0748、第三波攻撃隊及び国連軍第三艦隊使徒と交戦開始
0808、第二派攻撃隊帰還
0835、戦闘終了・使徒の撃破は成らず第三艦隊八隻中六隻が被害を受ける(一隻轟沈三隻大破二隻小破・大破艦の内一隻は1004に沈没)

0840戦闘評価・使徒依然進行中なれども遅延戦闘の効果により第三新東京上陸予定時刻を1000まで引き延ばす事に成功、目的は達成され概ね作戦計画通り計画は進行と評価

0845、第三新東京市に警戒警報発令
0850、使徒進路変更・N2地雷設置地点を外れる、戦略自衛隊配置変更開始
0855、大型対潜哨戒機及び空中給油機帰還
0900、使徒の接近を受け第三新東京市全域に非常事態宣言発令・住民の避難壕への待避開始
0920、戦略自衛隊再配置完了・第三波攻撃隊帰還
0935、全一般住民の避難完了
0950、戦略自衛隊防衛艦隊及び航空部隊使徒へ攻撃開始
1008、使徒上陸、第三新東京防衛圏内侵入・UN軍及び戦略自衛隊陸上部隊迎撃開始
1021、エヴァンゲリオン初号機発進・1023戦闘に突入
1027、戦闘中の初号機、待避壕より出た民間人を発見・非常事態につき初号機内に回収、戦闘続行

1034、初号機使徒の撃破に成功

1057、初号機パイロット及び民間人2名を回収

1155、一般住民の避難指示解除・但し翌0900までの自宅外外出禁止令を公布

1514、初号機回収作業開始
翌0851、回収作業終了
同0930、自衛隊撤収開始
1000、非常事態宣言解除

(中略)

…尚、作戦行動中の初号機に一般人を収容した事については非常事態につきやむを得ない行動であり、パイロットの判断に全く問題は無いと断言出来ます。
その行動に対する全責務は救難行動を認可した責任者である作戦部長に有り…

(中略)

ー戦闘の子細に付いては別紙1、戦闘被害算定評価資料は別紙2を参照されたしー

起案報告者・ネルフ作戦部長葛城ミサト三佐



―――



「…まずい事になったな、碇…」

「ああ…」



―――



「…え?何故!?何でエヴァの反応が?」

「…どうしたのマヤ?」

「ち、一寸先輩、このデータ見て下さい!」

「え?どれ」

「ここです!この反応値…」

「…どう言う事?計測機器のチェックは?」

「発進前のチェックでは異常有りませんでした、現在C整備中ですが今の処異常の報告は…」

「…マヤ、この測定結果はB機密に指定、口外は禁止します。いいわね?」

「え?あ…はい、了解しました。B機密指定ですね、測定結果にマスキング掛けます。」

「お願い。私は今から司令部に行くわ、解析進めておいて。」

「は、はい!」

プシュン!コツコツコツコッコッ…


「…どう言う事?」


《GLIDE》 Lily
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メンテ
Re: 親父補完委員会((笑))【ゲン ( No.26 )
日時: 2014/01/19 17:28
名前: 何処

「!?な、何で二人がここに」

『シンジ君!一体どうしたの!』



【−疑惑(中編-2-)−】



エアハンマーの怒号に溶接のビートと金属切断の悲鳴が混じる。

重機が吠える轟音
響く金属音
破砕音

辺りを圧倒し響き渡る騒音の直中に私は居た。


「…やっぱ速成教育は無理があったか…」


夜通し行われていた初号機の回収作業の最終工程を眺め遣りながら私はため息混じりに一人ごちた。

脳裏には気弱げな少年の姿が浮かぶ。
唯一度の実戦に参加し、勝ったとは言えなくとも生き延びた彼は極最近まで何の訓練も受けていなかった素人だ。
素人の作戦参加には正直不安だったが現状彼の他にパイロットの選択肢が無い以上止むを得ない。しかし…


「…途中まではほぼ予想通りの展開だったわねー。」


シミュレーター射撃訓練の時からそうだった。
事前説明をどこか上の空で聞いていた彼は私の危惧通り実戦でやらかしてくれた。
二度目の実戦ですっかり舞い上がり敵を視認した途端彼はトリガーハッピー状態になってしまい…弾を撃ち尽くすまで引き金を引き続けてしまったのだ。
ま、新兵には良く有る話ではある。あるのだが…


「やーっぱ人の話これーっぽーっちも聞いて無かったかぁ…はぁ。」


判ってはいたがと嘆息する。

1連射は基本3秒、5秒以上の連射は避ける、1連射後直ちにポジションを変更する、常に側面から射撃する、etcetc…

機体操作は兎も角、私が事前教育で教えた事は全く彼の身に付いてはいなかった。


「ま、時間無かったしねー、仕方ないっちゃ仕方ないけど。」


寧ろその成長を褒めるべきだろう。初戦では歩く事すら儘ならなかった少年がこの短期間でぎこちないながらもマトモに機体を操り戦闘をこなしたのだから。


「それよりあの射撃でジャムらなかったのは助かったー、本当良かったわ。実際ヒヤヒヤ物だったし…」


呟かずには居れない。

新兵器を使用する時はどんな場合でも不安が残る、例え設計上は何の問題が無くとも戦場では当たり前の様に−否、必ず想定外の事が起こるからだ。

使徒により破壊されはしたが、ろくに試射もしていない(主に予算と演習場の問題で)パレットガンがいきなり銃身加熱の限界まで使われながら、新兵器に有りがちな初期トラブルを一切起こさず設計値以上の耐久性を示した事はネルフ技術開発陣の実力とパイロットの幸運を示してくれた。

そう、全く幸運だったとしか言い様が無い。

新兵器が敵前で筒内自爆や給弾不良、不発弾発生を起こさなかった事もそうだが…それにしても危ない所だった。全てに於て。

射撃兵装を破壊され

戦場に紛れ込んだ民間人二名を緊急時とは言え戦闘兵器内に収容し

撤退命令を拒絶して戦闘を続行し

電源を切断され

内蔵電力が尽きる寸前に使徒の撃破に成功すると言う、正に瀬戸際の所で彼は勝利しだのだ。


「ま、結果オーライだけどさ…」


誰にともなく呟く。
薄氷を割る様な危うい行動の末彼がギリギリの所で掴んだ勝利は私達ネルフに膨大な成果をもたらした。

都市外縁部による戦闘のお陰で被害は最小限に止められた事もあるが、それ以上の価値有る成果だ。

膨大な戦闘記録
新兵器の信頼性の確認
民間人の保護による宣伝効果
何より貴重なパイロットの実戦経験

そして最も大きな戦果はパイロットが殆ど無傷の生還を遂げた事と


…ほぼ原型を保った使徒の死体…サンプルを得た事だ。


人類の敵と言う唯一点以外は未だ謎…正体不明な存在、使徒。
その使徒のサンプルが手に入ったのだ、今頃世界中の学者と言う学者が興奮し羨涎羨望している筈。
リツコなどさぞや嬉々としてサンプルに取り付く事だろう。


「うわぁ…想像しちゃった…」


身震いをして脳裏に浮かんだリツコの姿…眼鏡を輝かせ妖しい笑みを浮かべ高笑いしながら鬼気迫る勢いで使徒を解体する白衣の女…を振り払う。


「洒落にならないわよ全く…」


ぶつくさ呟き、ふと振り返ると、そこには朝日に照らされた第三新東京のビル群…その手前側には一棟の斜めに断ち斬られた様に特徴的な外観を示すビルが見える。

この遠景からだとまるで始めからそう建てられた様に見えるあのビルは、以前は普通の四角いビルだった。


―使徒に文字通り断ち斬られたのだ―


周りに誰も聞く者が居ないのを幸いに、私は一人ブツブツと独り言を呟き続けた。


「…気が重くなるわね…」


使徒…我々人類の 敵 

前回もそうだったが、その戦闘力には呆れるばかりだ。
今回の戦闘でもそうだ、もしエヴァの発進地点がもう少し使徒の近くだったらと考えるとゾッとする。
下手をすれば起動前に射出台ごとエヴァが両断されていたかも知れない。

来るべき次回の戦闘に思いを馳せ、私の心は更に重くなった。

接近戦メインの機体をわざわざ遠距離に配置しなければいけないなんて不合理極まり無いが、戦闘前に破壊されるよりはマシか。
次の戦闘では大事を取って使徒の直接視野から隠匿された地点にエヴァを射出するしか無いわね。少なくとも装甲ビル一棟分の遮蔽は必要かも…
支援攻撃も効率考えないとね…肝心な時に援護出来なきゃ意味無いし…ATフィールド中和時点で有効打叩き込むには…

私の思考は既に次の戦闘に向いている。
実戦で判明した新たな問題点は山の様に存在しているのだから対策を纏めるだけでも一仕事だ。

まぁ、パレットガンの信頼性は問題無いとして、後は威力と視認性の問題よね…
威力か…携行弾数から言えばパレットガンは理想なんだけど…代換武装も考えなきゃね、次期兵装開発も進めないと…
現有射撃兵装の中で単純な一撃の威力なら衛星軌道狙撃用ポジトロンキャノンかしら…でもあれ固定式よね…
爆煙対策は…改修中の弐号機なら複合センサーだから赤外線モードにすれば良いだけなんだけど…

エヴァ本体へのセンサー増設は無理にしても補助視界の情報をエヴァに送れれば問題は解決出来るかも…
市内の複合センサー設置箇所を現状の50%増しにして、マギで画像加工してエヴァと直接リンク出来る様にすれば…確か現在の予備予算でなら…
待てよ、複合センサー自体をグレードアップすれば50%も増設要らないかしら、加賀さんと話し合いしなくちゃ…
画像データもフレーム画像なら機器増設や予備回線使わなくともエヴァとマギの直通回線の余裕内に十分納まるわよね、そこらへんマヤちゃんと明石君に相談して…


「又リツコから文句が出るか…とほほ。にしても…」


背後の音に再び振り向けば、丁度初号機が使徒から離されて移動し始めている所だった。

足場とクレーンでバランスを保った状態の使徒の亡骸からゆっくりと初号機が引き離され、クロウラーへと移動していく。
すると緩慢にずれていく初号機の影から使徒の姿が徐々に現れ、その全容が明らかになってくる。


これが…使徒…


息を呑みその異相と偉容に圧倒される。
既に画像越しに何度も見てはいても肉眼で、しかも間近で見る使徒。
既に息絶えたと知ってもその存在感の前に人は畏怖の念を抱かざるを得ない。

だが、その使徒の姿には一つの…唯一つの瑕疵があった。
瑕疵…使徒の死を表す人工物が私達人類に希望を表すかの様に陽光を浴びて輝き、その存在を誇示している。

すっかり全容を現した使徒の胸部にあたる部位、そこに存在する球体にはプログレッシブナイフが突き立ったままだった。


その全景を改めて眺め、私は一言だけ呟く。


「…強運…よね、彼…」


改めて少年の強運を思う。
射撃武装を失った上に、民間人を2人も抱え込み、更に電源喪失などと言う事態に陥りながらも彼はプログレッシブナイフ一本で稼働時間内に見事使徒を葬り去ったのだ…

言い換えれば、才能はあるがまともな訓練すらろくにしていない素人が大金星を…それも二連続で…取ったのだ。


「いけるかもしれない…けど…頃合いよね…」


正直、彼に私達の希望…エヴァを託したい気持ち半分・解放してあげたい気持ち半分だ。
そうそう強運は続きはしない。これでもし次も勝てば…


「…本物として扱わなくちゃいけなくなる…」


そうなれば…否応なしに彼はエヴァンゲリオンパイロットとして戦わされる。
平穏な日常から切り離され、唯の少年から戦士への道を強要されるのだ。
兵士とは呼びたく無い。
何故なら兵士とは…


「…替えの利く存在…彼は違う。」


オーナインシステムに適合した、生まれながらのエヴァンゲリオンパイロットとも言うべき存在…それが彼だ。
予め消耗…負傷や死を見込んで大量育成される兵士達との最大の違い。

逆に言えば、正式にエヴァンゲリオンパイロットとなれば彼にはもう選択の余地はおろか拒否権すら無い。
否応無く彼にはエヴァンゲリオンに乗り、闘い、勝ち、生き延びる事を前提にした道を歩んで貰う。


「…まるで古代ローマの奴隷戦士ね。生き延びる為には第三新東京ってコロシアムで使徒って敵と闘い、勝つしか無いなんて…或いは…」


唾を飲み込み、己の発想に嫌悪を感じながら呟きは止まらなかった。


「…生贄の黒羊って所か…」


唯独り来る日も来る日も生き延びる為見世物として目の前に現れた存在と闘い続けなければならぬ古代の戦士と

不条理にも否応無く選ばれた時点で命運尽きる存在と

少年の姿が

重なり




嘆息し、私は仕事へ逃避すべく現場事務所へ足を向ける。
日差しは既に朝の優しさを脱ぎ捨て刺すように世界を照らし出し始めていた。



《GLIDE》 Lily
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Re: 親父補完委員会((笑))【ゲンドウ ( No.27 )
日時: 2014/01/26 00:53
名前: tamb

ハードだ。いろんな意味で。
私は軍事方面には疎いのだけれど、たとえばヤンキー的なある種不真面目とも思える軽さはこんな感じかという気がするし、整合性も取れてると思う。
いずれにせよ人類の存亡をかけた戦いというのはハードなものにならざるを得ず、必然的にミサトもリツコもハードでなければならない。映像的に軽さというかズボラな面が強調され過ぎている嫌いのあるミサトも実はハードなのだ。そこをどう書くのかは難しいのだけれど、これは良くかけてると思う。
何回も書いてるけど、まとめて読みたいね。読めばいいんだがw

メンテ

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