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テラトピア大事変
日時: 2020/12/25 07:49
名前: 戦艦零号

第一話

休憩時間
全世界を二分させる人類史上最大の大戦争…。第三次列国大戦が終焉してより十五年が経過する。世界暦五千五百二十二年四月下旬…。小国家〔テラトピア自由区〕での出来事である。場所は進学校テラトピア学園…。休憩中に一人の男子生徒が窓際から仰天の青空を眺望する。
「今日も図書室で暇潰しだな…」
男子生徒の名前は【フィルドルク】…。テラトピア学園の男子生徒であり学部は普通科である。フィルドルクは一見すると年齢十四歳の普通の少年であるものの…。誰よりも荒唐無稽のオカルト関連が大好きであり勉学以外の時間帯ではオカルト関連の情報を調査するのが趣味である。フィルドルクは午前中の休憩時間に図書室へと移動する。
「オカルト関連…オカルト関連…」
フィルドルクはオカルト関連の参考書を何冊か黙読したのである。内容としては近年話題の超能力関連は勿論…。古代文明の魔法神秘学やら東洋の妖術関連である。
「僕にも超能力とか…荒唐無稽の魔法が扱えたらな…」
フィルドルクは自身にも超能力やら魔法が使用出来たらと妄想し始める。
「一体如何すれば僕に超能力が?」
彼是と思考し続けた直後…。
「ん?」
隣接より一人の女子生徒が魔法関連の書籍を何冊か漁ったのである。
『誰だろう…』
気になったフィルドルクは恐る恐る隣接の女子生徒をチラ見する。
『うわっ…誰なのかな?』
女子生徒は女性としては高身長であり頭髪は赤毛のストレートロング…。両目の瞳孔は半透明の血紅色であり両方の耳朶には金剛石のイヤリングが特徴的である。容姿は人一倍美的でありフィルドルクは彼女の妖艶さに見惚れる。
『彼女…相当の美人だな…胸部も…』
女子生徒は胸部が豊富である。フィルドルクは彼女に魅了されたのか赤面し始める。
『瞳孔が血紅色だ…彼女は…人間の女の子なのかな?』
隣接の女子生徒は一般の女性とは異質的であり摩訶不思議のオーラを感じさせる雰囲気だったのである。すると摩訶不思議の女子生徒はフィルドルクの存在に気付いたのかフィルドルクの方法を凝視し始める。
「貴方…先程から何かしら?私に用事?」
「えっ!?」
フィルドルクはビクッと反応…。
「御免…気にしないで…」
フィルドルクは赤面した表情で即座に女子生徒に謝罪したのである。すると女子生徒は恐る恐る…。
「貴方…名前は?」
「僕の名前は…フィルドルクだよ…」
フィルドルクは即答したのである。
「君は?」
一方のフィルドルクも女子生徒に名前を問い掛ける。
「私は【メロティス】よ…貴方は私のクラスメートだったわよね…」
「えっ…君は僕のクラスメートだっけ?」
フィルドルクはオカルト関連には随一である反面…。オカルト関連以外の物事には比較的無関心であり自身のクラスに誰が存在するのか認識出来なかったのである。
「貴方って…オカルト以外の物事には無関心そうね…」
『フィルドルクって男子は天然なのかしら?』
フィルドルクは極度の天然でありメロティスは内心呆れ果てる。
「えっ…はぁ…」
一方のフィルドルクは苦笑いしたのである。
「貴方は荒唐無稽の心霊とか超常現象とか大好きそうね…」
「勿論だよ♪超能力とか異星人とかも大好きだよ♪」
フィルドルクは笑顔で即答する。
「へぇ…貴方って純粋なのね…」
「えっ?純粋?僕が?」
「純粋よ…誰よりもね♪」
メロティスは微笑した表情で発言したのである。
「えっ…」
『純粋って…子供みたいだな…』
フィルドルクはメロティスに子供扱いされ…。赤面したのである。するとメロティスは小声で…。
「今日の放課後だけど…私と一緒に帰宅しない?折角の機会だし…」
「えっ!?」
フィルドルクはメロティスに誘われ驚愕したのである。
『こんなシチュエーション…現実なのかな?こんな僕が…女子生徒と帰宅…』
フィルドルクは今回の出来事が現実なのか混乱する。予想外のシチュエーションに再度赤面したのである。
「私も荒唐無稽のオカルトが大好きだからね…如何する?貴方にとって都合が悪ければ無理にとは…」
問い掛けられたフィルドルクは一瞬沈黙するものの…。
「勿論大丈夫♪僕は大丈夫だよ♪メロティスさん♪」
フィルドルクはワクワクした様子であり笑顔で返答したのである。
『こんな僕がこんな可愛らしい女の子と一緒に帰宅出来るなんて…夢物語みたいだよ♪現実の出来事なのかな?』
一瞬現実なのか自分自身の妄想なのか混迷する。フィルドルクはメロティスとの帰宅に内心大喜びしたのである。

第二話

帰宅
放課後の時間帯…。フィルドルクはメロティスと一緒に帰宅する。
「メロティスさん…自宅は?」
「私の自宅はサウスタウンよ…」
サウスタウンとは西方地帯に存在する小規模の住宅街である。
「えっ?メロティスさんの自宅もサウスタウンなの?僕と一緒だね♪」
「貴方の自宅もサウスタウンなのね…」
メロティスもサウスタウンの住民でありフィルドルクは内心大喜びする。
「貴方…随分と嬉しそうね…」
「えっ!?」
フィルドルクは赤面…。気恥ずかしくなる。
「フィルドルク♪貴方って本当に面白いわね♪」
メロティスは微笑み始める。
「僕って…面白いのかな?」
「面白いわよ♪人一倍天然そうだし♪」
「えっ…」
『人一倍天然って…』
フィルドルクは苦笑いしたのである。するとメロティスは無表情で…。
「貴方は現実世界に荒唐無稽の魔法が存在するなら…直視したくない?」
「えっ…」
『正直…メロティスさんの思考が理解出来ないけど…』
メロティスの突然の質問に困惑したのである。
「魔法が…」
フィルドルクは一息する。
「空想かも知れないけど…荒唐無稽の魔法が本当に存在するのであれば…実際に直視したいかな…」
フィルドルクが恐る恐る返答するとメロティスは瞑目し始める。
「仕方ないわね…」
「えっ?仕方ないって…」
「今回だけは特別よ…」
「えっ…特別って?」
メロティスはカッターナイフを所持したかと思いきや…。自身の手首を自傷させたのである。
「メロティスさん!?一体何を!?」
フィルドルクは突然の彼女の自傷行為に驚愕する。一方のメロティスは平気そうな表情だったのである。
『彼女は正気なの!?』
地面にはメロティスの血液が一滴ずつ流れ出る。
「メロティスさん…血液が…」
フィルドルクは彼女の鮮血に畏怖したのかソワソワする。
「フィルドルク…貴方は極度の心配性ね…」
一方のメロティスは冷静沈着だったのである。
「心配しなくても私は大丈夫よ…貴方は大袈裟ね…フィルドルク…」
数秒間が経過する。カッターナイフで自傷したメロティスの傷口が一瞬で治癒したのである。
「えっ!?メロティスさんの傷口が治癒した!?一体如何して…何が?」
フィルドルクは荒唐無稽の超常現象に愕然とする。するとメロティスは無表情で発言したのである。
「単刀直入に表現するなら…私の正体は魔女なのよ…」
「えっ…魔女?メロティスさんの正体が魔女だって?」
一瞬出鱈目であると思考するものの…。先程の荒唐無稽の超常現象を直視するとメロティスの正体が魔女であると否定出来なくなる。
「正確には私の家計は魔女の家計ってだけよ…父様は普通の人間だし…私は魔女と人間の混血なのよね…」
メロティスは母親が人外の魔女であるものの…。父親は純血の人間だったのである。フィルドルクは緊張した様子で恐る恐る彼女に質問する。
「ひょっとするとメロティスさんの祖先って…東洋に存在する…イーストユートピア出身者なの?」
「私の祖先はイーストユートピアに出身らしいわね…」
イーストユートピアとは極東に存在した辺境の島国であり所謂桃源郷神国と命名される。世界的には魔女の発祥地とされる。イーストユートピアは近代化の成功により列強の一員として認識されたものの…。二百年前に勃発した第二次列国大戦で超大国に敗北したのである。イーストユートピアは多大なる空襲により各村落は焦土化…。今現在では荒廃した無人地帯同然であり居住者は誰一人として存在しない。
「メロティスさんが魔女なのは事実みたいだけど…吃驚したよ…」
「こんな話題はオカルト大好きな貴方以外には出来ないからね…」
「正直最初に対面してから普通の常人とは異質的だったからね…メロティスさんの正体が魔女なのは納得だよ…」
するとフィルドルクは小声で…。
「メロティスさんは今迄誰かに気味悪がられるとか…差別されなかったの?」
メロティスは一瞬沈黙するも小声で返答したのである。
「無論ね…私自身こんな容姿だし…クラスメートの女子達からは人外の魔女って揶揄されたわよ…実際問題私の家計が人外の魔女なのは事実なのだけどね♪」
彼女は笑顔で発言する。
「前向きだね…メロティスさんは…」
フィルドルクはメロティスが人一倍ポジティブであると感じる。一方のメロティスはフィルドルクを凝視…。
「貴方も人外でしょう…フィルドルク…」
「えっ?」
メロティスの人外の一言にフィルドルクは意味が理解出来ず脳内が白色化する。
「僕が…人外だって?」
「貴方ってエスパーっぽいのよね…」
「僕が…エスパー?」
フィルドルクは珍紛漢紛であり困惑したものの…。
「二年前に死んじゃったけど…僕の母方の叔父さん…ストレイダス叔父さんが…霊能力なのかな?死者の霊体と会話出来るとかって…」
フィルドルクには母方の【ストレイダス】と名乗る叔父が存在する。今現在でこそストレイダスは故人であるが…。ストレイダスは大昔から死者の霊体を視認出来る特殊体質だったのである。霊体を視認出来るばかりか死者との会話も出来る性質上…。周囲の者達からは非常に気味悪がられ両親やら実母以外の兄弟からも嫌忌されたのである。こんな境遇の彼であったが…。警察組織が死者と会話が可能であるストレイダスの霊能力に注目する。警察組織は特殊体質の彼を特別枠の特別警察に配属させ数多くの未解決事件解決に貢献させたのである。
「やっぱりフィルドルクの血縁者はエスパーだったわね…」
メロティスは納得する。
「貴方は正真正銘エスパーの人種なのよ♪」
「僕がエスパーの人種!?」
「如何やら貴方が貴方の叔父さんの血筋を色濃く継承したみたいね…」
「血筋を継承したとしても僕にはストレイダス叔父さんみたいに死者の霊体なんて視認出来ないし…映画とか漫画の主人公みたいに怪力とか超能力なんて何一つとして使用出来ないよ…」
「貴方が特殊能力を発揮するには相応の衝撃が必要不可欠なのかも知れないわ…」
「相応の…衝撃?」
「貴方自身が大事件とか…事故に遭遇しなければ特殊能力は一生涯覚醒しないでしょうね…」
「大事件とか事故って…物騒だな…」
フィルドルクは苦笑いしたのである。メロティスと摩訶不思議の会話から数分後…。二人は自宅へと戻ったのである。

第三話

新人類
小規模の島国…。テラトピア自由区から数百キロメートルの長距離にはテラトピア自由区よりも小規模の島国が存在する。島国の国名は〔万民解放区〕である。万民解放区は十五年前こそ無名の無人島であったが…。第三次列国大戦に敗北した万民解放軍の残党勢力と世界各地の犯罪者達が移住したのである。彼等は無人島の万民解放区に暗躍すると島内全域を軍事拠点化…。万民解放軍を再結成したのである。とある密室にて二人の軍人が密談する。
「二日後だ…二日後に近場のテラトピア自由区を攻略するぞ…」
将軍らしき人物が発言したのである。
「テラトピア自由区か…一日間で攻略出来そうだな…」
背広姿の金髪碧眼の男性が返答する。テラトピア自由区は比較的国内の治安が安定した一方…。戦力は最低限の武装警察隊が配置された程度であり通常の国軍としての反撃能力は実質皆無とされる。
「歴戦の貴様にとっては今回の作戦…片手間なのかも知れないが…貴様以外の将兵達は実戦未経験の新米兵士達ばかりだ…実戦で役立つのやら…」
今現在万民解放軍の将兵は大半が世界各国の犯罪者達ばかりであり経験豊富の将兵は実質少数とされる。将軍らしき人物は将兵達の熟練度の脆弱さを懸念する。
「非力の新兵ばかりだが…世界連合は十五年前の大戦で疲弊した状態なのも事実だからな…」
世界連合とは第二次列国大戦を契機に創設された各国家による統一政府である。第三次列国大戦が終結してから十五年が経過したものの…。今現在世界各国が戦争の悪影響で疲弊状態でありあらゆる国家が戦争出来る余力が皆無だったのである。無論…。統一政権の世界連合さえも今現在は反戦ムードであり各地の紛争を解決出来る余力は皆無である。背広姿の男性が断言する。
「今回の作戦は俺達の強大さを全世界に知らしめる絶好機…今回の作戦が成功すれば世界連合は迂闊には手出し出来なくなるだろう…何よりも俺には…」
背広姿の男性は護身用の拳銃を携帯したかと思いきや…。
「なっ!?貴様は…一体何を!?」
将軍らしき人物は拳銃に冷や冷やする。
「安心しろ…此奴を…分解するだけだ…」
「分解だと?一体如何するのだ?」
「大人しく見物し続けろ…」
背広姿の男性は摩訶不思議の効力で自身の拳銃を分解したのである。
「俺が超能力さえ思う存分に発揮出来れば…全世界を掌握出来るだろう…容易に…」
新人類とは超能力を所持する特殊人種とされ…。現在の調査では百万人に一人の確率で存在するとされる。
「現段階では俺に対抗出来る新人類は存在しない…」
すると将軍らしき人物はニヤリと冷笑する。
「貴様の超能力とやら…期待するぞ♪【ウィルフィールド】…」
彼自身詳細は不明であるが…。ウィルフィールドと名乗る人物は超能力を使用出来る新人類の一人だったのである。
『ウィルフィールドの正体が荒唐無稽の新人類だったとは…新人類とやらは本当に実在するのだな…』
将軍らしき人物は内心新人類の存在に驚愕する。

第四話

霊体
真夜中の深夜帯…。フィルドルクは超能力の歴史書と呼称される参考書を黙読したのである。超能力の歴史書には古代文明時代は勿論…。今現在の事例も多数記述され非常に興味深かったのである。
「極東のイーストユートピアにもエスパーが存在したなんて…」
イーストユートピア所謂桃源郷神国は魔女の発祥地として有名であるものの…。新人類による超能力伝説は複数存在する。先例としては戦乱時代に活躍したとされる名将夜桜崇徳王である。崇徳王は十数キロメートルもの長距離から敵軍の将兵が何人存在するのか正確に察知出来たとされる。崇徳王以外には安穏時代の八正道と名乗る僧侶も有名である。詳細こそ不明であるが…。彼にも超能力らしき伝説が一部確認される。一例としては神族天狐如夜叉との戦闘で銃弾のみで神器を破壊したとの一説である。八正道の場合は偶然の可能性が指摘される一方…。超能力による超常現象も否定出来ないとの意見も存在する。両者とも無自覚であったが…。今現在の見解では両者とも新人類であるとの見解が通説である。
「イーストユートピアにも新人類が存在したなんて…」
数分間が経過するとフィルドルクは熟睡する。睡眠してより数分後…。フィルドルクの脳裏より視界全域が白色の世界が発現されたのである。
「えっ?何だろう?」
フィルドルクは恐る恐る周囲を警戒するのだが…。周辺の景色は白色だけであり自分自身以外には何も存在しない虚無の世界である。
「摩訶不思議の世界だな…」
すると背後より…。
「フィルドルク…フィルドルク?」
「えっ?誰なの?」
フィルドルクは恐る恐る背後を直視したのである。
「えっ!?ストレイダス叔父さん!?」
フィルドルクの背後に存在するのは誰であろう二年前に死去した叔父…。ストレイダス本人だったのである。
「久し振りだな♪フィルドルク♪」
「叔父さん…」
「フィルドルクが元気そうで安心したよ♪」
ストレイダスは笑顔で発言する。
「如何して…ストレイダス叔父さんが?叔父さんは二年前に…」
フィルドルクは衝撃的光景に脳内が白色化したのである。
「突然だから吃驚するよな…フィルドルク…」
フィルドルクはストレイダスに近寄ると力一杯密着…。
「叔父さん!」
涙腺から涙が零れ落ちる。
「如何して…如何してストレイダス叔父さんは死んじゃったの?」
「フィルドルク…」
フィルドルクは数分間程度落涙し続ける。
「大丈夫そうだな…フィルドルク…」
泣き止むフィルドルクにストレイダスは安心する。
「甘えん坊だな♪フィルドルクは♪」
「御免なさい…叔父さん…」
フィルドルクは赤面した様子で謝罪したのである。
「当然であるが…今現在の俺は霊体の存在なのだ…」
ストレイダスは自身が霊体であると自負する。
「霊体…」
フィルドルクは恐る恐る問い掛ける。
「如何して叔父さんは死んじゃったの?本当に事故で死んじゃったの?」
両親からはストレイダスの死因は不慮の事故であると説明されたのだが…。フィルドルクは如何しても納得出来なかったのである。
「今更フィルドルクに隠し事しても仕方ないからな…」
「隠し事?」
ストレイダスは一息する。
「二年前の十二月だ…」
「二年前の十二月?」
二年前の十二月の出来事である。新人類のストレイダスは特別警察での数多くの功績を評価され…。世界連合の特務機関に抜擢されたのである。全世界の主軸である世界連合も新人類の存在に興味を抱き始め…。新人類で構成された特務機関を創設したのである。特務機関の秘密エージェントとして活動するストレイダスは秘密団体…。万民解放軍と呼称される武装勢力の本拠地万民解放区に潜入したのである。潜入には成功したものの…。不運にもストレイダスは万民解放軍の警備兵に発見され拘束されたのである。ストレイダスを拘束した警備兵は皮肉にも自身と同種である新人類であり名前はウィルフィールドと名乗る。ウィルフィールドと名乗る新人類は非常に強力でありストレイダスはウィルフィールドの超能力で殺害されたのである。
「俺は諜報員として万民解放区に潜入したが…万民解放軍の本拠地でウィルフィールドって名前の新人類に拘束され…彼に殺害された…」
「えっ…ウィルフィールド?新人類…」
『やっぱりストレイダス叔父さんの死因は事故じゃなくて…ウィルフィールドって新人類に殺されたの?』
ストレイダスの死後…。世界連合は非難を回避したかったのか諜報員のストレイダスは不慮の事故として扱われたのである。フィルドルクは衝撃の事実に混乱する。
「突然だから混乱するよな…フィルドルク…」
「御免なさい…正直突然過ぎるから…」
「当然の反応だよな…」
ストレイダスは再度一息したのである。
「フィルドルク…俺は霊能力以外に未来予知も出来る…」
「未来予知って?」
フィルドルクは自身の超能力を覚醒させ未来予知も使用出来る。
「恐らくだが二日後…俺を殺害した新人類のウィルフィールドと…万民解放軍の奴等がテラトピア自由区に侵攻を開始するだろう…」
「えっ!?」
フィルドルクは驚愕したのである。
「本当に!?万民解放軍がテラトピア自由区に侵攻!?」
非現実的であり一瞬冗談かと思いきや…。
『ストレイダス叔父さんって冗談は苦手だよね…』
ストレイダスは冗談が人一倍苦手であり本当であると感じる。
「恐らくだが…隠蔽体質の世界連合は勿論…テラトピア自由区の武装警察隊も期待出来ないだろうよ…」
ストレイダスはフィルドルクを凝視し続ける。
「今現在テラトピア自由区を守護出来るのはフィルドルクだけだ…」
「えっ!?僕がテラトピア自由区を!?」
フィルドルクは再度困惑する。
「叔父さん…僕はストレイダス叔父さんみたいに超能力なんて何一つとして…」
現実問題…。フィルドルクは何一つとして超能力が使用出来ない。
「今現在では超能力は使用出来ないが…フィルドルクは人一倍俺の血筋を色濃く継承する一人だ…超能力が覚醒すればフィルドルクは俺を上回るかも知れない…」
ストレイダスはフィルドルクの潜在能力は自身以上であると確信する。
「如何すれば…僕はストレイダス叔父さんみたいに超能力を覚醒させられるの?」
「簡単だ…フィルドルクなら意識するだけで超能力を開放出来るさ♪」
「えっ?僕は意識するだけ?」
「フィルドルクは俺の血筋を色濃く継承した存在だ…フィルドルクなら意識するだけで超能力は発動出来るだろう…超能力を使用すれば使用するだけ桁外れに上達する…」
新人類は超能力を使用し続けると超能力は更なる覚醒により効力は幅広くなる。新人類の潜在的能力は実質的に未知数とされる。
「本当に…出来るのかな?僕なんかに…」
フィルドルクは自信が皆無であり潜在的能力が覚醒するのか不安だったのである。
「大丈夫だ♪フィルドルクなら出来るさ♪俺が保証する♪」
ストレイダスは笑顔で断言する。
「叔父さん…」
するとストレイダスの肉体が半透明化し始める。
「えっ!?叔父さん…肉体が半透明に…」
「如何やら霊能力は限界みたいだ…俺はもう少しで消滅する…」
「限界なの…叔父さん…」
「フィルドルク…最後だが…」
ストレイダスは笑顔で…。
「俺を超越しろよ…フィルドルク…フィルドルクなら俺を上回れる♪明日からはフィルドルクが本物のスーパーヒーローさ♪」
ストレイダスの肉体は完全に消失したのである。ストレイダスが消滅した直後…。
「ストレイダス叔父さん!?」
フィルドルクは目覚めたのである。
「えっ!?」
フィルドルクは自身の寝室であり室内をキョロキョロさせる。
「心霊現象だったのかな?如何して死んじゃったストレイダス叔父さんが…」
先程自身の夢路にて死去したストレイダスと再会した出来事にフィルドルクは混乱するものの…。
「僕にも…出来るのかな?ストレイダス叔父さん…」
フィルドルクは意識するだけで超能力が発動するのか試行を決意する。

第五話

超能力
本日の放課後…。フィルドルクは学園の裏庭へと移動したのである。
「ストレイダス叔父さんのアドバイスでは…意識するだけで超能力が発動するらしいけど…」
『本当に意識するだけで超能力が覚醒するのかな?』
内心…。昨日夢路にて遭遇したストレイダスの心霊現象も偶然の可能性も否定出来ず超能力は発動しないだろうと思考したのである。
「石ころだ…」
地面の石ころを自身の目前に設置させたのである。
「石ころ…浮遊するかな?」
フィルドルクは恐る恐る両目を瞑目させる。
「石ころよ…空中を浮遊しろ…」
フィルドルクは石ころに命令するのだが…。石ころは依然として浮遊しない。
「石ころは浮遊しないな…」
フィルドルクは再度命令する。
「石ころ!浮遊しろ!」
試行してより数分間が経過…。フィルドルクは必死に思念するのだが目前の石ころはピクリとも動かない。フィルドルクは苛立ち始める。
「畜生!僕には出来ないよ!」
フィルドルクは自身が超能力の才能が皆無であると落胆したのである。
「僕は全然駄目だね…やっぱり石ころは浮遊しないや…」
フィルドルクは超能力が発動せずガッカリする。
「はぁ…やっぱり僕に超能力の才能なんて無かったみたいだね…」
『死んじゃったストレイダス叔父さんの幽霊が出現する時点で可笑しかったのかも知れないね…僕の妄想だったのかな?』
夢路に出現したストレイダスは自分自身の妄想であったと判断したのである。
「仕方ない…戻ろうかな…」
フィルドルクは帰宅する寸前…。
「えっ?」
一瞬であるが背後の石ころがコロッと動いたのである。
『一瞬動いたかな?』
フィルドルクは一息する。
『石ころよ…浮遊しろ…』
恐る恐る石ころに思念したのである。数秒後…。依然として動かなかった石ころが上昇し始める。
「えっ!?石ころが浮遊した!?」
石ころは自身の目線と同程度に浮遊…。ピタッと停止する。
『現実なの!?』
フィルドルクは空中浮揚する石ころに驚愕…。
「魔法みたいだ…」
目前の光景が現実なのか理解出来なくなる。
『石ころよ…落下しろ…』
落下を思考すると石ころは一瞬で地面に落下したのである。
「超能力って本当に存在したの?僕に超能力が…」
フィルドルクは先程の超常現象が自身による念力なのか確認したくなる。フィルドルクは帰宅せず近隣に位置する閉鎖中の廃鉱へと移動したのである。
「廃鉱なら好都合だね…」
閉鎖中の廃鉱には無数の岩石やら鉄屑の残骸が確認出来…。超能力を発動するには好都合だったのである。
「今度も其処等の石ころを…」
二十センチメートルの石ころを発見…。
「石ころは校内の裏庭みたいに浮遊するかな?」
先程みたいに石ころが浮遊するのか試行したのである。
『石ころよ…浮遊しろ…』
数秒後…。石ころが容易に浮遊したのである。
「えっ…」
フィルドルクは驚愕する。
「本当に…僕に超能力が?」
今回は裏庭の石ころよりも軽量に感じられたのである。
「落下しろ…」
落下をイメージすると石ころは一瞬で地面に落下する。フィルドルクは恐る恐る背後を凝視…。
「僕に…出来るだろうか?」
フィルドルクの背後に存在するのは先程の石ころより大サイズの岩石である。直径一メートルサイズであり念力で粉砕出来るか思考する。
「此奴を…念力だけで粉砕出来るかな?」
直径一メートルサイズの岩石に思念したのである。
『岩石よ…』
フィルドルクは必死に思念するのだが…。
「砕け散れ!」
岩石は非常に硬質であり容易には粉砕出来ない。
「ビクともしないな…やっぱり岩石を粉砕するのは困難だね…」
困難であると感じるものの…。
「今度こそ…」
フィルドルクは再チャレンジする。
「岩石よ…粉砕しろ!」
先程よりも根強く思念したのである。
「砕け散れ!」
すると数秒後…。岩石の表面よりピキッと罅割れが発生する。
「表面が罅割れた!?」
『今度こそ出来るかも!』
再度思念したのである。
『岩石よ…砕け散れ!』
数十秒間が経過…。直後である。頑強の岩石がバリッと粉砕され…。周囲に砕け散ったのである。岩石の破片が其処等に散乱する。
「はぁ…はぁ…手出しせずに岩石を粉砕出来たぞ♪」
フィルドルクは大喜びしたのである。目標を達成出来たものの…。フィルドルクは極度の疲労により地面に横たわる。
「念力だけで…こんなにも疲れが蓄積されるなんて…」
フィルドルクは体力の消耗に身動き出来なくなる。
『眠たいな…』
直前…。
「貴方…大丈夫かしら?」
「えっ…誰なの?」
最近知り合った女子学生のメロティスが地面に横たわった状態のフィルドルクに恐る恐る近寄る。
「メロティスさん?」
「フィルドルク…動かないでね…」
「えっ?」
メロティスはフィルドルクの腹部に接触したかと思いきや…。消耗した体力が蓄積されたのである。
「一安心だわ…」
メロティスはホッとする。
「感謝するよ♪メロティスさん♪体力が戻ったよ♪ひょっとしてメロティスさんの魔法なの?」
「無論ね…」
メロティスは体力の消耗したフィルドルクに回復魔法を使用したのである。フィルドルクはメロティスの回復魔法により体力が回復する。するとメロティスは笑顔で…。
「貴方…超能力の覚醒に成功したのね♪見事だったわ♪」
「えっ?メロティスさん…ひょっとして観察したの?」
「勿論よ♪放課後からね♪」
メロティスは笑顔で即答する。
「えっ…はぁ…」
フィルドルクは苦笑いしたのである。
「フィルドルクは本当にサイコキネシス…超能力を覚醒させたのね♪貴方は正真正銘新人類だったのよ♪」
「僕が新人類…」
『ストレイダス叔父さんの遺言は事実だったのか…』
内心自身が新人類だった事実にフィルドルクは嬉しくなる。
「メロティスさん?」
「何かしら?フィルドルク?」
フィルドルクは深夜の夢路での出来事をメロティスに洗い浚い告白する。
「貴方は夢路で故人の叔父さんと遭遇したのね…」
「叔父さんの未来予知は本当なのかな?」
「本当でしょうね…私も千里眼で海辺を眺望するのだけど…」
メロティスは時たま大海原を眺望するのだが…。二日前に武装した小型船を数隻目撃したのである。不審の小型船は即座に撤収したものの…。メロティスは気味悪くなる。
「私は胸騒ぎを感じるのよ…ひょっとすると近日中に大事件が発生するかも知れないわね…」
メロティスは非常に不安視する。
『メロティスさん…』
彼自身自信は皆無であったものの…。
「メロティスさんは僕が守護するよ♪」
笑顔で断言する。
「フィルドルク…」
フィルドルクの発言にメロティスは一瞬赤面したのである。
『叔父さんを殺した新人類…ウィルフィールドにも対面したいし…』
数分後…。二人は各自の自宅へと戻ったのである。

第六話

開戦
翌日の早朝…。六時三十分未明である。本拠地の万民解放区より万民解放軍の艦隊が出撃を開始する。旗艦は巨大戦艦一隻と二隻の大型輸送艦が同行したのである。旗艦の巨大戦艦には新人類のウィルフィールドが乗艦する。
「ウィルフィールド大佐♪貴方の活躍を期待しますよ♪」
ブリッジにて艦長が笑顔で発言したのである。
「活躍するも何も…こんな単調の任務で活躍出来なければ全世界を制覇するのは夢物語だ…」
「〔ヘビーエンプレス〕の威力をテラトピア自由区の人民に知らしめる絶好機です♪」
超弩級要塞戦艦ヘビーエンプレスは第三次列国大戦で大活躍した超弩級ミサイル艦であり万民解放軍の旗艦である。将兵達からは難攻不落の海上移動要塞とも呼称される。全長は四百メートル規模と規格外に大型であり本艦の装甲は特殊性超硬合金エターナルメタルが駆使され…。エターナルメタルの重厚装甲は大量破壊兵器の超高温でもビクともしない鉄壁の強度である。多数の多目的ミサイル発射機は勿論…。甲板の前方には実弾を超音速で発射出来る電磁投射連装砲が搭載される。甲板の後方には一機の大型輸送機か偵察用の無人機を二機搭載出来る。
「俺が超能力を発揮すればヘビーエンプレスの出番は無くなるな…」
航行してより三十分後の七時…。一隻の小型船と遭遇したのである。
「所属不明の小型船を発見しました!」
通信兵が報告する。
「所属不明の小型船だと?であればホログラム装置で確認しろ…」
ヘビーエンプレスには最新式のホログラム装置が搭載されたのである。装置の上部には立体化された海面上と一隻の小型船の立体映像が映写される。
「此奴はテラトピア自由区の警備艇か…大艦隊である俺達を相手に絶望的だな…」
ウィルフィールドが発言する。
「ウィルフィールド大佐…対艦ミサイルで攻撃しますかね?」
艦長はウィルフィールドに問い掛ける。
「折角の挨拶だ…手始めに攻撃しろ…」
「承知しました…」
艦長はウィルフィールドの指示に承知すると乗組員達に攻撃を命令する。
「警備艇を攻撃…撃沈せよ…」
「はっ!」
乗組員達は即座に行動を開始したのである。
『開戦だ…旧人類同士潰し合うのだな♪』
ウィルフィールドは周囲に失笑する。同時刻…。警備艇の船内では所属不明の大艦隊に騒然とする。
「大型艦艇が三隻も!?演習なのか?」
警備艇の乗組員達は所属不明の大艦隊に警戒したのである。すると一人の乗組員が恐る恐る…。
「中央の大型船は恐らく…第三次列国大戦で活躍したヘビーエンプレスだろうか…」
「ヘビーエンプレスですと?」
「世界連合に敵対した新枢軸勢力が使用した超大型船舶だ…こんな辺境の海域で遭遇するとは…」
「であれば所属不明の大艦隊は新枢軸勢力の残党なのか!?」
「新枢軸の残党勢力が出現するとは…一体何が目的なのか?」
「何はともあれ相手が相手だ…俺達だけでは対処出来ない…即刻政府と世界連合に報告しろ!世界連合に援軍を要請し次第…海域を撤退するぞ!」
乗組員達は即座に政府と世界連合に事態を報告したのである。数秒後…。
「ヘビーエンプレスから対艦ミサイルが多数発射されました!」
ヘビーエンプレスより十数発もの対艦ミサイルが発射されたのである。
「対艦ミサイルを迎撃しろ!」
警備艇は即座に対空砲で対艦ミサイルの迎撃を開始する。四発の対艦ミサイルの迎撃には成功するのだが…。一発の対艦ミサイルが警備艇の甲板に直撃したのである。直後…。弾薬庫に引火すると警備艇は乗組員諸共轟沈したのである。一方ヘビーエンプレスの艦内ではウィルフィールドが双眼鏡で確認する。
「他愛無いな…俺達はテラトピア自由区に直進するぞ…」
万民解放軍の大艦隊はテラトピア自由区を目標に直進したのである。一方警備艇からの報告によりテラトピア自由区政府と世界連合は突然の事態に混乱する。

第七話

高速道路
午前七時…。テラトピア自由区では警戒警報が発令されたのである。突然の警報に国内は混乱し始める。フィルドルクも突然の警報に吃驚…。飛び起きたのである。
「えっ!?何が!?」
『ひょっとして警戒警報?』
フィルドルクは万民解放軍の襲来であると察知する。
『万民解放軍だな…叔父さんの予言は本当だったね…』
ストレイダスの未来予知に驚愕したのである。一方外部では突然の緊急事態に各勤務地は勿論…。各学園も一時的に休校されたのである。一部の学生は学園の休校で大喜びするものの…。数多くの者達が緊急事態に不安視する。すると突如として自室に設置された携帯型ホログラム装置が鳴動したのである。
「うわっ!吃驚した…」
フィルドルクは携帯型ホログラム装置を作動させる。
「フィルドルク?」
ホログラム装置はメロティスの姿形を映写させたのである。
「メロティスさん?」
「こんな朝っぱらから突然御免なさいね…」
「大丈夫だよ♪メロティスさん♪」
メロティスは謝罪するのだがフィルドルクは笑顔で返答する。
「やっぱり貴方の叔父さんの予言は本当だったわね…」
「本当だね…正直僕も吃驚したよ…」
「避難所で合流しましょうね…フィルドルク…」
直後に携帯用のホログラム装置が停止したのである。すると自室のドアにて父親が入室する。
「フィルドルク?」
「父さん?」
「フィルドルク…準備が出来次第避難所に移動するぞ…」
「避難所?」
政府から避難指示が発令されたのである。
「オーケー!父さん!」
フィルドルクは準備を開始する。準備を開始してより数分後…。準備が終了するとフィルドルクは父親と母親との三人で外出したのである。
「如何して突然こんな事態に…」
母親は予想外の出来事にビクビクする。
「俺にも何が何やらサッパリだが…俺達は避難所に移動して命拾いするぞ…」
三人は自家用車で避難所へと移動するのだが…。高速道路の道路上は渋滞であり直進したくても直進出来ない。
「渋滞か…畜生…」
自家用車を運転する父親は非常に苛立った様子である。
「全然走行出来ないわね…」
「こんな状態では避難所には当分移動出来ないね…如何する?」
今現在では各地の車道が渋滞であり乗用車は走行出来ない。周囲の様子を直視すると乗用車を放棄…。大勢の歩行者が高速の車道を徒歩で通行したのである。
「仕方ないな…俺達も歩くぞ…」
「止むを得ないわね…」
三人は止むを得ず乗用車を放棄…。周囲の歩行者達と同様に徒歩で高速道路を通行したのである。
「私達は避難所に到達出来るのかしら?」
母親が不安視する。
「避難所に到達出来るかは断言出来ないが…何も行動しないよりは…」
一方フィルドルクは沈黙した様子で両親を凝視したのである。
『父さんも母さんも不安みたいだな…僕はストレイダス叔父さんみたいに超能力を覚醒させて…父さんと母さんを安心させたいな…』
フィルドルクと両親が高速道路を移動する同時刻…。魔女のメロティスは自宅の地下壕にて両親と三人で潜伏する。
「パパ?ママ?如何して避難所に移動しないのよ?私達も避難所に移動しましょうよ…こんな場所に待機し続けても…」
メロティスは不満そうな表情で両親に問い掛ける。
「避難所に移動するのは危険だ…移動中に攻撃されたら如何する?何が発生しても可笑しくない状況下だぞ…」
父親は避難所への移動を拒否する。
「俺は十五年前の大戦で大勢の避難民達が空爆で殺された瞬間を間近で目撃したからな…俺の兄貴も避難所に移動したばかりに…」
メロティスの父親は第三次列国大戦で避難所に移動中…。最愛の実兄が空爆で死亡したのである。
「パパ…」
父親の思考も理解出来るのだが…。
『私はフィルドルクと合流したいのに…』
彼女は自身の無力さを痛感する。

第八話

空爆
三十分後…。万民解放軍の大艦隊はテラトピア自由区の海域へと到達する。二隻の大型輸送艦の飛行甲板より多数の爆撃用ドローンが出撃…。数分間でテラトピア自由区領空へと飛来したのである。テラトピア武装警察隊の航空部隊が迎撃を開始するものの…。万民解放軍のドローン兵器は非常に高性能であり航空部隊は圧倒されたのである。各地で空爆が開始される。高速道路からでも空爆の様子が直視出来…。歩行者達は恐怖したのである。フィルドルク自身は比較的冷静であったものの…。両親は大戦のトラウマからか膠着したのである。すると一機の攻撃用ドローンが高速道路上空に急接近…。低空飛行にて逃亡中の歩行者達に対人射撃を仕掛ける。十数人が死傷する。今度はフィルドルクの両親を標的に攻撃を仕掛けるのだが…。
「父さんと母さんには手出しさせないよ!」
フィルドルクは低空飛行の攻撃用ドローンにサイコキネシスを発動する。
「墜落しろ!」
射撃寸前に攻撃用ドローンはフィルドルクのサイコキネシスにより空中分解したのである。フィルドルクの超能力を間近で目撃した父親は驚愕する。
「フィルドルク…超能力を…現実なのか?」
父親はフィルドルクのサイコキネシスに絶句するのだが…。
「貴方…覚醒したのね…」
母親は実弟のストレイダスを連想したのか冷静だったのである。
「母さん…父さん…僕はね…」
フィルドルクは最近超能力が開花した事実は勿論…。夢路にて故人のストレイダスと対面した出来事を一部始終両親に告白したのである。
「フィルドルクは夢路でストレイダスの霊体と接触したのね…ストレイダスは未来予知の内容を貴方に…」
母親は非常に納得した様子であったが…。
「死者との会話なんて…荒唐無稽の漫画みたいな出来事だな…」
父親は珍紛漢紛だったのである。
「納得出来なくて当然だよ…父さん…」
「俺は常人だから理解するには時間が必要不可欠だけど…内容は荒唐無稽だが超能力は本当に存在するのだな…」
正直理解するには程遠いが…。父親はフィルドルクの告白を闇雲に否定せず信用したのである。
「先程の内容が事実であれば…俺達が想像する以上に今回は相当の一大事だな…」
「貴方は如何するの?フィルドルク?」
「僕は…叔父さんの…ストレイダス叔父さんの継承者として万民解放軍を全身全霊で阻止するよ…」
「フィルドルク一人で…」
「フィルドルク…貴方は本気なのね?」
「勿論だよ…父さん…母さん…」
両親の意向としては当然猛反対であったが…。フィルドルクの表情から本気であると察知する。
「危なくなったら絶対に戻りなさいよ…フィルドルク…絶対に死なないでよ…」
「精一杯頑張れよ…フィルドルク…無事に戻れよ…」
「僕は絶対に死なないからね!」
フィルドルクは移動を開始したのである。

第九話

野望
ドローン兵器による空爆開始から十数分後…。テラトピア武装警察隊は疲弊状態であり万民解放軍は陸上部隊による上陸作戦を開始したのである。二隻の大型輸送艦からは合計十二隻もの上陸用舟艇が出撃…。主力戦車を中心とした上陸部隊がテラトピア自由区へと上陸したのである。旗艦ヘビーエンプレスのブリッジからウィルフィールドが上陸作戦の様子を眺望する。
「今回は俺も参戦するか…」
「大佐も上陸作戦に参加されるのですか!?」
「当然だ…」
周囲の乗組員達は愕然としたのである。
「無茶では…」
周囲の者達は無茶であると感じるものの…。
「私を仕留められる常人は存在しない…貴様達は私の実力を直視するのだな…」
ウィルフィールドは外部へと移動すると甲板にて佇立する。
「はっ!」
ウィルフィールドはサイコキネシスにより自身の肉体を浮遊させたのである。
「えっ…大佐が空中を!?」
「大佐は一体何者!?空中を飛行するなんて…幻覚だろうか?」
空中を浮遊するウィルフィールドにブリッジの乗組員達は驚愕する。一方のウィルフィールドはサイコキネシスで空中を飛行…。数分後に港内へと着地したのである。
「ん?」
『何やら…彼奴に匹敵する効力を感じるな…一体何者だろうか?』
正体こそ不明であるものの…。ウィルフィールドは気配を察知したのである。一方周囲では銃撃戦が展開されるのだが…。ウィルフィールドは無関心だったのである。
「貴様は敵部隊の指揮官か!?覚悟しろ!」
狙撃兵がウィルフィールドを標的に銃弾を発砲する。発砲された銃弾はウィルフィールドの発動したサイコキネシスにより寸前で急停止…。
「なっ!?銃弾が…」
サイコキネシスによって空中浮揚する銃弾に狙撃兵は驚愕する。一方のウィルフィールドは余裕の様子で…。
「鬱陶しい…」
発砲された銃弾はサイコキネシスの発動で狙撃兵に直撃したのである。
「ぐっ!」
銃弾の直撃により狙撃兵は地面に横たわる。
『ん?』
三人の敵兵が各ビルの屋上よりウィルフィールドを標的に設定する。
『敵軍の狙撃兵が三人か…』
ウィルフィールドは逸早く敵兵の気配を察知…。
「焼死しろ…」
発火能力であるパイロキネシスを発動する。各ビルの狙撃兵は突然の発火によって焼死したのである。すると今度は目前より…。
「今度の相手は重戦車か…俺に対抗するには力不足だな…」
重戦車はウィルフィールドを標的に戦車砲で砲撃したのである。
『こんな程度の攻撃で…』
ウィルフィールドはエレクトロキネシスで電撃のシールドを形成させる。砲弾はシールドの表面に接触すると爆散…。砲撃の無力化に成功したのである。
「今度は俺が反撃する…」
ウィルフィールドはサイコキネシスを発動すると敵軍の重戦車をペシャンコにスクラップ化させる。
「他愛無いな…敵軍の防衛ラインは容易に突破出来そうだな…」
『ん!?』
ウィルフィールドは気配の正体が気になり極度の胸騒ぎを感じる。
『気配の正体は…一体何者だろうか?新人類か?』
同時刻…。フィルドルクは銃声を目印に港内へと移動したのである。
『胸騒ぎかな?気配を感じる…一体何者なの?』
フィルドルクもウィルフィールドと同様に気配を察知…。極度の胸騒ぎを感じる。数分後…。フィルドルクは万民解放軍の上陸地点である港湾へと到達したのである。港湾には敵味方の将兵達の遺体が彼方此方に確認出来…。地獄絵同然だったのである。
「戦争の光景…」
想像以上の惨劇にフィルドルクは気味悪くなる。
『父さんと母さんは僕が誕生する以前にこんな惨劇を経験したのかな…』
するとフィルドルクは十五人の敵兵に包囲されたのである。
「貴様は民間人の学生か?こんな場所に一人で参上するとは其処等の凡人達よりは勇敢だが…場違いだな…」
「少年…死にたくなければ大人しく拘束されるのだな…」
フィルドルクは催眠を意識する。
『熟睡しろ…』
数秒間が経過すると周囲の兵士達はサイコキネシスの応用により地面に横たわり…。熟睡したのである。
「兵士達を殺さずに無力化出来たな…」
フィルドルクはホッとする。すると直後…。
「不殺で兵士達を無力化するとは…見事だな…少年…」
「えっ?誰なの?」
突如としてフィルドルクの目前より背広姿の男性が近寄る。
「少年よ…貴様の正体は新人類だな…」
男性は一目でフィルドルクが新人類であると洞察したのである。
「如何して貴方は僕を新人類だって…貴方は一体何者ですか?」
フィルドルクは恐る恐る男性に問い掛ける。
「俺の名前はウィルフィールド…俺も少年と同様に新人類の一人さ…」
ウィルフィールドは自身を新人類の一人と自負する。
「新人類…」
するとウィルフィールドはフィルドルクの両目を直視…。
「少年は彼奴に近似するな…俺が殺害した彼奴に…」
「彼奴って?誰ですか?」
「ストレイダスと名乗る新人類に…」
ストレイダスの名前にフィルドルクはピクッと反応する。
「ストレイダスって…貴方が…ストレイダス叔父さんを…」
「叔父さん?ストレイダスは貴様の叔父だったのか…」
ウィルフィールドは納得したのである。
「やっぱり貴方が叔父さんを殺害した張本人だったのですね?」
ウィルフィールドは身震いし始める。
「如何して貴方は叔父さんを殺害したのですか!?」
普段は温厚の性格であるフィルドルクであるが…。今回ばかりは非常に感情的だったのである。
「私がストレイダスを殺害した理由か…私は二年前に万民解放区に潜入した彼奴を新人類の仲間として勧誘したのだが…」
二年前…。諜報員として万民解放区に潜入したストレイダスは不運にも万民解放軍の偵察部隊と遭遇したのである。自身の超能力で偵察部隊を圧倒するもウィルフィールドが介入…。ウィルフィールドの介入によりストレイダスは拘束されたのである。ウィルフィールドは自身の野望にストレイダスに協力を一方的に要求するのだが…。
「俺は彼奴に腐敗した世界連合は勿論…世界連合を牛耳る〔ソロポスト共和国〕の滅亡に協力しないかと要求したのだが…ストレイダスは俺の要求に拒否した…彼奴も俺と境遇は一緒だろうに…」
僅少であるがウィルフィールドは感情的だったのである。
「如何してウィルフィールドは世界連合と貴方の祖国であるソロポスト共和国を滅亡させたいのですか?」
フィルドルクが恐る恐る問い掛ける。
「ソロポスト共和国は俺の祖国だったが…」
ソロポスト共和国は超大国であり今現在全世界の覇権国家である。ウィルフィールドはソロポスト共和国出身者であったが…。ソロポスト共和国は正真正銘の差別大国であり当然として新人類も差別の対象だったのである。
「差別…」
「俺は新人類としての性質上…身内の奴等からも差別されたのだ…」
「貴方は身内からも…」
フィルドルクはウィルフィールドの境遇に絶句する。
『ストレイダス叔父さんも…母さん以外の人間達に…』
ストレイダスもフィルドルクの母親以外の人間達から差別され…。数多くの者達から迫害されたのである。フィルドルクは返答出来ず沈黙する。
「俺は祖国を見限り…本来なら敵国である万民解放軍に寝返ったのだ…」
ウィルフィールドが万民解放軍に協力するのは世界連合と同組織を牛耳るソロポスト共和国の滅亡である。
「俺としても正直…ストレイダスは死なせたくなかった…新人類の同志として彼奴と一緒に腐敗した旧世界を改善させたかったのに…非常に残念だ…」
拘束されたストレイダスであるが…。ウィルフィールドの協力には拒否したのである。
「ストレイダスは何を血迷ったか…愚劣なる旧人類が支配し続けるこんな腐敗した世界を守護しても無意味だろうに…何故ストレイダスは奴等に協力するのか俺には理解出来ない…彼奴も迫害されただろうに…」
するとフィルドルクは恐る恐る…。
「貴方の目的は…新人類が差別されない世界の構築ですか?」
フィルドルクの問い掛けにウィルフィールドは嬉しそうな表情で返答する。
「勿論だとも♪主目的を達成するには数多くの犠牲が必要不可欠だが…」
ウィルフィールドはフィルドルクに名前を問い掛ける。
「少年よ…貴様の名前は?」
「僕の名前は…フィルドルクです…」
「フィルドルクか…」
ウィルフィールドは一瞬瞑目する。
「フィルドルクよ…新人類の一人として俺に協力しろ…」
「はっ?」
フィルドルクはウィルフィールドの予想外の発言に拍子抜けしたのである。
「誰が貴方に協力なんて…」
フィルドルクは拒否する。
「貴方は過去に大勢の人間達から迫害されたのかも知れませんが…僕にとって貴方は悪人です!叔父さんを殺害した張本人と協力なんて僕には出来ません…」
「当然の返答だよな…突然見ず知らずの人間から協力を要請されても拒否するのは当然の返答だ…」
「貴方は一体何を?」
するとウィルフィールドは上空を眺望したのである。
「此処からだと確認出来ないが…」
「えっ?上空?」
「テラトピア自由区の成層圏上空には万民解放軍の衛星兵器…〔リバースキャノン〕が存在する…」
「リバースキャノン?」
リバースキャノンとは万民解放軍が開発した試作型光学衛星兵器…。戦略兵器である。高出力の高エネルギーを成層圏上空から発射出来…。大都市部を一撃で焦土化させる威力とされる。第三次列国大戦にて万民解放軍が開発した戦略兵器であるが完成直前に終戦…。第三次列国大戦では使用されなかったのである。
「少なくとも首都はリバースキャノンの一撃で焦土化するだろうよ…」
「首都が一撃で…」
フィルドルクは戦慄したのである。
「如何する?俺に協力すればリバースキャノンの発射を中止するし…上陸部隊を撤退させるぞ…フィルドルクにとって苦渋の選択だ…」
「えっ…苦渋の選択…」
ウィルフィールドの発言にフィルドルクは反応する。
「貴様の選択によってテラトピア自由区の運命が決定される…」
「貴方の…目的は?」
フィルドルクは警戒した様子で恐る恐るウィルフィールドに問い掛ける。
「俺の目的は世界各地に存命する新人類が迫害されない新世界の構築だ…」
「新人類が迫害されない新世界?」
「俺の目的に協力すればフィルドルクの家族は勿論…友人も命拾い出来るぞ…貴様は実質テラトピア自由区の英雄として崇拝されるだろう…」
「僕には…」
一息したのである。
「やっぱり貴方には賛同出来ません…」
フィルドルクは再度拒否する。
「如何しても拒否するか?フィルドルク…貴様の選択によって大勢の人間達が抹消されるのだぞ…貴様は極悪非道の悪魔だ…」
ウィルフィールドはフィルドルクを極悪非道の悪魔であると指弾したのである。
「俺が悪魔だと?貴様には失望したよ…フィルドルク…」
ウィルフィールドは無表情であるが…。内心ではガッカリしたのである。
「仕方ない…であれば実力行使だ…」
「実力行使って?」
ウィルフィールドは両手より電撃を発動したのである。
「うわっ!ぎゃっ!」
フィルドルクはウィルフィールドのエレクトロキネシスにより全身が麻痺する。エレクトロキネシスは本来拷問として使用される超能力である。
「非常に残念だよ…フィルドルク…貴様も俺に拒否するとは…」
『所詮は愚か者達だ…フィルドルクもストレイダスも…俺達は新人類同士…未来永劫仲良く共闘出来たのに…』
ウィルフィールドは新人類として彼等と仲良くしたかったのだが…。フィルドルクの拒否によって自身の目的は達成出来ないと自覚する。一方のフィルドルクは身動き出来ず…。涙腺より涙が零れ落ちる。
『ストレイダス叔父さん…僕は如何すれば?結局僕は…ウィルフィールドに殺されちゃうのかな?』
最期を覚悟したフィルドルクであるが…。
『フィルドルク…』
『えっ?』
フィルドルクの脳裏よりストレイダスの霊体が出現する。
『叔父さん?』
『思う存分に反撃しろ…フィルドルク♪フィルドルクなら出来るさ…』
『叔父さん…僕は…』
フィルドルクは覚悟したのである。
「ぐっ!」
フィルドルクはウィルフィールドの電撃エネルギーを体内に吸収し始める。
「ん!?」
『フィルドルクは…俺の電撃を吸収するとは…』
冷静だったウィルフィールドも自身の電撃エネルギーを吸収し始めたフィルドルクには愕然とする。
『此奴…短期間でこんなにも超能力が開花するとは…』
故人のストレイダスは勿論…。自身をも上回ると予想する。一方のフィルドルクは吸収した電撃エネルギーを球体に形作る。
「はっ!」
「なっ!?」
ウィルフィールドは咄嗟にエレクトロキネシスで鉄壁のエネルギーシールドを形成…。間一髪電撃エネルギーの無力化に成功したのである。
「シールド?」
「はぁ…はぁ…一歩間違えれば俺がヤバかったな…」
ウィルフィールドはフィルドルクの覚醒に冷や冷やする。フィルドルクは先程の電撃により負傷した傷口が治癒したのである。
「フィルドルクは治癒効果も開花するとは…貴様の潜在的能力は俺の予想以上だ…」
ウィルフィールドはフィルドルクが末恐ろしくなる。一方のフィルドルクは無表情でウィルフィールドに近寄る。
「俺と勝負するか?フィルドルク…」
「貴方は叔父さんを殺害した張本人だけど…僕は貴方を殺害したくない…」
フィルドルクからは殺意は感じられない。
「俺は最愛の人間を殺した張本人なのに…殺害したくないとは…フィルドルクは余程の聖人なのだな…」
「如何にか部隊を撤退させて下さい…」
フィルドルクはウィルフィールドに懇願する。フィルドルクの懇願にウィルフィールドは沈黙したのである。すると直後…。近辺より爆発音が響き渡る。
「えっ!?一体何が!?爆発音!?」
「ん?何事だ?」
爆発音が響き渡ったのは湾内だったのである。湾内の中心部には大型輸送艦が爆散…。一瞬で轟沈する。
「畜生が…味方の大型輸送艦が敵軍の猛反撃で撃沈されるとは…」
テラトピア武装警察隊の猛反撃により万民解放軍の大型輸送艦一隻が撃沈されたのである。ウィルフィールドは不本意であるが…。
「止むを得ないな…こんな場所で貴様みたいな新人類を殺害するのは非常に勿体無いからな…」
「えっ…」
一瞬ウィルフィールドの返答に拍子抜けしたのである。
「作戦中の部隊を撤退させる…当然としてリバースキャノンの発射も中止する…」
ウィルフィールドはフィルドルクの懇願に承諾…。作戦中止を決定したのである。
「貴様の成長は見物だな♪フィルドルク…」
『今度再会出来たら…フィルドルクと共闘したいな…』
今度はフィルドルクを仲間に勧誘…。共闘出来たらと思考する。ウィルフィールドは携帯式のホログラム装置を作動させ作戦の中止を全軍に伝播させたのである。作戦中止から数時間が経過…。万民解放軍の撤退により一連の事件は終焉する。同事件はテラトピア大事変と命名されたのである。

最終話

屋上
テラトピア大事変から一週間後…。世界連合の協力により国内の復興作業が開始される。テラトピア大事変終結から二週間が経過…。世界連合軍による報復作戦が開始され万民解放区は占拠されたのである。両軍の死闘により十数万人もの将兵達が死傷するが…。武装は解除され本土に配備された艦艇やら多数のドローン兵器は接収されたのである。作戦終了後…。万民解放軍の首謀者ウィルフィールドの行方は不明であり今現在でも行方は捜索されるのだが依然として発見されない。半年後の十月上旬…。
「はぁ…」
フィルドルクは休憩時間に学園の屋上にて上空を眺望する。
『ウィルフィールドって軍人さん…行方不明なのかな…』
フィルドルクはウィルフィールドの行方が気になったのである。するとフィルドルクの隣接より…。
「フィルドルク♪」
「えっ!?メロティスさん!?」
メロティスは笑顔でフィルドルクを直視したのである。
「ニュース番組ではテラトピア武装警察隊が悪者達を撃退したって報道したけどさ…実際は貴方の大活躍なのよね?」
「えっ…」
メロティスに問い掛けられるとフィルドルクは返答に困惑する。
「僕は…別に…」
フィルドルクは表情が微妙だったのである。するとメロティスは笑顔で…。
「今現在の貴方は本物のスーパーヒーローよ♪」
「えっ?」
メロティスのスーパーヒーローの一言に反応する。
「貴方が奮闘したからこそテラトピア自由区は奴等に占領されなかったのよ♪正真正銘貴方は本物のスーパーヒーローよ♪」
彼女の発言にフィルドルクは僅少であるが微笑したのである。
「メロティスさん♪僕がスーパーヒーローか…」
するとメロティスは赤面した表情で…。
「今度の休日だけど…私と一緒に遊ばない?」
「えっ…メラティスさんと?」
彼女の発言にフィルドルクはドキドキし始める。
『えっ…ひょっとして…メロティスさんとデートとか!?僕が!?』
フィルドルクもドキドキしたのか赤面したのである。
「こんな僕で…大丈夫なの?メロティスさん?」
フィルドルクは恐る恐る問い掛ける。
「貴方だからなの♪人外同士♪私は今後も貴方と交流したいのよ♪」
彼女の発言にフィルドルクは大喜びする。
「僕こそ♪」
フィルドルクは満面の笑顔で返答したのである。
「メロティスさんは何したいの?」
「私は映画かな♪映画は映画でもホラー映画とか♪」
「ホラー映画ね♪」
フィルドルクは笑顔で返答するのだが…。
『ホラー映画って…メロティスさんらしい趣味だな…』
メロティスの趣味に内心苦笑いしたのである。苦笑いのフィルドルクであるが…。
『ストレイダス叔父さん…こんな僕にも…彼女が出来たよ♪』
極度の嬉しさからかフィルドルクは涙腺より涙が零れ落ちる。
完結
メンテ

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桜花姫シリーズ ( No.1 )
日時: 2021/06/30 21:14
名前: 月影桜花姫

ジャンル
純和風ホラーファンタジー

世界観
純和風異世界

登場人物
【月影桜花姫】
出身地:西方国
誕生日:天地暦3992年4月7日
星座:牡羊座
実年齢:28歳
人間換算:14歳
種族:妖女※最上級妖女
性別:女性
身分:町民
職業:不寝番※無報酬
身長:154cm
人魚形態:253cm
胸囲:102cm
胴囲:62cm
腰囲:92cm
体重:58kg
血液型:A型
一人称:私
性格:食いしん坊、強欲、短気、無鉄砲、合理主義、温厚篤実
好物:桜餅、飴玉、餡蜜、小倉汁粉、和菓子全般、麦茶
苦手:酢物全般、酒類全般、煮物、人参、大根、冬瓜
趣味:悪霊征伐、匪賊征伐、四六時中間食、昼寝、温泉巡り

【小猫姫】
出身地:南方国
誕生日:天地暦3886年4月30日
星座:牡牛座
実年齢:24歳
人間換算:12歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:150cm
妖獣形態:230cm
胸囲:98cm
胴囲:58cm
腰囲:88cm
体重:54kg
血液型:A型
一人称:私
性格:人懐っこい、甘えん坊、純情可憐、大雑把
好物:白身魚、煮魚、寿司、苺大福
苦手:唐辛子、野菜類全般
趣味:隠れん坊、手まり、人形遊び、鬼ごっこ

【氷麗姫】
出身地:北方国
誕生日:天地暦3990年12月25日
星座:山羊座
実年齢:30歳
人間換算:15歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職〜花魁
身長:159cm
胸囲:107cm
胴囲:67cm
腰囲:97cm
体重:63kg
血液型:O型
一人称:私
性格:疑心暗鬼、攻撃的、腹黒、自意識過剰
好物:氷菓子、かき氷、梅酒
苦手:鍋物、唐辛子、牡蠣、燗酒
趣味:晩酌、雪合戦
メンテ
桜花姫シリーズ ( No.27 )
日時: 2021/06/30 19:00
名前: 月影桜花姫

【三蔵郎】
出身地:東方国
誕生日:天地暦3970年8月15日
星座:獅子座
年齢:50歳
種族:人間
性別:男性
身分:僧侶
職業:住職
身長:168cm
体重:68kg
血液型:B型
一人称:私
性格:穏和、生真面目、心配性、助平
好物:鍋物、天丼、鰻丼、緑茶、和菓子
苦手:玉葱、生魚、生肉
趣味:山登り、料理、仏像彫刻、野宿

【蛇骨鬼】
出身地:南方国
誕生日:不明
星座:不明
実年齢:不明
人間換算:90歳以上
種族:神族
性別:女性
身分:町民
職業:薬屋
身長:97cm
体重:22kg
血液型:B型
一人称:私
性格:母性的、自由奔放
好物:ゆで卵、酒類全般、山菜味噌汁、松茸、納豆、沢庵
苦手:蒟蒻、獣肉全般
趣味:薬品集め、栽培

【月影夜真魚子】
出身地:西方国
誕生日:天地暦3966年6月25日
没年月日:天地暦4004年8月13日
星座:蟹座
享年:32歳
人間換算:16歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:151cm
人魚形態:250cm
胸囲:99cm
胴囲:59cm
腰囲:89cm
体重:55kg
血液型:A型
一人称:私
性格:過保護、心配性
好物:水飴、蜜柑、赤飯、餡蜜、牡丹餅
苦手:納豆、大根、豆腐
趣味:温泉巡り、子育て

【月影六五郎】
出身地:東方国
誕生日:天地暦3965年2月20日
没年月日:天地暦3992年4月6日
星座:魚座
享年:27歳
種族:人間
性別:男性
身分:武士
職業:夜番警備隊
身長:167cm
体重:67kg
血液型:B型
一人称:私
性格:厳格、完璧主義、几帳面
好物:焼酎、白酒、猪肉、鹿肉
苦手:甘酒、小豆、甘物全般
趣味:狩猟、釣魚、武器集め
メンテ
桜花姫シリーズ ( No.28 )
日時: 2021/06/30 19:02
名前: 月影桜花姫

【桃子姫】
出身地:西方国
誕生日:天地暦2992年4月7日
没年月日:天地暦3010年5月30日
星座:牡羊座
享年:18歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:152cm
胸囲:100cm
胴囲:60cm
腰囲:90cm
体重:56kg
血液型:A型
一人称:私
性格:鈍感、無頓着、のんびり屋、気長、無欲、頑固
好物:桜餅、柏餅、三色団子、白桃、麦茶
苦手:煮物、酒類全般、寿司
趣味:温泉巡り、昼寝、森林浴

【胡桃姫】
出身地:西方国
誕生日:天地暦2995年5月5日
没年月日:天地暦3010年5月29日
星座:牡牛座
享年:15歳
種族:人間
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:149cm
胸囲:97cm
胴囲:57cm
腰囲:87cm
体重:53kg
血液型:O型
一人称:私
性格:心配性、神経質、執拗
好物:白桃、海老天、牡丹餅、寿司、麦飯
苦手:唐辛子、牛蒡
趣味:人間観察、足任せ、勉学

【姫百合黄泉夜叉丸】
出身地:東方国
誕生日:天地暦2990年8月15日
星座:獅子座
年齢:20歳
種族:人間
性別:男性
身分:武士
職業:兵卒
身長:169cm
体重:69kg
血液型:B型
一人称:私
性格:正義感、生真面目、穏和、助平
好物:軍鶏鍋、鴨鍋、鯨肉、肉饂飩
苦手:人参、大根、冬瓜
趣味:山登り、肝試し、百物語、野宿

【小梅姫】
出身地:西方国
誕生日:天地暦3010年5月30日
星座:双子座
実年齢:30歳※出産日から30年後
人間換算:15歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:158cm
妖獣形態:238cm
胸囲:106cm
胴囲:66cm
腰囲:96cm
体重:62kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:純粋、穏和、無邪気、天真爛漫
好物:桜餅、白桃、蓬餅、山菜味噌汁、薩摩芋
苦手:白身魚、煮魚
趣味:栽培、手まり、けん玉
メンテ
桜花姫シリーズ ( No.29 )
日時: 2021/06/30 19:05
名前: 月影桜花姫

【鬼殺丸】
出身地:北方国
誕生日:天地暦2978年7月16日
没年月日:天地暦3008年9月2日
星座:蟹座
享年:30歳
種族:人間〜悪霊※死後
性別:男性
身分:武士
職業:兵卒
身長:170cm
体重:70kg
血液型:AB型
一人称:私、俺
性格:冷酷、無慈悲、負けず嫌い、執念深い
好物:猪肉、鶏肉
苦手:黒糖、甘酢、甘酒
趣味:戦闘、人殺し、殺戮

【アプセラス】
出身地:アクアユートピア
誕生日:天地暦3992年4月26日
星座:牡牛座
実年齢:28歳
人間換算:14歳
種族:人魚
性別:女性
身分:平民
職業:無職
身長:156cm
人魚形態:255cm
胸囲:104cm
胴囲:64cm
腰囲:94cm
体重:60kg
血液型:A型
一人称:私
性格:ビビり、気弱、ヘタレ、ネガティブ、依存的、小心者
好物:メロンパン、ショートケーキ、ミックスジュース、バニラアイス、ハンバーグステーキ
苦手:南瓜、真蛸、海鼠、昆虫食、葡萄酒
趣味:入浴、宝石集め

【ウェンディーネ】
出身地:アクアユートピア
誕生日:天地暦3996年10月22日
星座:天秤座
実年齢:24歳
人間換算:12歳
種族:人魚
性別:女性
身分:平民
職業:無職
身長:157cm
人魚形態:256cm
胸囲:103cm
胴囲:63cm
腰囲:93cm
体重:61kg
血液型:O型
一人称:私
性格:好奇心旺盛、ポジティブ
好物:炭酸飲料水、チョコレートケーキ、コーヒーゼリー、海藻サラダ、ハヤシライス
苦手:ボロネーゼ、ローストチキン、チキングラタン、生ビール
趣味:異国の歴史学、異国巡り
メンテ
桜花姫シリーズ ( No.30 )
日時: 2021/06/30 19:08
名前: 月影桜花姫

【スキュラン】
出身地:ネクロデストピア
誕生日:天地暦3888年8月8日
星座:獅子座
実年齢:132歳
人間換算:22歳
種族:魔女
職業:無職
性別:女性
身分:無国籍
身長:190cm
体重:90kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:陰湿、過激
好物:ロブスター、甘海老
苦手:磯巾着
趣味:魔法の研究

【山茶花姫】
出身地:東方国
誕生日:天地暦3996年11月18日
星座:蠍座
実年齢:24歳
人間換算:12歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:忍者
身長:153cm
胸囲:101cm
胴囲:61cm
腰囲:91cm
体重:57kg
血液型:B型
一人称:私
性格:生真面目、強がり、負けず嫌い
好物:鰹節、鰻丼
苦手:椎茸
趣味:剣術修行

【冥王鬼】
出身地:神国
誕生日:不明
星座:不明
実年齢:不明
人間換算:20歳前後
種族:神族
性別:女性
身分:非人
職業:無職
身長:155cm
胸囲:103cm
胴囲:63cm
腰囲:93cm
体重:59kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:執念深い、野心的
好物:外郎、水餅
苦手:天ぷら、海鮮丼
趣味:長旅
メンテ
桜花姫シリーズ ( No.31 )
日時: 2021/06/30 19:10
名前: 月影桜花姫

【霊魂巨神木】
種族:世界樹
身長:30m
体重:600t

【死霊餓狼】
種族:悪霊
身長:220cm
体重:220kg

【食人餓鬼】
種族:悪霊
身長:90cm〜120cm
体重:20kg〜30kg

【骸骨荒武者】
種族:悪霊
身長:240cm
体重:240kg

【大生首】
種族:悪霊
身長:130cm〜140cm
体重:30kg〜40kg

【亡霊女房】
種族:悪霊
身長:152cm
体重:56kg

【亡霊新婦】
種族:悪霊
身長:158cm
体重:62kg

【小面蜘蛛】
種族:悪霊
体長:160cm
体重:60kg

【百鬼食人餓鬼】
種族:悪霊
身長:170cm〜180cm
体重:70kg〜80kg

【椿女郎】
種族:悪霊
身長:154cm
体重:58kg

【天空輪入道】
種族:悪霊
身長:400cm
体重:400kg

【朧戦車】
種族:悪霊
身長:200cm
体重:200kg

【ネクロシーワーム】
種族:アンデッド
全長:50m
体重:500t

【ダークフィッシュ】
種族:アンデッド
全長:60cm〜80cm
体重:30kg〜40kg

【ネクロマーメイド】
種族:アンデッド
全長:240kg〜250cm
体重:40kg〜50kg

【アクアラーミアン】
種族:アンデッド
全長:40m
体重:800kg

【魍魎姫】
種族:人工妖女
身長:150cm
体重:54kg

【分裂体】
種族:人工妖女
身長:150cm
体重:54kg

【羅刹獣】
種族:魔獣
身長:5km
体重:測定不能

登場国家
『日倭浄土国』
総人口:500万人

『アクアユートピア』
別名:人魚王国
総人口:300人

作中用語
『天道眼』瞳術
『日輪光』秘術
『天霊山』温泉郷
『牢固石』鉄鉱石
『霊斬刀』名刀
『アクアクリスタル』魔法石
『ネクロデストピア』失楽園
メンテ
桜花姫シリーズ ( No.2 )
日時: 2021/07/15 21:16
名前: 月影桜花姫

ジャンル
純和風ホラーファンタジー

世界観
純和風異世界

登場人物
【月影桜花姫】
出身地:西方国
誕生日:天地暦3992年4月7日
星座:牡羊座
実年齢:28歳
人間換算:14歳
種族:妖女※最上級妖女
性別:女性
身分:町民
職業:不寝番※無報酬
身長:154cm
人魚形態:253cm
胸囲:102cm
胴囲:62cm
腰囲:92cm
体重:58kg
血液型:A型
一人称:私
性格:食いしん坊、強欲、短気、無鉄砲、合理主義、温厚篤実
好物:桜餅、飴玉、餡蜜、小倉汁粉、和菓子全般、麦茶
苦手:酢物全般、酒類全般、煮物、人参、大根、冬瓜
趣味:悪霊征伐、匪賊征伐、四六時中間食、昼寝、温泉巡り、夜遊び

【小猫姫】
出身地:南方国
誕生日:天地暦3886年4月30日
星座:牡牛座
実年齢:24歳
人間換算:12歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:150cm
妖獣形態:230cm
胸囲:98cm
胴囲:58cm
腰囲:88cm
体重:54kg
血液型:A型
一人称:私
性格:人懐っこい、甘えん坊、純情可憐、大雑把
好物:白身魚、煮魚、寿司、いくら丼、苺大福
苦手:唐辛子、野菜類全般
趣味:隠れん坊、手まり、人形遊び、鬼ごっこ

【氷麗姫】
出身地:北方国
誕生日:天地暦3990年12月25日
星座:山羊座
実年齢:30歳
人間換算:15歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職〜花魁
身長:159cm
胸囲:107cm
胴囲:67cm
腰囲:97cm
体重:63kg
血液型:O型
一人称:私
性格:疑心暗鬼、攻撃的、腹黒、自意識過剰
好物:氷菓子、かき氷、梅酒
苦手:鍋物、唐辛子、牡蠣、燗酒
趣味:晩酌、雪合戦、夜遊び

【三蔵郎】
出身地:東方国
誕生日:天地暦3970年8月15日
星座:獅子座
年齢:50歳
種族:人間
性別:男性
身分:僧侶
職業:住職
身長:168cm
体重:68kg
血液型:B型
一人称:私
性格:穏和、生真面目、心配性、助平
好物:鍋物、天丼、鰻丼、緑茶、和菓子
苦手:玉葱、生魚、生肉
趣味:山登り、料理、仏像彫刻、野宿

【蛇骨鬼】
出身地:南方国
誕生日:不明
星座:不明
実年齢:不明
人間換算:90歳以上
種族:神族
性別:女性
身分:町民
職業:薬屋
身長:97cm
体重:22kg
血液型:B型
一人称:私
性格:母性的、自由奔放
好物:ゆで卵、酒類全般、山菜味噌汁、松茸、納豆、沢庵
苦手:蒟蒻、獣肉全般
趣味:薬品集め、栽培

【月影夜真魚子】
出身地:西方国
誕生日:天地暦3966年6月25日
没年月日:天地暦4004年8月13日
星座:蟹座
享年:32歳
人間換算:16歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:151cm
人魚形態:250cm
胸囲:99cm
胴囲:59cm
腰囲:89cm
体重:55kg
血液型:A型
一人称:私
性格:過保護、心配性
好物:水飴、蜜柑、赤飯、餡蜜、牡丹餅
苦手:納豆、大根、豆腐
趣味:温泉巡り、子育て

【月影崇徳丸】
出身地:東方国
誕生日:天地暦3965年2月20日
没年月日:天地暦3992年4月6日
星座:魚座
享年:27歳
種族:人間
性別:男性
身分:武士
職業:夜番警備隊
身長:167cm
体重:67kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:厳格、完璧主義、几帳面
好物:焼酎、白酒、猪肉、鹿肉
苦手:甘酒、小豆、甘物全般
趣味:狩猟、釣魚、武器集め

【桃子姫】
出身地:西方国
誕生日:天地暦2992年4月7日
没年月日:天地暦3010年5月30日
星座:牡羊座
享年:18歳
種族:人間〜妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:152cm
胸囲:100cm
胴囲:60cm
腰囲:90cm
体重:56kg
血液型:A型
一人称:私
性格:鈍感、無頓着、のんびり屋、気長、無欲、頑固
好物:桜餅、柏餅、三色団子、白桃、麦茶
苦手:煮物、酒類全般、寿司
趣味:温泉巡り、昼寝、森林浴

【胡桃姫】
出身地:西方国
誕生日:天地暦2995年5月5日
没年月日:天地暦3010年5月29日
星座:牡牛座
享年:15歳
種族:人間
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:149cm
胸囲:97cm
胴囲:57cm
腰囲:87cm
体重:53kg
血液型:O型
一人称:私
性格:心配性、神経質、執拗
好物:白桃、海老天、牡丹餅、寿司、麦飯
苦手:唐辛子、牛蒡
趣味:人間観察、足任せ、勉学

【姫百合黄泉夜叉丸】
出身地:東方国
誕生日:天地暦2990年8月15日
星座:獅子座
年齢:20歳
種族:人間
性別:男性
身分:武士
職業:兵卒
身長:169cm
体重:69kg
血液型:B型
一人称:私
性格:正義感、生真面目、穏和、助平
好物:軍鶏鍋、鴨鍋、鯨肉、肉饂飩
苦手:人参、大根、冬瓜
趣味:山登り、肝試し、百物語、野宿

【小梅姫】
出身地:西方国
誕生日:天地暦3010年5月30日
星座:双子座
実年齢:30歳※出産日から30年後
人間換算:15歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:無職
身長:158cm
妖獣形態:238cm
胸囲:106cm
胴囲:66cm
腰囲:96cm
体重:62kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:正義感、純粋、穏和、無邪気、天真爛漫
好物:桜餅、白桃、蓬餅、山菜味噌汁、薩摩芋
苦手:白身魚、煮魚
趣味:栽培、手まり、けん玉

【鬼殺丸】
出身地:北方国
誕生日:天地暦2978年7月16日
没年月日:天地暦3008年9月2日
星座:蟹座
享年:30歳
種族:人間〜悪霊※死後
性別:男性
身分:武士
職業:兵卒
身長:170cm
体重:70kg
血液型:AB型
一人称:私、俺
性格:冷酷、無慈悲、負けず嫌い、執念深い
好物:猪肉、鶏肉
苦手:黒糖、甘酢、甘酒
趣味:戦闘、人殺し、殺戮

【アクアヴィーナス】
出身地:アクアユートピア
誕生日:天地暦3992年4月26日
星座:牡牛座
実年齢:28歳
人間換算:14歳
種族:人魚
性別:女性
身分:平民
職業:無職
身長:156cm
人魚形態:255cm
胸囲:104cm
胴囲:64cm
腰囲:94cm
体重:60kg
血液型:A型
一人称:私
性格:ビビり、気弱、ヘタレ、ネガティブ、依存的、小心者
好物:メロンパン、ショートケーキ、ミックスジュース、バニラアイス、ハンバーグステーキ
苦手:南瓜、真蛸、海鼠、イカ墨、昆虫食、葡萄酒
趣味:入浴、宝石集め

【ウェンディーネ】
出身地:アクアユートピア
誕生日:天地暦3972年10月22日
星座:天秤座
実年齢:48歳
人間換算:24歳
種族:人魚
性別:女性
身分:平民
職業:無職
身長:157cm
人魚形態:256cm
胸囲:103cm
胴囲:63cm
腰囲:93cm
体重:61kg
血液型:O型
一人称:私
性格:好奇心旺盛、ポジティブ
好物:炭酸飲料水、チョコレートケーキ、コーヒーゼリー、海藻サラダ、ハヤシライス
苦手:ボロネーゼ、ローストチキン、チキングラタン、生ビール
趣味:異国の歴史学、異国巡り

【スキュラン】
出身地:ネクロデストピア
誕生日:天地暦3888年8月8日
星座:獅子座
実年齢:132歳
人間換算:22歳
種族:魔女
職業:無職
性別:女性
身分:無国籍
身長:190cm
体重:90kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:陰湿、過激
好物:ロブスター、甘海老
苦手:磯巾着
趣味:魔法の研究、魔法医薬品の研究

【山茶花姫】
出身地:東方国
誕生日:天地暦3996年11月18日
星座:蠍座
実年齢:24歳
人間換算:12歳
種族:妖女
性別:女性
身分:町民
職業:忍者
身長:153cm
胸囲:101cm
胴囲:61cm
腰囲:91cm
体重:57kg
血液型:B型
一人称:私
性格:生真面目、強がり、負けず嫌い
好物:鰹節、鰻丼
苦手:椎茸
趣味:剣術修行

【冥王鬼】
出身地:神国
誕生日:不明
星座:不明
実年齢:不明
人間換算:20歳前後
種族:神族
性別:女性
身分:非人
職業:無職
身長:155cm
胸囲:103cm
胴囲:63cm
腰囲:93cm
体重:59kg
血液型:AB型
一人称:私
性格:執念深い、野心的
好物:外郎、水餅
苦手:天ぷら、海鮮丼
趣味:長旅、散歩

【霊魂巨神木】
種族:世界樹
身長:30m
体重:600t

【死霊餓狼】
種族:悪霊
身長:220cm
体重:920kg

【食人餓鬼】
種族:悪霊
身長:90cm〜120cm
体重:20kg〜30kg

【骸骨荒武者】
種族:悪霊
身長:240cm
体重:840kg

【大生首】
種族:悪霊
身長:130cm〜140cm
体重:30kg〜40kg

【亡霊女房】
種族:悪霊
身長:152cm
体重:56kg

【亡霊新婦】
種族:悪霊
身長:158cm
体重:62kg

【小面蜘蛛】
種族:悪霊
体長:160cm
体重:60kg

【百鬼食人餓鬼】
種族:悪霊
身長:170cm〜180cm
体重:70kg〜80kg

【椿女郎】
種族:悪霊
身長:154cm
体重:58kg

【天空輪入道】
種族:悪霊
身長:4m
体重:4t

【朧戦車】
種族:悪霊
身長:2m
体重:2t

【ネクロシーワーム】
種族:アンデッド
全長:50m
体重:500t

【ダークフィッシュ】
種族:アンデッド
全長:60cm〜80cm
体重:30kg〜40kg

【ネクロマーメイド】
種族:アンデッド
全長:250cm〜260cm
体重:50kg〜60kg

【アクアラーミアン】
種族:アンデッド
全長:30m
体重:600kg

【魍魎姫】
種族:人工妖女
身長:150cm
体重:54kg

【分裂体】
種族:人工妖女
身長:150cm
体重:54kg

【羅刹獣】
種族:魔獣
身長:5km
体重:測定不能

登場国家
『日倭浄土国』
別名:イーストユートピア
総人口:300万人

『アクアユートピア』
別名:人魚王国
総人口:700人

作中用語
『天道眼』瞳術
『日輪光』秘術
『天霊山』温泉郷
『牢固石』鉄鉱石
『霊斬刀』名刀
『アクアクリスタル』魔法石
『ネクロデストピア』失楽園
メンテ
宇宙大動乱 ( No.3 )
日時: 2021/08/03 19:58
名前: 月影桜花姫

第一話

艦隊戦闘
太古の大昔…。宇宙新暦七百二十二年三月二十八日午前一時の出来事である。とある銀河系では複数の巨大宇宙勢力が度重なる戦乱を頻発させる。太陽系から推定八万光年の宙域では銀河系全域を統治する大規模星間軍事国家『大銀河帝国』の宇宙大艦隊…。国民主義実現を主目的に活動する大規模反政府勢力である『タイラントキラー』の宇宙大艦隊が激突したのである。大銀河帝国軍宇宙軍主力艦隊旗艦…。宇宙戦艦『セイバードラゴン』ではブリッジの乗組員がタイラントキラーの宇宙艦隊を発見する。
「艦長!本艦のスペースレーダーが推定九百光年の宙域より敵軍の宇宙艦隊に反応しました!」
セイバードラゴンは大銀河帝国軍の主力宇宙戦艦であり地上の水上艦を連想させる巨大宇宙戦艦である。長距離索敵と誘導兵器の使用は勿論…。本艦一隻のみで数千キロメートルサイズの惑星表面を一掃させられる攻撃力を保持する。艦内には一隻だけで合計九十機もの宇宙用の艦載機を搭載出来る。本艦にとっての最大の武装は主砲である高エネルギーを放出する口径八百ミリメートルの高エネルギー連装砲である。主砲の威力は高火力であり数百メートルサイズの宇宙戦艦を一撃で撃沈出来ると推測される。本艦のレーダー射撃は高水準であり主砲の命中精度は八十五パーセントとも豪語される。本艦のサイズは全長八百メートルサイズで全幅六百メートルサイズ…。総重量は推定五百万トンと規格外に巨大であり現存する大銀河帝国軍宇宙主力艦隊では最大級の超巨大宇宙戦艦である。動力炉は『スーパーリアクター』が搭載され燃料の補給は不要であり半永久的に航行出来る。
「敵軍の宇宙艦隊を発見したか…」
セイバードラゴンの艦長は大銀河帝国の大総統…。【ブラッドフォード】である。ブラッドフォードは年齢三十歳の青年であるが外見的には美少年であり十代後半にも間違われる。本来であればブラッドフォードは最前線での戦闘では参加しない立場であるものの…。少年時代の従軍経験から積極的に最前線での指揮を自発的に執行する。
「味方の全艦隊に伝播せよ…敵軍の宇宙大艦隊を発見したと…」
「はっ!承知しました!」
通信兵がブラッドフォードに敬礼するなり全艦隊に敵艦隊発見の情報を通信させる。大銀河帝国軍宇宙艦隊は大総統ブラッドフォードの乗艦する主力宇宙戦艦セイバードラゴンを先頭に推計十七万隻もの宇宙艦隊が追尾する。旗艦セイバードラゴン艦内ではブラッドフォードが再度指示したのである。
「最大船速でワープ機能を作動させろ…一瞬で敵軍艦隊の真正面に突入するぞ…」
「はっ!ワープ機能作動!」
ブリッジの乗組員がワープ機能を作動させる。すると味方の宇宙艦隊もワープ機能を作動させ最前線へと突入したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙軍艦隊は合計一万四千隻もの大規模艦隊であり旗艦は宇宙戦艦『サラマンダー』である。サラマンダーは全長七百八十メートルサイズで全幅五百四十メートルサイズ…。総重量は三百万トンもの大型宇宙戦艦である。旧型の宇宙戦艦であるが艦載機の総数は合計百五十機前後であり艦載機の搭載機数のみなら大銀河帝国軍のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦をも上回る。本艦の動力炉はスーパーリアクターであり燃料は不要である。
「艦長!スペースレーダーが反応しました!」
サラマンダーに搭載されたスペースレーダーが反応する。
「正体不明の無数の移動物体が超光速で味方艦隊に接近中です!移動物体の総数は推計十七万以上…」
旗艦サラマンダーの艦長は【ウィグノール】である。階級は中将であり本来は大銀河帝国軍親衛隊の総司令官であったが…。ブラッドフォードによる独裁政治を見限り脱退する。今現在は反政府組織であるタイラントキラーを創設…。国民主権の独立宇宙民主国家を目標に銀河系全域を支配する大銀河帝国に宣戦を布告する。
「恐らく敵軍の艦隊だろう…」
すると直後…。タイラントキラー宇宙艦隊から推定三百光年の宙域より数万隻もの艦影が突如として出現したのである。
「艦長!敵艦隊です!総数七万隻…大艦隊です!」
「敵艦隊の総数は七万隻か…」
今現在投入された戦力では大銀河帝国軍宇宙艦隊が宇宙艦艇推計十七万隻以上…。相対するタイラントキラー宇宙艦隊の宇宙艦艇は推計三万四千隻程度でありタイラントキラーが圧倒的に不利である。
「直進せよ…」
ウィグノールが艦隊の直進を指示すると全艦隊が大銀河帝国軍宇宙艦隊に接近する。同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦セイバードラゴンではタイラントキラー宇宙艦隊の接近を確認する。
「艦長!敵軍の大艦隊が味方艦隊に接近中です!如何されますか?」
問い掛けられたブラッドフォードは無表情で…。
「急接近する敵軍艦隊を排除せよ…全軍…総攻撃開始!」
最前線の宇宙戦艦部隊を中心に全艦が砲撃を開始したのである。数秒間に数万発もの蛍光色の光線が射出され…。接近するタイラントキラー宇宙艦隊に砲撃したのである。宇宙戦艦部隊はシールド機能によって光線を無力化するが…。宇宙駆逐艦クラスの小型艦はシールド機能が最小限化された代物であり簡単に撃沈されたのである。一度の攻撃でタイラントキラー宇宙艦隊の二十パーセントが喪失…。多数の小型艦が損傷したのである。
「宇宙戦艦クラスの大型艦には光子魚雷…多目的ミサイルで対応せよ…」
旗艦セイバードラゴンの艦長…。ブラッドフォードの指示と同時に最前線の宇宙戦艦部隊が光子魚雷攻撃と多目的ミサイルで攻撃したのである。無数の実弾兵器が超光速で接近…。タイラントキラー宇宙艦隊の大型艦に命中したのである。宇宙戦艦クラスの大型艦十数隻が轟沈…。数十隻の大型艦を大破される。シールド機能を搭載する大型の敵艦を撃沈させるのに効果的だったのは光子魚雷である。光子魚雷とは超光速で発射させる宇宙用の魚雷であり破壊力は三千キロメートルクラスの小惑星を一撃で破壊させられる代物である。光子魚雷一発でも重厚装甲の大型宇宙戦艦は数十隻撃沈…。数百隻もの大型宇宙戦艦が大破したのである。爆沈する宇宙艦艇より多数の乗組員達が宇宙空間へと吹っ飛ばされる。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーにも多目的ミサイルが命中…。艦首が大破したのである。
「艦首が被弾しました!」
「本艦への被害状況は?」
ウィグノールは乗組員に問い掛ける。
「艦首は大破です…」
「艦首だけか…大破したのが艦首のみであれば戦況には問題無さそうだな…」
ブリッジの乗組員が恐る恐る…。
「ですが奴等の多目的ミサイルと光子魚雷は味方艦艇のシールドを透過しました…一体奴等は実弾兵器に何を細工したのでしょうか?」
長期間の宇宙航行を想定した宇宙用の艦船には宇宙デブリやら小惑星の衝突を無力化するシールド機能が搭載されるのが基本である。
「恐らく奴等の実弾兵器にはシールドジャミング装置を搭載させたのであろうな…」
シールドジャミング装置とは大銀河帝国軍が最新式の科学技術を駆使して開発した特殊装置…。大型艦に搭載されたシールド機能を妨害させ高確率で実弾兵器を目標に直撃させられる。光子魚雷と多目的ミサイルによるアウトレンジ戦法によってタイラントキラーのサラマンダー級大型宇宙戦艦五十二隻が撃沈され…。三百四十八隻の大型宇宙戦艦が大破したのである。大型宇宙戦艦以外の小型艦艇は数百隻が轟沈…。数千隻が大破したのである。旗艦サラマンダーでは大銀河帝国軍の猛攻撃に畏怖したブリッジの乗組員が撤退を要請する。
「ウィグノール艦長!即刻艦隊を撤退させましょう!敵軍の総攻撃で多数の味方艦艇が撃沈されました…戦闘を継続すれば全滅しますよ!」
するとウィグノールが無表情で…。
「狼狽えるな…」
戦局は圧倒的にタイラントキラーが不利であるがウィグノールは平常心であり周囲の乗組員達は不思議がる。
(こんなにも劣勢なのに冷静なんて…)
同時刻…。大銀河帝国軍宇宙艦隊旗艦であるセイバードラゴンの艦内では乗組員達が爆散する敵艦の光景を眺望する。
「ブラッドフォード大総統♪大銀河帝国軍の優勢です!」
「大銀河帝国軍の圧勝は確実だな♪」
「所詮タイラントキラーなんて一部のカルト集団だ…大銀河帝国軍が本領を発揮すれば簡単に殲滅出来るさ♪」
「愚衆政治国家の実現なんて…所詮は夢物語だな…」
大銀河帝国軍ではタイラントキラーは少人数のカルト集団…。単なるテロリスト集団程度の存在であると認識される。誰しもが大銀河帝国軍の圧勝を確実視するのだが…。大総統であるブラッドフォードだけは表情が険悪化する。一人の乗組員が恐る恐る…。
「大総統…如何されましたか?」
するとブラッドフォードが苛立った表情で返答する。
「前方の敵軍艦隊は陽動艦隊だろう…此奴は恐らく陽動作戦だ…」
ブラッドフォードが陽動作戦の可能性を指摘した直後…。スペースレーダーが反応したのである。
「スペースレーダーが反応しました!」
「スペースレーダーが反応したって!?一体何事だ!?」
周囲の乗組員達は突如として反応したスペースレーダーに動揺する。
「味方艦隊後方より無数の移動物体が確認されました!サイズは小型の機影…」
「小型の機影だと?」
小型の機影の一言にブラッドフォードが反応したのである。
「恐らく宇宙戦闘機かと…総数は推計三十万機…敵機部隊との距離は推計七百光年です…」
「総数三十万機か…全軍に対空戦闘を通信させろ…」
「はっ!承知しました!」
通信兵が全軍に対空戦闘用意を通信させる。タイラントキラーの宇宙航空機部隊がワープ機能を使用…。一秒間で大銀河帝国軍宇宙艦隊上空へとワープしたのである。大銀河帝国軍宇宙艦隊のスペースレーダーが再度反応する。
「スペースレーダーが反応しました!味方艦隊の上空より無数の敵機です!」
「敵機部隊はワープ機能で到達したか…」
ブラッドフォードは一瞬沈黙するものの…。
「上空の敵機を撃墜…宇宙迎撃機を出撃させろ…」
「承知しました…」
大銀河帝国軍の宇宙艦艇は宇宙用の対空砲で迎撃を開始…。セイバードラゴン級大型宇宙戦艦からは多数の宇宙戦闘機『スペースバード』が出撃する。スペースバードは全長十六メートル…。全幅七メートルの宇宙戦闘機である。スペースレーダーが搭載され機体前方には二基の対空用パルスレーザーが装備される。両翼には対艦戦闘用の多目的ミサイルは勿論…。光子魚雷も搭載可能である。二十年前に開発された旧型の機体であるが大勢のパイロット達が本機を愛用…。今現在でも現役の主力戦闘機である。出撃した多数のスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の対空砲は小型の高エネルギー機関砲が炸裂…。敵機に攻撃するのだが敵機は機体全面に新型シールド機能を搭載させた新型機であり対空用の高エネルギー機関砲が命中しても無力化される。
「大総統!敵機に攻撃しても敵機を撃墜出来ません!」
「此奴は新型機だな…ホログラムを作動させろ…」
ホログラムを作動させると新型機の立体映像が生成されたのである。
「此奴は恐らく無人機の『スペースドローン』だな…」
スペースドローンとは所謂宇宙戦闘用のドローンであり無人兵器に分類される。大銀河帝国軍にも宇宙用の偵察型ドローンは使用されるが…。タイラントキラーは戦闘用に特化された新型のドローンを多数開発したのである。タイラントキラーの新型ドローンは高出力の光学兵器の搭載…。宇宙戦艦の艦砲射撃をも無力化する新型シールド機能が搭載されたのである。ドローン技術のみならタイラントキラーは大銀河帝国の技術レベルを数段階上回る。
「タイラントキラーは無人機を戦闘用に特化させたか…」
同時刻…。タイラントキラーのスペースドローンがスペースバード宇宙航空隊と大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦に急襲したのである。スペースドローンは機体底部に搭載された対艦戦闘用の大型ミサイルで攻撃…。宇宙駆逐艦クラスの小型宇宙艦艇は一機のスペースドローンに撃沈されたのである。本来大銀河帝国軍の宇宙艦艇には外部からの物理攻撃を無力化するシールド機能が搭載されたが…。タイラントキラーのスペースドローンの機体内部には特殊電磁パルス発生装置が搭載され本機が接近すると接近された宇宙艦艇はシールド機能が使用出来なくなる。スペースドローンの電磁パルス発生装置によって大銀河帝国軍宇宙艦隊の各艦はシールド機能が停止…。一方的に攻撃されたのである。必死に迎撃するスペースバードもスペースドローンの攻撃によって多数の機体が撃墜…。数万人ものパイロット達が戦死する。機体底部に対艦戦闘用の固定型高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンはセイバードラゴン級大型宇宙戦艦を砲撃…。一撃で撃沈したのである。三分間の戦闘で六隻ものセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が撃沈される。
「大総統!スペースドローンの出現によって味方艦隊が混乱中です!」
すると直後…。
「スペースレーダーが反応しました!一機のスペースドローンが本艦に急接近中です!」
スペースレーダーが接近中のスペースドローンに反応したのである。スペースドローンが旗艦のセイバードラゴンに接近するとシールド機能が強制的にスリープモードへと移行…。シールド機能が使用出来なくなる。
「大変です!本艦のシールド機能が無力化されました…」
セイバードラゴンのシールド機能の停止によって乗組員達は動揺する。
「狼狽えるな…」
こんな絶望的状況下であってもブラッドフォードは冷静であり周囲の乗組員達は非常に不思議がる。直後…。対艦戦闘用の高エネルギー機関砲を搭載したスペースドローンがセイバードラゴン艦尾に搭載されたロケットエンジンに砲撃したのである。艦内に爆発音が響き渡る。
「うわっ!一体何が発生したのでしょうか!?」
爆発音に乗組員達は動揺したのである。するとブラッドフォードが無表情で…。
「恐らく艦尾のロケットエンジンが敵機の攻撃で破壊されたな…」
「えっ!?ロケットエンジンが!?」
先程の攻撃によってセイバードラゴンは航行出来なくなる。
「大総統…脱出しましょう…こんな場所で長居し続けては本艦諸共…」
ブラッドフォードは一瞬躊躇うが…。
「止むを得ないな…」
ブラッドフォードと十六人の乗組員達は即座に脱出用のポッドに乗艇すると航行不能のセイバードラゴンから脱出したのである。セイバードラゴンは二度目の光子魚雷攻撃で爆散…。撃沈されたのである。撃沈されたセイバードラゴンの乗組員達は轟沈するセイバードラゴンに絶句する。
「大総統…危機一髪でしたね♪」
一人の乗組員が笑顔で大総統に発言するのだが…。
「何が危機一髪だ…」
ブラッドフォードは睥睨したのである。
「ひっ!」
睥睨するブラッドフォードに周囲の乗組員達はゾッとする。
「敵軍の一個艦隊程度に敗北とは…」
同時刻…。多数のスペースドローンを搭載した宇宙戦闘母艦『レヴィアタン』が大銀河帝国軍宇宙艦隊の後方よりワープ機能で出現する。タイラントキラーの本隊である宇宙機動部隊は超大型宇宙戦闘母艦レヴィアタンを中心に六十隻もの宇宙用の空母戦闘艦隊が奇襲に参加したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はタイラントキラーが独自で開発した本格的宇宙戦闘用空母であり艦載機は有人型の宇宙戦闘機ではなく無人兵器のスペースドローンを四百機程度搭載する。艦体のサイズは全長九百六十メートル…。全幅は五百三十メートルであり艦体の総重量は推定六百二十万トンにも相当する。兵装は宇宙巡洋艦に匹敵する高エネルギー主砲が二基搭載され四基の対空パルスレーザーが装備される。六十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦が背後から大銀河帝国軍宇宙艦隊を砲撃する。スペースレーダーによる艦砲射撃により命中精度は八十パーセントと正確であり多数の宇宙艦艇を撃破したのである。同時刻…。脱出用ポッドに乗艇したブラッドフォードは撤退を決意したのである。
「全艦隊に撤退の命令を通信させろ…」
「承知しました…」
通信兵は即座に撤退命令を通信させる。同時に戦闘中の宇宙艦艇もワープ機能を作動…。大銀河帝国軍宇宙艦隊は推定四万光年に位置する大銀河帝国本土へと一瞬でワープしたのである。
「本船もワープさせろ…」
総司令官のブラッドフォードが乗艇する脱出用ポッドも一秒間で大銀河帝国本土『ユートピアサイド』へとワープ…。ユートピアサイドとはテラフォーミングによって地球型惑星に改装された海水の小惑星であり大銀河帝国軍本隊の本拠地である。ブラッドフォードは無事にユートピアサイドへと戻ったのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦のサラマンダーのブリッジでは乗組員達がワープ機能で撤退する大銀河帝国軍宇宙艦隊を眺望する。
「艦長!敵軍が撤退します!」
ウィグノールは無表情で…。
「防衛作戦には成功したが…陽動作戦の囮艦隊は壊滅状態だな…」
今回の宇宙戦闘では大銀河帝国軍は大型宇宙戦艦三千三百四十八隻…。宇宙巡洋艦四千二百六十七隻と三万隻以上の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。一方のタイラントキラーは大型宇宙戦艦二千二百四十九隻…。宇宙巡洋艦三千六百九十四隻と二万五千六百三十八隻の小型宇宙艦艇が撃沈されたのである。人的損害では大銀河帝国軍は推計八十万人もの将兵が戦死…。タイラントキラーでは推計四十万人もの将兵が戦死したのである。今回の宇宙戦闘は第二十四次宇宙星間戦争と命名される。

第二話

亡命艦隊
第二十四次宇宙星間戦争から三日後の三月三十一日十六時…。大銀河帝国軍宇宙艦隊がタイラントキラーの宇宙機動部隊の奇襲攻撃によって大敗北してよりブラッドフォードは非常にピリピリした様子でユートピアサイド大総統官邸の自室にて無人兵器の資料を徹底的に黙読したのである。
(今後の戦闘では…無人兵器が役立ちそうだな…)
今迄は無人兵器の有効性は偵察以外では限定的と判断されたが…。第二十四次宇宙星間戦争により無人兵器の有用性が証明されたのである。すると何者かがコンコンッと自室のドアをノックする。
「誰だ?」
大柄の白人男性がブラッドフォードの自室に入室したのである。
「失礼します…ブラッドフォード大総統♪」
大柄の白人男性はヘラヘラした様子でありブラッドフォードは彼を直視すると余計にピリピリする。
(誰かと思いきや…)
「貴様は…副総統の【ストライダー】か…」
ストライダーとは碧眼金髪の白人男性でありブラッドフォードが唯一悪友と認識する人物である。今現在は副総統の立場であるが…。彼自身も少年時代は大銀河帝国軍の将兵であり各地の戦闘で活躍したのである。
「ブラッドフォード大総統♪ピリピリしちゃって如何されましたか♪三日前の第二十四次宇宙星間戦争は大変残念でしたね…」
ストライダーの発言にブラッドフォードは小声で…。
「貴様…」
「失礼です♪失礼です♪」
ストライダーは笑顔で謝罪する。ヘラヘラするストライダーであるが表情が変化したのである。
「訓練中の【ホムンクルス】ですが…三日後には実戦配属出来るみたいです…」
ホムンクルスとは二十年前から開発されたクローン人間達の総称である。度重なる宇宙戦争やら内戦によって人間の将兵が不足…。大銀河帝国ではクローン人間の兵士の開発が浮上したのである。今現在は推計七億人のホムンクルスが大量生産され…。即戦力として実戦に参加出来そうなホムンクルスの将兵は推計七百万人である。
「彼等が実戦に参加出来れば…今後の作戦では人間の兵士は不要だからな…」
ロボット技術やら人工知能が格段に発達した近年では総兵力の縮小が開始される。数年後…。大銀河帝国軍はホムンクルス将兵と人工知能搭載型兵器のみの軍事組織に変化すると予測されたのである。
「であれば今後は理想の戦争が実現しそうですな♪人間の兵士が戦闘しなくてもホムンクルスを最前線の兵士として代替出来るのですから♪」
「結局貴様の用事とは?」
ブラッドフォードが問い掛けるとストライダーは笑顔で…。
「新型兵器の完成と開発プランが完了しました…即刻軍事工場で見物しませんか?」
「承知した…」
ブラッドフォードは無表情で承諾したのである。彼等は外出するとスカイカーで軍事工場へと移動する。三十分後…。軍事工場は首都からは非常に近辺であり三十分程度で到着する。
「即刻完成した新型兵器を見物させろ…」
「承知しました…」
ストライダーは恐る恐るブラッドフォードに道案内したのである。
「軍事工場へは久方振りに見物したが…無人だな…」
軍事工場は基本的に無人であり作業用のロボットが新型兵器を製造する。
「最近はロボット技術の向上で人間の作業員が必要無くなりましたからね…」
近年ではロボットの普及によりあらゆる企業が管理人を一人配置するのが一般化したのである。彼等は地下に存在する宇宙船の巨大造船施設へと進入…。
「新型艦か…」
地下の巨大造船施設には数百隻もの宇宙艦艇が確認出来る。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争では反政府勢力のタイラントキラーによって大銀河帝国軍の宇宙艦隊が手酷く撃破されましたからね♪」
三日前の第二十四次宇宙星間戦争では当初の想定を上回る予想外の大損害により宇宙艦隊の再建が急行されたのである。
「建造中の宇宙艦隊は三日後には完成するでしょうし…一週間後には各部隊に配属させられますよ♪」
するとストライダーは新型艦を紹介する。
「最初に紹介する新型艦は宇宙巡洋艦…『バジリスク』です…」
バジリスク級宇宙巡洋艦とは大銀河帝国軍宇宙軍が開発した新型宇宙巡洋艦である。全長二百メートル…。全幅百四十メートルの大型巡洋艦であり総重量は推定五万トンである。兵装は口径三百ミリメートルの高エネルギー連装砲が三基装備され両サイドの片舷には光子魚雷発射機が二基搭載される。本艦の最大の利点は対空装備であり宇宙巡洋艦であるが対空パルスレーザーが合計十二基搭載されたのである。乗組員は全自動化を考慮…。通常の乗組員は三人であるが場合によっては一人だけでも操縦出来る。
「基本的にバジリスクは主力艦隊の護衛に利用されるでしょうね…」
ブラッドフォードは宇宙巡洋艦には無関心だったのかノーコメントだったのである。
(大総統…)
ブラッドフォードの無関心の態度にストライダーは苦笑いする。
「此奴は…」
ブラッドフォードが指差した方向には全長五百メートルサイズのドッグに確認出来る未完成の宇宙戦艦だったのである。
「宇宙戦艦なのか?建造中みたいだが…」
ストライダーはニヤッとした表情で即答したのである。
「ドッグに確認出来る建造中の軍艦は久方振りの新型宇宙戦艦ですよ♪」
「新型宇宙戦艦だと?セイバードラゴンの後継艦か…」
大銀河帝国軍はセイバードラゴン級宇宙戦艦が建造されて以来…。後継艦の建造は計画されなかったのである。近年とある新兵器の開発が浮上…。とある新兵器を搭載可能である新型宇宙戦艦の建造が急遽計画されたのである。
「新型宇宙戦艦とやらはセイバードラゴンの二分の一程度のサイズだな…」
ドッグのサイズから全長は推定四百メートルサイズの宇宙戦艦であると推測される。
「ですが新型宇宙戦艦が完成すればセイバードラゴン級宇宙戦艦を上回る性能が期待出来ましょう♪」
ブラッドフォードは無表情で…。
「性能が上回っても無用の長物なら御免だが…」
「大総統…」
(本当に偏屈だな…)
ブラッドフォードの発言にストライダーは人一倍偏屈であると感じる。するとブラッドフォードはフッとした表情で問い掛ける。
「今後の開発プランとやらは?」
「今後の開発プランは十二月二十五日戦争でタイラントキラーが投入したスペースドローンに対抗出来る戦闘用ドローンの開発ですよ♪」
ブラッドフォードは第二十四次宇宙星間戦争の翌日…。軍政部に戦闘用ドローンの重要性と開発を強引に説得させ戦闘用ドローンの開発計画が実行されたのである。幸運にも大銀河帝国軍宇宙艦隊の宇宙救助船が故障により全機能停止したタイラントキラーのスペースドローンを発見…。機体を鹵獲したのである。スペースドローンは機内の故障のみで全体的にノーダメージであり軍関係の技術者達は徹底的に機体を解析する。
「戦闘用ドローンの開発計画は順調みたいだな…」
「勿論ですとも♪機体の解析が順調に進行すれば…大銀河帝国軍でも独自の戦闘用ドローンの製造が開始されましょう…」
すると直後…。ブラッドフォードが所持する非常用の携帯式通信機が作動したのである。
「ん?通信機だと?」
ブラッドフォードは応答する。
「私だが…一体何事だ?」
「ブラッドフォード大総統!大変です!」
「貴様は【ルーヴェルハルト】少将か…一体何が発生した?」
ブラッドフォードに通信した相手は少将のルーヴェルハルトだったのである。ルーヴェルハルトは大銀河帝国軍の帝国軍人であるが…。帝国軍人としては非常に穏健派であり強硬派の帝国軍人達とは常日頃から対立する。
「先日の第二十四次宇宙星間戦争の大敗北からタイラントキラーに影響された民衆達が各惑星で暴動を発生させたとの情報です…」
第二十四次宇宙星間戦争での大敗北から大銀河帝国の威厳が没落…。暴動を発生させた各惑星の住民達は民主化運動に尽力中のタイラントキラーを支持したのである。軍内部からも離反した脱走兵がデモ隊に協力…。各惑星にて地上の治安部隊とデモ隊による内紛が彼方此方で勃発したのである。ルーヴェルハルトはソワソワした様子であったがブラッドフォードは呆れ果てた様子で…。
「愚民の暴走程度で報告するな…」
「えっ!?」
ブラッドフォードの予想外の返答にルーヴェルハルトはハッとする。
「愚民達のデモ隊なんて国軍の宇宙艦隊を派遣して鎮圧作戦を開始しろ…大気圏から光子魚雷を投下すれば簡単に鎮圧出来るだろう…」
「ですが大総統…国軍の宇宙艦隊を出撃させれば大勢の民間人が…」
躊躇するルーヴェルハルトにブラッドフォードは苛立ったのである。
「数億人程度の愚民に遠慮して如何する?デモ隊の暴動程度に畏怖するなら即刻宇宙艦隊を派遣させ…奴等を沈黙させろ…」
ルーヴェルハルトは一瞬沈黙するものの…。
「承知しました…大総統…」
ブラッドフォードの命令に承諾したルーヴェルハルトであるがプルプルした様子で通信を遮断させる。
「ルーヴェルハルトは本当に弱腰だな…」
ルーヴェルハルトを弱腰と罵倒するブラッドフォードにストライダーは恐る恐る…。
「ですが大総統…各地域でデモ隊の活動がエスカレートし続ければ大銀河帝国にとって非常に不都合ですよ…最悪大銀河帝国が内部分裂すればタイラントキラーの思う壺でしょう…」
「であれば一日も早くタイラントキラーの本土を攻略するべきだな…」
同日…。暴動が発生した各惑星には六個師団の大規模宇宙艦隊が派遣され艦隊の主力艦であるセイバードラゴン級大型宇宙戦艦が各惑星の大気圏から地上を目標に光子魚雷を発射したのである。一発の光子魚雷により大都市諸共数千万人の住民達が死滅…。一度の鎮圧作戦で敵味方の合計死者数は推計十二億人を上回ったのである。同時刻…。タイラントキラーの本拠地であり自治領である母星『ヘブンスター』議会場では大銀河帝国軍による暴動鎮圧の情報が急報されたのである。総帥ウィグノールの右腕とも命名される【ウィンフィールド】がソワソワした様子で議会場へと入室する。
「ウィグノール総帥!緊急事態です!」
「ウィンフィールド大佐か…一体何事だ?」
ウィンフィールドとは若齢の職業軍人であり年齢は二十二歳の青年であるが階級は大佐…。非常に優秀でありタイラントキラーではウィグノールが唯一信頼する最高の部下である。
「大銀河帝国軍が自国内で発生した暴動を鎮圧したみたいですが…彼等の鎮圧作戦によってデモ隊のみならず…推計十二億人以上の非戦闘員が虐殺されたとの情報です…」
ウィンフィールドが最高指導者のウィグノールに伝達する。
「なっ!?虐殺だと!?奴等…デモ隊だけではなく自国内の国民をも殺害したのか?」
「残念ですが…本当みたいです…」
「大銀河帝国…ブラッドフォードは悪魔にでも憑依されたのか…」
ウィグノールは人一倍大銀河帝国のブラッドフォードを毛嫌いするのだが…。今回のデモ隊虐殺事件から今迄以上にブラッドフォードに対する嫌悪感が増大化したのである。
「最早大銀河帝国のブラッドフォードは野放しには出来ない…」
ウィグノールは一瞬沈黙するなり…。
「即刻宇宙大艦隊を準備させろ!タイラントキラーの宇宙艦隊を再編制させ…大銀河帝国本土…ユートピアサイドに宇宙艦隊を派遣…奇襲作戦を実行する…」
ウィグノールのユートピアサイド奇襲攻撃の発言にウィンフィールドは驚愕する。
「えっ!?総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて本気ですか!?」
「私は当然…本気だ!」
「ですが総帥…ユートピアサイドへの奇襲作戦なんて実質自爆攻撃と一緒ですよ!ヘブンスターから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星『メティス基地』と人工惑星『プルトロン基地』を突破しなければ不可能です…」
現実問題…。タイラントキラーの本拠地であり自治領であるヘブンスターから大銀河帝国本拠地ユートピアサイドを攻略するには小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破しなければ大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドへは到達出来ない。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地には合計十二万隻から十四万隻もの宇宙艦艇が配備され両陣営とも攻略するのは困難である。小惑星メティス基地と人工惑星プルトロン基地を突破したとしてもユートピアサイドには二十万隻もの宇宙大艦隊は勿論…。両サイドの基地には新型巨大防衛兵器の存在が確認され簡単には攻略出来ない。奇襲作戦を実行すれば大多数の宇宙防衛艦隊からの猛反撃も予想され最悪味方艦隊全滅の可能性も否定出来ない。
「タイラントキラーの宇宙艦隊は第二十四次宇宙星間戦争でも相当の損害ですし…こんな作戦は将兵達も国民も支持しないでしょう…最悪の場合報復攻撃でヘブンスターの滅亡も予想されましょう…」
実際タイラントキラーの宇宙艦隊は十二月二十五日戦争の陽動作戦で辛勝するものの大多数の大型艦が撃沈…。大破したのである。タイラントキラーも宇宙艦隊の再建に着手するのだが…。資源不足により手一杯の状態だったのである。こんな状態で奇襲作戦を強行すれば奇襲艦隊の全滅は確実であり最悪ヘブンスターの滅亡も否定出来ない。
「三日前の第二十四次宇宙星間戦争だけでタイラントキラーは二万隻以上の宇宙艦艇と四十万人以上の将兵達が戦死したのです…今現在は宇宙艦隊の再建と宇宙航空戦力の再強化に尽力するべきかと…」
直後…。会議室のホログラムがピコピコッと反応したのである。
「ん?ホログラム?」
ホログラムを作動させると通信兵の立体映像が出現する。
「ん?通信兵か?」
「ウィグノール総帥!大変です!緊急事態です!」
「緊急事態だと!?今度は何事だ?」
「味方の宇宙偵察機が所属不明の宇宙艦隊を発見…小惑星メタリックアイに接近中との情報です…」
小惑星メタリックアイとはタイラントキラーが統治する小惑星でありタイラントキラーにとって資源採掘の宝庫である。
「所属不明の宇宙艦隊だと?大銀河帝国軍か?」
「現段階では不明ですが…恐らくは…」
ウィグノールは再度問い掛ける。
「宇宙艦隊の規模は?」
「宇宙偵察機の情報では…宇宙巡洋艦クラスの大型艦一隻と二十隻の宇宙駆逐艦クラスの小型艦です…」
「小規模艦隊だな…」
ウィグノールは一息するなり…。
「小惑星メタリックアイに宇宙警備部隊の宇宙戦闘母艦一隻を派遣させ…所属不明の宇宙艦隊を駆逐せよ…」
「承知しました…」
宇宙警備部隊は主力のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦一隻で出撃したのである。レヴィアタン級宇宙戦闘母艦はワープ機能を作動させるとヘブンスターから推定百四十光年に位置する小惑星…。メタリックアイの存在する宙域へと到達したのである。タイラントキラーの宇宙警備部隊は所属不明の宇宙艦隊と遭遇するのだが…。所属不明の宇宙艦隊は交戦の意思は皆無であり救難信号を発信したのである。彼等は五千人以上の避難民達を乗艦…。大銀河帝国軍を見限り祖国である大銀河帝国から亡命した亡命艦隊だったのである。当初はヘブンスターでも混乱するも亡命艦隊の脱走兵は捕虜として扱われ避難民達は無事に保護される。

第三話

奇襲大作戦
宇宙新暦七百二十二年四月十六日未明…。タイラントキラー軍内部では大銀河帝国本拠地であるユートピアサイド奇襲大作戦が正式決定される。当初はウィグノールの右腕であるウィンフィールドは勿論…。数多くの首脳陣が今回のユートピアサイド奇襲大作戦には猛反対され一時は作戦内容が全面的に白紙化されたのである。作戦内容が白紙化された数日後…。状況は一変する。大銀河帝国国内では大総統のブラッドフォードによる圧政に猛反発した大勢の将兵達やら国民達のデモ活動によりブラッドフォード政権は失脚寸前だったのである。大銀河帝国国内の大混乱から作戦を実行するチャンスであると確信したウィグノールは再度右腕のウィンフィールドとタイラントキラー首脳陣に説得…。最終的に作戦開始の三日前に大銀河帝国軍総本部ユートピアサイド奇襲大作戦は総帥ウィグノールの説得により正式決定されたのである。四月十八日十六時五十分…。タイラントキラー宇宙艦隊は七十隻ものレヴィアタン級宇宙戦闘母艦を主力に機動突撃艦隊を新編成したのである。機動突撃艦隊は宇宙空母と宇宙航空戦力を中心とした宇宙大艦隊であり宇宙型大艦巨砲主義の大銀河帝国軍には存在しない。宇宙艦艇の総数は合計六万隻以上でありタイラントキラーにとっては最大の戦力だったのである。今回のユートピアサイド奇襲大作戦では主力の大型宇宙空母を護衛する新型宇宙巡洋艦の『シーサーペント』が二万隻以上投入される。シーサーペント級宇宙巡洋艦はスーパーレーダーによるレーダー射撃により主砲の命中精度のみなら大銀河帝国軍主力宇宙戦艦のセイバードラゴン級宇宙戦艦にも匹敵する。旗艦レヴィアタンより総司令官であるウィグノールが通信機で全軍に伝播…。
「全軍!ワープ機能を作動させろ!目標地点は大銀河帝国軍本拠地…ユートピアサイド!」
タイラントキラーの宇宙艦艇は大銀河帝国軍の本拠地であるユートピアサイドを目標にワープ機能を作動させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではステルス機能すら無効化する新型の改良型スーパーレーダーが設置されタイラントキラーの動向を察知したのである。
「大総統!タイラントキラーの主力宇宙艦隊が行動を開始しました!彼等は本拠地であるユートピアサイドに接近中です…」
通信兵の報告に大総統ブラッドフォードは承諾する。
「奴等…行動を開始したな…」
ブラッドフォードは基地内の総司令部に設置されたホログラムにてタイラントキラーの宇宙艦隊の動向を確認したのである。五日前にタイラントキラーの本拠地であるヘブンスターに諜報部隊を派遣…。タイラントキラーの情報をキャッチするのに成功したのである。副総統のストライダーが恐る恐る…。
「大総統?ユートピアサイドに援軍を派遣しますか?」
「援軍は不要だ…」
問い掛けたストライダーであるがブラッドフォードは援軍の派遣は不要であると返答したのである。
「最早大銀河帝国軍にとってユートピアサイドの戦略的価値は皆無だ…ユートピアサイドへは援軍は派遣しない…」
「であればユートピアサイドは如何されるのですか?」
ブラッドフォードは一息するなり…。
「新型戦略兵器『ツァーリーボンバ』で敵味方諸共…ユートピアサイドを殲滅する…」
「なっ!?戦略兵器であるツァーリーボンバで…大銀河帝国軍本拠地のユートピアサイドを殲滅するのですか!?」
ツァーリーボンバとは大銀河帝国軍が新開発した新型戦略兵器であり正式名は超大型戦略貫通ミサイルである。全長は七百メートルサイズ…。規格外の超巨大試作型誘導弾であり破壊力は未知数である。
「大総統は正気ですか!?ユートピアサイドには大勢の味方の地上部隊と民間人が居住する人口密集地ですし…何よりもユートピアサイドは大銀河帝国軍の本拠地なのですよ!?」
大銀河帝国軍の総本部であるユートピアサイドには総勢七十万人もの地上部隊が配備され…。推計七十億人以上の非戦闘員が居住する。
「敵軍を殲滅するには味方の犠牲は必要不可欠だ…」
(今現在ユートピアサイドの地上部隊は実質不要だからな…奴等にはツァーリーボンバの実験台として利用するのが適任だ…)
ユートピアサイドに配置された味方の地上部隊はブラッドフォードにとって不要と判断した部隊であり実質消耗品だったのである。
「即刻改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦に新型戦略兵器ツァーリーボンバを搭載させ…出撃させろ…」
「はっ!承知しました!」
ツァーリーボンバは宇宙戦艦クラスの大サイズであり実質改良型のセイバードラゴン級大型宇宙戦艦にしか搭載出来ない。準備は五分で終了する。通信兵が再度司令室へと入室したのである。
「改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦にツァーリーボンバを搭載準備…完了しました…」
「上出来だ…」
ブラッドフォードはスマートウォッチで時間帯を確認する。
「出撃は五分後だ…」
「承知しました…」
五分が経過したと同時に…。ツァーリーボンバを搭載した改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦が出撃したのである。人工惑星プルトロン基地から改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦が出撃した同時刻…。タイラントキラーのユートピアサイド攻略宇宙艦隊が大銀河帝国軍本拠地ユートピアサイドの大気圏上空へと到達したのである。ユートピアサイド地上部隊は総司令部に設置されたスペースレーダーにてタイラントキラー宇宙艦隊の動向をキャッチする。
「大気圏上空よりタイラントキラーの宇宙艦隊です!」
「奇襲作戦か…」
タイラントキラー宇宙艦隊の突然の出現に地上部隊は動揺したのである。
「奴等…ワープ機能でプルトロン基地とメティス基地を突破したのか…」
「総数六万隻の大艦隊です…地上部隊だけで守備するのは不可能でしょう…」
現実問題地上部隊のみではタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するのは不可能…。味方の宇宙艦隊は各惑星のデモ隊鎮圧任務に投入され援軍からの援護は絶望的である。
「兎にも角にもタイラントキラーの宇宙艦隊を迎撃するぞ!」
地上部隊の滑走路からは三百機前後の旧型宇宙戦闘機スペースバードが飛来…。地上軍は宇宙戦艦をも一発で撃沈出来る高エネルギー主砲搭載型砲撃列車と旧型戦闘装甲車が対空戦闘を開始したのである。同時刻…。タイラントキラー宇宙艦隊旗艦の宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは総司令官のウィグノールがホログラムにて地上の様子を観察する。
「ユートピアサイドの地上軍は攻撃を開始したか…」
ウィグノールは一息したのである。
「民間人への被害は最小限に努力しろ…」
数秒後…。
「全軍攻撃開始!敵軍を排除せよ!」
タイラントキラーの攻撃開始と同時に七十隻のレヴィアタン級宇宙戦闘母艦飛行甲板より数百機ものスペースドローンが飛来したのである。ユートピアサイド都市部大気圏上空では有人機と無人機の空戦が展開される。大銀河帝国軍地上軍のスペースバード航空隊は必死に反撃するのだが…。相手は新型の無人機であり旧型の有人型宇宙戦闘機であるスペースバードでは撃墜するのは困難である。一分間の戦闘で百八十機ものスペースバードが撃墜される。スペースバードの防衛網を突破した無数のスペースドローンは都市部直上へと突入…。地上部隊の基地と周辺区域を攻撃したのである。地上部隊は砲撃列車と戦闘装甲車は勿論…。基地周辺に設置された固定砲台で上空のスペースドローンを迎撃するも地上では超音速で飛来するスペースドローンを撃墜するのは困難である。反対にスペースドローンの多目的ミサイル…。小型光子魚雷による爆撃で地上部隊の地上兵器が破壊されたのである。同時刻…。宇宙戦闘母艦レヴィアタンでは副艦長のウィンフィールドが艦内のホログラムで地上の様子を再度直視する。
「味方部隊の優勢ですね…今現在自軍の損害は皆無です!」
タイラントキラーの優勢に大喜びするウィンフィールドであるが…。
「非常に奇妙だな…」
「奇妙ですと?」
奇妙であると発言するウィグノールにウィンフィールドは恐る恐る問い掛ける。
「何が奇妙なのですか?」
「敵軍の地上部隊は旧型の兵器ばかり…戦争博物館だな…」
ユートピアサイドは大銀河帝国軍にとって最重要拠点であるのだが…。投入された地上軍の兵器は旧型の前時代的代物ばかりでありウィグノールは胸騒ぎを感じる。
「最重要拠点の防衛戦としては抵抗が軽微に感じられる…」
戦闘開始から五分が経過するとユートピアサイドの地上部隊の戦力は八割が壊滅状態であり最早組織的抵抗は不可能の状態だったのである。タイラントキラーの将兵達は勝利を確信するのだが…。ウィグノールとウィンフィールドは表情が険悪化したのである。すると一人の将兵が彼等に問い掛ける。
「艦長達…一体如何されたのですか!?タイラントキラーの勝利は目前ですよ!今日より銀河全体の民主主義が実現するのです!」
するとウィグノールは恐る恐る…。
「ひょっとすると敵軍のトラップかも知れないな…」
「えっ!?敵軍のトラップですと?」
直前である。艦内のスペースレーダーが正体不明の移動物体に反応…。艦内全体にサイレンが響き渡る。
「ん?何事だ…」
モニターを作動させると規格外の超大型ミサイルを搭載したセイバードラゴン級宇宙戦艦が映写される。
「此奴は…大銀河帝国軍の…」
「セイバードラゴン級宇宙戦艦だな…改良型か…」
「ですが船底に大型戦艦クラスの超大型ミサイルらしき物体が確認出来ます…物体はミサイルなのでしょうか?」
ウィグノールは勿論…。周囲の乗組員達がセイバードラゴン級宇宙戦艦に搭載された超大型ミサイルに身震いしたのである。するとウィグノールは恐る恐る…。
「ウィンフィールド…」
「如何されましたか?ウィグノール総帥…」
普段は冷静であるウィグノールであるが不吉の予感を察知したのか今回は異常にビクビクしたのである。
(ウィグノール総帥が畏怖されるなんて…)
ウィンフィールドはウィグノールの様子に一大事であると察知する。
「不本意であるが…全軍を撤退させろ…」
ウィグノールの判断にウィンフィールドを除外する周囲の将兵達が猛反発したのである。
「えっ!?今更撤退ですと!?」
「敵艦は一隻だけです!即刻迎撃して…」
「下手に攻撃すると面倒だ…モニターの此奴は予想以上に危険かも知れない…」
ウィグノールは即座にワープ機能作動を全軍に伝播させる。同時刻…。人工惑星プルトロン基地ではブラッドフォードが基地内から無人の改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦を遠隔操作したのである。
(コンピュータゲームみたいだな…)
ストライダーは遠隔操作により航行する改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦をコンピュータゲームであると感じる。ブラッドフォードはモニターでユートピアサイドの大気圏上空を浮遊するタイラントキラーの宇宙艦隊を確認したのである。
「敵軍は大気圏上空に展開中だな…」
一息するなり…。
「攻撃目標…ユートピアサイド…超大型戦略貫通ミサイル…ツァーリーボンバ…発射する…」
改良型セイバードラゴン級宇宙戦艦からツァーリーボンバが発射される。発射された同時刻…。ユートピアサイド大気圏上空にて展開中のタイラントキラー宇宙艦隊の各艦のスーパーレーダーにはツァーリーボンバが確認される。
「艦長!敵艦から規格外の超大型ミサイルが発射されました!」
ウィグノールはモニターの超大型ミサイルを直視する。
(此奴は大銀河帝国軍の新型兵器か…止むを得ないか…)
不本意であるが…。
「全軍に伝達する!全艦隊…即刻撤退せよ!」
直後である。ユートピアサイドに接近中の超大型戦略貫通ミサイル…。ツァーリーボンバが惑星全体にピカッと炸裂したのである。数秒後…。高熱の熱線が惑星全体を覆い包み天体諸共爆散したのである。タイラントキラーの主力宇宙艦隊はワープ機能の作動により撤退に成功したものの…。最前線の艦隊はツァーリーボンバの大爆発によってユートピアサイド諸共消滅したのである。
「はぁ…はぁ…ウィグノール総帥…無事に撤退出来ましたね…」
「主力の宇宙艦隊は無事だが…」
先程の自爆攻撃でタイラントキラーは推計三百四十八隻の宇宙戦艦…。六百八十九隻の宇宙巡洋艦と五千二百三十一隻の小型艦艇を喪失したのである。推計三十万人もの将兵を喪失する。一方の大銀河帝国軍は自身の自爆攻撃によって推計五百万人の兵員…。推計七十億人もの住民がツァーリーボンバで死滅したのである。タイラントキラーにとって今回の作戦失敗は甚大であり総帥のウィグノールは大勢の将兵達からは勿論…。民間からも作戦失敗の責任を追及され彼自身の妻子も戦争犯罪者として迫害されたのである。ウィグノールは作戦の失敗を契機に宇宙新暦七百二十二年四月二十一日…。自宅の寝室にて妻子と一緒に一家心中したのである。

第四話

猛反撃開始
ユートピアサイド軍事工場で計画中であった新型宇宙戦艦は急遽人工惑星プルトロン基地で建造される。宇宙新暦七百二十二年四月二十五日早朝…。大総統のブラッドフォードはプルトロン基地の軍港へと来場する。
「如何やら新型宇宙戦艦が完成したみたいだな…」
軍港には全長四百メートルサイズ…。全幅二百二十メートルサイズの新型宇宙戦艦が確認出来る。

反帝国主義
宇宙新暦七百二十二年五月十七日…。最終兵器ケラウノスによって国民主義勢力のタイライトキラーと本拠地である小惑星ヘブンスターを消滅させた大銀河帝国軍であるが…。日に日に過激化するブラッドフォード政権に対する反対運動は新勢力の誕生を促進させたのである。二日後の五月十九日…。ブラッドフォード政権を見限った穏健派のルーヴェルハルトは大銀河帝国を脱退したのである。三日後の五月二十二日に反帝国主義勢力『ホープセイバーズ』が結成…。大銀河帝国自治領の一部である小惑星『ホープエリア』を本拠地として設置される。ホープセイバーズ結成から一週間後の五月二十四日…。大銀河帝国軍を見限った一部の帝国軍人達と母星の消滅により宇宙空間を漂流するタイライトキラーの残存艦隊の一部が小惑星ホープエリアへと集結したのである。ホープセイバーズ創設から二週間が経過するとホープエリアの総人口は推計二十億人に増加する。銀河系の各宙域ではタイラントキラーの残党勢力が宇宙海賊団を組織…。彼等も義勇軍としてホープセイバーズに加入される。五月二十七日…。大銀河帝国軍総本部では大総統のブラッドフォードと副総統のストライダーが対談する。
「大総統…ルーヴェルハルト少将が大銀河帝国から脱退しましたな…」
メンテ
桜花姫 ( No.4 )
日時: 2021/08/13 18:17
名前: 月影桜花姫

第一部

第一話

闇夜

太古の大昔の出来事である。天地歴二百六十二年四月八日…。極東に位置する青海原の島嶼では俗界の理想郷とも呼称される多神教の小規模民国『太平神国』が誕生する。太平神国は原生林の島国地帯であるものの…。国内では武力による戦乱が各地で頻発したのである。弱肉強食の戦乱時代が終焉してより千年後…。共存共栄の安穏時代は非常に安穏であり毎日の日常生活が退屈にも感じられる。天地歴四千二十年三月下旬…。近頃は度重なる神隠しやら無数の亡者達による超常現象が各農村地帯で頻発したのである。同年の五月上旬の真夜中…。赤色の着物姿の女性が一人で南方国の荒神山を視察する。彼女の名前は不寝番の【月影桜花姫】である。
「噂話の荒神山かしら?」
桜花姫とは表向きだけなら西方国の小町娘であるが…。悪霊退治屋を自称する無所属の不寝番である。彼女は強大なる妖術を駆使しては多種多様の超常現象は勿論…。無数の亡者達による怪異事件を解決させた数多くの快挙により国全体の有名人である。外見のみなら人一倍容姿端麗であり両目の瞳孔は半透明の血紅色…。頭髪は黒毛の長髪であり赤色の口紅が非常に魅了される。巨乳のおっぱいも非常に魅力的であり正真正銘絶世の童顔美少女である。彼女の最大の特徴である赤色の着物は桜吹雪模様の花柄であり耳朶の耳装飾は金剛石で形作られた勾玉…。頭髪には八重桜の髪装飾が確認出来る。背丈は小柄であるものの非常に颯爽とした雰囲気である。
「目的地の荒神山に到着したわね…」
こんなにも人間的雰囲気の桜花姫であるが…。彼女自身は人間の血族とは無縁の超自然的生命体であり妖女の母親と人間の父親の混血である。両目の瞳孔が半透明の血紅色である理由も純血の妖女である母親の血統が影響する。妖女とは摩訶不思議なる超常現象やら妖術を多用する女性達の総称化である。肉体の天寿には束縛されるものの…。半永久的に不老長寿の肉体を保持する。一握りの最上級妖女であれば通常の妖女よりも妖力が桁違いであり長命であると予測される。桜花姫は正真正銘最上級に位置する妖女である。桜花姫は悪霊相手には容赦せず…。基本的に人間には手出ししない不殺生の判官贔屓であり余程の難局に遭遇しなければ人間達には手出ししない。
(村人達は大袈裟なのよね…)
「こんなにも他愛無い超常現象なのに村人達は戦慄し過ぎなのよ…」
彼女自身性格的には温厚篤実であるものの…。肉体的には非常に愚鈍であり人一倍ひ弱である。神出鬼没の不吉なる超常現象に遭遇しても戦慄しないものの…。非常に無鉄砲で無計画であり悪戦苦闘の場面も頻繁である。
「私は平気だけど…荒神山って普通の人間であれば誰でも戦慄しそうな雰囲気だわ…」
桜花姫は娯楽の感覚で暗闇に覆い包まれた荒神山の天辺へと到達する。周囲は非常に物静かであり僅少の風音が山道に響き渡る程度である。
「頂上は物静かね…」
(悪霊が出現するかしら?)
悪霊とは亡者達の怨念が実体化した存在であり生者を敵対視する。戦乱時代以前の古来より悪霊は存在するが…。大勢の人間達が殺し合った戦乱時代から悪霊の出現頻度が増加したのである。神出鬼没であり各地に出現…。村人を襲撃したのである。すると直後…。
「えっ?」
(人気だわ…)
天辺から人気を感じる。天辺の中心地より小柄の人影らしき気配を察知…。
「こんな真夜中に誰かしら?」
彼女は非常に警戒した様子で恐る恐る荒神山頂上の中心地に近寄る。
「一体何者よ?」
頂上の人影とは小柄の体格の僧侶だったのである。
(誰かと思いきや…)
「ひょっとしてあんたは人間の僧侶かしら?」
僧侶は非常に物静かな雰囲気であり無表情であるものの…。
「大変失礼しましたね…私は僧侶の【三蔵郎】ですよ…」
三蔵郎と名乗る僧侶は紳士的に謝罪したのである。
「あんたは人間の僧侶だったのね…一瞬悪霊と勘違いしちゃったわよ…」
「戦慄されたのであれば失礼でしたね…」
「別に戦慄しないわよ…」
すると三蔵郎は恐る恐る…。
「大変失礼なのですが…ひょっとすると貴女様は花魁の娘さんでしょうか?」
桜花姫は三蔵郎と名乗る僧侶の花魁発言に苛立つなり…。
「なっ!?誰が花魁ですって…勘違いしないでよね!私は小町娘よ!」
桜花姫に怒号された三蔵郎は即座に謝罪する。
「大変失礼しました…ですが貴女様みたいな容姿端麗の娘さんがこんなにも不吉の荒神山で一体何を?」
(私が容姿端麗ですって♪)
三蔵郎の容姿端麗の発言に桜花姫は内心大喜びしたのである。
「あんたは三蔵郎様だったかしら♪私が容姿端麗なんて三蔵郎様は非常に大袈裟ね♪」
彼女は三蔵郎の質問に即答する。
「私は神出鬼没の悪霊退治屋の妖女だからね♪今回は荒神山で頻発する超常現象を追跡中だったのよ♪」
「貴女様は妖女だったのですか…」
近頃南方国に聳え立つ荒神山では不吉なる超常現象が合計十四件も発生したのである。荒神山は不吉の名称であるが荒神山の天辺から眺望出来る南方国の村里の景色は非常に絶景であり観光地としては勿論…。大勢の旅人達が野営目的に荒神山で野宿したのである。今現在では荒神山は平穏の観光地として有名であるが大昔の戦乱時代…。荒神山は千年以上前の戦乱時代では各戦場で戦死した戦死者達やら飢饉によって餓死した領民達の火葬場として利用されたのである。戦乱時代に成仏出来なかった神出鬼没の亡者達の目撃情報が噂話として南方国全域に出回る。太平神国を実行支配する東方国武士団に荒神山に出没した悪霊征伐の依頼が殺到したものの東方国の武士団は勿論…。各地方の武士団も静観状態であり実質悪霊関連の問題には放置状態だったのである。
「荒神山で発生した超常現象を追跡中だったのですね…」
「近頃は国全体で超常現象が頻発したからね♪」
「近頃は大変物騒ですからね…」
一時期は沈静化した状態であったが…。最近では悪霊による怪異事件が各地で多発化し始める。三蔵郎は地面の無数の石ころに土鍋を設置させる。土鍋に多種多様の野菜類やら鹿肉は勿論…。貴重品である鯨肉で料理する。
「貴女様も如何でしょうか?味見するだけでも…」
炬火によって土鍋の食材を煮付ける。
(味噌汁だわ♪美味しそうね…)
土鍋の味噌汁を凝視し続けると桜花姫も三蔵郎の調理する味噌汁を頬張りたくなる。
「三蔵郎様の夕食かしら?」
桜花姫は無我夢中に土鍋の味噌汁を凝視し続けたのである。
「炭火の鶏肉も如何でしょうか?麦飯も用意しますよ…」
「私にも!?」
一瞬困惑するものの…。
(大変美味そうだからね♪)
「空腹だから私にも食事させてね♪御免あそばせ♪」
食いしん坊の桜花姫は手渡された味噌汁を即座に平らげる。
「一瞬で平らげるなんて…娘さんは相当空腹だったのですね…」
三蔵郎は味噌汁を一瞬で平らげた桜花姫を直視するなり苦笑いする。
「非常に美味だったわ♪」
満足気に炭火の鶏肉を頬張る。
「飲料水は如何でしょうか?」
三蔵郎は恐る恐る瓢箪を桜花姫に手渡したのである。
「ひょっとして梅酒かしら?私は酒類が人一倍大嫌いなのよね…」
桜花姫は酒類が人一倍苦手であり微量でも摂取すると気味悪くなる。
「大丈夫ですよ…緑茶ですから一安心しなされ…」
「緑茶なら一安心だわ♪」
すると三蔵郎は恐る恐る質問したのである。
「大変失礼なのですが…娘さんの名前は何ですか?」
桜花姫は笑顔で即答する。
「私の名前は桜花姫…月影桜花姫よ♪」
「えっ!?月影桜花姫様ですと!?」
三蔵郎は大変驚愕したのである。
「ひょっとして貴女様が多種多様の超常現象を解決させた伝説の最上級妖女…月影桜花姫様でしたか…」
「勿論よ♪」
「ですがこんなにも不吉の荒神山で最上級妖女である月影桜花姫様と対面出来るなんて…大変光栄ですな♪」
「大袈裟ね♪」
すると桜花姫も三蔵郎に問い掛ける。
「三蔵郎様はこんなにも暗闇の荒神山で一体何を?」
三蔵郎は暗闇の夜空を眺望するなり…。
「私にとっての道楽ですかね…」
「道楽ですって?」
「私にとって自然界での食卓こそが醍醐味なのですよ♪春夏秋冬の季節の変化…常日頃から森林浴の音色…川水の風音は精神的にも肉体的にも非常に沈静化されましょう…こんなにも殺伐とした雰囲気の荒神山でも…」
「如何にも聖職者っぽい主義主張だわ…」
(三蔵郎様は典型的に堅苦しい人間みたいね…)
桜花姫は内心三蔵郎の思考を堅苦しく感じる。
「想像力は十人十色多種多様ですからね…」
三蔵郎は無表情で広大無辺の夜空を眺望したのである。
「無数の星月夜が認識出来る森羅万象とは非常に広大無辺ですな…摩訶不思議の森羅万象には圧倒されますよ…」
(三蔵郎様…残念だけれども…私には何が何やら全然理解出来ないわ…)
三蔵郎の発言に桜花姫は困惑する。
「広大無辺の森羅万象とは非常に興味深い超常現象ですな…」
(三蔵郎様は一体何を発言したいのかしら?)
桜花姫は三蔵郎の発言に困惑し続けるものの…。彼女は無言で首肯したのである。すると三蔵郎から意味深の発言を拝聴する。
「近頃…私の寺院近隣の墓場から不吉の気配を察知しましてね…」
無表情だった三蔵郎の表情が一瞬険悪化したのである。
「不吉の気配ですって?一体何かしら?」
「近頃…悪運にも大勢の村人達が息絶えたのでしょうね…死去した彼等の怨恨なのでしょうか?」
(大勢の村人達が息絶えた?)
「ひょっとすると悪霊の仕業かも知れないわね…」
(先程から悪霊の気配が…)
桜花姫は不吉の霊力を感じる。
「非常に戦慄だわ…」
「桜花姫様?悪霊の追跡は如何されるのですか?」
「勿論継続するわよ!神出鬼没の悪霊と遭遇したとしても最上級の妖女である私が問答無用で征伐しちゃうからね♪」
「最上級妖女である桜花姫様が悪霊を征伐されるのであれば一安心ですな…」
桜花姫は荒神山の天辺で三蔵郎と対談し続けても無意味であると判断するなり…。
「三蔵郎様…御免あそばせ♪」
「如何されましたか?桜花姫様…」
「私は常日頃から悪霊征伐で大忙しだからね…即刻今回の超常現象の主要因を追跡しないと…」
「私は是非とも桜花姫様の上首尾を見届けましょう…」
桜花姫は即座に超常現象を追跡したのである。桜花姫の周辺は自然林であるものの…。
「悪霊の魔窟みたいだわ…」
普段は観光地として有名であるが真夜中の荒神山は闇夜の魔窟であり極度の不吉さと殺伐さを感じさせる。すると背後より無数の気配が接近するのを察知…。恐る恐る背後を確認する。
「突然胸騒ぎが…」
桜花姫は極度の胸騒ぎを感じるなり背後からの襲撃に警戒したのである。
「一体何事かしら?」
恐る恐る背後からの襲撃を警戒するものの…。
「人間の気配は感じられないわね…」
周辺の自然林は暗闇であり背後には何も確認出来ない。
「ひょっとして私の勘違いだったのかしら?」
桜花姫の誤認識かと思いきや…。
「えっ!?」
何やら背後の地面より無数の殺気を感じる。
「何かしら…」
(地面からだわ…)
背後の地面より小柄の人影が無数に出現したのである。
「此奴は悪霊!?」
無数の人影は真夜中の暗闇によって姿形の認識が非常に困難であるものの…。極度の腐敗と悪臭により悪霊であると再認識する。全身が血塗れの状態であり皮膚の腐敗が原因なのか両目からは眼球と下腹からは体内の臓物が噴出した醜悪なる姿形…。全体的に皮膚と人骨のみの肉体であり非常にどす黒い醜悪なる風貌である。
「死滅した人間達の末路だわ…」
体格的には女性よりも一回り小柄であり初生児の体格であるものの…。姿形による老若男女の区別は出来ない。身動きは非常に鈍足であり発語も支離滅裂である。
(悪臭から判断して…)
「悪霊の【食人餓鬼】かしら…」
食人餓鬼とは大昔の戦乱時代…。再起不能の疫病やら飢饉による衰弱死から悪霊へと変貌した醜悪なる亡者達の総称化である。埋葬されなかった悪影響により未来永劫成仏出来ないらしく今現在も俗界にて半永久的に徘徊し続ける。彼等は非常に強欲であり極度の空腹からか生者と遭遇すると即刻敵対視…。新鮮なる人間の血肉を無我夢中に捕食する。新鮮なる人間の血肉こそ食人餓鬼にとっての嗜好品であり捕食こそが彼等の共通性である。南方国の地方では別名として疫病神とも呼称される。
「即刻面白くなったわね♪」
食人餓鬼の大群は人海戦術により無抵抗の桜花姫へと殺到する。
「私に大勢で真剣勝負なんて軽佻浮薄だわ♪」
普通の人間であれば極度に戦慄する場面であるものの…。桜花姫は無数の悪霊との遭遇を娯楽的に感じられる。
「悪霊は悪霊でも雑魚が相手なら楽勝ね♪」
桜花姫は咄嗟に妖術を発動…。血紅色であった両目の瞳孔が半透明化した瑠璃色の碧眼へと変化したのである。
「瞳術…」
(『天道眼』…)
天道眼とは自然界を翻弄出来る屈指の瞳術であり多種多様の超常現象を発動出来る。天道眼を開眼した妖女は念力の妖術やら超常現象は勿論…。応用出来れば現存する多種多様の超自然を自由自在に発揮出来る。天道眼から発動される妖術は非常に怪力乱神であり噂話では広大無辺の森羅万象をも翻弄させる超自然的現象を実現化させるとも…。存命中の妖女でさえも天道眼の秘密は不明瞭であり誰一人として明確化出来なかったのである。特定の地方では別名万能眼とも呼称される。
「私も人気者だわ♪」
彼等が桜花姫の近辺へと到達する寸前…。天道眼の発動によって殺到する食人餓鬼の皮膚が超高温の火炎の妖術により焼殺されたのである。
「醜悪なる亡者達…成仏しなさい♪」
食人餓鬼の肉体は高熱の発火現象によって一瞬で黒焦げに焼殺される。
「楽勝だったわ♪」
桜花姫の佇立する地面周辺には黒焦げに焼殺された食人餓鬼の焼死体が無数に埋没したのである。
「悪霊でも微弱の食人餓鬼程度なら火炎の妖術だけでも容易に仕留められちゃうわね♪」
すると彼女の背後から無数の霊力を感じる。
「えっ?今度は何かしら?」
背後の地面より無数の食人餓鬼が出現したのである。
「鬱陶しい奴等ね…」
背後から無数の食人餓鬼が桜花姫に殺到する。
「あんた達は命知らずだわ♪氷結しなさい♪」
桜花姫の妖力によって彼等の肉体が一瞬で凍結化したのである。氷結の妖術により無数の食人餓鬼は身動き出来なくなる。数秒後…。
「あんた達も成仏するのね♪」
(念力の妖術…発動!)
桜花姫は念力の妖術によって凍結化した食人餓鬼の肉体を粉砕させる。凍結化した彼等の肉体は一瞬で崩れ落ちたのである。
「えっ?」
今度は食人餓鬼とは別物の霊力を感じる。
「今度は何かしら…食人餓鬼とは別物みたいだわ…」
すると眼前の地面より戦乱時代の甲冑を装備した人骨が出現する。甲冑の人骨は非常に巨体であり背丈は成人男性を一回り上回る。
(鎧兜の人骨…)
「ひょっとして戦死者達の悪霊…【骸骨荒武者】かしら?」
骸骨荒武者とは戦乱時代に息絶えた戦死者達の無念の集合体であり生者を敵対視する。
「埋葬されなかった戦死者達の亡霊が出現するなんて…」
骸骨荒武者は右手の刀剣で桜花姫に斬撃するものの…。骸骨荒武者の身動きは非常に鈍足であり人一倍身体能力が愚鈍の桜花姫でも容易に回避出来る。
「危機一髪だったわ…」
桜花姫は恐る恐る後退りするなり…。
「戦乱時代の戦死者達…成仏するのね…」
(砂金に変化しなさい!)
砂金の妖術を発動した影響により骸骨荒武者の肉体を砂金に変化させる。砂金に変化した骸骨荒武者の肉体は一瞬で崩れ落ちる。
「他愛無いわね♪」
骸骨荒武者を仕留めた桜花姫は一安心するが…。暗闇の背後より複数の霊力を感じる。
「えっ?霊力かしら?」
警戒した桜花姫は恐る恐る背後を確認する。すると彼女の背後には三体の骸骨荒武者が出現したのである。
「骸骨荒武者だわ…三体も出現するなんて…」
悪霊を仕留めるのは余裕であるが鬱陶しく感じる。
「鬱陶しい奴等ね…」
桜花姫は体内の妖力を収縮…。両手に高熱の火球を形成したのである。
「成仏しなさい♪」
形成した高熱の火球で一体の骸骨荒武者を粉砕する。
「二体とも仕留めましょう♪」
二体の骸骨荒武者を仕留める直前…。背後から何者かによる火縄銃の銃撃で背中を狙撃されたのである。
「ぐっ!」
火縄銃で狙撃された桜花姫は地面に横たわる。背中の傷口からは大量の鮮血が流れ出る。
(迂闊だったわ…一体誰が…)
暗闇の自然林より火縄銃を武装した一体の骸骨荒武者が出現する。暗闇の自然林より桜花姫の背後から彼女を狙撃したのである。骸骨荒武者は鈍足で横たわった桜花姫に近寄る。
(私を如何するのかしら?)
二体の骸骨荒武者も横たわった桜花姫に近寄るなり刀剣を抜刀する。
(殺されちゃうわね…兎にも角にも一か八か…)
桜花姫は分身の妖術を発動…。血塗れの肉体が白煙により消滅する。突然消滅した桜花姫に動揺したのか三体の骸骨荒武者は周囲を警戒したのである。暗闇の自然林から桜花姫の本体が出現…。
「残念だったわね♪あんた達が攻撃したのは私の分身体よ♪」
桜花姫は両手より高熱の雷撃の妖術を発動したのである。雷撃の妖術によって三体の骸骨荒武者は撃破される。すると荒神山の無数の悪霊を全滅させた影響からか突如として荒神山から感じられた重苦しい霊力が感じられなくなる。
「如何やら荒神山に蔓延る骸骨荒武者と食人餓鬼は全滅したみたいね…」
一安心した桜花姫は恐る恐る荒神山から脱出したのである。
「荒神山の超常現象は無事解決だわ♪」
とある獣道にて小柄の老婆と小柄の美少女に遭遇する。
「こんな真夜中の夜道に何者かしら?」
彼女達は非常に小柄の体格である。
「あんた達は薬屋の【蛇骨鬼】婆ちゃんと孫娘の【小猫姫】かしら!?」
「桜花姫姉ちゃん!?」
小猫姫は純血の山猫の妖女であり外見的には人間の美少女とも間違えられる。蛇骨鬼の愛娘であり桜花姫にとっては妹分である。小猫姫は桜花姫との遭遇に大喜びする。
「蛇骨鬼婆ちゃん♪桜花姫姉ちゃんだよ♪」
「こんな真夜中の夜道に誰かと思いきや…あんたは最上級妖女の月影桜花姫ちゃんだね?久方振りだね…桜花姫ちゃん♪」
「あんた達こそ♪」
久方振りの蛇骨鬼と小猫姫との再会に桜花姫は大喜びしたのである。
「こんなにも暗闇の荒神山で桜花姫ちゃんと出くわしちゃうなんて非常に奇遇だね…」
蛇骨鬼は神族と命名される人外種族の一員であり異名は蛇神と呼称される。外見のみなら小柄の人間の老婆であり村里の村人達からは人間の老婆とも間違えられる。神族とは太古の大昔より世界各地に君臨した人外少数民族である。神族は多種多様の姿形に変化が可能であり蛇骨鬼は基本的に小柄の老婆の姿形で活動する。古代の世界では大勢の神族が世界各地で活動中であったが…。今現在では絶滅状態であり蛇神の蛇骨鬼を除外する神族は皆無である。唯一純血の神族の一員と断定出来るのは太平神国出身者の蛇骨鬼…。彼女のみである。蛇骨鬼の同行者である小猫姫は蛇骨鬼にとって孫娘であり唯一の家族であるが…。小猫姫は正真正銘の純血の妖女であり孤児である。
「あんた達はこんなにも暗闇で物騒なのに大丈夫なのかしら?」
「私は大丈夫だよ♪真夜中の夜道は面白いもん♪」
小猫姫は真夜中でも平気なのか笑顔で断言する。
「桜花姫ちゃん…あんたみたいな人一倍容姿端麗の小娘が真夜中の夜道を単独で出歩くなんて…」
「こんな私が容姿端麗なんて♪蛇骨鬼婆ちゃんは大袈裟ね♪」
(私が容姿端麗ですって♪)
蛇骨鬼に大袈裟と発言するが内心では大喜びしたのである。
「私は毎日が任務で大忙しだからね…」
「桜花姫姉ちゃんの任務って?」
小猫姫は不思議そうな表情で問い掛ける。
「私の任務はね…夜遊びよ♪」
桜花姫は笑顔で夜遊びと返答したのである。
「夜遊びって面白いのかな?」
(桜花姫ちゃんは…)
夜遊びと発言する桜花姫に蛇骨鬼は苦笑いする。
「悪霊征伐かね?こんなにも不吉の真夜中にあんたも勇猛果敢だね…」
「別に…私自身悪霊征伐は面白いから大丈夫なのよ♪内心私にとって悪霊征伐なんて常日頃の道楽だからね♪」
桜花姫は笑顔で即答したのである。
「あんたが悪霊征伐の悪影響で過労死しちゃったら大変だからね…私の傷薬でも必要不可欠かな?」
「残念だったわね♪私には凡庸の傷薬なんて不必要なのよ…何よりも私にとっての傷薬は私自身の妖力だから♪私の妖力は万能薬なのよ♪」
桜花姫は自身の妖力の強大さを自慢する。
「蛇骨鬼婆ちゃんこそ常日頃の薬品の研究なんかで過労死しないでよ♪」
「私は過労死しないよ…最上級妖女の桜花姫ちゃんには私の傷薬は不必要みたいだね…」
(桜花姫ちゃんには不必要だったか…)
蛇骨鬼は内心残念がる。
「達者でね♪桜花姫姉ちゃん♪」
「あんた達こそ達者でね♪」
すると蛇骨鬼と小猫姫は荒神山より退去する。
「私も即刻西方国に戻ろうかしら…」
桜花姫は祖国である西方国の家屋敷へと無事に戻ったのである。
メンテ
桜花姫 ( No.5 )
日時: 2021/08/13 19:26
名前: 月影桜花姫

第二話

天神山

西方国の領内には天神山と命名される小山が存在する。荒神山での亡者達との戦闘から三日後の真夜中…。小山である天神山から複数の霊力を感じる。
「霊力だわ…一体何かしら?」
(場所は…天神山ね…)
天神山は太古の大昔に天空の女神が降臨した伝説から天神山と命名される。十数年前は天神山に七軒の集落家屋が建築され村人達が住居したものの…。今現在では廃屋のみが残存した状態であり住居者達の行方は不明であり今現在でも家族の消息は確認出来ない現状である。悪霊に食い殺されたのではと噂話が西方国全域に出回る。気になった桜花姫は即座に天神山へと直行する。桜花姫の自宅から天神山への距離は三町程度であり比較的近辺だったのである。数分後…。天神山に到達する。
(胸騒ぎだわ…)
天神山に近寄ると極度の胸騒ぎを感じる。桜花姫は警戒するも天神山の天辺へと移動する。山道を移動中…。周辺の天然林より蛍光色の無数の鬼火が飛来する。
「鬼火だわ…」
無数の鬼火は天神山の天辺に移動したのである。
(天神山の天辺に無数の鬼火…気になるわね…)
数分間が経過すると桜花姫は天神山の天辺に到達したのである。天辺には廃神社と鳥居が確認出来る。
「廃神社だわ…」
桜花姫は恐る恐る鳥居を潜り抜ける。
「不吉の霊力を感じるわね…」
鳥居を潜り抜けると不吉の霊力を感じる。
(一体何が出現するかしら?)
恐る恐る周辺を警戒するのだが…。彼女の周囲は蛍光色の鬼火ばかりで悪霊らしき物体は何一つ確認出来ない。
「霊力は感じられるけれど…」
直後…。
「えっ?」
(何かしら?)
背後より極度の悪寒戦慄が桜花姫の全身を膠着させる。桜花姫は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「霊力の正体はあんただったのね…」
桜花姫の背後に出現したのは空中を浮遊する女性の頭部らしき巨体の生首であり全頭高は推定五尺程度である。
「悪霊の【大生首】だったかしら…」
大生首とは肉体が頭首のみの悪霊であり戦乱時代の最中匪賊達に犯され…。最終的に斬首された女性と子供達の無念の集合体である。大生首は色白の女性の生首であるが…。本体は規格外に巨大であり不吉の大目玉が桜花姫を直視すると不吉の笑顔で微笑む。
「気味悪いわね…」
すると今度は赤子らしき産声が天神山の頂上全域に響き渡る。
「今度は子供の産声かしら?」
暗闇の天然林より浮遊する赤子らしき巨大生首が三体も出現したのである。
「今度は子供の大生首かしら?」
桜花姫は合計四体の大生首に包囲される。
(天神山の集落で村人達が行方不明なのは大生首の仕業っぽいわね…)
天神山の行方不明事件は大生首の仕業であると予想する。すると四体の大生首は口先を開口すると周囲の鬼火を吸収したのである。
(鬼火を吸収したわ…)
四体の大生首が周辺の鬼火を吸収すると先程よりも霊力が強大化する。
「先程よりも霊力が増幅されたみたいね…」
桜花姫は両目を瞑目するなり体内の妖力を増大化…。
(天道眼…発動!)
瞳術の天道眼を発動させる。
「天道眼さえ発動しちゃえば数多の妖術を使用出来るのよね♪」
天道眼は伝説の瞳術であり天道眼を開眼した妖女は数多の妖術を発動出来る。
「鬱陶しいから成仏しなさい♪」
桜花姫は火炎の妖術を発動…。両手から火球を発射したのである。発射された火球は真正面に対峙する女性の大生首に直撃…。爆散したのである。無数の血肉が地面に散乱する。
「楽勝だわ♪他愛無いわね…」
女性の大生首を仕留めたかと思いきや…。
「えっ?」
大生首の血肉から猛毒の黒煙が発生する。
「なっ!?」
(ひょっとして瘴気かしら?)
大生首の血肉から発生した猛毒の瘴気は地面を溶解させたのである。
(大生首は仕留められた直後に霊能力を発動するのね…)
「多少の瘴気なら大丈夫だけれど…」
桜花姫は妖女と人間の混血であり多少の瘴気であれば平気であるものの…。肉体的には脆弱であり純血の妖女を下回る。
(私自身は勿論…西方国全体が瘴気で汚染されるわね…)
地面の草木が猛毒の瘴気で枯死する。すると桜花姫も息苦しくなる。
「ぐっ!」
最早毒死するのは時間の問題である。
(瘴気に対抗するなら…)
桜花姫は一か八か浄化の妖術を発動する。
「浄化の妖術…発動!」
浄化の涼風を生成するなり大生首の血肉から発生した猛毒の瘴気を浄化したのである。同時に浄化の涼風に感触した三体の赤子の大生首が笑顔で消滅…。成仏したのである。
「彼等は成仏したみたいね♪一件落着だわ♪」
桜花姫は一安心する。すると先程火炎の妖術で粉砕された女性の大生首は土壌へと戻ったのである。猛毒の瘴気で汚染された地面の草木が元通りに生成される。
「自然も元通りに戻ったわ♪」
天神山に蔓延る不吉の霊力も消滅する。
「無事に事件も解決出来たし…戻りましょう♪」
無事に事件を解決した桜花姫は自宅へと戻ったのである。
メンテ
桜花姫 ( No.6 )
日時: 2021/08/14 19:50
名前: 月影桜花姫

第三話

死闘

天神山での重苦しい闇夜から三日後の真昼…。桜花姫は娯楽を主目的に東方国の中心街へと出掛ける。東方国とは太平神国でも比較的老熟した全国一の城下町…。総人口も太平神国では最大級の大規模都市であり唯一の文明地帯である。桜花姫は和菓子屋にて大好きな餡蜜と桜餅を頬張る。
「非常に美味だわ♪」
彼女は無我夢中に和菓子を頬張り続けるものの…。
「えっ?」
(誰かしら?僧侶っぽいわね…)
隣席には僧侶らしき人物が和菓子屋に来店する。
(彼には見覚えが…)
「誰だったっけ?」
僧侶らしき人物とは三日前に闇夜の荒神山にて対面した僧侶の三蔵郎であり奇遇にも彼が東方国の和菓子屋にて来店したのである。
「ひょっとして三蔵郎様?」
桜花姫は恐る恐る…。
「ん?」
三蔵郎は桜花姫の存在に気付いたのである。
「誰かと思いきや…貴女様は最上級妖女の月影桜花姫様でしたか!?南方国の荒神山から無事に戻られたのですね♪」
「本当に三蔵郎様だったのね♪」
「ですがこんな茶店で桜花姫様と再会出来るなんて非常に奇遇ですな♪」
三蔵郎は桜花姫と再会するなり大喜びする。
「如何して三蔵郎様は和菓子屋に?」
「茶店で満喫するのは私にとって道楽ですからね♪」
「奇遇だわ…勿論私もね♪」
桜花姫は無我夢中に和菓子を頬張ったのである。
「ひょっとして桜花姫様も和菓子が大好きなのですか?」
桜花姫は即答する。
「勿論よ♪三蔵郎様も?」
三蔵郎も笑顔で返答したのである。
「勿論私も和菓子は大好きですよ♪和菓子屋は私にとって醍醐味ですからね♪」
すると三蔵郎は突発的に顔色を変化させる。
「桜花姫様?」
「何よ?三蔵郎様?」
「桜花姫様は悪霊退治屋として粉骨砕身されたと各村落の村人達から拝聴しました…近頃の噂話なのですが…」
桜花姫は即座に三蔵郎からの噂話を拝聴する。
「噂話ですって?」
「近頃…北方国では各村落の赤子の神隠しが頻発しましてね…」
近頃北方国では幼子の行方不明事件が頻発したのである。村人達は必死に行方不明の子供達を捜索するのだが…。子供達は誰一人として発見出来ない。依然として子供達は誰一人発見されず悪霊による神隠しか匪賊達による人攫いであると予測する。
「神隠しですって?興味深いわね♪」
「村人達の噂話では一昨日の出来事ですかね?神隠しが匪賊達による悪逆無道なのか…神出鬼没の悪霊の仕業なのかは不明瞭とされますが…」
「一昨日の出来事ね…」
(非常に面白そうだわ♪私の出番が到来したかしら♪)
桜花姫は突発的に闘争心が充溢したのである。
「三蔵郎様!如何やら今回の事件は私の出番みたいね♪」
「ひょっとして桜花姫様…」
桜花姫は笑顔で即答する。
「勿論征伐するわよ!即刻悪霊を仕留めないとね♪」
「ですが桜花姫様…現段階では今回の神隠しの主原因が悪霊の仕業なのか如何なのかは不明瞭ですよ…匪賊達による人攫いかも知れませんし…」
三蔵郎は極度の心配性なのか非常に不安視したのである。
「村人達の噂話では桜花姫様は敵対者が極悪非道だったとしても人間には手出しされないみたいですが…敵対者が極悪非道の匪賊達であれば如何されるのですか?」
桜花姫は極度に不安視する三蔵郎に即答する。
「無論人一倍温厚篤実の私でも…極悪非道の匪賊達であれば即刻仕留めちゃうからね♪相手が人間だからって手加減しないから大丈夫よ♪」
普段は温厚篤実の桜花姫であるが残虐非道の匪賊達には滅法無慈悲である。
「一安心ですね!桜花姫様は極楽浄土の女神様を連想しますからね♪相手が人間の匪賊達であれば困惑されるのではと私自身心配しちゃいましたよ♪」
「私が極楽浄土の女神様ですって♪私が極楽浄土の女神様なんて三蔵郎様も大袈裟ね♪」
極楽浄土の女神様と同一視された桜花姫は内心では大喜びする。
「私に手出し出来る人間がこんな島国の太平神国に実在するのかしら♪最上級妖女の私に手出し出来るのであれば是非とも対面したいわね♪」
莫大なる妖力を保有する最上級妖女の桜花姫にとって多人数による人海戦術は無意味である。桜花姫が単独であったとしても戦力的には全国各地の武士団全勢力に匹敵するのではと各村落の領主達が独自で推測…。村人達には間違っても最上級妖女の桜花姫だけには手出しするなとこっ酷く忠告したのである。
「ですが今回の神隠しの敵対者が極悪非道の匪賊でも油断大敵ですよ!桜花姫様の多用される妖術は天下無双かも知れませんが…油断すれば絶体絶命へと直結するでしょう…」
(三蔵郎様は極度の心配性だわ…)
彼女自身内心では口喧しいと感じるものの三蔵郎に感謝する。
「助言感謝するわね…三蔵郎様…」
桜花姫は即座に北方国へと出掛けたのである。
「彼女は電光石火ですね…」
三蔵郎は城下町から疾走する桜花姫を見届ける。一時間後…。桜花姫は東方国と北方国の国境に位置する田舎村へと到達する。北方国の村里は非常に殺風景であり過疎化した麦畑ばかりである。
「北方国って随分と殺風景の田舎町なのね…」
不可解にも国境の村里には村人が誰一人として確認出来ない。
「無人地帯だわ…」
適当に麦畑を眺望し続けるなり赤子を抱き抱えた白装束の長髪の女性が村里にて佇立したのである。
「えっ?村里の親子かしら?」
桜花姫は恐る恐る赤子を抱き抱える女性へと近寄るなり…。
「母親は大怪我したのね…」
母親の白装束は血塗れであり皮膚の表面には無数の外傷が確認出来る。
「一体彼女に何が?」
桜花姫は一瞬戦慄するものの…。
「大丈夫かしら?」
恐る恐る女性の安否を確認する。母親は無表情であったものの…。恐る恐る近寄る桜花姫を凝視するなり無言の様子で彼女を睥睨したのである。母親に睥睨された桜花姫は母親に腹立たしくなる。
「何よ?」
(腹立たしいわね…)
桜花姫も母親に睥睨し返したのである。すると数秒後…。母親は無言で一目散に逃走したのである。
「如何して母親は私から逃走しちゃったのかしら?」
桜花姫は即座に逃走中の母親を追跡する。
「彼女って…俗界の人間だったのかしら?」
母親は墓場へと潜入したのである。
「墓場だわ…」
桜花姫は母親を追尾するなり恐る恐る墓場へと潜入する。
「先程の母親は一体何者だったのかしら?」
(彼女からは霊力らしい霊力は感じられなかったけれども…)
赤子を抱き抱える母親らしき人物が俗界の人間なのか如何なのかを疑問視したのである。
「雰囲気と姿形から判断して…」
(ひょっとすると彼女の正体って俗界とは無縁の化身なのかも知れないわね…悪霊なのかしら?)
桜花姫は母親の正体が悪霊であると推測する。すると先程の母親らしき女性と再度遭遇したのである。即刻近寄ろうかと思いきや…。
「えっ!?如何して全裸なのよ!?」
母親は白装束を脱衣した状態であり全裸である。
(恥知らずだわ…)
彼女は赤子を抱き抱えた状態から母乳と赤子の前頭部を密着させる。
「何するのよ!?」
処女の桜花姫にとって非常に不愉快であり一瞬膠着化する。桜花姫は恐る恐る墓石から母親の様子を観察したのである。
(母親は一体何を!?)
すると赤子の肉体が液体化するなり赤子の肉体諸共母親の体内へと一瞬で捕食…。
「ひっ!赤子の肉体を吸収するなんて…」
予想外の出来事により桜花姫は愕然とする。
「人間の血肉を吸収出来る特質…」
母親は桜花姫を凝視…。不吉の表情微笑んだのである。
「ひょっとして神隠しの真犯人は悪霊の【亡霊女房】だったのね…」
亡霊女房とは人間の赤子を捕食する母親の悪霊であり姿形のみなら人間の女性である。亡霊女房は戦乱時代に頻発する戦乱やら疫病によって赤子が死去した母親達の無念の集合体…。人間の赤子を体内へと吸収する性行為も赤子への執着と愛情表現である。桜花姫は咄嗟に亡霊女房の近辺へと接近する。
「私が母親達の霊魂であるあんたを成仏させるわ!」
桜花姫は妖力を蓄積させるなり落雷の妖術を発動…。入道雲を天空全域へと凝縮させたのである。
「亡霊女房…覚悟するのね!」
天空全域が入道雲に覆い包まれたかと思いきや…。入道雲から落雷攻撃を発動させる。落雷は亡霊女房の頭頂部へと落下したのである。
「直撃したわね…」
強烈なる落雷攻撃によって桜花姫は一瞬両目を閉眼させる。落雷の破壊力は地面を容易く陥没させたのである。
「瞬殺だったわ♪」
亡霊女房は肉体が非常に脆弱であり無数の血肉やら手足の肉片は勿論…。体内の臓物が地面に散乱する。
「彼女を仕留めたかしら?」
桜花姫は恐る恐る両目を見開くなり亡霊女房を仕留めたか如何なのかを再確認したのである。
「如何やら亡霊女房を仕留めたみたいね♪」
叫喚地獄の場面であるものの…。
「無防備の状態で落雷が直撃しちゃえば誰だって死滅するわよね♪」
桜花姫は今度こそ手応えを感じる。
「亡霊女房を無事征伐したから私は戻りましょうかね…」
桜花姫は一安心したのか西方国へと戻ろうかと思いきや…。
「えっ!?」
背後から極度の胸騒ぎを感じる。
(胸騒ぎだわ…)
「何かしら!?」
背後より微弱の霊力を察知したのである。彼女は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「此奴…鬱陶しいわね…」
肉体を粉砕された亡霊女房の血肉が融合化したのである。亡霊女房の肉体は数秒間で元通りに復活する。
「粉砕された肉体が一瞬で元通りなんて…亡霊女房は不死身の肉体ね…」
(生命力と治癒力だけなら規格外だわ…)
亡霊女房は桜花姫の愕然とした表情を凝視するなり不吉の表情で微笑む。亡霊女房は口辺から猛毒の溶解液を噴射したのである。
「毒液!?」
桜花姫は咄嗟に妖力で半透明の防壁を形作るなり…。危機一髪溶解液から本体を防備したのである。半透明の防壁周辺の地面は亡霊女房が噴射した猛毒の溶解液によって液状化する。
「如何やら危機一髪ね…」
(妖力の防壁を発動しなかったら大怪我だったわ…)
桜花姫は一安心するものの…。彼女の表情が険悪化したのである。
「私は亡霊女房の霊力を見縊り過ぎたわね…」
体内の妖力を蓄積させるなり念力の妖術を発動…。すると亡霊女房の肉体が肥大化したのである。
「破裂するのね♪」
皮膚の表面からどす黒い大量の血液が流れ出るなり…。超常現象によって体内から肉体を破裂させる。地面には無数の肉片やら血肉が散乱する。
「亡霊女房は再復活するかしら?」
先程発動した念力の妖術は様子見であり亡霊女房の肉体が再生能力によって元通りに復活するのか如何なのかを再確認したかったのである。亡霊女房の肉体は一瞬で破裂したものの…。破裂した無数の肉片が再度融合化するなり亡霊女房の肉体は元通りに戻ったのである。
「本当に再復活したわね…」
(私にもこんな再生能力が…)
桜花姫は内心亡霊女房の再生能力を羨望する。
「亡霊女房の再生能力の攻略法は?」
即座に透視能力を発揮出来る天眼の妖術を発動させる。
(亡霊女房の弱点は何かしら?)
天眼の妖術の透視能力によって亡霊女房の腹部中心部より水晶玉を発見する。
「えっ?亡霊女房の体内から水晶玉だわ…」
(気になるわね…ひょっとして水晶玉は亡霊女房の本体なのかしら?)
桜花姫は念力の妖術を再発動…。体内より亡霊女房の腹部を破裂させる。亡霊女房の腹部が破裂した直後…。亡霊女房の破裂した体内より本体である水晶玉を摘出したのである。
「水晶玉だわ♪」
水晶玉が地面へと落下したかと思いきや…。
「ん?」
水晶玉は蛍光色へと発光したのである。すると周辺の地面に散乱した無数の血肉が水晶玉へと密着するなり…。
「如何やら体内の水晶玉こそが亡霊女房の本体っぽいわね…」
数秒間で亡霊女房の肉体は元通りに復活したのである。
「弱点さえ見破れちゃったら楽勝だわ♪」
亡霊女房の弱点を見破った桜花姫は念力の妖術によって水晶玉を粉砕…。体内の水晶玉が粉砕されると亡霊女房の再生能力が発動しなくなる。
「亡霊女房…完全消滅しなさい…」
即座に火炎の妖術を発動…。
「今度こそ亡霊女房を仕留めたわね…」
粉砕された亡霊女房の肉体諸共体内の水晶玉の破片を焼失させる。
「母親達の霊魂…成仏するのね…」
桜花姫は周辺を恐る恐る警戒するなり西方国へと無事戻ったのである。
(彼女は…)
「亡霊女房は予想外に手強かったわね…」
無事に家屋敷へと戻った桜花姫は一息するなり…。寝転んだのである。
「随分派手に妖術を連発しちゃったからかしら…」
妖力を余分に連発した結果…。
「極度に息苦しいのよね…」
体内の妖力を過剰に消耗したのである。
「亡霊女房は私より格下だけれども…」
(最上級妖女である私が格下の悪霊を相手に消耗戦なんてね…)
今回の出来事から自分自身の傲慢さと力不足を痛感したのである。
「今回は完全に軽率だったわね…」
メンテ
桜花姫 ( No.7 )
日時: 2021/08/14 20:07
名前: 月影桜花姫

第四話

雪国

亡霊女房との血みどろの戦闘から二週間後の早朝である。三人の匪賊達が北方国の過疎化した廃村へと侵入する。
「無人の廃村みたいですぜ♪頭領♪」
大柄の匪賊が周辺を眺望したのである。
「過疎地か…人気は無さそうだな…」
「無人の廃村なら俺達の潜窟として利用出来ますぜ♪」
小柄の匪賊が笑顔で発言する。
「であれば廃村を占拠するか…」
廃村は無人であり潜窟として利用するのであれば好都合であると判断する。すると中柄の匪賊が小声で恐る恐る…。
「頭領!頭領!」
「何事だ?」
「村娘です…村娘を発見しました…」
「ん?村娘だと?」
中柄の匪賊は仲間の二人を案内したのである。廃村の中心地にはとある祭壇が設置され…。祭壇の近辺には小柄の女性が徘徊する。素顔は不明だが黒髪の長髪であり白装束の着物姿である。三人の匪賊達は近辺の民家から恐る恐る白装束の女性を観察する。
「本当だな…」
「彼女は一体何を?」
すると小柄の匪賊が赤面するなり…。
「可愛らしい雰囲気ですね♪胸部の谷間とか♪」
「えっ…」
「此奴…」
赤面する小柄の匪賊に二人は苦笑いしたのである。
「如何してこんな場所に村娘が一人で?」
中柄の匪賊が身震いした様子で発言する。
「ひょっとして彼女…悪霊とか?」
中柄の匪賊の発言に二人は困惑したのである。
「はっ?」
「貴様は馬鹿か?村娘は人間だろう…所詮悪霊なんて単なる子供騙しだな…」
二人の匪賊は全否定するのだが…。
「ですがこんなにも人気の無さそうな廃村で村娘が一人で行動するなんて可笑しいですよ!不自然だ…」
「大袈裟だな…」
すると小柄の匪賊が恐る恐る…。
「えっ?彼女は?」
「ん?」
先程祭壇の近辺で徘徊中だった村娘を見失ったのである。
「村娘は雲隠れしたか?」
中柄の匪賊が畏怖した様子で…。
「恐らく彼女は廃村の地縛霊ですよ…即刻廃村から逃げましょう…」
畏怖する中柄の匪賊に匪賊の頭領が怒号する。
「何が悪霊だ!大体村娘が悪霊だって証拠が存在するのか!?」
怒号した直後…。背後より極度の悪寒戦慄と気配を感じる。
「えっ…」
彼等は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「ひっ!」
彼等の背後には先程祭壇の近辺で徘徊中だった白装束の女性が三人の背後に佇立したのである。
(此奴…一瞬で移動したのか…)
彼女は美的の容姿であるが青色の口紅…。両目の瞳孔は血紅色であり人間の女性とは無縁の雰囲気だったのである。匪賊の頭領は恐る恐る…。
「貴様…本物の悪霊なのか?」
すると白装束の女性は笑顔の表情で匪賊の頭領に接触したのである。
「ん?一体何を?」
直後…。
「なっ!?」
匪賊の頭領は一瞬で全身が氷結され肉体が崩れ落ちる。
「ひっ!此奴は悪霊だ!」
「殺されちまう!逃げろ!」
二人の匪賊は極度の恐怖心からか一目散に逃走したのである。二人は廃村の郊外にて一休みする。
「はぁ…はぁ…」
「俺達…廃村で本物の悪霊と遭遇しちまうなんて…」
「最悪だな…頭領は殺されちまうし…」
直後である。
「えっ?」
再度極度の寒気を感じる。
「ひょっとして…」
すると小柄の匪賊の左側真横より先程の白装束の女性が笑顔で凝視する。
「ひっ!悪霊!?」
彼等は落涙するなり一目散に逃走…。全力で疾走したのである。同日の真昼…。太平神国全域にて猛吹雪による寒風が各農村地帯で頻発したのである。突如として頻発した猛吹雪は農村の村人達を衰弱死させる。僧侶の三蔵郎はとある蔵屋敷の窓際から恐る恐る外部の雪景色を眺望したのである。
(近頃は暴風雪が頻発しますね…)
「ひょっとして今回も悪霊が出現した悪影響でしょうか?」
三蔵郎は頻発する猛吹雪を超常現象の悪影響であると認識する。
「超常現象による天変地異ですかね?」
同時刻…。桜花姫は自宅にて無我夢中に大好きな小倉汁粉を頬張る。
「非常に美味だわ♪」
単独での間食であるものの…。人一倍食いしん坊の桜花姫は一瞬で小倉汁粉を平らげる。
「近頃寒風が頻発するわね…」
極度の胸騒ぎを感じる。
(こんなにも猛吹雪が頻発するなんて不吉だわ…)
桜花姫は気になったのか天道眼を発動したのである。すると北方国の廃村より珍妙なる妖力を察知する。
「えっ?北方国の廃村から妖力を感じるわ…」
(ひょっとして今回は妖女の仕業かしら…)
即座に北方国の廃村へと出向いたのである。
「今回の相手は誰かしら?」
亡霊女房での悪戦苦闘により極度の胸騒ぎを感じる。移動を開始してより一時間後…。目的地の廃村へと到着する。
「目的地の廃村だけれども…正真正銘雪国なのね…」
廃村全域が雪景色であり村人は誰一人として確認出来ない。
「如何やら人間の気配は無さそうだわ…」
乱層雲と極度の猛吹雪の悪影響により妖力を感じられなくなる。
「暴風雪の悪影響かしら?超常現象を特定化出来ないわね…」
適当に歩行した直後…。
「人肉の悪臭だわ…一体何かしら?」
積雪より大勢の凍結化した村人達が確認出来る。
「村人達は凍結化で息絶えたのね…」
彼女は天道眼を発動するなり…。
「なっ!?」
突発的に胸騒ぎが彼女の身体髪膚を膠着化させる。
「妖力を感じるわ…」
(如何やら今回の相手は妖女みたいね…)
桜花姫の背後から莫大なる妖力の気配を察知したのである。
「私の背後かしら…ん?」
桜花姫は恐る恐る背後を凝視する。
「女性だわ…一体誰かしら?」
白装束の長髪の女性が桜花姫の隣接へと急接近するなり…。
「きゃっ!」
白装束の女性は口移しにより桜花姫に接吻したのである。接吻された桜花姫は白装束の女性を非常に気味悪がる。
「突然何するのよ!変態女!見ず知らずの女性に口移しなんて不潔だわ…」
女性の破廉恥さから桜花姫は恐る恐る後退りする。
「あんたの感触…ひょっとして氷水かしら?」
先程の口移しにより女性から極度の悪寒戦慄を感じる。
「ぐっ!体内の妖力が…」
氷麗姫による接吻の悪影響からか桜花姫の妖力が微量に消耗する。
「誰かと思いきや…あんたは粉雪妖女の【氷麗姫】だったのね…」
粉雪妖女の氷麗姫とは純血の妖女であり氷雪系統の妖術を多用する妖女である。恐る恐る後退りする桜花姫に氷麗姫は不吉の表情で微笑む。
「今回の猛吹雪の主要因は氷麗姫…あんたの仕業だったのね…」
桜花姫は氷麗姫に火炎の妖術を発動させる。超高温の火炎攻撃によって氷麗姫の肉体が一瞬で崩れ落ちたのである。
「仕留めたかしら?えっ!?」
すると桜花姫の周辺の積雪から無数の女体が形作られる。
「氷麗姫の分身体かしら?」
氷麗姫は冷風を放出するものの…。桜花姫は咄嗟に妖力の防壁を発動するなり氷麗姫の放出する冷風から本体を防備したのである。
「分身なんて面倒臭いわね…」
本体の判別は困難であるものの…。
「氷麗姫にとって私は相性的に最悪だったわね♪」
桜花姫にとって火炎系統の妖術は得意中の得意妖術であり氷雪系統の妖術を多用する氷麗姫を相手に桜花姫は余裕の様子である。
「凡庸の妖女が最上級妖女の私に真剣勝負なんて無謀なのよ♪」
氷雪系統の妖術を多用する氷麗姫にとって桜花姫は最悪の天敵であり桜花姫は微笑むなり…。
「あんたは喋れなくても恐怖心は感じられるのね♪」
氷麗姫は微笑する桜花姫に戦慄したのである。
「覚悟しなさい…氷麗姫ちゃん♪」
桜花姫は天道眼を発動するなり…。
「本体諸共死滅しなさいね♪氷麗姫♪」
天空より無数の火球を廃村全域に落下させたのである。猛烈なる火球の猛攻撃によって氷麗姫の無数の分身体を焼失させる。火球の破壊力は非常に強力であり猛攻撃による超高温の火炎攻撃が氷麗姫本体を一瞬で焼失させたのである。氷麗姫の悲痛の阿鼻叫喚が廃村全域へと響き渡る。
「氷麗姫は死滅したかしら…」
氷麗姫を仕留めた影響により猛吹雪が沈静化する。
「氷麗姫を仕留めた影響かしら?」
寒風も感じられなくなる。
「天変地異は無事解決ね♪即刻戻ろうかしら…」
天変地異が終息するなり…。桜花姫は無事に西方国へと戻ったのである。
「今回は楽勝だったわね♪」
一安心した彼女は家屋敷にて寝転ぶものの…。直後である。左耳より極度の悪寒戦慄を感じる。
「きゃっ!」
悪寒戦慄に身震いした桜花姫は恐る恐る左辺を直視するなり…。先程焼殺した氷麗姫が寝転んだ状態で桜花姫を凝視する。
「えっ!?あんたは!?」
突然の出来事により桜花姫は驚愕したのである。氷麗姫は桜花姫を凝視するなり微笑む。すると氷麗姫は不吉の笑顔で…。
「あんたは人一倍容姿端麗の妖女だわ♪」
氷麗姫は人間の口言葉で発言したのである。
(えっ!?氷麗姫って喋れるの!?)
桜花姫は人間界の公用語で発語する氷麗姫に愕然とする。
「あんたは最上級妖女の月影桜花姫だったわね♪」
すると氷麗姫は桜花姫に接触したのである。直後…。
「ぎゃっ!」
桜花姫は氷麗姫の金縛りの妖術によって身動き出来なくなる。
(金縛りの妖術かしら?身動き出来なくなるなんて…)
「残念だったわね♪あんたが雪国で死滅させたのは私の分身体なのよ♪私は分身体からでも復活出来るから本体が焼殺されても大丈夫だからね♪油断大敵よ…月影桜花姫ちゃん♪」
氷麗姫は粉雪分身の妖術で形作った分身体の欠片のみでも残存すれば本体が死滅したとしても容易に復活出来る。先程は雪国にて氷雪の欠片を桜花姫の着物に密着させた状態で…。桜花姫の家屋敷に潜入出来たのである。
(復活ですって!?)
氷麗姫は桜花姫に密着するなり…。
「私はね…あんたみたいな妖女の小娘が人一倍大好きなのよ♪あんたみたいな小娘とこんな小部屋で二人だけだと接吻したくなっちゃうわ♪」
氷麗姫は表情が赤面すると桜花姫に口移ししたのである。氷麗姫によって無理矢理に口移しされた直後…。体内の妖力が氷麗姫の吸収能力によって吸収される。
「ぐっ!」
(体内の妖力が…)
妖力の消耗によって衰弱死するかと思いきや…。桜花姫の肉体が白煙により一瞬で消滅したのである。
「えっ!?桜花姫は?」
氷麗姫の背後より何者かが背中に接触する。
「きゃっ!」
「残念だったわね♪あんたが口移ししたのは私の分身体よ♪」
「桜花姫!?」
桜花姫は氷麗姫に接吻される直前に分身の妖術を発動…。氷麗姫の吸収能力の無力化に成功する。氷麗姫の口移しによって吸収された妖力は微量だったのである。
「分身体で欺瞞するなんて…悪知恵だけは一人前だわ…」
「悪因悪果よ♪今度こそ死滅するのね…氷麗姫♪」
桜花姫は変化の妖術を発動する。変化の妖術とはあらゆる物体を別の物体に変化させる変幻自在の妖術である。
「桜餅に変化しなさい♪」
すると氷麗姫の肉体が桜花姫の大好きな桜餅に変化させる。
「美味しそうだわ♪」
桜花姫は変化の妖術によって桜餅に変化した氷麗姫を食い殺したのである。
「美味だわ♪」
桜餅に変化させた氷麗姫を捕食すると吸収された妖力が回復する。変化の妖術で食べ物に変化させた対象物を食べれば消耗した妖力も回復させられる。
「彼女に吸収されちゃった妖力も戻ったし♪一石二鳥ね♪」
桜花姫は再度寝転んだのである。
メンテ
桜花姫 ( No.8 )
日時: 2021/08/14 21:55
名前: 月影桜花姫

第五話

幻術
氷麗姫との死闘から四日後の真夜中…。南方国の村里では若齢の村娘達が衰弱化する不吉の超常現象が頻発したのである。噂話を聴取した桜花姫は欣喜雀躍の気分で南方国の村里へと直行する。
「今度も悪霊事件っぽいわね♪今度は一体何が出現したのかしら♪」
一時間後…。南方国の村里に到達したのである。
「今回は悪霊の仕業かしら♪ひょっとして今度も妖女の仕業かしら♪」
桜花姫は村里に到達するものの…。村里は非常に物静かであり誰一人として村人は確認出来ない。村里全体が重苦しい空気からか極度の息苦しさを感じさせる。
「過疎地だからかしら?人気は感じられないわね…」
すると直後…。各家屋敷から無数の物音が響き渡る。
「えっ?何かしら?」
各家屋敷より出刃包丁を所持した老若男女が同時に外出する。
「村人達!?」
(様子が可笑しいわね…)
彼等は無表情であり精気を感じられない。
「村人達は如何しちゃったのかしら?」
村人達は無表情で桜花姫を直視した直後…。
「何よ?」
彼女に殺到したのである。
「人間の分際で私に手出しするなんて無謀なのよ♪」
桜花姫は即座に念力の妖術を発動…。
「あんた達は熟睡しちゃいなさい♪」
念力の妖術により殺到する村人達を気絶させたのである。
「他愛無いわね♪」
桜花姫は恐る恐る一人の村人に接触する。
「不自然だったわね…村人達は誰かに操作された様子だったわ…」
直後…。
「きゃっ!」
近辺の路地裏から女性らしき悲鳴が響き渡る。
(えっ?女性の悲鳴だわ…)
「一体何事かしら?」
同時刻…。村道の路地裏では一人の若齢の村娘が花魁らしき色白の女性に捕捉されたのである。
「私からは逃げられないわよ♪お嬢ちゃん♪好い加減観念しなさい♪」
「きゃっ!誰か!誰か!」
村娘は必死に抵抗するものの…。花魁らしき色白の女性は外見とは裏腹に非常に力強く村娘の力量では抵抗すら出来ない。
「村里で無事なのはお嬢ちゃんだけよ♪あんたの清心を頂戴するわね♪」
色白の女性は赤面した表情で無理矢理に接吻…。
「ぐっ!」
色白の女性に口移しされた直後である。村娘は全身が脱力するなり…。意識が喪失した状態で地面に横たわる。色白の女性は満足気に…。
「美味しいわね♪女子の清心は純真無垢だから非常に美味だわ♪」
清心を完食した女性は即座に退散するものの…。直後である。
「如何やら今回の事件はあんたの仕業だったみたいね♪」
色白の女性は背後の桜花姫を直視する。
「誰かと思いきや…あんたは最上級の妖女…月影桜花姫だったかしら♪」
「あんたは悪霊の【亡霊新婦】だったわね♪悪霊なのに喋れるなんて…」
亡霊新婦とは亭主に殺害された令夫人の亡霊である。姿形こそ色白で赤色の着物姿の女性であるが正真正銘悪霊であり人間界の公用語で会話出来る。接吻によって人間の清心を吸収する女性の悪霊であり純真無垢の女子の清心こそ彼女にとって最高の嗜好品である。
「悪霊の分際なのにひ弱の女の子を相手に接吻なんて…あんたは余程の悪趣味みたいね♪」
桜花姫に挑発された亡霊新婦であるが彼女は笑顔で返答する。
「口喧しいお嬢ちゃん…あんたの清心も吸収しちゃおうかしら♪」
「出来るかしら♪私は其処等の女の子みたいに簡単には接吻出来ないわよ♪」
桜花姫は亡霊新婦に挑発したのである。
「月影桜花姫…無論あんたは妖女だから手加減しないわよ…」
亡霊新婦は笑顔の表情から険悪化した表情に一変する。
「えっ?」
亡霊新婦は幻術を発動すると地面より半透明の触手が無数に出現…。半透明の無数の触手が桜花姫の全身を拘束したのである。
「きゃっ!」
(ひょっとして幻術かしら…)
桜花姫は半透明の触手によって身動き出来なくなる。亡霊新婦は一歩ずつ膠着状態の桜花姫に近寄る。
「暇潰しにあんたの清心も頂戴するわね♪」
亡霊新婦は表情が赤面するなり…。
「私に遭遇したのが不運だったのよ…月影桜花姫♪覚悟出来たかしら♪」
亡霊新婦は身動き出来なくなった桜花姫に口移ししたのである。
「ぐっ!」
(体内の妖力が…吸収されちゃうわ…)
亡霊新婦の口移しにより体内の妖力が吸収される。
「あんたの清心も美味だわ♪」
(衰弱死するのね…)
大喜びした直後…。
「ん!?ぎゃっ!」
亡霊新婦は気味悪くなったのか突如として吐血したのである。
(えっ!?一体何が…如何して亡霊新婦は吐血したの?)
吐血した亡霊新婦は恐る恐る後退りするなり…。
「ぐっ…あんたは純真無垢の清心とは程遠いわ…」
膠着状態の桜花姫を睥睨したのである。
「如何してあんたの心情は人一倍どす黒く下劣なのかしら…あんたみたいな不潔と遭遇したのは久方振りね…」
亡霊新婦の発言に苛立ったのか腹立たしくなる。
「なっ!誰よりも温厚篤実の女神様である私に不潔ですって!?」
亡霊新婦に怒号した桜花姫は即座に天道眼を発動…。亡霊新婦の幻術を無力化したのである。桜花姫の全身に密着する半透明の触手も消滅する。
「私の幻術を自力で解除するなんて…」
亡霊新婦は自力で幻術を解除させた桜花姫に驚愕したのである。
「残念だったわね♪亡霊新婦♪天道眼を発動しちゃえば幻術だって無力化出来るのよ♪」
「天道眼ですって?」
「今度は私の出番みたいね♪」
桜花姫は変化の妖術を発動…。
「女神様の私に不潔って失言した天罰よ♪飴玉に変化しちゃいなさい♪」
変化の妖術により亡霊新婦の肉体を大好きな飴玉に変化させる。
「亡霊新婦は飴玉に変化したわね♪成仏しなさい♪」
桜花姫は即座に飴玉に変化した亡霊新婦を頬張る。
「美味だわ♪」
すると直後…。先程亡霊新婦に清心を吸収された村娘が恐る恐る目覚めたのである。
「えっ?私は一体何を…」
村娘の様子に桜花姫は一安心する。
「如何やら亡霊新婦に吸収された村人達の清心が無事に戻ったみたいね♪一件落着かしら♪」
事件が解決すると桜花姫は即刻西方国へと戻ったのである。
メンテ
桜花姫 ( No.9 )
日時: 2021/08/14 21:57
名前: 月影桜花姫

第六話

悪戦苦闘

亡霊新婦との死闘から六日後の真夜中…。東方国と西方国の国境の山道にて五人の匪賊達が一休みする。
「今日は大量でしたね♪米俵を二石も入手出来るなんて♪」
小柄の匪賊が笑顔で発言したのである。
「明日は如何しますかい?」
中肉中背の匪賊が問い掛ける。すると小柄の匪賊が笑顔で…。
「明日は西方国なんて如何かな!?西方国は田舎村だし食糧品を分捕るには最適だぜ♪」
小柄の匪賊の発言に大柄の匪賊が身震いしたのである。
「貴様は馬鹿か!?」
「えっ!誰が馬鹿だって!?」
大柄の匪賊の馬鹿発言に小柄の匪賊は腹立たしくなる。
「喧嘩したいのか!?」
大柄の匪賊は恐る恐る…。
「貴様は知らないのか?月影桜花姫の存在を…」
「月影桜花姫だって?誰だよ?」
周囲の者達は小柄の匪賊に呆れ果てる。
「貴様は本当に世間知らずだな…西方国には最上級妖女の月影桜花姫が居住する土地だぞ…」
今度は中肉中背の匪賊が発言する。
「西方国の村里なんか襲撃すれば…俺達みたいな凡人なんて桜花姫に瞬殺されちまうだろうな…」
「桜花姫って妖女は最強なのか?」
小柄の匪賊が問い掛けると大柄の匪賊が即答したのである。
「勿論最強だぞ…桜花姫は其処等の妖女とは別格に最強らしいし…俺達みたいな人間にも容赦しないだろうな…」
桜花姫は悪霊が出現しなければ時たま匪賊を征伐する。すると今度は別の小柄の匪賊が赤面した表情で…。
「桜花姫って…噂話では絶世の美女らしいな♪俺は遭遇したいぜ♪」
「貴様は物好きだな…絶世の美女だとしても桜花姫は妖女だからな…所詮妖女なんて悪霊と一緒だろう…」
大柄の匪賊は揶揄したのである。
「兎にも角にも…明日は西方国以外の人気の少なそうな村里を襲撃するか?」
「決定だな…」
すると直後…。
「うっ…」
突如として中肉中背の匪賊が極度の寒気により凍え始める。
「ん?」
「大丈夫か?」
「突然寒気が…」
極度の寒気からか全身が身震いしたのである。すると今度は大柄の匪賊が突然の寒気により凍え始める。
「俺も…」
「大丈夫かよ!?風邪か?」
直後…。周囲より気配を感じる。
「ん!?」
「気配だ…」
「人気か?」
突然の気配に匪賊達は警戒したのである。中肉中背の匪賊は恐る恐る…。
「人気なのか?」
「人気では…無さそうだな…」
「山犬か?」
匪賊達は恐る恐る護身用の刀剣を抜刀したのである。
「何が出現するか?」
目前の樹海より人影を確認…。匪賊達に接近する。
「人影だ…」
数秒後…。樹海より全身の皮膚が腐敗した小柄の怪物が出現したのである。
「ひっ!此奴は…」
「食人餓鬼って悪霊だったか?」
「此奴なら子供でも殺せるぜ♪打っ殺しちまえ!」
小柄の匪賊は食人餓鬼に近寄るなり頭部を斬首…。仕留めたのである。周囲の匪賊達は身動きしなくなった食人餓鬼に恐る恐る近寄る。
「身動きしなくなったぞ…」
「此奴は本当に雑魚みたいだな…」
食人餓鬼は非常に脆弱の悪霊であり頑張れば人間の子供でも仕留められる程度である。
「如何してこんな場所に悪霊が…」
「悪霊は神出鬼没だからな…」
「兎にも角にも…悪霊は仕留めたからな…一休みしないか?」
彼等は再度一休みするのだが…。再度寒気を感じる。
「今度も寒気を感じるぞ…」
「ひょっとして今度も悪霊が出現したか?」
彼等は再度警戒…。刀剣を抜刀したのである。
「今度は何が出現する?」
直後…。周辺の樹海より数十体もの食人餓鬼が出現したのである。
「今度は悪霊が大量に出現したぞ…如何する?」
「相手するか?」
すると大柄の匪賊が恐る恐る…。
「多勢に無勢だぜ…」
食人餓鬼は子供でも仕留められる程度の悪霊だが多勢に無勢であり圧倒的に不利である。
「逃げないか?」
「止むを得ないな…」
不本意であるが彼等は逃走を決意したのである。逃走する寸前…。
「ん?」
突如として食人餓鬼の大群は身動きしなくなる。
「えっ!?一体何が?」
身動きしなくなった食人餓鬼に匪賊達は何が発生したのか不思議がる。食人餓鬼は恐る恐る後退り…。鈍足の身動きで逃亡したのである。
「命拾いしたぜ…」
「奴等…如何して奴等逃げやがった?」
彼等は命拾いに安堵するのだが…。背後より気配を感じる。
「えっ…」
五人の匪賊達は恐る恐る背後を直視するなり…。
「ひっ!」
「蜘蛛の怪物だ!」
背後には正体不明の巨大蜘蛛らしき怪物が出現する。
「食い殺されちまう!逃げろ!」
彼等は一目散に逃走したのである。翌日の真昼…。西方国に隣接する廃村の地面より野犬に咀嚼された大量の血肉やら人骨が無数に発見されたのである。近隣の村人達からは無間地獄の亡者達が出没したとの噂話が国全体に出回る。同時刻…。東方国近辺の辺境地より食人餓鬼の大群が隣接する各地に出没したのである。村人達の噂話が気になった桜花姫は即刻問題の廃村へと直行する。
「廃村の無数の人骨と肉片…東方国に出没した食人餓鬼の大群…」
(無数の悪霊が出現した因果関係は一体何かしら?)
西方国から非常に近辺なのか数分間で到着する近距離である。桜花姫は恐る恐る廃村の様子を眺望する。
「随分殺風景ね…」
誰一人として村人が定住しない魔窟であり廃村から無数の霊力を察知したのである。
「廃村から無数の霊力を感じるわ…」
人気は皆無であり廃村の雰囲気から黄泉の国を連想させる。
「気味悪いわね…」
(空気も息苦しいし…)
廃村は非常に息苦しい場所であり普通の人間であれば卒倒しそうな雰囲気である。
「今回の超常現象では何が出現するのかしら?」
(亡霊新婦は勿論…亡霊女房よりも面倒臭いかも知れないわね…)
廃村の重苦しい空気からか気味悪くなる。廃村の雰囲気から無気力化するものの…。
「廃村中心部の楼閣が非常に不吉だわ…」
廃村中心地の楼閣から非常に重苦しい無数の霊力を察知したのである。
「妖力を消耗するのも面倒臭いからね…力任せで突破しちゃうわよ!」
彼女は鈍足であるものの真正面から廃村へと突入する。
「何かしら?」
すると周辺の地面より無数の食人餓鬼が出現…。大勢で道中を通行する桜花姫に殺到したのである。
「彼等なりの挨拶かしら?」
(食人餓鬼にとって私は嗜好品みたいね…)
桜花姫は即座に瞳術の天道眼を発動…。半透明の妖力の防壁を発動したのである。防壁の表面より半透明化した血紅色の魔手を無数に出現させる。
「鬱陶しい奴等だわ…」
妖力によって出現した無数の魔手は彼女に殺到する無数の食人餓鬼の猛攻撃から本体を防備…。血紅色の魔手は桜花姫に殺到する食人餓鬼を縦横無尽に蹴散らせる。
「人気者も災難だわ♪」
桜花姫は泰然自若とした様子であり無謀にも殺到し続ける食人餓鬼の大群を容易に死滅させたのである。桜花姫の発動した魔手に接触した食人餓鬼は一瞬で肉体が粉砕される。桜花姫が通過した直後…。桜花姫の通過した地面には食人餓鬼の無数の肉片やら血肉が彼女の路傍に散乱したのである。桜花姫は一直線に驀進するなり廃村中心部の楼閣へと到達する。
「楼閣から霊力を感じるわね…」
楼閣の最上階から不吉の霊力が感じられる。桜花姫は一息するなり…。恐る恐る楼閣へと潜入したのである。居室には異国風の調度品が散乱した状態であり居住者は誰一人として確認出来ない。
「如何やら大昔は富裕層の居住地だったのかしら…」
楼閣は全面的に洋式風の雰囲気である。
「室内の雰囲気は異国を意識したのかしら?異世界みたいだわ…」
洋式風の調度品ばかりであり異世界みたいに感じられる。階段にて最上層へと到達する。
「博物館みたいだわ…」
楼閣の最上層は骨董品の貯蔵庫であり桜花姫は無尽蔵の異国風の骨董品に魅了されたのである。
「楼閣の骨董品を競売しちゃえば私も富裕層かしら♪」
すると貯蔵庫の中心部には摩訶不思議なる骨董品が非常に気になる。
「何かしら?ひょっとして能面?」
桜花姫が気になった代物とは精巧に形作られた能面であるものの…。
「表情が気味悪いわね…」
能面は非常に不自然であり等身大の人間と同程度の巨大さである。
「非常に悪趣味だわ…能面って外見的にも不吉なのよね…」
桜花姫は巨大能面を直視すると鳥肌が立つのか非常に気味悪くなる。
「私には所有者の感受性が理解出来ないわね…能面なんて気味悪いだけなのよ…私は大嫌いだわ…」
迂闊にも巨大能面に近寄るなり…。恐る恐る接触したのである。
「普通の能面よりも随分特大なのね…単なる装飾品なのかしら?」
先程から疑問視したのか桜花姫が楼閣へと潜入した直後に室内の霊力が完全消失する。
「霊力が感じられなくなったわ…」
霊力が皆無であると察知するなり桜花姫は恐る恐る庭園へと戻ろうかと思いきや…。背後から物音が響き渡る。彼女は即座に背後を警戒するなり…。
「えっ?一体何事!?」
巨大能面の両目部分が蛍光色へと変色した状態であり無数の人間の細腕らしき脚部が形作られる。姿形は巨大化した巨大人面蜘蛛であり中心部の胴体部分が巨大能面である。
「ひょっとしてあんたは器物の悪霊…【小面蜘蛛】かしら!?」
(厄介なのが出現したわね…)
小面蜘蛛とは器物である巨大能面へと憑霊した憑依系統の悪霊であり南方国では別名巨大能面の付喪神とも命名される。器物に憑霊出来る呪術により天道眼を保有する桜花姫をも錯覚させる。小面蜘蛛の胴体部分である巨大能面の両目が桜花姫を凝視するなり微笑する。
「気味悪いわね…」
微笑する小面蜘蛛に桜花姫は気味悪くなる。すると巨大能面の口先より白色の蜘蛛糸を噴出したのである。
「きゃっ!」
小面蜘蛛の蜘蛛糸が彼女の皮膚に接触した直後…。
「ぐっ!」
(何かしら?妖力が消耗するなんて…)
体内の妖力が格段に消耗したのである。体内の妖力が一瞬で半減したのか肉体の身動きすらも負担に感じられる。
(迂闊だったわ…能面の正体が悪霊の小面蜘蛛だったなんて…如何して今迄気付かなかったのかしら?)
小面蜘蛛の蜘蛛糸に接触すると莫大なる妖力を一瞬で消耗する。大量の妖力を駆使する攻撃法では小面蜘蛛を仕留めるのは非常に困難である。莫大なる妖力と天道眼による多種多様の妖術を保有化…。自由自在に扱える桜花姫にとって小面蜘蛛は相性的にも最悪の天敵である。
(私は小面蜘蛛の餌食に…)
桜花姫は莫大なる妖力の消耗によって力尽きたのか横たわる。横たわった彼女の隣接に小面蜘蛛が急接近する。
「小面蜘蛛…」
(私を食い殺したければ食い殺しなさいよ…)
桜花姫は捕食されるのを覚悟したのである。
(最上級妖女の私が…悪霊を相手に圧倒されるなんて…)
彼女は僅少の妖力によって時空間停止の妖術の使用を決意する。
(一か八か…)
時空間停止の妖術を発動したのである。直後…。小面蜘蛛は一時的に身動きしなくなる。時空間停止の妖術は数分間のみ周囲の時間と空間を停止させられる妖術…。自身は身動き出来るが周囲の空間は何もかもが停止状態だったのである。
「今度は…」
瞬身の妖術を発動する。瞬身の妖術とは所謂瞬間移動であり瞬時に安全地帯に移動出来る。桜花姫は瞬身の妖術の使用により楼閣から無事脱出…。近辺の山道へと移動したのである。
(危機一髪だったわ…)
桜花姫は恐る恐る周囲を警戒…。無事に楼閣から脱出出来たのである。
「脱出には成功したみたいね…」
妖力の消耗によって妖術の使用は不可能であり一時的に退却を余儀無くさせられる。
(時空間停止の妖術は解除されたし…即刻戻らないと…)
大量の妖力消耗によって妖術が使用出来なくなり一時的に退却しなくては悪霊征伐が出来なくなる。
(こんなにも妖力を消耗した状態では妖術を使用出来ないわね…)
桜花姫は西方国へと戻ろうかと思いきや…。
「えっ?」
周囲の地面より数体の食人餓鬼が出現する。彼等は地面に横たわった桜花姫へと殺到したのである。
「今度は食人餓鬼!?」
最早桜花姫は妖力を消耗した満身創痍の状態であり数体の食人餓鬼さえも仕留められなくなる。
(本調子の私だったら食人餓鬼なんて片手間で片付けられちゃうのに…)
本調子の彼女にとって食人餓鬼の大群相手は片手間であるものの…。大量の妖力を消耗した状態では複数の食人餓鬼さえも仕留められなくなる。彼等は無我夢中に横たわった桜花姫に殺到したのである。
「きゃっ!」
桜花姫は戦慄するなり恐る恐る後退りする。
(私は食人餓鬼に食い殺されちゃうのね…)
数体の食人餓鬼が彼女の肉体に接触する直前…。
「えっ!?」
食人餓鬼は突発的に身動きしなくなる。
「如何して身動きしなくなったの?」
恐る恐る地面を注視するなり…。
「きゃっ!蜘蛛糸だわ…」
小面蜘蛛の白色の蜘蛛糸を確認する。
「ひょっとして小面蜘蛛かしら?」
彼等の背後には標的である桜花姫を追撃する小面蜘蛛が近寄る。
「小面蜘蛛!?」
(今度こそ私は小面蜘蛛に食い殺されちゃうわ…)
小面蜘蛛に戦慄した桜花姫は全身が膠着したのである。金縛りの妖術によって楼閣から危機一髪脱出出来たものの…。小面蜘蛛は桜花姫の妖力を目印に彼女の居場所を察知する。必死に逃走する桜花姫を見逃さなかったのである。小面蜘蛛は体内から噴出させた蜘蛛糸によって身動き出来なくなった数体の食人餓鬼を捕食する。
「悪霊が悪霊を共食いするなんて…」
桜花姫は悪霊が悪霊を食い殺す残虐非道の場面に気味悪くなる。食い殺される食人餓鬼みたいに自分自身も小面蜘蛛に食い殺されるのではと想像すると自害したくなる。小面蜘蛛は横たわった桜花姫に近寄るなり…。小面蜘蛛の鋭利の脚部が桜花姫の腹部を抉り抜いたのである。
「ぎゃっ!」
急所を抉り抜かれた直後…。
「ぐっ!」
吐血したのである。地面は桜花姫の大量の出血によって血紅色に変色する。
(結局私は小面蜘蛛に捕食されちゃうのね…)
致命傷であり失血死寸前の瀕死状態である。最早全身の無感覚によって痛覚すらも感じられなくなる。身動き出来なくなった桜花姫は今度こそ最期を覚悟したのである。すると直後…。
「きゃっ!」
両目を瞑目すると耳元より爆発音が響き渡る。
(えっ!?爆発音?)
恐る恐る両目を見開くなり…。肉体を粉砕された小面蜘蛛の血肉が散乱した状態であり死滅した小面蜘蛛の背後には携帯式の榴弾砲を武装した僧侶服の何者かが地面に横たわった桜花姫に恐る恐る近寄る。
(誰かしら?)
僧侶服の人物とは僧侶の三蔵郎であり精神的にも肉体的にも衰弱化した桜花姫にとって三蔵郎は守護神にも感じられる。
「危機一髪でしたね…桜花姫様…」
「ひょっとして三蔵郎様?」
「桜花姫様…大丈夫ですか?」
三蔵郎は桜花姫の抉り抜かれた胸背の外傷を直視するなり…。
「桜花姫様…」
(致命傷ですね…)
桜花姫の外傷を直視した三蔵郎は絶句する。
「私なら大丈夫よ…外傷なら自力で治癒出来るから…」
「自力で治癒ですと?」
すると桜花姫の傷口は体内の妖力によって治癒されたのである。
「致命的外傷も一瞬で元通りなんて桜花姫様の妖力は正真正銘万能薬ですね…」
(ですが桜花姫様は出血多量の悪影響によって衰弱化された状態ですが…)
桜花姫は多量の出血により肉体的にも精神的にも疲弊した状態である。
「如何して人間の三蔵郎様が悪霊の小面蜘蛛を仕留められたのかしら?小面蜘蛛って悪霊でも段違いに強敵なのよ…」
「小面蜘蛛は妖力を無力化させる悪霊ですよね?妖力を多用すれば悪戦苦闘は必須でしょうが妖力が未利用の攻撃法によって撃退出来るのでしょうね…今回の悪霊は莫大なる妖力を保有する妖女では最悪の天敵かと…」
三蔵郎は妖力を利用しない攻撃法こそが小面蜘蛛にとって唯一の弱点であると推測する。小面蜘蛛は摩訶不思議の妖力を多用する妖女では相性的にも最悪であるものの…。武装化した人間には滅法脆弱である。
「ですが一安心ですね♪桜花姫様が無事なのが何よりですから…」
「三蔵郎様…」
桜花姫は涙腺から大粒の涙が零れ落ちるなり落涙する。
「三蔵郎様!」
桜花姫は三蔵郎の腹部に力一杯密着したのである。
「桜花姫様!?」
三蔵郎にとって彼女の様子は幼女であり純情可憐に感じられる。
「桜花姫様…」
(余程辛かったのでしょうね…)
疲弊した桜花姫を直視するなり…。三蔵郎は人一倍病弱だった愛娘を想起したのである。
(私の愛娘は一昨年…疫病によって…)
三蔵郎は一昨年伝染病で死去した愛娘を追想するなり内心極度の悲痛さを感じる。数分後…。
「桜花姫様?空腹なのでは?」
三蔵郎は空腹の彼女に麦飯を手渡したのである。
「御免あそばせ…こんな貴重品を私なんかに大丈夫なのかしら?」
「桜花姫様が空腹なのは一目瞭然ですし…桜花姫様が無事なのが何よりですから…桜花姫様は気になさらなくても大丈夫ですよ♪」
「三蔵郎様…」
桜花姫は三蔵郎の雰囲気が一瞬父親との距離感を想像したのである。すると感情が高揚したのか彼女の両目から大粒の涙が零れ落ちる。
(父親との距離感って…こんな雰囲気なのかしら…)
彼女は力一杯麦飯を平らげる。一瞬で麦飯を完食したのである。
「桜花姫様は相当空腹だったのですね…」
「小面蜘蛛の蜘蛛糸で体内の妖力を消耗させられちゃったからね…」
すると桜花姫は恐る恐る三蔵郎に告白する。
「私…一瞬三蔵郎様が私の父親だったらって…妄想しちゃったわ…」
「私が桜花姫様の父親ですと…」
桜花姫の発言に一瞬驚愕するものの…。
(私が桜花姫様の父親ですか♪)
三蔵郎は想像するなり内心大喜びしたのである。
「三蔵郎様?」
「如何されましたか?桜花姫様?」
桜花姫は叫喚地獄だった幼少期の出来事から悪霊退治屋として活動し始めた経緯を三蔵郎に一部始終追憶する。
「大昔の私はね…」
桜花姫の血筋は名門の武家一族…。月影一族の一人娘であり彼女の家系は分家に分類される。父親は東方国武士団所属の最上級武士【月影夜叉丸】であり母親は人魚妖女の【月影美海姫】…。人間の夜叉丸と純血の妖女である美海姫の混血が愛娘の桜花姫である。父親の夜叉丸は天地歴三千九百九十二年四月七日の桜花姫の出産日前日にて死去…。母親の美海姫と一緒に生活したのである。東方国武士団の最上級武士であった夜叉丸の財産によって毎日が暖衣飽食の生活であり非常に裕福であったものの…。桜花姫は春風駘蕩の毎日が非常に退屈であり武陵桃源の暖衣飽食に極度の倦怠感を感じる。憂鬱であった幼少期であるが彼女に人生最大の変化が到来したのである。不運にも十二歳の誕生日後日…。断崖絶壁の落石に直面する。不運にも桜花姫は落石によって背中を損傷したのである。
「私は落石で絶体絶命だったのよ…」
落石の事故後…。桜花姫は半死半生の状態であったものの背中の外傷が一瞬で自然治癒したのである。落石による外傷が全治した直後…。血紅色であった半透明の瞳孔が半透明の瑠璃色へと発光したのである。突如として体内の妖力が通常の妖女よりも桁違いに増大化…。規格外の妖力の覚醒により日に日に強大化した彼女は体内で蓄積された妖力を自力で抑制出来なくなる。
「当時子供だった私は妖力を自由自在に扱えなかったのよ…」
妖力を抑制出来なくなった桜花姫は不本意にも妖力の暴走によって唯一の肉親である母親の美海姫を殺害…。
(温厚篤実の桜花姫様が母君様を殺害ですと!?)
「桜花姫様が母君様を殺害されたのは事実なのでしょうか?」
「私が母様を殺したのは事実なのよね…」
三蔵郎は驚愕する。
「私は正真正銘残虐非道の殺人鬼なのよ…」
残虐非道の殺人鬼として明断された桜花姫は東方国武士団の看守達により隔離される。監獄にて武士団の看守達から一晩中拷問されたものの…。桜花姫の規格外の生命力に戦慄したのである。看守達は桜花姫の常人をも超越した生命力に戦慄…。武士団の看守達は彼女を監獄から釈放させる。人間達にとって害悪である悪霊から村人達を防備する不寝番としての活動を必須要件として多種多様の悪霊やら大勢の匪賊達を問答無用に征伐したのである。妖力の順応化は非常に困難であったものの日に日に妖力を多用し続けた結果…。十八歳の中頃には伝説の秘術として伝承される瞳術の天道眼を開眼させたのである。
「桜花姫様が悪霊退治屋として活動された理由とは…不本意にも母君様を殺害された自分自身の罪悪感だったのですね…」
「内心忘却したい黒歴史なのよね…」
「ですが桜花姫様は人一倍勇猛果敢の女神様ですよ…勿論誰よりも♪」
桜花姫は三蔵郎の女神様発言に返答する。
「私が女神様なんて…三蔵郎様は随分表現が大袈裟ね…」
「桜花姫様は不本意にも幼少期に母君様を殺害されたのは事実なのかも知れません…ですが何よりも桜花姫様は罪滅ぼしとして無数の悪霊は勿論…極悪非道の匪賊達から村人達を守護する悪霊退治屋として粉骨砕身されたのも事実ですからね…」
「三蔵郎様…」
桜花姫の顔色が変化したのである。
「所詮妖女も生命体なのです…森羅万象に実在する生命体とは善悪の集合体であり非常に複雑ですからね…勿論こんな私自身にも悪心は存在しますよ♪」
三蔵郎の鼓舞激励によって微弱であるものの…。
「三蔵郎様♪三蔵郎様には大変感謝するわ…」
桜花姫に笑顔が戻ったのである。
「私自身桜花姫様に役立てただけでも恐悦至極に感じられますよ♪」
「三蔵郎様♪」
桜花姫は三蔵郎の鼓舞激励に一安心する。
「桜花姫様…今後は如何されますか?」
「無数の霊力が国全体に分散しちゃったみたいだからね…」
(亡者達が国全体に徘徊し続けると非常に大変だわ…)
突如として莫大なる無数の食人餓鬼の気配を察知したのである。
「国全体に霊力ですと!?一大事ですね…即刻悪霊を撃退しなければ…」
「食人餓鬼が増大化した悪影響ね…」
「ですがこんなにも突発的に食人餓鬼の大群が出現するなんて…」
「如何してこんなにも食人餓鬼の大群が出現しちゃったのかしら?」
すると桜花姫は三蔵郎に協力を要望する。
「三蔵郎様?」
「如何されましたか?桜花姫様?」
「今回ばかりは三蔵郎様の協力が必要不可欠なのよ…正直今回の悪霊征伐は私だけで解決するのは心細いのよね…」
正直今回も単独で悪霊事件を解決させたかったが先程の予想外の悪戦苦闘によって桜花姫は極度に心細くなる。
「勿論ですとも♪私は是非とも桜花姫様に協力しますよ♪」
桜花姫の要望に三蔵郎は大喜びで承諾したのである。
「三蔵郎様と一緒なら心強いわ♪」
メンテ
桜花姫 ( No.10 )
日時: 2021/08/14 22:00
名前: 月影桜花姫

第七話

敗走

桜花姫と三蔵郎は増大化した無数の霊力を感じる東方国へと到達…。城下町の中心街に潜入したのである。東方国の絶景は全域が主戦場であり城下町の地面には腐敗した無数の血肉は勿論…。散乱した血塗れの臓器やら血肉が無数に確認出来る。先程遭遇した食人餓鬼の大群が無数に出現…。逃走中の村人達に殺到するなり人間の血肉を無我夢中に捕食したのである。
「本物の地獄絵ですね…東方国では一体何が…」
「彼等にとって人間の血肉は嗜好品だからね…」
徘徊中の無数の食人餓鬼が移動中の桜花姫と三蔵郎に殺到するなり…。大勢で襲撃するものの桜花姫が念力の妖術を発動すると彼等は瞬殺される。
「鬱陶しい悪霊だわ…」
桜花姫と三蔵郎の地面周辺には食人餓鬼の血肉やら体内の臓器が無数に散乱する。
(直接手出ししなくとも確実に殺害出来るなんて…)
三蔵郎は桜花姫の天道眼の効力に驚愕したのである。
「桜花姫様の妖力を肉眼で拝見しましたが…こんなにも天下無双とは非常に心強いですな…」
「私にとって片手間よ♪」
「片手間ですと!?」
(ですが桜花姫様の妖力がこんなにも強力であれば私の協力なんて無意味なのでは?)
内心桜花姫には同行者の協力は不必要なのではと感じる。
「鬱陶しい奴等ね…」
桜花姫は苛立った様子であり村人達の血肉を無我夢中に捕食し続ける食人餓鬼の大群に猛反撃したのである。無数の食人餓鬼の頭部を念力によって破裂させる。頭部が破裂した食人餓鬼は身動き出来なくなる。
「相手が微弱の食人餓鬼であれば…桜花姫様の妖力は天下無敵ですね♪」
「私にとって食人餓鬼なんて問題外よ…」
桜花姫にとって悪霊やら通常の妖女であれば滅法天下無双であるものの…。
(食人餓鬼が問題外でも妖力の消耗戦で私自身疲弊状態なのよね…)
先程の予想外の悪戦苦闘により妖力の消耗戦が影響したのか息苦しい深呼吸が目立ったのである。
「桜花姫様?」
「何かしら…三蔵郎様?」
「大丈夫ですか?何やら桜花姫様の顔色が…」
三蔵郎は息苦しそうに深呼吸する桜花姫を心配する。
「別に…私なら大丈夫よ…」
「ですが桜花姫様の顔色が…」
「三蔵郎様は人一倍心配性なのね…三蔵郎様が気にしなくても私は大丈夫だからね…」
城下町の中心地区域内へと到達するものの…。東方国の村人達は誰一人として確認出来ない。
「無人地帯だわ…村人達の居場所は?」
「東方国の村人達は武士団の本拠地である根城へと避難されました…最早東方国全域が亡者達によって占拠されたのでしょうね…」
すると三蔵郎は桜花姫に助言する。
「桜花姫様の妖力は変幻自在かも知れませんが…先程の小面蜘蛛みたいな最上級の悪霊にでも遭遇すれば確実に苦戦するでしょう…護身用の装備品が必要不可欠かと…油断大敵ですよ…」
「護身用の装備品ですって?」
「武士団の駐屯地で装備品を確保しましょう…私が道案内しますよ…」
三蔵郎は桜花姫を道案内するなり一緒に駐屯地へと移動したのである。数分後…。桜花姫と三蔵郎は武士団の駐屯地に到達する。
「廃屋っぽいわね…」
「武士団の駐屯地も食人餓鬼の大群に占拠されましたからね…」
二人は恐る恐る駐屯地へと潜入したのである。駐屯地は無人化した廃屋であり武士団の守備隊は食人餓鬼の猛攻撃によって危機一髪撤退…。本拠地である根城へと退却したのである。
「常備軍は撤退しちゃったのかしら?」
通路は血塗れの刀剣やら甲冑が散乱した状態である。
「何しろ相手は神出鬼没の悪霊ですし武士団の守備隊が少数精鋭であったとしても無数の悪霊を撲滅させるなんて夢物語でしょう…ですが彼等が撤退した恩恵によって容易に潜入出来ましたからね…」
最早守備隊の駐屯地は無防備の状態であり非武装の村人達でも容易に潜入出来る。
「先程は私も駐屯地の武器庫で榴弾砲を確保しましたからね…」
桜花姫と三蔵郎は恐る恐る武器庫へと入室する。武器庫には多種多様の火縄銃やら手榴弾は勿論…。異国で購入された最新式の散弾銃やら携帯式の迫撃砲が無尽蔵に確認出来る。
「連発銃なんて如何でしょうか?連発銃であれば誰でも手軽に扱えるでしょう…」
三蔵郎は軽量化された携帯式の連発銃を桜花姫に手渡したものの…。
「三蔵郎様…残念だけど私には連発銃は相応しくないわね…」
桜花姫は連発銃の使用を拒絶する。
(私自身砲術は未経験だからね…連発銃なんて代物は私には扱えないわ…)
基本的に荒唐無稽の妖術を駆使する桜花姫にとって自身の肉体を行使する砲術やら武術は不向きであり連発銃の使用法は滅法専門外の領域である。
「短刀の懐刀だったら愚鈍の私でも…」
桜花姫は体術やら武術を多用する兵法は不向きであるものの…。比較的誰でも扱えそうな短刀の懐刀を護身用に所持する。
「三蔵郎様…即刻武器庫から脱出しましょう…」
「承知しました…」
すると通路より物音が響き渡る。
「通路から物音だわ…食人餓鬼かしら?」
通路より無数の霊力を察知したのである。
(無数の霊力が密集した状態だわ…何かしら!?)
桜花姫は恐る恐る武器庫から脱出するなり…。
「怪物!?」
通路に佇立する怪物とは無数の食人餓鬼が融合化した肉団子の悪霊である。
「食人餓鬼とは別物だわ…悪霊の変異体かしら?」
姿形のみなら肉団子を連想させる巨体の肉塊人間であるものの…。全身の皮膚の表面には醜悪なる食人餓鬼の顔面が無数に確認出来る。
「先程から感じる無数の霊力って…肉団子の怪物だったのね…」
三蔵郎も恐る恐る武器庫から退室する。
「ひょっとして悪霊の【百鬼食人餓鬼】では?」
「百鬼食人餓鬼ですって?」
「食人餓鬼の集合体ですよ…」
「食人餓鬼の集合体?」
三蔵郎は桜花姫に解説したのである。
「征伐された彼等の…無数の食人餓鬼の怨恨が具現化した悪霊の親玉でしょうね…」
「無数の食人餓鬼の怨恨が具現化ですって…」
図体は等身大の人間と同程度であり一匹一匹の食人餓鬼の霊力は非常に微弱であるものの…。
「傍迷惑なのが出現したわね…」
食人餓鬼の大群が無数に融合化した影響によって最上級の妖女である桜花姫も恐る恐る後退りする。
(私が万全の状態であれば…食人餓鬼の集合体なんて片手間だけれども…)
妖力の消耗戦により百鬼食人餓鬼との徹底抗戦は非常に難局である。
(迂闊にも小面蜘蛛から大量の妖力を消耗させられちゃったからね…)
すると百鬼食人餓鬼の全体像から確認出来る表面の食人餓鬼の口辺より超高温の熱風を放射する。桜花姫は咄嗟に霊力の防壁を発動…。同行者である三蔵郎にも妖力の防壁を発動するなり危機一髪彼を熱風から防備する。
「三蔵郎様…命拾いしたわね♪」
「感謝します桜花姫様…即刻ですが桜花姫様の妖術で百鬼食人餓鬼に猛反撃しちゃいましょう♪桜花姫様が天下無敵の妖術を駆使しちゃえば集合体の百鬼食人餓鬼だって撃退出来るでしょう!」
「三蔵郎様…」
桜花姫は苦笑いしたのである。
「桜花姫様…如何されたのですか?」
苦笑いする桜花姫に恐る恐る問い掛ける。
(先程の妖力の防壁で空っぽの状態なのよね…)
妖力が空っぽの状態であり百鬼食人餓鬼と応戦しても敗戦は確実であると判断した桜花姫は苦し紛れに…。
「三蔵郎様!即刻駐屯地から一か八か脱出しましょう…」
三蔵郎に逃走を合図したのである。
「えっ?脱出ですと?」
三蔵郎は一瞬困惑するが…。
(桜花姫様…)
桜花姫の表情から三蔵郎は咄嗟に掌握する。
「承知しました!桜花姫様…」
桜花姫と三蔵郎は全力疾走により駐屯地から無事脱出したのである。桜花姫は恐る恐る背後を警戒するなり…。
「三蔵郎様…危機一髪だったわね♪」
「ですが如何して桜花姫様は逃走を判断されたのですか?桜花姫様らしくないですね…」
三蔵郎は恐る恐る桜花姫に問い掛ける。
「桜花姫様が天下無敵の妖術を駆使すれば食人餓鬼の集合体である百鬼食人餓鬼と交戦したとしても容易に撃退出来るのでは?」
「度重なる消耗戦で妖術が発動出来なくなったのよ…こんな空っぽの状態で百鬼食人餓鬼と徹底抗戦なんて無謀だわ…」
度重なる妖力の消耗戦によって桜花姫は満身創痍の状態であり妖力を消耗した状態では食人餓鬼の集合体である百鬼食人餓鬼は勿論…。相手が食人餓鬼の大群だったとしても絶体絶命である。
「人間の三蔵郎様は勿論…最上級妖女の私だって確実に瞬殺されるでしょうね…」
「えっ…最上級妖女の桜花姫様が悪霊を相手に瞬殺されるなんて…」
三蔵郎は桜花姫が非常に弱気であると感じるも…。桜花姫は息苦しく深呼吸したのである。
(桜花姫様…本当に重苦しい様子ですね…)
三蔵郎は恐る恐る…。
「如何やら妖力が消耗されたのは本当みたいですね…桜花姫様…」
「御免なさいね…三蔵郎様…」
桜花姫は謝罪したのである。
「妖力を消耗した状態では食人餓鬼の大群を相手するのも正直悲痛なのよね…『天霊山』の露天風呂にでも入浴出来れば…」
「天霊山の露天風呂ですか?」
天霊山とは西方国の丘陵地であり俗界の温泉郷と命名される。妖女にとって天霊山の露天風呂は消耗した妖力を回復させられる正真正銘の妖力補給所であり極楽浄土である。
「西方国の露天風呂なら思う存分妖力を回復させられるのよね…」
「西方国は俗界の温泉郷ですからね…」
西方国は太平神国唯一の温泉郷であるものの…。不運にも東方国から田舎村の西方国は遠距離である。
「距離的にも西方国は遠距離なのよね…」
困惑し続ける桜花姫と三蔵郎であるが二人の背後より百鬼食人餓鬼が接近する。
「桜花姫様!?百鬼食人餓鬼ですよ!」
「私達を追尾したのね…」
(如何やら私達に選択肢は皆無みたいだわ…)
桜花姫と三蔵郎は一目散に逃走したのである。
「三蔵郎様…超特急で西方国に戻りましょう…」
桜花姫は一時的に撤収を決意する。
「承知しました!」
二人は恐る恐る悪霊の襲撃を警戒するなり獣道にて西方国へと全力疾走したのである。親玉の百鬼食人餓鬼は勿論…。食人餓鬼の身動きは非常に鈍足であり彼等から追尾されなかったのである。
メンテ

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